週末オレとムギは商店街の前まで来ていた。
「イヤーお待たせ」
「まったく律が遅いから、そういえば唯は?」
「さっきメールでもうつくって送ってきたんだけど?」
すると反対側の歩道に唯が見えた。
「あっ唯~っこっちこっち」
「あっみんな~ってうゎー」
人にぶつかる唯
「あっ危ない!」
とムギは心配そうに見守る。すると謝ってから次は散歩している犬をなで始める。
「後数メートルなのにたどり着けない」
「フリーダムなやつだなー」
と少し笑ってしまう。
「それでお金は用意できた?」
「お母さんに無理いって五万円前借りさせてもらった。」
「それなら十分足りるさ。修理とかの保証はできないから大切に使うことが条件だけど。」
「うん。でもお金っていつ必要になるかわからないよね…これからは計画的につかわなきゃ!」
と目の前に洋服屋がありワンピースが飾ってある。
「いけないんだけど。」
「こらこらこら」
「まぁいいさ。どうせ楽器は逃げないんだし。少しくらい回るか?」
その一言がきっかけで色々商店街を歩き始める。近くにショッピングモールもあるしちょうどいいか。
服屋、デパ地下などを回っていく。唯以外は服や気に入ったおかしなどを買っている。唯も食べ歩きや軽い物を買って楽しんでいるらしい。
「んじゃ次ゲーセン行こうぜ!」
まぁ本来の目的は完全に忘れているらしいけど。楽しそうだからいいか。
ゲーセンにつくとクレーンゲームのいくつかに目がとまる。昔弟が好きだったアニメのフィギュアだった。小さい男の子がとろうとしているがうまくいってない。
久しぶりにとってみるか。
男の子はあきらめたらしくクレーンゲームから離れようとする。オレはそこにコインをいれてレバーを動かす。そしてフィギュアの後ろ側に引っかけてそして
ガタン
と音がする。フィギュアは見事にとれた。
「ほら、そこの少年。」
オレはそのフィギュアを小学生くらいの男の子に渡す。
「え?」
「やるよ。オレいらないから。」
もともと小学生くらいを対象にしたアニメだ。高校生が持っても何も意味ないしな。
「ありがとうございます!」
と嬉しそうにフィギュアを持っていく。とったかいがあったもんだ。
少し遅れてしまったので少し小走りで追いかけるとどうやら女子もクレーンゲームをやっているようだった。唯や律はうまくとれている。ムギはもともと見るほうが好きだったのでやろうとはしてない。だけど
「あっ」
極端にヘタだったのが澪だった。多分あまりやったことがないのだろう。
「なぁ澪もう行こうぜ。」
「後一回だけだから。」
しょうがないか。
「なんか欲しいやつがあるのか?」
「うん、あのぬいぐるみなんだけど。」
指さす先には確かたまごっちのぬいぐるみがあった。あれくらいなら
「澪ちょっと貸してみろ。」
「えっ、いいけど。」
オレはコインをいれ、レバーを動かす。そして
ガタン
とぬいぐるみが落ちる。するとみんなから驚きの声があがる。
「かいちゃん上手いね!」
「ゲーセンは昔よく行ってたからな。コツがあるんだよ。ついでにこれはあげる。」
とぬいぐるみを澪に投げる。危なげなくキャッチすると
「えっいいの?」
「別にオレはいらないし、とろうと思えばとれるし。」
「ありがとう。かい!!」
と珍しく笑う澪に少しドキッとしてしまう。
よく考えてみると軽音部の中で一番かわいいと思うのはダントツで澪だ。オレの学年の男子はオレ含め8人そのうち、3人が澪のことを気になるらしい。(オレは黙秘権を使ったけど)
「どうしたのかな~かい?」
とニヤニヤとこっちを見てくる律。こいつ絶対にからかってるだろ。
「……なんでもない。ところでもうそろそろ楽器屋行かねーか?」
「あー忘れてた。」
……本当に言って良かったよ。
「んじゃここがオレの家の店、一応地下がギター売っているところだから見ていってくれ。」
「うわーっ!!すごーいギターがいっぱい。」
「そりゃ楽器屋だからな。ついでにドラムは一階にあるけどキーボードとベースはこの階にあるから自由に弾いていっていいぞ。」
「そういえば、私この店でベース買ったなぁー」
澪が懐かしそうに言う。まぁ中古品も売っているし初めて買う人は多いからな。
しばらく唯は一人でギターを眺めている。そして
「うーん…いろいろありすぎて、どれがいいのかわかりませーん。」
確かになオレも最初はまったくわからなかったし。
「何か選ぶ基準とかあるのかな?」
「もちろんあるけど。」
唯に言ったところで聞かないような気がするんだけど。
「ギターって音色はもちろん、重さやネックの形や太さもいろいろあるんだ。」
澪が説明を続けているけどやっぱり唯は
「あっこのギターかわいいー。」
聞いていなかった。でも唯が選んだのは、確かにいいものなんだけど。
「それ割り引いても十万はするぞ?」
「えっ?」
六割引きでしてもいいっていわれているけどなぁ。原価が十五万円のやつだから厳しいんだよ。
「原価十万くらいだったら半額くらいにしてやったけど…」
「なんとかならないのかいちゃん。」
ムギは言うけど…
「厳しいな。一応話してみるけど。」
「そっか…」
「ちょっと親父に聞いてみるわ。」
オレは一階に行く。すると親父が暇そうにしていた。
「親父、気に入ったギターが予算全然足りないんだけど。」
「あぁ部活の仲間のやつか。別に三分の一くらいにしてやれ。」
「いいのか?売上とか。」
「さっき凡矢理中から吹奏楽部の大量受注が入ったから大丈夫だ。簡単にはつぶれないぞ。」
なるほど、そういうことか。
「ならそうさせてもらう。サンキュー親父。」
「貸一な」
急いで下に戻り
「OKだって!」
「ま、マジで!?」
「何!?何かやったの?」
「ただ、大量受注が入って利益に困らなくなっただけだから。」
するとすごく喜んでいた。まぁこれでよかったんだと思う。