PTSDをはじめとした精神へのダメージが原因で艦娘を辞めるものはあとを絶たない。
艦娘不足に困る海軍は深海凄艦に通用する言われる新型ミサイルに期待を寄せ、護衛艦に搭載し艦娘の護衛をつけて実戦テストを行うのが・・・


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単発です。
艦娘や深海凄艦に関する設定、世界観でほかの作品との関連性はありません。


ダメなアイディア

「磯波ちゃん、本当にやめちゃうんだね」

 

「うん、私は吹雪ちゃんたちみたいに強くないからさ、もうこれ以上耐えられないの」

 

「あ、ごめんなさい…」

 

「ううんいいのいいの気にしないで、また会えるよ。こんどは一般人として遊びに来るからさ」

 

「艦娘磯波さん、『解体』作業の用意ができました。こちらの作業室へどうぞ」

 

「あ、行かなきゃ・・・じゃあね吹雪ちゃん」

 

「うん、また会おうね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「全艦、攻撃を引きつけつつ後退!」旗艦長門の指揮で6隻の艦隊が後退する。

 

「この!この!この!」

 

「吹雪もういい、牽制でいいんだ!ミサイルが来るぞ」

 

 

長門の言葉と同時に深海棲艦の艦隊へ次々にミサイルが着弾し葬っていく。人類はついに艦娘をたよらなくても深海棲艦と戦える『通常兵器』を手にれたのだ。

 

 

 

護衛艦あきづきのCICでは艦長、艦娘指揮の提督、技術研究所(通称『技研』)のワッペンを付けた大淀が戦闘の推移を見守っていた。

 

「新型ミサイル全弾命中、深海棲艦艦隊は全滅です。大成功です!」

 

CICに歓声が上がる

 

 

護衛艦あきづきに課せられた任務は12発の新型ミサイル試作品を搭載して深海棲艦に対する実戦テストを行うことであった。深海棲艦は地球上の物質とは次元がズレているため、艤装の装着で同じように次元をずらした艦娘の攻撃しか効かないのが常識だった。

 

試験には提督と指揮下の艦娘6名も同行しあきづきの護衛とミサイルテストの支援を行う。

 

 

 

艦娘たちが迎えのシーホークで帰艦すると艦内は既にお祭りムードで気を引き締めたほうが良さそうな状態だった。

 

 

「たるんどるな・・・」

 

呆れたように長門がぼやく

 

「みんな嬉しいんですよ。これでもう姉妹や娘を艦娘として戦地へ送らずに済むんですから」

 

「確かにそうかもしれんが港に帰るまでが任務だ!帰投中に試験データもろともこの船が沈めば元も子もない…わたしは提督に戦闘の報告してくるぞ。お前たちは艤装の手入れと補給を済ませたら休め」

 

「「「「「了解しました」」」」」

 

ヘリ格納庫の一部を間借りして仮設した整備スペースで作業を始める。

 

 

 

 

 

「なんか妙に疲れたちゃった・・・はやく居住区に戻って休…あれ?もっと艦尾のほうだったけ」無意識のうちに艦首側まで歩いてきていた。

 

(吹雪ちゃん)

 

「な~に磯波ちゃ…んぇえ?」

 

振り返っても背後の通路には誰もいない。そもそも磯波は艦娘を戦闘による精神的ダメージが限界に達し、このまえ退役して普通の女の子に戻って内地で暮らしているはずだ。

 

(吹雪ちゃん)

 

「磯波ちゃんなの?」

 

また声が聞こえた気がした。通路の奥の扉の向こうのような気がする。

 

「磯波ちゃん…??」

 

「あっちょっと艦娘さんここはダメですよ!」

 

扉に手をかけたところで通りかかった乗組員に注意される。プレートをみるとこの先は艦首VLS、さっき深海棲艦を屠ったミサイルの残りがある場所だ。

 

「あ、すみません!」

 

 

 

艦長室

 

「はい、我々技研も予想していなかった大成果です」

 

胸を張って大淀が答える

 

「素晴らしいものをよく作ってくれた。これで奴らに勝てる、犠牲も減らせる。また我々軍人が戦える」

 

期待するように艦長

 

「提督、これで我々は失業だぞ。どうする?そろそろ腹をくくってくれないか?この長門もさすがに待ちくたびれているぞ」

 

「まいったな…お前とか…本当におまえとか…まぁそれも…悪くないか」

 

提督が恥ずかしさをごまかすように帽子をかぶりなおす

 

「おぃ…ここは男ばかりのむさくるしい護衛艦だ、ほかの場所でののろけはやめてくれよ…それで大淀さん、ミサイルはすぐ量産体制に入れるのか?」

 

「はい、材料の調達に少し難がありますがこの成果なら司令部を説得して優先的に確保できるかと」

 

「難しいのか?」

 

「ええ・・・なにせ弾頭部分は深海棲艦とおなじズレたものを使用していますので」

 

「そうか、それは何より―――」

 

 

『艦長、緊急事態です!大至急艦橋までお願いします!』

 

内線がなり艦長を呼び出す。

 

「わかった、すぐ行こう」

 

「我々も行きます」

 

「うむ、とにかく急ごう」

 

 

 

「モニターに出します」

 

コンソールを操作する隊員

 

「・・・なんだこれは!」

 

 

モニターに映し出されたVLSの弾薬庫部分。そこに設置された新型ミサイルのうち一発の弾頭部分が明らかに内部からの圧力で破裂し、ドロドロした赤い液状のものが溢れ出ていた。

 

 

「新型ミサイル・・・新型の爆薬か?」

 

「いえ、応急班の話では爆発物の類は一切検出されませんでした」

 

「だったらこのドロドロしたものはなんだ?」

 

「それが・・・」

 

「今すぐ海洋に投棄してください!今すぐです!」

 

技研の大淀が投棄を進言する。その焦り様は子供でもまるわかりだ。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「これは危険なんです!投棄してください!今すぐ!」

 

大淀を除く三人は顔を見合わせ、頷くとコンソールの隊員に改めて聞く。

 

「これはなんだ?」

 

「応急班曰く死体のような腐敗臭がするそうです・・・」

 

「警務隊を非常呼集、VLSを封鎖し技研関係者全員を拘束しろ!」

 

「何をおっしゃるんですか艦長!あれはただの弾薬です!」

 

「君も拘束するぞ大淀」

 

「悪く思うなよ」

 

長門が背後に回って抑える

 

「提督、工廠を借りるぞ」

 

「わかりました。すぐ用意します」

 

 

 

格納庫内の工廠で妖精さんたちがミサイルのうち一発を分解して正体を暴いていた

 

「材料の調達に少し難があります…か。たしかにこれはそう簡単には調達できな」

 

「大淀、おまえは…技研はなんてことをっ!お前だって私と同じ艦娘だろ!」

 

「磯波ちゃん!やっぱり磯波ちゃんだったんだ!うわぁああぁああぁぁぁぁぁぁあああああああああ」

 

 

分解されたミサイルの弾頭には、ゼリー状の赤く血なまぐさいもので固められた艦娘の遺体が押し込まれていた

 

艦娘を引退し普通の女の子に戻ったはずの磯波だった。

 

 

「どうしてこんなことをした・・・!!!」

 

怒り顕にし今にも大淀に殴りかかりそうなのを乗組員に抑えられる提督。

 

 

「どうしてって・・・」

 

大淀はメガネを外し、目をこすって一息入れる

 

「どうしてってそりゃあなたたち艦娘はよわいのよ!すぐ戦闘で轟沈する、仲間が轟沈すればほかの連中も悲しくなってみなんで泣き出して戦えなくなる!私はね、そういう子達を解体してシャバに戻してはまたその穴埋めで新しい適合者を探してきてたのよ!どうせシャバに出てもろくに生活できないくせにね!!!!」

 

メガネをかけ直す。その顔はもう大淀ではなかった。

 

「でもいい利用方法を思いついたのよ!解体予定の子を弾頭にして敵にぶつければ同じことでしょ!?だからわたしは管理部隊から技研に移ってこのアイディアを密かに実現させたの!」

 

「どうしてだ!現状艦娘は戦えているぞ!こんな邪険なものはない!!」

 

長門がキレる

 

「艦娘のおままごとみたいな戦いでみんなを守れるのかしら?」

 

「なにぃ!我々の戦いがままごとだと!!!!」

 

「私の父と兄は護衛艦乗りだったわ!艦娘がいなかった頃から効きもしない武器を持ってみんなを守ろうとしたの!心が折れたら辞められる遊び半分の艦娘じゃあんくてね!」

 

「それが!」

 

 

 

「もういい!もうたくさん!」

 

艦長が割って入る

 

「本艦は今すぐ横須賀港へむけて帰投する。今回の一軒は私が直々に司令部へ報告する。提督と旗艦長門は他にも『爆弾』がないか調べておいてくれ。もうこれ以上はうんざりだ」

 

「わかりました」

 

「了解だ」

 

 

 

 

 

 

艦内の騒ぎが落ち着いた頃にはすっかり夜になっていた。

 

 

 

船倉、ドアの前には武装した隊員二人が立っている。大淀をはじめ技研の関係者らが拘束されている

 

 

(まずいわ…あれは空気に触れると変異する。いやだけど正体がバレた今ならむしろ好都合か…)

 

 

居住区、艦娘にあてがわれた部屋

 

「磯波ちゃん・・・なんで」

 

磯波の遺体は海軍式に水葬された。

 

「今度会うときは普通の女の子って言ってたのに・・・なんで」

 

 

艦橋

 

「ミサイル本体も徹底的に分解調査しましたがこちらには何もありませんでした。既製品を流用しただけみたいす」

 

提督と長門が調べてわかったことを艦長に報告していた。

 

「まったく正気の沙汰とは思えない・・・これをどう司令部に報告すればよいのやら」

 

「苦労察する。必要なら私も艦娘の証人として同行する」

 

「ああ、頼む」

 

 

VLS区画の異常を示すランプが光り警報が鳴る

 

「今度はなんだ?」

 

異常を知らせるランプは瞬く間にVLS周辺の区画へと広がる

 

「艦長、だめです。カメラが故障しているらしくモニターには何も映りません」

 

「応急班を急がせろ」

 

艦首方向より破壊音

 

「いったいなんなんだ!」

 

「か、艦長!」

 

気づけば艦橋の窓から差し込んでいた月明かりが遮られていた

 

 

艦橋の前方、VLSがあった場所からは巨大な人型が這い出し艦橋に手を伸ばしていた。

 

 

 

艦首ファランクスが火をくがタングステンの弾丸はその肉塊を貫通してあさっての方向へ飛んでいった。

 

小銃、機関銃、携帯式地対空ミサイル艦内のあらゆる武器を持った乗組員たちが攻撃を浴びせるがこれもあまり効かず、触手のようにうねる無数の長い腕は乗組員たちをたたきつぶす

 

人型はみるみる巨大かし艦橋の高さはとうに超えてマストのてっぺんに手を伸ばそうとしていた。

 

緊急発進した艦娘6人が艦に直撃させないよう最新の注意を払って砲撃する。いちおう効いてはいるようだがこの大きさでは焼け石に水であった。

 

人型の胴体がVLSからはい出てくるに連れて艦が傾斜していく。

 

 

「艦長より全乗組員および艦娘に通達する!5分後に対艦ミサイルを全弾発射する、目標は本艦!沈む前に化物を吹き飛ばすぞ!!」

 

 

「総員退艦!総員対艦!船を離れろ!」

 

「急いで海に飛び込め!」

 

まだ航行している船から乗組員たちが我さきにと海へ飛び込み、スクリューに巻き込まれないために必死に泳ぐ。

 

艦娘たちは乗組員たちをロープに捕まらせてできるだけ遠くへ引っ張る。

 

しかし傾斜でまっすぐ走れなくなった護衛艦あきづきは既に円を描いて航行していた。

 

 

「くそう、船が戻ってくるぞ!」

 

「だめだこっちは!」

 

「大丈夫だ!この長門がキサマらを引っ張っぐわぁ!」ロープを引いていた長門に魚雷が直撃し水柱が上がる

 

「私以外の生存者は必要ないんですよ!」

 

「大淀がぁ!!!!!!」

 

「大淀さんもうやめてください!」

 

 

転覆寸前でコントロールを失ったあきづきの巨体が漂流者と艦娘めがけて突っ込んでくる。

 

「あなたたちは!あなたたちは!帰らなくていいんぁあああああ!」

 

大淀がスクリューに飲み込まれる

 

直後に多数の対艦ミサイルが発射され、空中で反転するとあきづきめがけて降り注ぐ

 

大爆発で何もかも吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

海上を飛行する海上自衛隊のヘリ

 

「こちら救難ヘリ207、護衛艦あきづきが消息をたったポイントで生存者一名を保護。艦娘タイプ吹雪」

 

『こちら護衛艦いずも了解、医療班を待機させておく』

 

 

「もう安心してくれ、すぐ見てもらえる」同乗していた医官が声をかける

 

「ここは・・・みんなは?わたしは…」

 

「大丈夫なのか、こんな小さな女の子が」

 

「身体に別状はないがかなりショックを受けているな。これはもう退役コースだろう」

 

 

「こちら救難ヘリ207、いずも上空に到達した。着艦誘導をたのむ」

 

『・・・』

 

「こちら救難ヘリ207、いずも上空に到達した。着艦誘導をたのむ・・・どうした、応答してくれ!」

 

『・・・』

 

「機長、アレを!いずもの甲板に何かがいます!!」

 

「なんだ・・・あの人型の大きなものは…」

 

 

「磯波ちゃん…また会えたね」

 

 

 

 




大淀がすきなひとごめんなさい。


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