晄がやって来てから少しの年月が過ぎた。
春が来て、夏が来て、秋がきて、冬が来る。
この繰り返しを何度と体験した。
自然の偉大さを常日頃より感じてきた筈だった。
…しかし、その中で童共は更なる輝きを見出だすものだな。
くつくつと笑いながら儂は木の枝を噛む。
もう宵も深い。また太陽がこの空に昇って来るのであろうな。
そう思いながら、枝を捨て瞼を下ろす。
□□□
「… … …!」
やれ、今日も童の声がしよるわ。
さて、今日の勤めを果たすとしよう…。
戸を開け、光の向こうへ…。
「あっ!飯綱様だ!」
「えっ!あっ本当だ!」
二人の子烏どもが早速儂を見つけおった。
「飯綱様!今日は麓(ふもと)まで行ってくる!」
「そうか、では行ってくるが良い。
日がくれる頃には帰って来るのだぞ?」
「は~い!」
跳び跳ねるかの様に二人揃って山を降りて行く…。
さて、もう行ったな?
「おい!」
周りの天狗を呼びつける。
「はっ!なんでしょう!」
「あやつらの様子を見ておけ」
「はぁ…何故?」
「どうせ、何かあるだろうからな。
何も起こらん様にお前に予(あらかじめ)めついて行ってもらう」
「…へぇ」
「不満か!!」
「いえっ滅相もございません!」
「ファハハ、いや儂も不満だ。
お互い苦労をする身だ、気張らずやれ」
「…はっ!」
「よろしい!」
見張り天狗が追う。
さて、儂も勤めを果たすとするか。
…いや少し小腹が空いたな。
あいつを呼ぶか。
「美喰!」
「へいっ!なんでやしょう飯綱様」
「朝食を頼む」
「はいはい!じゃあ今すぐ!と!」
すぐに走り出す美喰。
あいつめ料理だけは逸品だからな…
すっかり儂の胃袋は掴まれてしもうたわ。
そんな事を思いつつ、席につく。
□□□
「飯綱様できあがりましたぜ!ささ!どうぞ」
「うむ、ではいただくとしようか」
今日も旨い飯にありつけたわ。
しかしよくもこう食材を旨く調理できるものだな…。
「いやはや、文と晄を見てると昔を思い出しますよ。
無邪気に遊んで冒険して…で痛い目を見たあの頃を。
いやはや懐かしい…」
「ケツの青い若造がよく言いよる。
過去を懐かしむなんざ幾千年早いわ!」
「っと!飯綱様に言われちゃ何も言えないですな」
「ふん…生意気な奴。まぁ良いわ。ごちそうさま」
「へぇ、ありがとうございます」
席を立つ。
さて、ようやっと勤めを…。
「たたたたたた!大変だァ!お…鬼が出たぁ!!!」
どこからか泣きの入った叫びが聞こえる。
…『鬼』
恐れるべくして、崇めるべきもの。
天狗は、いや妖怪は、並大抵ではどうにもできぬ。
これはまいったわ…。
「飯綱様!晄と文は!?」
「見張りをつけた!恐らくは大丈夫だ!」
「へぇ…!おし!俺は逃げます!」
「おう!とっとと逃げろ!」
美喰もその生意気な口を閉ざし、一目散に逃げ出す。
さて…
「者ども!集ええぇえぇいっ!!!!」
喉がはちきれんばかりに叫ぶ。
しかし、儂の体などどうもあるか!
これは山の一大事なのだ!!
「で、鬼は!?」
「麓です!仲間が相手を…!」
「馬鹿者!!!とっとと逃げぬか!
えぇい!世話の焼ける!」
ぬぬ!?麓!?文と晄が…!!いかん!
強風を起こし直ぐに麓へ向かう。
□□□
「おい!!貴様!とっとと大天狗会わせろ!
お前達では相手にもならぬぞ!!」
大きな体に曲がった角が額より生えた大男。
あれか…!
「…黙れっ!貴様など…大天狗様には会わせぬ!」
「…いいだろう!その薄皮と細腕を千切って誘い出してやる!」
させぬ!
「待てぇい!貴様!狙うは儂か?ならば儂が相手をする!」
「来たか!ファッファファ!
貴様を倒せば俺の血も強者の血よ!覚悟せいっ!!」
「退け!こやつめの相手はこの儂だ!」
「ははっ!」
とは言うがこれは参った。
相手が鬼とあらば儂とて敵わぬ者も無論おる。
そうでないことを願うしかないな…!
「ファッファファ!喜べ!未来の四天王に倒される名誉の戦死だ!」
斧を構えて、宣戦布告。
「果たして出来ますかな?この儂を倒すなど!」
「ほざけ天狗!一撃で葬ってくれる!」
その言葉が終わる前に高速で踏み込み、斧を縦に降り被る。
儂は刀を抜き、横に斬り払う。
「ぬおっ!やるな!」
鬼の頬には血が流れる。
正に血の気が多い奴。
儂は瞬時踏み込み、一撃を狙う。
狙うは心臓…!
「させるか!」
鬼は手で刀を弾き、丸太の様な腕を降り下ろす。
足を後ろに引き上手く攻撃をかわす。
「ほほぅ!ならばこれも避けてみよ!」
鬼はそういったかと思うと斧を振り回し、思いっきり投げつける。
しめたわ。これは斬れる!
飛ぶ斧に集中し、深く腰を落とす。
斧が風を切る音が近づく。
…
…
…
「…………そこだっ!」
刀を抜き、風を断つ。
まず斧を瞬に切り裂く。
斧は青い一閃が走った後、空中で粉々に散る。
「なっ…何ぃ!?俺の魔戦斧が!」
「…痛みは感じぬ。一瞬よ」
「何…!?グオオオ!!!」
鬼に血の一閃が走る。
「がふっ…!やりおる!」
「ぬっ!?仕留めきれぬか…!」
「…ふん。
俺の本気を見せてくれる!
ウオオオオオオオオオオオオオオォッ!!!」
鬼が怒りの叫びをあげる。
その声を聞くと辺りの鳥や獣達も一目散に逃げ出す。
「ふんぬっ!!」
鬼が大腕で地面を殴り付け、大地が割れる。
「よしよし…これで貴様も粉々だ!くらえぃ!!!!」
身体中の血管が浮き出て、流れる血が更に勢いを増す。
血塗れの大腕が儂をめがけて、飛んでくる。
儂は大地を蹴って跳び、腕をかわし、大風を巻き押す。
「ぬおぉおおっ!」
風に鬼の血が跳び、鬼は腕を組んで踏みとどまる。
しかし、その顔に余裕は無い。
「ふふ…まさか命を賭(と)す事となろうとは!
貴様は相手冥利に尽きる!」
「それは儂が決める事だ」
「ファフア…これで死ねぃ!!」
鬼に妖気が満ち、殺気が体から溢れ出る。
やがてそれはひとつの球体となる。
「受けてみよ!鬼の四天王の技を改良したこの技をッ!!!
新!元鬼玉ァッ!!!!」
球体は燃え盛り、段々威力をまして行く。
そして鬼がこちらにその球体を思いっきり投げつける。
威力は大きい。しかし所詮当たらなければ良いのだ。
刀の先に妖気を集め、心を澄ませる。
そして空中になぞるように刀を動かし…放つ!!
刀から放たれた妖気は白き波の様に形を成し、ゆっくりと球体に向かう。
「馬鹿な!そんな細い剣風でなんになる!」
剣風と球体は互いに距離を縮め、どんどん近く。
そして衝突した。
球体は、光を放ち、空に火の花を咲かす。
剣風は球体を斬り裂き、『目標』へ向かう。
「な!剣風がまだ…!!ふん!打ち破ってくれる!!!」
鬼が地を蹴り、剣風を振り払おうとする。
大腕が剣風に触れた瞬間、空に血の花が咲く。
「ガッ…!!!」
鬼は意識を失い、地面にまるで石の様に落ちる。
剣風は地面に吸い込まれ消えていった。
終わった。
戦いが終わったのだ。
一撃も受けなかったのは幸いだった。
など思いつつ鬼に近寄る。
血の海の中、悲しい顔で大の字の格好で倒れていた。
死にかけているようだ。しかしもうてのほどこしようがない。
とりあえず小烏共は…。
「晄~!そのキノコ本当に食べられるの?」
「大丈夫よ!美喰が良いって言ってたもん!」
…なんとも平和なものだな。
この温度差に少し呆れ返る。
しかしこれが日常なのだ。
鬼を背に儂は山へ戻る。一筋の風と共に。
□□□
オマケ
「…空が青い。この空の下で俺死ぬのか…。」
「あぁ?情けない奴だなぁ。四天王を倒すんだろう?」
「おう…そうさ。俺は天辺に行く…」
「なら這い上がってでもアタシに掛かって来な!」
「へへ…それが出来りゃ良いのにな…
はは、勇儀姐さんにゃ敵(かな)わずか…」
「ふん、情けない奴だ。
地に這いつくばろうが、なんだろうがそこから立ち上がれば良いのにな。
…じゃあな、もう会うこともないだろう」
「…ちっくしょうッ!俺だって…四天王の背中位越えられる!
行くぜ!星熊 勇儀ィッ!!!!」
「…ふ、来な!正面から打ち破ってやる!」
「ウワァァアァァアアァアァ!!!!」
片腕一角の鬼は戦で果てた。
己の最高の目標に命を果たして…。
…いるのか、オマケは(笑)
この話書きたくなったので書きました。
決してPV2000記念とかじゃあないですよ?
だってそれ言うと今後も書かなきゃならないので…(笑)
なのでこれは書きたくて書いたのです。
どうでも良いですが最初は戦闘パートにする気じゃなかったんです。
しかし、
何故かちょっと戦闘の書き方練習しといたら良いかなとか思っていたら…書いてました。