「お~・・・い華仙!華仙~!」
私は深き山の中、声をあらげ、華仙を呼んでいた。
木は一層生い茂り、空を閉ざし、その先でさえも闇に閉ざしている。
「あぁ~…もう!華仙!何処~!?」
私は森の中を叫びつつ、走ってゆく…。
何故こんな事になったのか?
それは今日の朝の事だった…。
▽▽▽
くっ、眩しい…!
今日も太陽の光が、私を目覚めさせる…!
私は顔に当たった日の光で目が覚めた。
さて、今日は何をしようかしら…?
私はわくわくしながら顔を洗い、食卓へ向かった。
「あっ!晄姉ちゃんおはよ!」
泊めてくれた童が元気よく挨拶をする。
やっぱり、挨拶は大事よね。
「おはよう!」
でもそれ以上に朝食って大事よね!!
私は小躍りしつつ座りこみ、朝食を待つ。
そこで私はあるものが欠けているのに気が付いた。
「…あれ?華仙は?」
「えっ?僧の人?うーん…見てないなぁ…」
童はそう言うと美味しそうに朝食を食べた。
私はこの状況に疑問に思う。
華仙ほど者ならば普通に寝坊とかしないと思うし、
皆が起きていない時間に起きて朝食を食べるとは考えにくい。
私は華仙が同席していないのがどうしても不自然にしか思えなかった。
私は急いで朝食を平らげて華仙を探すことを決めた。
「あっ!すげ~早食い!」
童が興味深げに私の食事風景見ていた。
ぐっ!?喉に詰まる…!!
□□□
「ごちそうさま!」
そう言って私は外へ飛び出した。
「ぬおっ!?」
「グワァッ!」
私は外へ出た瞬間、走り回っていたのだろう、農民と激突した。
「す、すまん!ちょっと急いでいたのでな!」
ん…急ぐ?畑仕事なのに?
「何を急いでいたんですか?」
「あぁ!山に行った奴がいるんだ!」
農民のおじさんは震えながら後ろの山を指指した。
…どう見ても普通の山じゃん?
と私は思ったが、次の言葉がその認識を改めさせることとなった。
「あそこには『紅頭之鎧龍(あかこうべのよろいりゅう)』と言う恐ろしい人喰い龍がいるんだ!」
……龍?龍?龍~ッ!?
私は二度か三度、頭の中で唱えてしまった。
…龍。
それは神の一角ともされ、聖獣ともされる。
人はそれを崇め奉った。
妖怪とて、それは例外ではない。
神通力を使うとされた龍は恐れられ、称えられ、長らく尊重されてきた。
虹は龍の通った後とされた。
私は虹以外で龍を見たことが無い。
どんな姿で何を思い生きるのか興味があった。
…そうか!それで華仙も…!!
謎は全て解けた!
そう!華仙も私と同じく龍を求めて行ったに違い無い!
「龍がいるのね!?」
「やめときな!奴は人喰いだぞ!」
あわてふためくおじさん。
「大丈夫よ!…多分」
全然大丈夫じゃないかもしれない。
自分ながらにどうかと思う。
しかし身の危険以上に華仙と龍…これらが頭について離れない。
「しかしだな…」
「化けて出たりしないから!」
「出られてたまるか!いやいや強情な…」
「じゃあ行って来るわ!」
「まてまてまて!龍には絶対に会うな!
特徴を教えやるからアイツが見えたら逃げろ!」
特徴まで教えてくれるらしい。ありがたや~。
こうして私は山へ向かう事となった。
華仙と龍を探し求めて…
△△△
と言うのが大分前である。
華仙はいないし、龍っぽいのはいないし、森は一層深い。
少し…いやかなり疲れた。
こうして歩くと無謀だった事がよくわかる。遅いけど。
足を棒にしつつ、私は歩みを進めていく。
□□□
「あっ!」
森の奥に光が見えた!出口とか無しね。
その光へ向かい私は走り出す。その光の向こうを求めて…!
「えぇい!拙者は退かぬぞ!お主こそ退けい!」
「お断りします!」
その光の向こうから懐かしい声がきこえてきた。
そう、そこには…華仙と命守が居た。
命守は巨大な黒い槍を持ち、華仙は杖を構えていた。
戦闘の最中だったようです。ほわー。
「あっ!晄!?何故ここに!?」
華仙が私に気が付いた。いや、気が付いてしまったと言うべきか…。
「ぬぅ!?おお!揃ったか!?」
やっぱり命守に気付かれた。
「ふん…退く気が無いのであれば!ここで散れぃ!!」
命守がその声と共に槍を投げつけてきた。
ズドォンン!!!
私の近くの地面に突き刺さった音がした。
やばいやばい!私は急いで刀を抜き、構える。
「この間は不覚を取ったが今度はそうはいかん!でやっ!」
命守は地面を蹴り高く跳び上がり、大きな刀を降り下ろす!
「うわっ!!」
私は転がる様な形で間一髪でかわす。
動きが大振りなのが唯一の救いね…。
私は立ち上がる反動を利用し、命守に跳んで斬りかかる!
「なんの!」
「えっ!?」
“私ごと„弾かれて木に打ち付けられる。
相変わらずとんでもない力ね…!
私は咳をしつつ命守の強さを再認識した。
「ふん!ていっ!」
華仙が隙を見つけた仕込み杖で命守を斬りつける。
無駄の無いしなやかな斬撃が命守を押して行く。
「ぐぐぐ…強い!しかし!これならどうだ!魔戦斧(ませんふ)!でぇい!!!」
命守が巨大な黒い斧を取りだし華仙にその刃を落とす。
「っと!!」
華仙は命守の肘に杖を突き当てる!
「がぁっ!」
命守は斧を落とし、腕の痛みに悶える。
華仙って…本当に強い…!
私がそう思っていると命守は槍を持って華仙をうち払う。
「片腕でも拙者、負ける気はない…!!」
「華仙!」
私は刀を持って命守を思いきり斬りつける!
「どうした!どうした!拙者をそんなへっぴり腰では斬れぬぞ!ぬぅんっ!!」
「ぎゃっ…!!」
私は呆気なく吹き飛ばされてしまった。
本日二度目の木に打ち付けられる。
くっあんなに力を込めたのに…!?
「ぬぅんっ!!」
蒼い炎が命守に突っ込む!
「ギャアアアっ!!」
命守が炎に包まれ苦しむ。ちょっと可哀想かも…。
「まったく…髪と肌が痛むでは無いかっ!!」
前言撤回。命守は炎を振り払い消してしまった。
炎に包まれたのにピンピンしている命守。少し焦げてはいるが。
「火力を省きすぎましたか…」
華仙が呟く。
…そうか、あれ以上強い火力だと森が…。
加減していたから命守が無事だったのだろう。
…加減してなかったら私達もそろって大火事ね。
さて、そろそろ私も攻撃にうつりますか…。
私は狙いを定めて命守に近づく。
そして集中して命守を斬る!!
「なんとっ!?だがまだまだ!」
命守と私のつばぜりあいが始まった…!
「ぐぐっ!」
「うぬぬっ!!」
緊張の糸がどんどんはりつめてゆく…!
「ガァッ!?」
緊張の糸は私が先に切れてしまった。
ま…まずい…!
「これでトドメだ!くらっ…「そこまでです!」」
見ると華仙が命守の顔をつかんでいた。
え?
「まっ…待て!!顔はよせ!顔と髪は女の命ぞ!?」
命守が掴まりながらあわてふためく。
そして何だか情けない待ったをかける命守。
「あなたが何もしなければ、こちらも何も」
「わ…わかった!何もせんから!しませんから!お願いします!」
どうやら戦いは華仙の勝ちらしい。
…絶対私じゃなくて華仙よね…。
「はぁはぁ…やれ、参った!降参だ!」
命守が手を振りながら話す。
「晄、どうしてここに来たのですか?」
華仙が私に不思議そうに問いかける。
「え…?だって華仙がいなかったから…ちょっと心配でさ」
「晄…」
「…それとここって龍が出るんでしょう?」
「!!知っていたのですか…」
「奴はこの拙者が退治してくれるわ!」
「… … …」
「まっ、待て!拙者が悪かった!」
なるほどなんで戦闘になっていたのかわかった。
命守は龍を退治しに来たのね…。で、華仙はそれを止めた、と。
「晄、里に戻っていてください。すぐに帰りますので」
帰そうとする華仙。そんな…!
「…いやよ!
私、華仙の迷惑にはならないつもりだから!
だから一緒に行かせて!お願い…!」
「…
はぁ、まったく仕方ないですね…
でも危なくなったらすぐに退いてくださいね」
「華仙!ありがとう!!」
「待てぃ!拙者も一緒に行くぞ!!」
「「駄目」」
「絶対見つけたら有無を言わさず退治する気よね…」
「そうです。あなたが来ると大変な目に会いそうですし…」
「迷惑はかけぬ!この通りだ!鬼に二言は無いぞ!!」
命守が頭を深々と下げる。
「…仕方ないですね」
「華仙!?」
「彼…じゃなくて彼女は戦力として申し分無さそうです。
『もしも』の時、協力してもらうとしましょう
それに目的は途中まで同じ様ですし」
「か…かたじけない!その心遣い!拙者、感服いたした!
ふむ!『もしも』の時は拙者にお任せあれ!」
命守が仲間になった!
…え?
「では、少し休んでから行きましょうか
龍が住まうと言う洞窟へ…!」
続く