東方風雲観察誌   作:カップワードル

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龍と呼ばれた者 前編

「… … … …」

「… … …」

「…………」

 

「「「見つからない…」」」

 

私達は龍を求めてどれ位歩いただろうか、

と言うかどこを歩いているのだろうか、

 

それすらわからない。

 

ぶっちゃけ、迷子…いやいやそんなことはないはず!

「み…命守!どう?」

「どう…とは?」

「道…迷ってない?」

「例え、深き霧の中でもいつかは果てはある。迷わず歩め、歩めばわかる」

 

絶対迷ってるわ。間違い無い。私は顔を蒼くなったのを感じた。

「華仙は…?」

「我、道に迷えど、己に迷わず」

 

何か格好いい事言ってるけどこれは絶対迷ったわね。

私は両者の言葉を聞きスーッと血の気が引いていくのがわかった。

 

…迷う?この森の奥で?

周りを慌てて見回すとどこを見ても木ばかりで、

食べ物は愚か、木漏れ日すら見つからない。

え?迷子じゃなくて遭難…?

一つの言葉が頭をよぎる。

 

「あ…案ずるな、拙者こんな山を幾つと経験し、幾つも制覇してきた」

「そ…そうですよ。山なんてきっと抜けられる筈です」

 

これはまずい。

二人共、山を軽視してしまっている。

私は小さな頃飯綱様に耳に穴があくほど言われた事があった。

『入らぬ山ほど、人は迷う。故に深山は侮る事なかれ!』

当時の大声と共にこの危険さが甦ってきた。

「と…とりあえずどうする?このまま進む?」

「も…勿論!でなければ抜けられもせぬ!」

「ですね…」

さて、早速まずい。

『山に迷って歩き続ければ生死をさ迷う』

なんて第二の教訓が甦ってきた。

しかし…この山は恐れられている曰く付きの山なのだし、

恐らく、里の人が助けに来るなんてことはまず無いだろう。

地元の天狗がいれば何とかなるかも知れないがそんな気配は無かった。

「ど…どうする?」

「どうするって…」

「い、否!拙者は行くぞ!ダァ!!!」

 

命守が自棄(ヤケ)になって走り進む。

一番やっちゃいけないことだと思うんだけど!?

「晄!追いかけましょう!」

「え!?現在地がまたわからなく…」

「命守がいなくなったら尚抜けられるとは思えません!」

「な…なるほど」

何となく説得力がある。

しかし、ついていけば私達も命守のにのまえに…。

「早く!」

「あぁ!もうっ!!!」

こうして私達は命守を追った。

命守はジグザグに走り回り方向とか完全にわからなくなってしまった。

 

 

「お…!おぉ!!こ…!これは!!お主ら!早くここへ!ほれ早く!」

命守が何かを見つけたらしく、

大分離れているのにうるさく感じる程大声で叫ぶ。

「行きましょう!」

「えぇ!」

私達は命守の発見が光となることを信じ、脇目もふらず走った。

 

 

 

「見よ!この洞窟を!」

命守が誇らしげに両手を掲げて笑っていた。

見ると森はそこだけ途切れ、地面からつき出た大岩のような物に

命守が屈まなくても入れそうな巨大な穴があった。

 

私は村人の話していた特徴を思い出す。

『奴が住んでる穴は人が両手を広げても尚足りない位の大穴に住んでる!』

な…なるほど。

「グオォォオォン…!!!!」

地鳴りとも近い非常に低い音が大穴から響きわたる。

出てきたの…!?

私は震えを隠せなくなって来た。

…何故だかお腹が減って来た。

(晄!命守!少し引いて様子を見ましょう!)

(うぬ、そ…そうだな)

(え、えぇそうしましょうか…)

 

「グオォォッ…!!!小賢しい妖怪共めが…!ここから消え去れ!!!」

 

太く重い声が私達にのしかかった。

私達は後ろを見ようとしたその時…!

 

ズガァンッ!!!

 

巨大な何かが降り下ろされた音がした。

私達は一目散に散らばり、草葉の陰からこっそりその姿を見ようとする。

『奴は血塗れの紅い頭をして、巨大な鎧を来ている。

角は長く、牙は巨大で血塗れだ。気性は荒くて話にならん!』

私は村人の話を思いだしつつ、その姿を目に納める。

 

 

紅く、丸い頭、そこからは紅く長い角が生えている。

 

牙は顔より尚紅く、牙の奥には小さく鋭い歯が覗く。

 

橙の鎧はいくつも節に分かれており、

頭に行くにつれどんどん紅みを増して行く。

体はゆうに命守を越していた。

 

 

そして節一つにつき二本の足が生えていた。

 

「「「大百足(おおむかで)(じゃん)!?」」」

 

そう紅頭の鎧龍…その正体は妖怪大百足だった!!!

な…なんだとォっ!?私は驚きを隠せなかった。

「グォオォオンッ…!!!!」

百足が叫びを上げる。

…どう聞いても百足には確かに聞こえない。

っていうか、百足は鳴かないしね…。

「うわぁあああぁぁあ!!!!

せっ、拙者!足の長い蟲と多い蟲は大っ嫌いでござるるるるる!!!」

命守が顔を面白い位歪めて走り回っている。

鬼の目にも涙、この言葉通り涙を流しまくっている。

べ…別人にしか見えない…。

 

「まずはお前か…!!?」

「ひぇ~!晄ぁっ!助けてぇ!!」

命守が涙でぐちゃぐちゃになった顔で百足と共にこちらに駆け込んで来た。

二重の意味で怖い。て言うか…

「く、くっ…来るな!来ないで!うわぁあああ!!」

「お、お助け~!」

「だ、だからちょっと待ちなさいって!」

「待たぬ…!!!」

こうして最悪のいたちごっこが始まった訳でございまする。

いや、鬼ごっこかも。

 

「… … … …」

黙って草葉の陰にたたずむ華仙を発見!

突貫します!

「かっ…華仙!助けて!」

「お助け申す!拙者をお助け申すぅうぅ!!」

「ちょ…ちょっと…!」

「貴様ら三匹揃っていただいてくれるわ…!!!」

「あんまり慌てないでくださいよっ!!」

華仙が百足に飛び込み百足を蹴り飛ばす!

さ、流石華仙!私が感心していると呻き声が響く。

「ゴォォオォオォオン…!!!!!」

「あ、晄!これはヤバそうです!」

「た、確かに!に、逃げる!?」

「いえ…少し、いえかなり大人しくさせましょう!」

 

そ…そんな!

この化け物を大人しくさせるの!?

私は驚き、戸惑いつつ刀を抜く。

「せっ、拙者そんなの嫌でござる!逃げたいでござる!」

命守がむせび泣きながら、声をあらげる。

わ…わかる。命守の気持ちがわかってしまう…。

「逃がさぬ…!!!」

命守が逃げようとするとスススっと先回りされる。

足が動く度波打ち、たまらなく気味が悪い。

「あひぇえぇえっ…!!」

命守はとうとう腰まで抜かしてしまった。

し…仕方ない!

私は百足の顔に突っ込んで刀を振り上げる。

こういう奴は一撃必殺ね!首を落としてやれば…!

「当たるか…!!!」

頭をひょいっと落としてかわされる。

そして木に激突!今日何回目よ!

「晄!私が奴を引き付けます!その隙に…!!」

「か、華仙!?」

さ…流石華仙!そんな役を請け負うなんて…!

「任せて!」

私は百足の後ろを取ろうとしたその時!

「ぬわんっ…!!!」

後ろの尻尾で弾き飛ばされる!

「晄!!」

私は本日何度目か、空を飛び、木に打ち付けられ…るッ…と!!

「ゲホッゲホッ…」

「あ、晄!」

「まず一人…!!!」

「何っ!?」

百足の小さな牙から霧が吹き出し、華仙を通り抜ける!

な…何!?

「なっ…くっ…!う…動けっ…!!!」

華仙はそこで動けなくなってしまった!

…神経毒!

そこで私は昔の事を思い出す。

そうだ、昔あきひとと山に行った時にも百足と戦ったっけ…!

私は昔の記憶をたぐりつつ起き上がり刀を構える。

「ひっく…ひっく…!」

「次はお前だ…!!!」

「のわーっ!!!」

命守が破れかぶれに大きな刀を振り回しながら走り回る。

危ないけど…何とか逃げ切れたみたい。

「こっちよ!百足!」

 

さて!ここから反撃と行きましょうか…!!

 

 

 

 

 

続く

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