私は刀を横に構え、百足との間合いを探っていた。
百足…昔戦った奴と同じなら…!
私は手や足を大きく動かし、思いきり目立つ行動を取ってみた。
「グルルル…!!!」
なるほど、反応は同じだ。
動く度に背を落とし、攻撃体勢に入る。
完全に一直線の攻撃範囲だ。
よし、相手の気をそらしていけば…!
私は右へ左へ反復横跳びをして相手の狙いを逸らす。
「えぇい…!ちょこざいな…!!!」
ご丁寧にも頭をこちらに揃えて動いてくれる。
二、三回程これを繰り返し、相手を慣れさせる!
「うぬ…!?なぬ…!?ぬぅ…!?」
頭を右へ左へ…今だ!
「おっ…!?こっちか…!?あっちか…!?な、なぬ…!?」
「てぇい!!!」
私は頭を飛び越え、胴体の鎧の隙間を斬り裂く!当たれっ!!!
「グガオォォオォンッ!!!」
き…決まった!!
百足の胴体は真っ二つに別れ、重心を乱した百足は地面に流れ落ちる。
「お…おのれぇい…!!」
百足は地面をのたうちまわりながら毒霧を吐きちらす。
しかし揮発性が高いのだろう、私には効果はなかった!
百足はゆっくりと起き上がりどすの聞いた声(?)で叫ぶ。
「半分とは言え貴様を殺す程度造作もない…!!!」
百足は私の周りを囲んでいた。
ぐるぐると私の周りを回り、徐々にその距離を縮めて行く。
締め付ける気ね…!
私は地面を蹴って跳び上がり、百足の上に飛び乗った。
「なっ…なぬ…!?」
「ていっ!たぁ!それっ!」
私は鎧を三回程斬りつける。
しかし、どれも刃はとおらない。
やっぱりコイツ堅い…!!
「えぇいっ…!!どけろ…!!!」
百足はのたうち回り、私は水平を崩し、地面に振り落とされる。
っと!せっかくの機会だったのに!
「食い殺してくれる…!!!」
巨大な牙(顎)を開き、噛み付いて来る。
…!!み、右!
私は体を右方に投げ出して、百足の噛み付きをかわす。
私の体に特に酷い傷が無いことを確認し終えた後、恐ろしい音が聞こえた。
バギィッギギギ…!!
音の方向には百足が牙で木をくわえていた。
噛み千切ろうとしているのだろうか、だとすると恐ろしい…!
ギ…ギギ…!バリィッ!!!
私が刀を構えると同時に百足は木を噛み切ってしまった。
鋏で枝を切るかの様だ…。
うわ~…私、あの中に挟まれたら確実に真っ二つね…。
血の気が引く。
しかしそれでも正気を保てるのは、
以前の経験が生きているからかもしれない。
「あ…晄!」
命守が少し落ち着いた表情でこの光景を眺めていた。
白粉が涙で落ちていてちょっと不気味だったが、頼もしく思えた。
■■■
な…なんと!
拙者(みなもり)はこの光景に完全に見いりざるを得なかった!
拙者より五倍ほどある百足と互角どころか優勢で戦っているからだ!
せ、拙者、沢山の足と節がたまらなく怖いのだが晄は臆する様子が無い!
戦いを眺めていると、晄は巧みに百足の攻撃をかわし、
地味ながら一撃、一撃と叩き込んで行く。
百足を凌駕するあの動き!まさに華麗としか言えぬ!
…しかし妙だな。大分斬られたはずなのに百足の奴はピンピンしている。
拙者、勇気を出して百足の傷口を見てみると…
少しずつだが傷口が塞がっていた!
なんと!これでは晄に勝ち目は…!!
拙者はあわてふためきつつ、百足を眺めていると有ることに気がついた。
…頭。
頭には矢や折れた刀が刺さっており、その傷口は回復した形跡が無かった。
傷口はそのまま肉が塞がっているだけだった。
ほぅ…そうかこれは耳寄りだぞ!
拙者は晄にコレを伝えることにした!!
■■■
くっ!こいつ、何て生命力なの!?
節はもう三回ほど斬ったのに、一向に弱る雰囲気がない…!!
私は流石に経験の余裕を失っていた。
「晄よ!頭よ!頭を狙え!」
…頭?戦略を立てて…じゃないか。
私は命守の忠告通り頭を見てみた。
無数の傷と武器の残骸が突き刺さっていた。
…なーるほど!あそこに攻撃を叩き込めって事ね…!
私は再び自信を取り戻し刀を構える。
「グオォオォンッ!!」
百足は牙を大きく開きまた、噛み付こうとしてきた!
私は先程と同じく、体を右方に投げ出してかわす。
…こいつ攻撃の種類が少ないわね。
バギギッ…
またも、木を噛み切ろうとしている百足。
さっきは恐ろしくて、わからなかったけど、
この行動は隙以外の何物でも無かった!
「よし!行くわよ~!!」
百足が木を噛み切る前に攻撃を当てなきゃ!
私は出来る限り速く走り、百足の頭へ近づく!
よし…!
ギ…ギギ…
今が絶好の機会ね…!
ギギギギ…!!!
「それっ!!!!」
バリィッ!!!
百足が木を砕くと同時に頭に辿り着く!
「ここだッ!!」
「グオオオオオオオオンッ!!!!!」
私は百足が倒れこんだ為に頭から投げ出された。
「ガッ…!!」
や…やばっ!また木にぶつかる…!!
しかも頭から…!!
「…あれ?」
「や…やれやれまったく、無理をしますね…」
「か…華仙!!!」
私の体は華仙にしっかりと受け止められていた。
毒が引いたんだ…!
「しかし、あの百足を晄が倒すとは…」
「わ…私じゃ悪かった?」
「いえいえ、驚いているだけです」
華仙がウフフと笑う。確かに華仙があの時毒を浴びなければ、
百足を倒していたのは華仙だろう。
…何だか私お荷物みたいじゃん。冷静に考えてちょっと悲しくなった。
「あ~やれやれ拙者も流石に胆(きも)を冷やしたぞ!」
命守がくつくつと笑う。白粉が溶けていて不気味だった…。
「こ…これで帰れるわね…」
「… …… … …ガアアアアッ!!!」
「えッ!?」
百足は再び息を吹き替えしてしまった…!?
う…嘘!?ちゃんとトドメは刺した筈…!!
「ていっ!」
華仙が杖を投げ付ける!
杖は矢の様に百足の頭に突き刺さった!
「ガッ…!!!」
再び、百足は地面に流れ落ちた。
…流石にもう動く様子はない。
…はぁ~!なっ…なんて奴なの!!
私はそう言えば忘れていた刀を頭から抜く。
ついでに華仙の杖も抜いてあげた。
「ひっ…ひぃいぃ!せっ、拙者こういう輩には慣れそうもない…!」
命守が震えながら話す。いや、誰だってそうじゃないかな。
こんな化け物、慣れろって言う方が無理よ…。
私達は胸を撫で下ろしつつ、帰ろうとしたが…。
「…どうやって帰るの?」
「「あ」」
やっぱり遭難しているのだった…。
「ねぇ!聞いた!今の山の絶叫!」
「ああ、聞いた聞いた…!あの山、旅人が入っていったんだろ?」
「…らしいけど。食べられちゃったかも…!?」
「もしかして…さ、あの旅人が倒したんじゃないか!?」
「あの細っこいお姉ちゃんが!?」
「…とりあえず行ってみようぜ!」
「えぇ!?しょ…正気!?」
「死んだら死んだでそん時だ!
俺はあれが龍の終焉の叫びにしか聞こえなかったからな!」
「ち…ちょっと!」
「じゃあ俺は行くぜ!」
「ま…待てそんなのだったら私も行くわ!」
「よし!行こうぜ!!!」
しばらくして、
里がひっくりがえるほどの大歓声が山にこだましたという…。
続く