東方風雲観察誌   作:カップワードル

21 / 45
剣の風を志せ 入門

… … … …

 

… … … … …

 

ふと、目を開けると霧の中に光を讃えた空が見えた。

 

… … …あ、あれ?

何でこんなところで眠っているんだろう?

私は何故か、屋根の上で眠り果てていた。

跳ね起きて周りを見ると

まだ朝霧がかかっていて白がかった山が目に入った。

…あれは。

 

思い出すと昨日は私達はあの山で百足を倒した、

と言う事で誰もが鍬を投げて宴会を始めたのである。

 

その時、あの百足についても話を聞いた。

何百年とも長き月日を奴は過ごしていて、百年に一回程退治されるのが

通例行事だったらしい。

が、ここ百年程村で流行り病が流行り、百足退治は難航していたとか。

 

つまり、中々歴史ある百足だったらしい。

…でもその話を浮かれながら聞いた後、私は布団に入り込んで眠っていた。

 

『布団に』よ?『屋根に』は寝てない筈よ?

私は疑問に思いつつ降りようとすると

華仙が瞑想が同じく屋根の上で瞑想していた。

よくわかんないけど華仙が運んでくれたと考えるべきかしら…。

私は屋根からスッと飛び降りると、

そこら中に割れた酒樽やら、酒瓶が転がっていたので焦った。

 

なるほど、それで屋根の上なのか…。

私は昨日の宴会の凄まじさを想像して身震いした。

 

…お腹減ったわね。

私は空いたお腹を満たす為に山へ向かった。

あの百足がいない山に。

 

 

 

■■■

 

 

 

お、おお…!

おおお…!これは…!す、凄いィ…!

 

足元を見れば松茸やら山葵、木を見れば樹液や椎茸やナメコ、

茂みを見れば薇(ゼンマイ)、|蕨(ワラビ)…

た…食べ物天国じゃ!食べ物天国に来ておるんじゃ!

私は先程までの微睡(まどろ)みが全て吹き飛んだ!

 

私は誰も居ないのに競うように採った。

すぐに手に余ってしまったのが最高に悔やまれる…!!

私が笑顔で帰り道を進もうとしたその時。

 

ぴょこっと小さな狐が出てきた。

手のひら程有るか無いかの大きさで、もこもことした毛が…

 

「…可愛い!」

 

私は抱え込んでいる食材を落とさない様にゆっくりと腰を落とす。

そして、子狐を見てニヤニヤしていたその時。

「久しぶりだな、晄」

 

… … …!?

な…何だか可愛い子狐ちゃんから低くて渋い声が響いた気がした。

私は冷や汗をかきつつ周りを見るも誰もいなかった。

 

ま…まさかッ!?こ、この子狐からか…!?

いやいや、そ、そんな事は無い筈…!

「晄!」

「へっ、へい、何でしょう!」

「久しぶりだな」

「お…お久しぶりです」

やっぱり、その声はどうしてもその子狐から聞こえる。

しかも私の事をご存知らしく。

 

不気味な筈だが、私はそれどころか懐かしさがじわじわと感じてきた。

この声、この喋り方…。まさか!?

「…飯綱…様?」

「む、ようやっとわかったか」

 

この子狐こそ、私達の育て親である大天狗様、飯綱四郎様なのである。

いやいやおかしいってばよ!!

 

しかしこの感じは疑い様のない…

 

「晄よ」

「えっと…はい」

「刀の方はどうだ?」

「え?刀…ですか?」

「いかにも」

フー…ン刀ねぇ…。

私は刀について考えて見るが…。

「特段、不足はありません」

「ふむ、刀には無いと」

「そうですねぇ…」

「よし!では剣技について教えてしんぜよう」

「え、剣技…ですか?」

「…いや、まず剣の扱い方からかな…」

子狐が渋い顔をする。

声と外見の差に笑いそうになってしまう…。

 

「しかし飯綱様…」

「ぬ?何だ?」

「そのお姿は一体どういう…」

「む?…おお、この姿か

 

この姿は式神…の様なものだな。イズナと言う。

コヤツを通じて、今お前と話をしておる」

「なるほど…」

式神かー…便利ね。

「後で油揚げでもやっておいてくれ」

前言撤回。やっぱり面倒。

「兎に角、準備が揃い次第儂が剣の心、しかと教えてくれるぞ!」

「はっ、はい!」

 

私は急いで山を降りていった。

 

 

朝の霧はもう嘘のように消え果てていた。

 

 

 

□□□

 

 

 

「あら、晄どこへいっていたのですか?」

里に戻ると華仙がやって来た。

「あ、華仙。山に行ったら…

うーんと、何て言うかね…師匠的な人がいたからさ…」

「とりあえず、その食べ物の山は?」

「ん?あぁ、あの山で取って来たの。華仙も食べるわよね?」

「無論いただきます。その師匠の話でもしながらいただきましょうか」

「そうね」

私達はまず、朝食を食べる事にした。

 

□□□

 

「ふむ、剣の心を、ですか…」

「モグモグ…うん、そうなの」

「食べながら話すのは行儀が悪いですよ…。

へぇ…面白そうですね」

「ゴックン、え?面白そう?」

「その授業私も協力、いや助太刀させていただきましょう」

 

□□□

 

私達は朝食を食べ終えて、飯綱様のもとへ行く。

…助太刀するってどういうことなんだろう?

私は疑問に思いながら歩みを進めて行く。

「おお、来たか晄…んぬ?そちらの御方は…?」

飯綱様か私達に気付く。

「あぁ、私は修業僧華仙と申します…ってイズナ!?」

華仙が自己紹介をする。思えば初対面ね。

 

「む?あぁこんなお姿で失礼する」

「いえ…管狐を用いられるとは…」

「やや、これは兄上が考えたものだ。

さて、儂も自己紹介せねばなるまいな。

儂は大天狗、飯綱四郎だ」

二人が握手こそしないが、敬意を表し、お互い姿勢を正している。

私も釣られて姿勢を整える。

「さて、儂はコヤツ…

晄に剣の心を叩き込まねばならぬのでな。失礼する」

「いえ、その事ですが…私も微力ながら助太刀いたしましょう」

「なぬ…?助太刀…?…まぁ良い。

では少し開けた場所に良いところがある。まずそこで修業の話をしよう」

飯綱様が、いやイズナがピョンピョンと森の奥へ消えて行く。

「さて、行きましょう」

「うん」

修行するのは私なのに、結構私をさしおいて話が進んでいた。

剣の修行…ねぇ。どんな修行なのかしら…。

私は少し疑問に思いつつ山の奥へ向かった。

 

 

続く

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。