… … … …
… … … … …
ふと、目を開けると霧の中に光を讃えた空が見えた。
… … …あ、あれ?
何でこんなところで眠っているんだろう?
私は何故か、屋根の上で眠り果てていた。
跳ね起きて周りを見ると
まだ朝霧がかかっていて白がかった山が目に入った。
…あれは。
思い出すと昨日は私達はあの山で百足を倒した、
と言う事で誰もが鍬を投げて宴会を始めたのである。
その時、あの百足についても話を聞いた。
何百年とも長き月日を奴は過ごしていて、百年に一回程退治されるのが
通例行事だったらしい。
が、ここ百年程村で流行り病が流行り、百足退治は難航していたとか。
つまり、中々歴史ある百足だったらしい。
…でもその話を浮かれながら聞いた後、私は布団に入り込んで眠っていた。
『布団に』よ?『屋根に』は寝てない筈よ?
私は疑問に思いつつ降りようとすると
華仙が瞑想が同じく屋根の上で瞑想していた。
よくわかんないけど華仙が運んでくれたと考えるべきかしら…。
私は屋根からスッと飛び降りると、
そこら中に割れた酒樽やら、酒瓶が転がっていたので焦った。
なるほど、それで屋根の上なのか…。
私は昨日の宴会の凄まじさを想像して身震いした。
…お腹減ったわね。
私は空いたお腹を満たす為に山へ向かった。
あの百足がいない山に。
■■■
お、おお…!
おおお…!これは…!す、凄いィ…!
足元を見れば松茸やら山葵、木を見れば樹液や椎茸やナメコ、
茂みを見れば薇(ゼンマイ)、|蕨(ワラビ)…
た…食べ物天国じゃ!食べ物天国に来ておるんじゃ!
私は先程までの微睡(まどろ)みが全て吹き飛んだ!
私は誰も居ないのに競うように採った。
すぐに手に余ってしまったのが最高に悔やまれる…!!
私が笑顔で帰り道を進もうとしたその時。
ぴょこっと小さな狐が出てきた。
手のひら程有るか無いかの大きさで、もこもことした毛が…
「…可愛い!」
私は抱え込んでいる食材を落とさない様にゆっくりと腰を落とす。
そして、子狐を見てニヤニヤしていたその時。
「久しぶりだな、晄」
… … …!?
な…何だか可愛い子狐ちゃんから低くて渋い声が響いた気がした。
私は冷や汗をかきつつ周りを見るも誰もいなかった。
ま…まさかッ!?こ、この子狐からか…!?
いやいや、そ、そんな事は無い筈…!
「晄!」
「へっ、へい、何でしょう!」
「久しぶりだな」
「お…お久しぶりです」
やっぱり、その声はどうしてもその子狐から聞こえる。
しかも私の事をご存知らしく。
不気味な筈だが、私はそれどころか懐かしさがじわじわと感じてきた。
この声、この喋り方…。まさか!?
「…飯綱…様?」
「む、ようやっとわかったか」
この子狐こそ、私達の育て親である大天狗様、飯綱四郎様なのである。
いやいやおかしいってばよ!!
しかしこの感じは疑い様のない…
「晄よ」
「えっと…はい」
「刀の方はどうだ?」
「え?刀…ですか?」
「いかにも」
フー…ン刀ねぇ…。
私は刀について考えて見るが…。
「特段、不足はありません」
「ふむ、刀には無いと」
「そうですねぇ…」
「よし!では剣技について教えてしんぜよう」
「え、剣技…ですか?」
「…いや、まず剣の扱い方からかな…」
子狐が渋い顔をする。
声と外見の差に笑いそうになってしまう…。
「しかし飯綱様…」
「ぬ?何だ?」
「そのお姿は一体どういう…」
「む?…おお、この姿か
この姿は式神…の様なものだな。イズナと言う。
コヤツを通じて、今お前と話をしておる」
「なるほど…」
式神かー…便利ね。
「後で油揚げでもやっておいてくれ」
前言撤回。やっぱり面倒。
「兎に角、準備が揃い次第儂が剣の心、しかと教えてくれるぞ!」
「はっ、はい!」
私は急いで山を降りていった。
朝の霧はもう嘘のように消え果てていた。
□□□
「あら、晄どこへいっていたのですか?」
里に戻ると華仙がやって来た。
「あ、華仙。山に行ったら…
うーんと、何て言うかね…師匠的な人がいたからさ…」
「とりあえず、その食べ物の山は?」
「ん?あぁ、あの山で取って来たの。華仙も食べるわよね?」
「無論いただきます。その師匠の話でもしながらいただきましょうか」
「そうね」
私達はまず、朝食を食べる事にした。
□□□
「ふむ、剣の心を、ですか…」
「モグモグ…うん、そうなの」
「食べながら話すのは行儀が悪いですよ…。
へぇ…面白そうですね」
「ゴックン、え?面白そう?」
「その授業私も協力、いや助太刀させていただきましょう」
□□□
私達は朝食を食べ終えて、飯綱様のもとへ行く。
…助太刀するってどういうことなんだろう?
私は疑問に思いながら歩みを進めて行く。
「おお、来たか晄…んぬ?そちらの御方は…?」
飯綱様か私達に気付く。
「あぁ、私は修業僧華仙と申します…ってイズナ!?」
華仙が自己紹介をする。思えば初対面ね。
「む?あぁこんなお姿で失礼する」
「いえ…管狐を用いられるとは…」
「やや、これは兄上が考えたものだ。
さて、儂も自己紹介せねばなるまいな。
儂は大天狗、飯綱四郎だ」
二人が握手こそしないが、敬意を表し、お互い姿勢を正している。
私も釣られて姿勢を整える。
「さて、儂はコヤツ…
晄に剣の心を叩き込まねばならぬのでな。失礼する」
「いえ、その事ですが…私も微力ながら助太刀いたしましょう」
「なぬ…?助太刀…?…まぁ良い。
では少し開けた場所に良いところがある。まずそこで修業の話をしよう」
飯綱様が、いやイズナがピョンピョンと森の奥へ消えて行く。
「さて、行きましょう」
「うん」
修行するのは私なのに、結構私をさしおいて話が進んでいた。
剣の修行…ねぇ。どんな修行なのかしら…。
私は少し疑問に思いつつ山の奥へ向かった。
続く