「… … … … …」
「うーむ…」
私は小さな岩の上で瞑想をしているわけなのだが…。
いつまでやっていればいいのだろう。
私はそんな考えを押し殺しつつひたすら座り、瞑想をする。
…本当、いつまで続くんだろう。
「動かざる事山の如し、止まらぬ事風の如し…見事お前は後者だな」
子狐から低い声がもれる。
いいね、風!私は風になりたい!
「たわけ!」
「いづっ!」
□□□
「心を澄まし、力を集中させろ。それがまず何よりも問われる」
「…はい」
「確かに心を無にすると言うは多少慣れるまで難がある。
しかし、刀も妖力もまずは集中。上手く心を整える事から始まる。
それ故、これは超えねばならぬ壁よ。ただひたすら心を研ぎ澄ませろ」
「心を…澄ませる…」
………
私は心を澄ませ、無になることを目指す。
不動…無心…。うぅむ難しい…。
うんうん唸(うな)りたくなるところを抑え、とりあえず集中する。
………。
「…うむ。それにしても華仙殿は凄い。
まるで時すら止まっているかの様だな」
華仙さんは無になりました。
って言えるほどに華仙は集中し、不動で瞑想していた。
私は今までまじまじと華仙の瞑想を見たことが無かったのだが、
こうして見ると本当に集中している。
まるでそういう岩とすら思えてしまう。
…現に蝶々とか蜻蛉とかが華仙の上で羽根休めしているし。
「晄よ、心を澄まし、体より力を抜け。
して、そのままこの空に思いを解き放て」
「… … … … …」
私はありとあらゆる心を…この空に溶かすつもりで、
ゆっくりと意識を引き伸ばしていった。
■■■
やれ、ようやっと集中した様だな…。
儂は座布団に深く腰掛けた。
イズナには大分働いてもらったし、場所もわかった。
…ならば、儂が直々に教えにいくべきかもな。
さっきは深く腰をかけたが、今度はゆっくりと腰を上げる。
…やれ、我ながら忙しいことだ。
儂が本殿の扉を開け、晄の居場所へ飛びたとうとすると。
「あれっ飯綱様!どこかに御出掛けで?」
美喰が出てきた。
「うむ、ちょっと晄に剣の心…教えようと思ってな」
「そりゃあまた、忙しい事で」
「いや、まったくよ。
ではな!」
「…ふぅ。上手くやってるだかねぇ…。
…まぁ良いか。晄が帰って来た時の為の料理でも考えておこう」
■■■
… … …ん?
子狐の様子が…
「キャン!」
子狐から相応の声が聞こえた。
なんということでしょう!ただの子狐になったよ!
…と言う事は飯綱様、なにかしたの?
「…あれ、晄。あれは…?」
「え、あれって?」
華仙が空を指す。
瞑想をしていてもわかるって凄いわね…。
で、あれってどれさ?
私は空をゆっくりと見回す。
白い雲…青い空…そして黒烏…。
…あれ、ただの烏じゃない…!!
「華っ…華仙!!」
「あれ…!私達を狙ってます!」
烏は凄い速さでこちらに飛んで来ていた。
…どうみても、普通の烏じゃない…!
私は刀を取り、鞘から抜く。
烏の距離はどんどん近くなって行く…。
風を切る音が、大きくなって、烏はどんどんその姿を鮮明してゆく…。
…正に黒い矢が私達へ目がけて飛んできているみたい。
「晄、下がって!…来ます!」
「わかった!」
お互い、少し後ろに足を退き、出来るだけ隙がないようにする。
「ガァッ!」
「そこだっ!」
「ていっ!」
二人合わせて刀を振る。
惜しくも烏は刀をくぐり、私達を通り抜けて行った。
「キャンッ!」
子狐は烏を恐れ、山に逃げ込んでいった。
私達もそうするべきなのかも知れない。
「華仙ッ…!」
「いえ、…あれはあの百足よりも危険です。
ここで仕留めねば、人里に被害が出ます!」
「あの百足より!?ちょ、ちょっと!それってかなり危ない…「晄ッ!!」
…!!」
私は背後から風を切る音を聞いた。
…違う!こいつただの妖怪じゃない…!
「晄ッ!これでは勝ち目がありません!妖力を使いましょう!」
「えッ!?ど、どうやって…!?」
「まず、相手の動きに集中して…おっと!
そして妖力を相手にぶつける想像をとって…それを解き放つのです!」
「…この状態で、ね。
じゃあ…集中しないとやばい訳よ…ねっ!」
烏の猛攻をなんとかかわしつつ、
私はつい先程かじってもいない妖力を使う事に。
ええい、ままよ!
…相手に集中して…!?
…で、妖力をぶつける想像をする…!
そして…
「解き放つんだっけッ!?」
私は先程の手順を力を込めて放った!
お、おお!?な…何だか体から何かこう…力が出た様な!
「おぉっ!あれは…!」
ゆらゆら~ゆらゆら~…
ふわふわ~ふわわわ~…ピチューン!
… … … … … … … … !?
な、なんだったの!い…今のちょっと大きめの毛玉は!?
(※晄の妖力玉です)
「でやっ!!」
華っ、華仙の手から蒼い炎がっ!
炎は空中をまるで糸に引かれるかの様に烏を包む。
…凄い。格好いい!
「グワーッ!」
烏が叫びをあげ炎を羽ばたいて散らせる。
ちょ、ちょっと!そんなめちゃくちゃな…!
「や、まて!
儂だ!晄!飯綱だ!休戦!休戦だ!」
…懐かしい声が、その烏から聞こえました。
…怒っていいですか。
■■■
「やれ、焦った…」
儂ともあろうものが久しぶりに本気で冷や汗をかいてしまった。
鬼やら大妖怪を相手にしたとき以来かもしれぬ。
「全く…ちょっと冗談が過ぎますよ?」
晄の顔がドスが効かせているつもりだろうが、何、
まだまだ若造の吠え面よ、ちっとも怖くないわ。
「ご丁寧にお主ら刀を抜いていたのでな。ちょっと試させてもらった」
晄に向かって訳を話す。
先に冗談が過ぎたのはお前ではないのか、と視線を送ると反らしおる。
「す、すみません。早とちりしてしまいましたね…」
陣傘に、衣…イズナから見たときから思ったが、一体…。
そしてあの術…かなりのてだれの技であった。
…最初に気付いたのもこやつだった。
「や、お構いなく」
あぐらをかいて、少し辺りを見ても、不思議と小競り合いの後が無い。
無事、修行を続けられそうだ。
■■■
…それから私は妖力の扱いを
優秀な師匠二人に手取り足取り命取りにお教えいただく事となった訳です。
「… … … …それっ!」
「安定しておらぬな。もう一度だ」
「うぅむ…」
「晄、そろそろ夕食の時間になりま…」
「うおりゃあああああっ!!!!」
「す…凄まじいな」
「これは…確かに」
…妖力の扱いによっては…。
もしかすると私の能力が意味を持つ事になるのかもしれない。
私はふと空を見上げて、秘かに決意するのだった。
「おっ、今日は川魚ですか」
「うむ、ここに妖怪暴食のもののけがおるでの
儂が予(あらかじ)め、湖に入れておった」
「ちょっと!そこの二人!」
かくして今日の陽は暮れゆく…。
感想、アドバイス、質問、ちょっととした要望(健全なものでお願いします)
など受け付けております。
あ、修行編はまだ続きますよ。