… … …。
ハッ!
「あれ…ここは…」
跳ね起きて周りを見回す。
痩せた森に、焚き火に…
そして白髪(しろかみ)の少女が眠っていた。
一応、朝は越せたようだ。
空を見上げると、僅かながらにも木漏れ日が差す。
空も快晴って事かしら。
さて、今日も今日とて、旅の始まりと…。
と、その前に…。
私は白髪の少女に目を向ける。
「まず、起こした方が良いわね。
おきなさい!おきて~!」
私は少女に声をかける。…意外と目を覚まさない。
「…起きて~」
揺すってみる。
手を鳴らしてみる。
軽く顔を叩いてみる。
…起きないなぁ。
多少動きはするが、目が覚めてはいないのは明らかだ。
無断で、食べ物を探しに行くのも悪いと思ったんだけど…。
中々強者ね。起きないわ。
無理に起こす事は出来るとは思う。
でも、私は無理に起こすつもりはない。
何故なら、大抵無理に起こすとコチラが酷い目に会うからだ。
思い返せば天狗のほとんどは中々寝起きが悪かった。
あの経験がまだ恐怖として根付いている。
…でも、起きるまで待つといつになるかわかんないし起こさないとね。
私は少し離れて起こす事にする。
さて、ここから大声出せば流石に起きるでしょう。
じゃ、やるわよ!
私は息を吸い込んで大声をあげる。
「おッ! きッ! てェェェエェェエェェエエエェーッ!」
「あぁもう!うるさい!」
私の顔に火が飛んで来ました。
離れたから良い訳じゃなかった!
「アッチャッ~!!!!?」
□□□
一応、起きてくれたようである。
私の悲鳴で。
「今から食べ物を探してくるわ。何か欲しいものある?」
山だから、取れる物は限られるかもしれないけどね。
「… ここには食べ物なんて無いと思うわ。
10日位居るけど、食べられる物なんて見つからなかった」
「え"」
そ、そんな…!じゃ、じゃあ私、食べられんとですか!?
そげなこっちゃどうすんねん!死ぬで!?
「じゃ、じゃあ、あなたは何食ってたの…!?」
「私?いや、何も食べて無いわ」
す、凄いわ。よく10日間耐え抜いたわね!
私は一食抜くのだって耐えられないって言うのに…。
…ん?あれ?何かおかしくない?
「あの…」
「え?何?」
… … …そういや、名前まだだったんだだっけ。
「えっと私は晄。知ってると思うけど妖怪よ」
「…そう。私は妹紅(もこう)。藤原 妹紅」
藤原…?
ま、それはまず、いいや。
「あなた…人間なの?」
「ッ!!!」
妹紅が体を震わせる。
殺気が、こう感じられる。逆鱗だった…。
怖い、そして…何より興味があった。
「…人間じゃなかったら…何だと思うのよ?」
妹紅が訪ねる。
焚き火に手をかざし、火の力を強めている。
「…あなた、匂いは人間よ?
でも、その身体は人間の代物じゃない…。
さしずめ、元人間ってとこ?」
「… … …」
図星らしい。
半妖とも違う。当然妖怪でもない。
つまりは…あまり妖怪とは縁のない感じ。
「…あなた、仙人でしょう!」
私はまっすぐ指をさす。
知り合いにもいるから、何となくそんな気がする。
まだ修行中らしいけど。元気かな、華仙…。
「そんなんだったら良いのにね…」
違った。
妹紅はやれやれ、と言わんばかりに手を顔に当てた。
むむぅ、違うのか…。
そういや、お腹が空かなくなった。
「じゃ、じゃあ…天人?」
返事は来なかった。
反応からして、違うのだろう。
天人でも差し支え無さそうに見えるのに…。
ほら、全体的に白くてキレイだし。
「…もう、いいでしょう?この話はこれでおしまい。
今回は見逃してあげるから、とっとと消えなさい」
妹紅はどこか遠くを見て言った。
やっぱり、目を私に合わせる事は一切しなかった。
彼女はただただ孤独を望んでいた。
「私は…ただの…人間なのよ。妖怪なんかにはわからないわ」
噛み締める様なかすれた声が突き刺さった。
…わからない。
人間だから…妖怪だから…?
どうして、そこまで妖怪を嫌うのだろう。
そりゃ人間も妖怪も違うけどさ…。
彼女は何かを拒絶し、その先を閉ざしてしまっていた。
妖怪を信頼しろ、なんて言いやしない。
でも彼女は信頼そのものを捨て、希望をも閉ざしてしまっている。
孤独、そして絶望…。
このままこの二つに彼女は立ち向かわねばならない。
…私なら、とても勝てそうにない。
私は、ふとあきひとを思い出した。
あきひとは、自分信頼をする事を捨てようとしていた。
ふとその後ろ姿が重なった。
…助けたい。
そんな孤独な背中なんて見たくない。
私は助けになりたいと思った。
「ねぇ、妹紅」
「まだ、何か用なの?出口なら行き方は教えるわ」
「あなたにしばらく、付き合わさせてもらうわ」
そう言うと目を見開いて、あっけらかんときしていた。
やっぱり驚いてる?
「お断りよ。どっか行きなさい」
「ふふ、私はそのお願いをお断りよ」
妹紅が顔を上げて、私の顔を…いや目を見た。
「…そう、勝手にしてよ。もう」
再びその目は焚き火に戻って行った。
□□□
「出口を知りたいの?」
「うん。外から食料を持ってくるわ。お腹、空いてるでしょ?」
「私の分なんていらないわ」
「そういう訳にもいかないわよ~!
十日間も食べて無いんでしょう?
今、あなたは首の皮一枚で生きてるかも知れないけど
食べなきゃ本当に死んじゃうわよ。と言う訳で強制」
「…~… そ。じゃあ適当に選らんで」
妹紅は相変わらず孤独を欲していた。
でもそういう訳には行かないわよ。残念!
「じゃ、ちょっと待っててね」
「… … … …」
こうして、また新しい仲間が増えた。
ちょっと警戒心はまだあるみたいだけどね。
続く