東方風雲観察誌   作:カップワードル

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また随分間が空いてしまった…。


百八本の逆襲歌 後編

「グルルル…炎なぞ使いおってからに…!!!

貴様から食い殺してくれようぞ!!」

「えぇい、気色悪いわねっ!」

 

百足が唸りをあげ、妹紅へ狙いをつける。

妹紅は逃げながら炎を作り出している。

水分の多い生き物だから、炎は弱点みたい。

打開策は妹紅の炎になる。

 

とは言え、私も黙って見ている訳にはいかない。

いつぞやの時の様にはいかないのよ!

 

 

「後ろはもらった!」

「え!?」

 

突如、後ろから声がした。

避けようとするが、時既に遅し。

 

「まず、一人。炎の小娘はイワナに任せるとするか」

 

この蜘蛛…一体いつの間に!?

そんな事を考えようとした刹那、私は見事に捕まってしまった。

はがいじめの形になってしまった。

 

「ふふ、これで刀は使えまい」

「くっ…!」

 

掴みを解こうとするが、力が強く、元々不利な体勢な為解けそうにもない。

 

「さぁて、いただきます」

 

ゆっくりと後ろに引き摺りこまれてゆく。

最後の最後まで諦めないつもりで

踏ん張るも体はゆっくりと後ろに引きずられる。

 

いや!まだ……終わりたくない!

 

 

「っ!…もう!情けないわね!」

 

妹紅が炎を放つ。それは私を丁度良く避けて…

 

「ぁっづいっ!!!」

 

蜘蛛に命中したのだった。

蜘蛛の力が緩んだので私は急いで振り払う。

 

「ありがとうね!妹…!」

 

そう言おうとした時妹紅には巨大な影が差していた。

 

「妹紅ッ!百足が…!!」

「もう遅い…!!さぁ大人しくせよ小娘…!!」

 

百足から白い霧が吹き出し、そして妹紅を通り過ぎてゆく。

神経毒。以前華仙が受けて、動けなくなったものだった。

妹紅が危な…!

 

「グルルル…!!我、贄となれ…!!!!!!」

 

百足が妹紅に噛みつこうしたその時。

 

「燃ゆる焔に全てを委ねよ!」

「グ…!?」

 

踵を返した妹紅から放たれた炎が百足を包み込む。

 

「ガオォオオォオオオッ…!!!!?」

 

至近距離からの炎を受け百足は激しく燃え盛る。

 

「バカな!あの小娘、毒が効かないのか!?

イワナの毒は長さはともかく確実に一時動けなくなるのに…!?」

 

妹紅は蜘蛛の声を聞き少しうつ向くとまた頭を起こし、蜘蛛を見据える。

「次はあなたよ」

 

どこか冷やかな目が蜘蛛を刺す。

私は呆然とつったっていた。

何が起こったの?いや、何が起こらなかったの(・・・・・・・・・)?

毒の反応が無かった。…それって

 

「凄い!」「ヤバイッ!!」

 

バギィッ!!!

蜘蛛が足で木を折る。

 

蜘蛛が不意に木を妹紅に放り投げる。しめた!これは間合いだわ!

私は地面を蹴り、空を飛ぶ木を斬り裂こうとする。

 

「っと!そうはいくかい!」

 

不意に木が後ろに引く。…うぇ!?

 

「そぅれっ!!!」

 

妹紅と私を木はなぎ払い、一気に吹っ飛ばされてしまう。

とりあえずまたふざけた動きをする木だ。

 

「まだ、こっちにゃ策があるのさ。フフフ、ようやく本気が出せるよ」

 

飛ばされたのはさっきより少し離れた森の中。

仕掛け(・・・)が施してあるのは想定がつくも、どう施してあるかは想定出来ない。

蜘蛛の姿ももう見えない。一寸先は闇だ。

 

「妹紅、注意して」

「そっちもね」

 

緊張が続く。

しかし辺りには静寂が満ち、何も起こり得ないとすら思わさせられる。

 

「グルル…!!小娘ェエェエェエエエッ…!!!」

後ろから百足の声が響く。

ほぼ丸焼きになったのに…!しぶとすぎ…。

私達は百足に備え時を待つ。

 

「あッ!バカッ入るな!!!」

「グ!?グヌオォオンッ…!!」

 

不意に百足が宙に投げ出された。

 

「ヤマメェッ!どういうつもりだァッ…!?」

「どうもこうも…

どうしてあんたって奴ァこう馬鹿ばかりしてくれるんだいっ!?」

「オノレェ…こんな糸、今すぐ千切ってくれる…!」

「ぐぐぐ…その口をまず閉じろ!」

 

岩がどこかで飛ぶ。

…協調性皆無ね、向こうの陣は。少し哀れに思ひまする。

それはそうと、『糸』ね。パッと見ではわからないけど

きっと縦横無尽に張り巡らされているに違い無いわね。

 

「妹紅…気を付け…あ」

何かが足に引っ掛かった。

息をする間も無く体が空中に投げ出された。

 

して、見事吊り上げられちゃいましたわ。ウフフ。

 

「妹紅、この罠は糸に引っ掛かった瞬間打ち上げられる罠よ!」

「…見りゃわかるわよ」

 

恥ずかしいので、状況説明して誤魔化してみました。

 

「今助けてあげるわ」

 

炎を作り、私にかざす妹紅。

え、いやそのちょっと待って。

 

「よせ!そんな事したら火事になっちまうぞ!?」

 

蜘蛛が慌てて出てきた。

糸の振動でも感じたのか、正確に近づいてきていた様だ。

危ないわね…。

 

「その台詞、前にも聞いたわね」

「いやいやいやいや、ちょっと待って妹…」

「こうすりゃあ良いのよ!」

 

妹紅から放たれたのは札。

蜘蛛へめがけ、規則正しく飛んでゆく。

そして張り付く。

 

「ぐおっ!!?あっづいッ!!?」

 

あの札は…。

そうだ、私が妖力を吸いとられたお札だ。

妖力を吸いとる…つまり相手の技のいくつかを封じ、体力も落とした!

 

「ようやくトドメね!」

「まだまださ!喰らえ!」

蜘蛛から白く丸い球のついた糸が飛ぶ。

 

「ッ!?」

それは妹紅の服にしっかりとくっつく。

 

「おねんねしてなっ!」

「キャッ…」

 

妹紅の体が宙を舞い木に打ち付けられる。

そうか、あの球…凄くくっつくのね。それでさっきの木も…。

成果を試せるとか言ってたけど、私とかなり違う性質の相手だわ。

まず、接近戦も難しい。とは言え妖力も森の中じゃ撃ちにくい。

剣風飛ばしたら角度的に木が倒れる…。

オマケにそこら中に仕掛け(・・・)があって迂闊に動けない、か。

…強い。

 

あれ、蜘蛛ってどうやってここまで来たのかしら?

仕掛けまみれの森の中で引っ掛からずに動けた…?

蜘蛛に何やら鍵がありそうね。

 

「やれやれ、苦労ばかり起こるねぇ。だがこれで「また苦労かけるわよ!」

 

なっ!?」

 

私は糸にぶら下がりながら蜘蛛を捕まえ、放り投げる。

 

…見えた!

 

蜘蛛からは糸が一本伸びていた。

つまりあの糸が座標を正確に知る手掛かり…!

って私達には糸があっても座標わからないじゃない。

ちょっとがっかりしてしまう。

 

しばらく、蜘蛛が飛ぶと途中でまた空中に体を投げ出される。

「ッアー!!?しまった!!」

 

蜘蛛が蜘蛛の糸に引っ掛かる。

つまり、蜘蛛も糸には引っ掛かるらしい。

 

「好機ね。覚悟なさい!」

 

妹紅が駆け寄ろうとする。

しかし、それはまずい!罠が!私は声をあげた。

 

「待って!罠が…!!」

「っと!でもこれじゃあ何も出来ないわ!」

 

確かに…。蜘蛛にふと目をやると

思いっきり糸を引っ張って千切ろうとしていた。

…そんな外し方なの?

でも無理矢理は保留ね。やりたくないし。

 

仕掛け糸に何か目印でも付けられれば…。

私はふと空を見る。厚い雲が心地良く流れていた。

 

 

 

 

 

…あ、空ね。

いや、でも私の能力は全然制御出来ないし…。

 

…賭けて見ようかしら?

何も起こらなきゃ起こらないで

終わりなんだからやって見る価値はあるわね!

 

「… … … …」

 

私は意識を空へ送る。

風を流して…雨雲さえ呼べれば…!

 

その瞬間、頭のに中に電撃が走った。

 

頭の中の扉が今、開いた…そんな気がした。

 

「雨雲を流せ!」

 

雲が勢い良く流れたかと思うと黒い雲が流れて来た。

そして間もなく…。

 

「あ…雨?」

「何!?く…!」

 

雨が森を包む。水の粒が地上へと幾つも降り立つ。

しばらくすると雨が引き、太陽が森を覗く。

 

「これが…私の能力…?」

 

「…へぇ、洒落た導きね」

妹紅が呟く。

あらゆる糸に雨粒が伝っている。見事、目印がついた訳だ。

 

地面を見ると大きな穴に雨がたまっている。

隠れどころもついでに抑えられたみたい。

 

 

「うっ…」

そろそろ頭に血が登りそうなのでなんとかしないと…!!

一生懸命足掻くが、何とも無情にぶらーんとする私。空しい。

 

「ところでずっとぶら下がってるみたいだけど大丈夫なの?」

「大丈夫じゃない…です…」

「刀、借りるわよ」

 

妹紅が刀を抜き、糸を斬る!ありがたい。

 

でもついでに受け止めてくれても良いと思うんですよ。

 

「いたっ!」

「それくらいは平気でしょ?」

「…まぁね。うっ…クラクラする…」

 

ぼぅっとしてきたが、このまま寝るのはまずい。

蜘蛛を何とかしなければ…。私は頭を起こし蜘蛛を見る。

 

 

 

 

「あぁ~降参!降参よ!」

蜘蛛が大きく叫んだ。

「「え?」」

「ここまで手の内がバレたら

もうこっちは勝ち目なんてないじゃないか」

蜘蛛はすごすごとこちらによって来た。

糸に足を引き摺られながら。

 

「嘘つきなさい。そう言ってまだやる気でしょ」

妹紅がくってかかるが、蜘蛛はもう意気消沈してぐったりとしていた。

「毒も効かない、仕掛け糸も丸見え、穴も水浸し、ここまで手の内が駄目にされちゃあ

流石にもう戦う気なんて起きないさ。まぁ、あの馬鹿は知らんがね」

 

蜘蛛は笑いながら話す。

 

「さ、トドメを刺しな。それが勝者の特権さね」

あっけらかんと蜘蛛はそういった。

「え…?」

「そうね、じゃあ…」

妹紅が炎を作り出す。

 

「ちょっと待って」

妹紅を止める。私はちょっと気になる事があったのだ。

 

「…かばいだてするの?」

「まさか、ちょっと聞きたい事があるのよ」

 

「…何だい?」

「どうして私達を襲ったの?

百足はまだしもあなたは関係無い様に思えるけど…」

蜘蛛はちょっと渋い顔をして答えた。

「お腹、減ってたからねぇ…。そこにアイツが通り掛かったんだ。

アイツがそこまで真剣になるって絶対餌だろう?だから横取りしようかなってさ」

「聞き捨てならんな…!」

 

復活してるし…。百足の声が聞こえて来た。

 

「グルル…小娘ども、覚えておれ…ついでにヤマメもなァ…!!!」

そう言ったかと思うと音が遠ざかって行った。

 

「野郎…まぁいいや。って言う訳さ。わかったかい?」

 

空腹か…それなら仕方ないね。

「空腹か…それなら仕方ないね」

心と体が完全に同化した瞬間である。

私は何だか哀れになって来た。

 

「あのさ…今、私あんたが何考えてるのか全然わかんないんだけど」

あー聞こえない聞こえなーい。

私は先程まで居た場所から魚を持ち出してくる。

 

「はい、どうぞ」

 

差し出してみる。

 

「いやいや何考えてるのよ!?」

「食べさせるの」

「「え!?」」

 

そこまで驚く事だろうか。とか思う。

妹紅や蜘蛛を見る。え、驚きます?

 

「そ、そりぁ嬉しいけどねぇ…。いいのかい?」

「まぁ、予備の奴だから良いわよ。あ、魚喰えない?」

「食った事は無いが…旨そうだねぇ」

「じゃあ食べなさいな」

「…正気?」

「正気も正気よ。あと気紛れ。

ほら、昼間の蜘蛛は殺すなって言わない?」

「はぁ!?色々考えられないよ」

 

その隣で蜘蛛が魚をたいらげる。

蜘蛛が魚を食べるところを初めて見た。

 

「…旨いもんだねぇ…。

ありがとうね、この味と恩は地獄に行っても忘れやしないよ」

「さっき言ったでしょう?殺したりしないわよ」

「あ?」

「別に私達に酷い怪我も無いし、

戦意を喪失した相手を殺したりはしないわ。

それにちゃんと話し合える以上、無意味に殺しても無意味だし。

ま、ただ、一つ条件があるけどね」

「…?

そりゃあ何だい?」

 

あっけらかんとする蜘蛛と妹紅。

別に気が狂っている訳でも、疲れているからでもない。

…ただ無意味と思ったから私はこうした。

 

「今後は正々堂々、殺しは抜きで戦う事よ」

「…へぇあんたには何かそれで利があるのかい?」

「利ねぇ…殺し合いがもう起こらない事かな」

「そうかい…ハハハ!参ったねぇ!

わかったよその条件飲まさせてもらうとするよ!」

蜘蛛は笑いながら姿を変えて行く。やがて人に近い姿を取った。

 

「もう一度紹介しとくよ、私は黒谷ヤマメさ」

「私は崇徳 晄よ」

「… … …藤原 妹紅」

「じゃあこの恩は忘れないよ。糸回収してから行くから…じゃあね!」

 

 

続く




逆襲歌編完!
二章もあとわずかになりました。
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