凄く読みにくく書いてます。
「羅刹の国からやってきたァ~!大鬼命守ここにあり~!
悪鬼成敗!勧善懲悪!一鬼倒千!綱紀粛正!八方不滅の女ゆく~!
天下無双の闘技にて~正義の鉄槌打ち下す~!
流れ、流され流浪の旅よ~。幸か不幸か果て見えぬ~
さすらい大鬼今日も行く~!正義の七武具引っ提げて~!
浮き世に旋風巻き起こせ~!」
□□□
森を進んで幾千里、果ては見えず、緑が深い。
拙者森は不得意とする。
何故ならば、蟲が…否、武器が届きにくいからである。
それ故に、一刻も早く森を抜け光を浴びようと右往左往、
縦横無尽に散策している訳なのであるが…
如何せん目印も無ければ方位も危うい。
一重に森とは馬鹿に出来ぬものなのだ。身を持って証する。
腹の空きようとくれば、いよいよ底が見えて来た。
食べ物と来てもろくな物は無く、果ては敵の姿ばかりが目に写る。
戦とは腹満ちずして成し得ぬものだ。
と言うのに敵方はそれを露知らず不意打ち影打ち滅多打ちと来る。
この身とて、数は一つ。尽きればそこで天を昇る。
「ちょっとここは永久に入山禁止よ?勝手に入ってもらったらこま…」
刹那!目前に現わる、天狗に息を飲む。
武具を引き、居合いを合わせ、腰を落とす。
「…鬼様!?あっ…いやっ…そのっ…警備は快調であります!」
ふと武具を置く。何を見違えたか?いや拙者鬼には違い無いが。
どこの馬の骨とも知れぬ我等、武器を重ね合おうとも
頭を下げられる覚えは微塵たりとてないのである。
「おぬしは…何者でござろうか?」
「えっ!?わ、私、射命丸 文と申します!
疾風の文と呼ばれています!」
「む~…そうか文殿だな?恥を忍び一つ頼みたい」
「はい、なんでしょうか」
「食べ物を分けてくださらんだろうか?やや、少しで構わぬぞ!」
「食べ物…ですか?わかりました。では特急で御持ちします!」
刹那!強風が立つ。
が、しかして何者にあろうかあの天狗は。
身に覚えは無いが、腕には覚えがありそうだ。
…天狗。以前、仙人と組んだ天狗を見たが、アレは違う。
見て聞くに、全く違う。縁も所縁もあるまいて。
「お持ちしました!熊肉と地酒『大地割り』です」
刹那!また強風を連れて天狗は現れた。
熊肉と地酒…とな?明らか、人の食い物には見ぬ物だ。
果たして食えるのか…?
「や、すまぬな。戻っていて欲しい」
「では、また御用がありましたならば…」
刹那!強風を巻き起こす天狗!
残されるのは拙者と熊肉と地酒…。食うしかあるまい。
腰を据え、熊肉を千切って貪る。これは…少し臭みが…。
米と魚を食べてばかりいた拙者に
とって何ともそれは形容し難い味であった。如何にこれを食せば良いのか。
…ふと地面に目をやれば、地酒が仁王立ちしている。
『さぁ、私共に熊を食せ!命守よ!』
と雄叫びあげんばかりに鈍く偉光を放つ。
しかしてそれは困った。拙者酔いが早く、オマケに悪いのだ。
「えぇいっ!ままよ!」
拙者は肉と酒と森と格闘を繰り広げる。
正に酒池肉林!…や違うが。浅き夢見て泥酔せり。
拙者の目を暖かな暗幕が覆う。
いざ!夢の国へ…。
□□□
恥ずかしながら、夢の国より舞い戻った次第。
もう天上は闇に染まり、深き闇が天地を支配する。
景色が揺らぐ、未だ拙者の体は夢紀行なのか。
して、体の芯が熱い!何か、この熱を冷ますとすれば…戦い!
それしかあるまい!拙者は昂る体と共に、森を駆け抜ける。
ふと天を仰げば、満月と星達が美しく空を飾る。
涼やかな風を受け熱き体が気持ちよい。
「良い月だねぇ…月見をするにゃこう言う夜に限る」
誰かの声…。拙者は人の声を聞き、即座にその方へあしを向ける。
何処なのか、何をするのか、相手が誰なのか?
そんな事は一向に構わない。
「…へぇ、騒がしい十五夜だねぇ」
その先には平原と大きな湖。
そしてそこには長くねじれた大きな角を生やした少女がいた。
「お主…一体何者だ?」
「私か?私は鬼の四天王、伊吹。そのなりを見るに鬼かい?」
拙者はその小さな口から放たれた言葉が信用出来なかった。
鬼の四天王?
この様な幼子が?拙者は思わず笑った。
「…何か可笑しいかい?」
「そのナリで、悪鬼共を従えると申すからだ」
「あんたはそこからしか私を見れていないのか…。
お前も鬼であるなら、鬼が嘘をつかないのは知ってるだろう?」
この時、愚かと知るべきだった。
酔いは常識を狂わせる。何もが滑稽に見えたのだ。
「否!鬼が嘘をつかぬとは言え、例外もおろう?」
「…あまり気分の良くない話だねぇ。
月があんなに綺麗なんだ、今宵は血なぞ見たくはないね」
「と言うと、逃げるのか?」
「無駄な戦と己の名誉の戦ほどくだらんものは無いよ。とっとと消えな」
「悪鬼四天王とあらば腕は立つだろうて。拙者にその腕立たせてみんか?」
「そうか、あんたは戦いに来たって訳かい。
それならそうと最初から言えばいいのに…。
すっかり私ァ機嫌が悪くなっちまったよ!!!」
大地が唸りをあげる。
拙者は何もわからない。あの鬼が、拙者より強い事も。
「それでこそ!拙者とて易々と敗れんぞ?」
「話ァもういい。かかって来いよ…!!!」
七武具、鬼刀(おにがたな)を引く。
言葉に甘えさせてもらい、その太刀を振るう。
「どうしたい!そのへっぴり腰は!」
白刃取り。しかしとんでも無い力でこちらの刀が寸分とも動かない。
どうしたものか、足も手も全く動かない。
「それっ!」
刹那!不意に意識が虚ろになる。御腹の感覚が無い。
白く小さな腕が御腹に伸びていた。
ふとすると、灼熱に等しき痛みが体を走る。
「な…何と…!?」
酔いも意識も一気に吹っ飛ぶ強烈な一撃。
四天王に確信持つもそれはすでに遅く。
熊に睨まれる、狼の如く関係は明白な物となった。
拙者は勝てない。手を出してはならぬ相手だったのだ…!
「顔が蒼いが、二日酔いか?
生憎私はいつもほろ酔い千鳥足なもんでね。慣れてるね。二日酔い」
「… … …」
声が出ない。絞り出せもしない。
陽気に相手は笑っているだけ。引かぬ痛みに耐えつつ武具を抜く。
「そいつは…魔戦斧か。
支給品ごときじゃたかが知れるが…まぁかかって来な!」
拙者は全力をもって打ち伏せる。
しかし手応えは無い。
「取った!じゃあな!」
斧を片手でつかんだあと斧ごと体を投げつけられる。
笑うか。
不甲斐ない拙者を。して、『鬼の四天王の強さ』を。
敵わぬ。一傷とて立たぬ。
「もう終わりか?立って見せろ。
この程度、準備運動にもならん!」
彼方から、怒号が響く。
拙者は何を見ているのか、わからない。
しかし立たねば死ぬ、立っても死ぬ。
ならば…立って死ぬか。
拙者は破れかぶれに鎚を振るう。何度も何度も…。
しかしそれは当たることは無い。
「…いいや。飽きた。
無理はしないことだね。あんたと私じゃ戦いにならない」
さっきとはうってかわり、淡々と終戦を告げる。
何…!?
「拙者はまだ、負けぬ…!!!」
「まだ、ね。
わかってるじゃないか。あんた自身がさ。
『負ける』ってね」
「!!!!!」
「まぁそういう事。
何処へなりともいってらっしゃい」
無情。そうとしか思えないのだ。
ただ相手と拙者に圧倒的な差があると言う真実しかない。
拙者が何も出来ぬ程の。
「…次は…」
「次、か?」
背筋が凍てつく。言えぬ。否、言う。
このままでは終わらぬと。
「次は負けぬぞ…」
「そう、楽しみにしてるわ。
いつかまた…ね。こっちは目処がつかないけど」
「失礼…した…」
重い体を引き摺り、拙者は足を進める。
後ろを振り返らず、ただひたすら。
この敗北こそが、拙者を帰る大きな白羽となったのだ。
空を見れば大きな月と星ヶが、拙者を笑っていた。
続くのか?