私(もこう)にはわからない。
いや、理解出来ない。敵を生かす、
おろか、許してしまうだなんて。
「あ、ねぇヤマメ」
「なんだい?」
「貴女ってこの森の外から来たんでしょ?だったら道案内頼めるかしら?」
「そりゃああんたも同じじゃないのかい?
この糸は実は森の外に繋がってる。じゃあちょっと食べながら道案内するよ」
「食べる?糸を!?」
「そうさね。もったいないだろう?」
敵…それは燃やし尽くすものだ。
そう、憎きあの女と同じく、業火に包むべきなのだ。
だが、この妖怪は何を言っている?
許す?それが妖怪の流儀なのか?理解出来ない。
『許す』
いつ以来、そんな甘い言葉を聞いだろう?
「妹紅?口開けて無いで、早く行きましょう?」
「…どうして?」
「え?どうして?…何が?」
妖怪は至極不思議そうな顔をした。
何から何まで理解できなかった。
「そもそも…私があなたに着いていく理由なんて無いのよ」
「え?…友達だからよ。仲間でもいいけどね」
妖怪はニッコリと笑った。
何時仲間になったのだろう。頭の中が疑問符に満ちた。
「友達でも…仲間でもないわよ、私は」
「さっき一緒に戦ってあまつさえ私を助けてくれたでしょ?
飯も一緒に食べたし。じゃあ戦友?ちょっと何かゴツくない?」
「助られた恩って言うつもり?協力したから友達だって言うの?」
「…難しい事言うわね…。
んー単純に私はあなたの事気に入ってるから友達だったらいいなって…。
…もしかして嫌?」
「嫌じゃ…無いけど」
「じゃあこうしましょう。今から友達になるために握手しましょ?
それで嫌なら…握手はしなくていいわ」
そう言って妖怪は手を差し出した。
私と同じ、白くて細い手だった。
私はゆっくりと手を差し出した。
ゆっくりと手を握ってみる。
「じゃあ今から友達…って事で良いわよね?」
私はボーッとしつつも頭を傾けていた。
妖怪は笑って握り返して来た。
「それじゃあ改めて…私は崇徳晄よ」
「私は…藤原妹紅…」
妖怪と…友達?正気じゃないわ。
有り得ない事だと、頭の中で警鐘がなり続けている。
でも、私はその手を離す事は無かった。
「さて、こんなもんかね。さ、行くよ!」
「わかったわ!じゃあ行きましょ?ここにてもただ苦しいだけだわ」
ヤマメの声を聞き、晄がそう言った。
失われた時が、少しずつ動き始めた。
■■■
やっぱり、嫌だったのかなぁ…?
妹紅を見て私(あきら)はそう思った。強引過ぎたかしら…?
妹紅の顔は笑う顔と信じられない、と言う顔の中間の顔をしていた。
何となく、我が弟を思い浮かべた。
…あれ?何かもう軽く十年以上経ってない?
ヴァアァアアアァアァアアッ!!!
多分今、日本最大の悲鳴を心の中でした。
どどど、どうしよう!あ、そうだ!今から会いに行けば良いじゃん?
「…どうしたよ。天狗の姉さん、そこは全く別の方向だけど?」
「本当、どうしたの?代わりにあなたが残るの?」
「あ、いやいやそのさ…。ねぇヤマメ!もっと早く出られないの!?」
「お…落ち着きなよ。そんな事が出来てたらとっくにやってるさね
何せしおり糸の通りに動いてんだからさ。時間はかかるよ」
「そ、そう…」
がっくりと肩を落とす。
そもそもここがどこかもわからなかったりするし。
「…どうしたのよ?さっきから変だけど」
「い、いやね。家族が待ってるかもしれないなぁってさ…」
「家族ねぇ…さしずめ姉弟ってとこかい?」
「あら、よくわかったわね」
「あんたの姉弟だろ?どっかで強く生きてんじゃないのかい?」
「…だと良いけど」
意外にヤマメは人が良い。
止まっていても咎めなりしないし。
そうね、焦り過ぎたかも。
私は少し安心した気がする。それが例え気休めであったとしても。
「家族…か」
妹紅が何か呟いた。
「え?何?」
「なんでも…ないわ。さ、早く行きましょ」
「そうさね。焦ったところで余計絡まるだけさ」
「「… … …」」
蜘蛛冗談、いただきました。
□□□
「ふぅ、着いたわね」
「そうね」
「そいじゃああたしは失礼するよ。
次に会う時は精々頑張る事だねぇ。ハッハッハッハッ!!」
ヤマメは岩に糸をつけて跳んでいった。
お礼(れい)、言い忘れたわ…。次に会う時はお札(ふだ)で返しましょうか。
「妹紅はどうするの?どこか行きたい所ある?」
「特に無いけど…?」
「じゃあちょっと行きたいところが有るんだけど…」
「それでさっき焦ってたんでしょ?別に私は良いわよ」
妹紅がやれやれと言う顔だが付き合ってくれるみたい。
持つべきものは友達ね!
「そう!ありがとう!じゃあ京の城まで行きましょう!」
「そう、京の城に行くの?じゃあ京の城まで行きましょうか
えッ!!!???」
顔色を一気に変える妹紅。その顔は鬼気迫るものがある。
見つめないでほしい…。
「あ、あなた、城の…帝(みかど)の関係者の関係者なの!?」
「うーんと…帝の姉の崇徳晄です。よろしくお願いします」
血縁関係こそ無いけど、関係は姉弟同然よね。
私はちょっと畏(かしこ)まって言ってみた訳だ。
しかしそれは直接受け取られてしまった。
そんな訳無いでしょ的な反応を期待してたけど。
「そう…貴女も何か過去に罪があって妖怪になったのね?
「違っ…」道理で妖怪らしく無いのね。なるほど…ね」
説明不可能。
妹紅は腕を組み、勝手に納得されてしまった。
多分私が実姉で、悪行を働いて天狗になったとか思ってるんだろう。
しかし私は純粋な妖怪なのである。烏が妖怪になっただけだけど。
妖怪らしくないとは、ちょっと衝撃的。
いや別に気にしないけど…。
「まぁ…血縁関係は無いけどね」
「腹違い…と言う訳ね?」
そういう意味じゃない。
と冷やかな目で見るも全く、見えていないようだ。
どこか遠くを見て彼女はこう呟いた。
「あなたも…憎いのね?」
「憎い?」
「…それが何かは私は知らないけど」
妹紅は何かを探している。ずっと何か深いものを…。
それは憎しみを紛らわす何かだろう。
…私には彼女がそれで救われる様には見えなかった。
「じゃあ…行く?」
「う、うん行きましよ」
「「いざ、京へ!!」
続く。
ザ・勘違い。
さて次回二章ラストです。長かったなぁ…。
全部纏めると少なくなりますけどね!(爆)