す…すごい!今僕飛んでるよ!
鳥(とり)と一緒に!晄と一緒に!
もうあんなに城が小さい……。
山もあんなに小さくなってる!
周りを見ると全てが小さくて僕の手に収まる位だった。
それにしても風が気持ちいいなぁ!
空を飛ぶって凄いなぁ…。感動!
「あんまりバタバタしたら落ちるわよ!」
「!!」
掴まる手足の力を強める。
あぶないあぶない!この高さから落ちたら…
うぅ…想像したくないなぁ…。
「さて大分離れたわねぇ。
どこか行きたい場所ある?あきひと!」
「う~んとねあの山!」
「良し来た!じゃあしっかりつかまりなさいよ!」
晄の速度がどんどん上が…うわ…うわわわわわぶ!
晄がいきなり急降下を始めたのでかなり息がきつくなった…。
空は凄くて怖い。略して凄く怖い。
■■■
降りて来たら何故か背中であきひとが息切れ切れだった。
「どうしたの?」
「もっとゆっくり降りて…息が…」
あきひとが息切れ切れに言う。
急降下がどうやらまずかったらしい。
良く持ったわねぇ。
「さて、あきひと!山についたわよ!」
「えっ!」
あきひとが驚き、周りを見回す。
ここは来た事無いのかしら?
「ねぇねぇ晄!あれは何?」
あきひとが例の輝く瞳でこちらに問う。
くっ、眩しい…とか思いつつあきひとの持つ物を見てみる。
ん?これは松茸かしら?
「これは多分松茸ね」
「松茸?」
「キノコの一種よ。歯応えがあっとってもて美味しいのよ!」
「そうなの!?」
もっともこれは天狗の味覚だから人間はどうなのかしら…。
「じゃああの気に生えてるあれは?」
「猿の腰掛けね」
「猿の腰掛け?」
「ほら猿が腰掛るのに丁度良さそうでしょ?」
「なるほど!」
しきりに色々な事を聞いてくるあきひと。
例の輝く眼(まなこ)で見てくるから破壊力が半端じゃないわ…。
くっ…まっ…眩しい!!
「蟲(むし)がいっぱいいるね!」
「そうね~」
「ねぇ晄!これは何?」
「カブトムシね」
「じゃあこれは!?」
「クワガタムシよ」
興味津々に聞いてくるあきひと。
童はやっぱり蟲好きなのかしら?
何をしても喜ぶ様を見るとこっちもつい頬が緩むわ~。
「ねぇあきら!この油っぽくてヒゲの長い蟲は!?」
「ん?それは御器かぶ…り… …」
!!!!!!!!!!
■■■
何故か晄が白くなって固まっちゃった。
黒く長い髪まで白くなって空中に浮いてる…。
うーむ、この蟲油っぽいな。とっとと放そう。
にしても山は凄いなぁ!
色々な蟲がいるし、空気が綺麗だし、森がとっても良い!
とっても良い?うぅん、上手く言えないや。
とにかく山は凄いなぁ!もっと色々見てみよう!!
好奇心のまま僕は走り抜けた!
■■■
…
……
………はっ!
私は一体何を…確かあきひとが私に…御器かぶ…
いや何も見なかったのよ!そうよ!そんな蟲なんていなかったんだわ!!
あぁ嫌な夢だった。白日夢なんてきっと私は疲れているんだわ~。
はっはっはっ…
あれ?あきひとは?
見回して見るとあきひとの姿がない。
「晄~!!」
っと!いつの間にか見失ってるじゃない!!
早く見つけないと…。
・・・ーほう…人間の童か?
「っ!!?」
妖怪に見つかる!!
■■■
晄遅いなぁ。あのまま固まってるのかな?
にしてもこの辺はなんだか小さな穴がたくさんあるけど何かの巣?
手を入れて探って見る。
ガサガサ…
「何も無いなぁ。一体何の穴…」
「童の墓穴ぞ」
「!!!!」
■■■
くっ、目を放した私がバカだった!
山の中で童一人歩かせちゃあ絶好の妖怪の餌じゃない!
「心配するな童ェ…お前は儂(わし)が美味しくいただいてくれる!」
あれは大百足(おおむかで)!?
腰を抜かしたあきひとの前に大百足が…!
くっ急いであきひとを助けないと…!!
「ちょっと待ったァ!!」
大百足の頭に私の蹴りが当たる。その蹴りで大百足が吹っ飛ぶ。
「ぬおぉっ!?何奴…!!」
「その童を食べるのはちょっと待ってもらうわよ!」
「おのれ…!儂の食事を邪魔するでない!!」
大百足が何かを吐き出す。
さしずめ神経毒って所でしょうけど…
「当たらなければ良いッ!!」
腹に飛んで来た吐き出た液体をうまくかわす。
「残念!はずれ!」
「グヌヌゥ…おのれぇ…!」
百足が頭を振り回しつつ叫ぶ。
ムキになってるわね。そのままどんどんムキになりなさい。
あきひとから目がそれるまで、ね…!
「グガガガガ…貴様も妖怪の分際で何故邪魔をするか…!!」
「知れた事!この童には先に私が目をつけていたのよ!」
勿論食べないわよ?
「独り占めする気か…!」
「そっちもでしょうが!」
「ならば貴様から潰してくれる…!!」
体を完全にこちらに向けた大百足。
完全にこっちにそれたわね。
じゃあ適当にあしらってとっとと撒きましょう!
■■■
「……こ…これは!?」
晄があの巨大な大百足の化物と戦っていた。
晄の凄い速さの蹴りが相手を吹き飛ばす。
晄の表情が険しくなり、大百足を睨み付ける。
僕は…ただ怖くて、動く事ができなかった…。
■■■
さて、硬い甲殻には蹴っても一傷としてつきゃしない。
本当に厄介ね…。
でも倒す事が目的じゃないのが救いだわ。
あきひとは…無事みたいね。じゃあさっさと行きましょうか!
私は腰を落とし、飛び出せる体勢を取る。
「グヌッ!?」
あきひとに高速で近づき回収!
よし!あきひと確保!
「とっとずらかるわよ!!」
「おのれぇ…!!!待てぇ天狗…!!!」
力の続く限り、そこから逃げる。
幾多もの木をかいくぐりつつ森を抜ける。
ぶつからずに逃げるのは至難だけどやるしかなかと!
□□□
後ろには大百足はもういなかった。
よし!撒いたわね!
「やれやれ…危なかった…」
「…………」
あきひとが口も目もどこかおぼろげだ。
「あら?どうしたの?」
「………あり…がとう…かな?」
「ふぅ。どういたしまして!」
さて、川が見えて来たわ。
ここなら場所も開けてるし大丈夫でしょう。多分。
やれ、一休みしましょうかね~。
「さて、あきひと。これから山に行く時は私から離れない様に!」
「…うん」
「ん~?さっきからなんか元気無いわねぇ?どうしたの?」
「…怖かった」
まだ腰を抜かしているらしい。
いまだに目が白黒している。
私もさすがにアレには肝を冷やしたわ~…。
「でもまぁあきひと!今度来ても私が何とかするから
大丈夫よ!だから大船に乗った気持ちでいなさい!」
…と言っても私はどう逃がすか、って事しかできないけどさ。
「…うん!」
「いい返事ね!」
「あの…」
「ん?」
「川の上の方に行きたい」
「わかったわ。じゃあ早速出発ね!」
「うん!」
さて、再び探険開始ね!
□□□
「あれ?どうしたの?」
あきひとが歩いている最中、いきなり立ち止まった。
「水の流れが綺麗だなぁ…」
川にあきひとは釘付けである。
川が綺麗、じゃないのね。
こんなに綺麗で深いと河童でもいるかしら?
でも流れが強くて流れそうね…。
それこそ河童の川流れだわ。
それにしてもこの川綺麗ねぇ。水が美味しそうね。
ちょっとすくって飲んでみたくなった。
「よーし、いただきます!」
ん?あきひとはもう水を飲んでるみたいね。
「おいしい…!これいつも僕が飲んでる水とは大違いだ…!」
あきひとが顔色を変えて感動している。
川の水は確かに美味しいわよね。特に上流の水は。
とかなんとか考えてる内に上流の滝についてしまった。
「うわぁ…凄い…」
「危ないから注意しなさいよ~!」
聞いてる?なんだかあきひとは完全に滝に夢中である。
確かに滝は見てて飽きないけど…。でも流石に危ないわ…。
「本当…本当に…凄いなぁ…」
一つ一つの語に詰まりがあった。
何か考えているのかしら…?
「ん~それにしても涼しいわね~…」
「そうね~」
「いやいや本当…え?」
「ん?」
チャポン…
川に目をやってみると姿は無かった。
何か居た。今絶対何か居た。
チャポン
「あの~天狗の皆さんが探してましたよ」
「え」
え。あ。そうだたー。たわし、あやからにげてたずらー…。
訳:え "あ "そうだった。私文から逃げたんだった。
か…顔がこ…こうアレよ。凍り付くわ…。
「じゃそういうことで…」
チャポン…
河童は川の中に消えて行った…。
… … …きっと今の私の顔は真っ青なのに違いない。
あの河童のおかげで思い出した…!
あ…あきひとを城に帰してとっと山に帰らんとまずか!
「あ、あきひと~!!」
「う、うわ!何晄!?」
「急用を思い出したから今すぐ帰るわよ!」
「え、え?」
うろたえる気持ちはわかる。
しかしこんな事はしていられないのよ!
「さぁ!さぁ早く肩に乗って!」
「う、うん」
「しっかりつかまるのよ!」
「うわぁあああぁぁ!!速い!速いって晄ぁぁぁあぁっ!!」
悲鳴が聞こえるが気にしない。気にしないわ。
「あ、どうだった?山巡りは?」
「う、うん楽しかぶぶぶ」
「口、あんまり開けない方がいいわよ…
あ、そろそろね!」
城が見えて来た。
「は…はやいね」
「そりゃあとばしたからね」
「おかげで息が…」
「さて今度は降りるわよ?」
「ハッ」
フフ、もう遅いわ!
「うわぁぁああああぁぁあ!
ん?」
「ほい到着」
「あ…あれ?」
「息は苦しかった?」
「い、いや…?」
あきひとがあっけにとられている。
「今度からは気を付けるわ」
「そ…そう」
「じゃあね!あきひと!」
あきひとを置いて、飛びたつ。
山へ急ぐ。多分今から行けば…!!
■■■
「じゃあね!あきひと!」
そういって晄はまた何処かに飛んでいってしまった。
…あ!もう午後だ!急いで爺やの所に行かなきゃ!
■■■
「ぬおおお!?あきひと様!一体どちらへ!?」
「え~っと山を…」
「山!?」
「う…うん」
「はぁ…探しましたぞ。
一体どれほど探したことやら…
おやおや…もうすっかり汚れてしまって…
まずは着替えからですぞ!」
「う…うん。
あ!そうだ!これ…」
「ぬ?これは…松茸?これはまた良い物を見つけられましたな。
今夜の食事はコレを振る舞ってもらいましょう。
きっとおいしいですぞ!
…ささ御着替えの方を!」
「うん!」
「やれやれ…この老いぼれ、どれだけ心配した事やら…
ん?…烏(からす)の羽?はて…こんな町中に…?」
■■■
と言うわけで我、麗しく、恐ろしい天狗の山に帰って来た。
…本当はすぐ帰るつもりだったんだけどね…。
「………あ、晄ァ!!!」
文の目が…目が怖いです。
あれはまさに、鬼の瞳ッ…!!
「うわわわ!あ、文!」
「飯綱様からお話(・・)があるみたいよ…?」
「ほ!!!」
文がもうめちゃくちゃ怖いです…。
で、飯綱様はもっと怖いです…。いや本当。
こ…このままでは三枚おろしにされてしまう…!
誰か…た…たすけ
「晄ァァアアアァァアッ!!!!!!!!!」
私の叫びは届かなかった。
いや悲鳴が届いたかも知れない。
続く