「…む、料理って…中々難しいわね」
妹紅は炎を見つつ釜とにらめっこしている。
『料理なんて焼けばなんとかなるんじゃないの?』
と言う料理人泣かせの一言をぼやいたので
私が知る限りの料理を教えている。
毒も彼女には大した効果が無いとは言え
毒キノコやら毒草ばかり食べるのは常識的に
やばいのでは無いだろうか?
「…晄、このあとどうすれば良いの?」
「ん~…もうちょっとで湯気が上がるから、その時に畳み掛けるわよ!」
妹紅は料理の心を全く知らない。右も左も感も無いのだ。
その為、行為一つ一つの匙加減もよくわかっていない。
私を見て何とか雰囲気を掴もうと必死である。
私も美喰の手伝いと言う名の苦行を通して学んだ節があるので、
料理の手がおぼつかないのは仕方がないと思う。
ほら、思い出すと美喰の叱り声と「作り直し!」が聞こえて…
「火力あげたら早く出来るかな…」
ボゥッと勢いのある音が背後から聞こえてくる。
妹紅が火力を調節したのだろうか?
「あ、あのさ…湯気、出たけどどうしよう!?」
「えっ…
えええぇっ!?」
釜からもくもくと昇る黒い湯気…。
どう見ても煙です。小火(ボヤ)騒ぎじゃないですかやだー!
「水!!水はどこッ!?」
「こ、この辺には無いわ!!」
「え!?あう、お…い…」
よ、弱った!!どうしよう…。
冷静に出来る事を考えてみると、一つ微かな光を見た。
…こう言う時こそ雨を呼べばいいんじゃない?
私の能力…それは雲を流す能力らしい。
それ自体は大分前から知っていたが、
実用的になったのはごく最近の話だ。
「つ、使い方は…!」
私は空をあおぎ見て心を澄ます。
空間に溶け混む様なこの感覚は明鏡止水の心だ。
これに、空へ集中力を放つ。
そして雲を呼ぶ思いで風を吹かす。
雨雲が流れればきっと小火も消えるはず…!
私はしばらく、上空で風を吹かす。
「………ああ、青空が綺麗ねー…」
雲なんて、なかった。ただ広い青空があるだけだ。
…私何してるんだろう。周囲を探すが、如何せん何も無い。
…むむむ、石で釜ごと炎を叩き潰すか!?
極論だなぁ、とか思いつつもそれ以外に思い浮かばない私が情けない。
「何の騒ぎかと来てみれば…ぬぅんっ!!!」
大風が辺りを吹き飛ばす。
木々がしなり、叫びをあげながらのけぞっている。
…なるほど、火は消えた様だ。
「…ついでに朝飯も…」
悲劇の朝飯が私の目の前に広がっていた。
朝飯だったものが、ぐったりと倒れこんでいた。
すくってあげたかった御飯だ…!下唇を噛む。
「…何だ、その眼は」
「もう、あの朝飯は帰って来ないんですね…うっうっ…」
「手厚く葬ってやれば良かろうに。
して、あの娘は何奴…?見れば、ただの人間でもあるまい」
「私は…!!」
妹紅は刃物の様な鋭い目をつきつけ、飯綱様を脅す。
が、飯綱様はどの感情もない様子だった。
ただ妹紅を見て、考えこんでいた。
この硬直状態…長く続くとヤバそうね…。ちょっと破ってみる。
「飯綱様、えぇっと仲間の…妹紅です」
「…ふむ。ま、良いか。妹紅…か?
儂はこれからコヤツに技を叩き込みに行かねばならんのだ。
お主、その間どうしたい?」
飯綱様は静かに見つめ返す。
その平静さからか、妹紅も目線をぷいっと外す。
そして飯綱様とは反対の方向を見ていい放つ。
「…好きにすりゃいいじゃない。私はあんたとは関係無いんだから」
「妹紅…」
「強情な…。まぁよかろう。それでは暫くこやつめは預かる」
これでいいのだろうか?
私はふと考える。妹紅はきっと何かを求めて行く。
妹紅は…力を得る必要があるのでは無いだろうか?
…とかなんとか言っちゃって。
道連れよ!ここまで来て、このままにはさせないわよ~!
「飯綱様!」
「…む?」
「妹紅の方にも修行をさせませんか?」
「ちょっと何言ってるのよ!!!」
妹紅が炎の衣を纏う。刃物の様な眼差しが私を刺しております。
…失敗したか?
「いいじゃん減るものでも無し!」
「妖怪の修行でしょう!?私がやるっての!?」
「妹紅でも何とかなるから!
て言うか妖怪っぽい修行なんてろくにしてないし!」
「ええぃっ!喧(やかま)しいわ!少しお主ら頭を冷やせ!!」
「…………
……………
……………
……じゃあ一年…お願いするわ。これでいい?」
「妹紅…!」
「……後悔はせんな?」
「…くどいわよ。
私は…いや、私も強くならなきゃならないから…!」
私達に目線を合わせ、鋭く澄んだ瞳を輝かせる妹紅。
やがて少し目線を上に傾け、強く、静かに呟く。
「…私は、私であるためにも、強く無いといけない。
きっと、この先は長い…!」
こうして練武の日々は三度始まりを告げた。
いつになく私達の思いは燃え猛り、遥かなる未来を掴む決意をしていた。
人間の歴史は大きくうねり、やがてその行路を変えて行く事を
この時の私達は知らなかった。
何か気が付いたら10月ですねぇ…。
何だかんだで妙に続いてますね。しかし文章の方は拙いですが…。