とある山奥にて・・・
一人の男が筍をとっていた。今年の筍はとても出来がいいらしく男は夢中になって地面を掘っていた。これから何が起こるのかも知りもせずに・・・。
男は不思議なものを見つけた。1里もないくらいと思われる洞窟だ。男は怖いもの見たさで中に入っていき、明かりもつけずに洞窟を進んだ。
どれほどすすんだのだろうか。ついに洞窟の突き当たりまで来た。(何か貼られている?)
光などほとんどないのに何故かその"何か"があるのが分かった。近くに寄ってみるとなんだかよく分からない文字が書かれている。今まで見たことのない、記号ともとれる文字が。
(バチが当たるわけでもあるまい、いっそ剥がしてしまおう)
ベリベリベリ
よく見るとそれはお札だった。こんなところに何故お札が・・・。そんなことを考えていると突然、洞窟が大きく振動した。
(まずい!崩れる!)
男は駆け出した。途中で採った筍が落ちたが今はそんなことを気にしている場合ではない。男は走った。なんどもこけそうになりながらも無事、洞窟の外に出た。洞窟は瓦礫で完全に塞がれていた。男は単なる事故だと信じた。そんな単純なものではないということなど知る由もなく・・・。
「この地を踏むのはいつぶりだろうか・・・。」
瓦礫から出てきた男は誰に言うわけでもなく呟き、そしてそのままフラフラと深い森の中へと入っていった。
守矢神社にて・・・
「ッ!?」
これまで経験したことのない胸さわぎで八坂神奈子は目を覚ました。自分の荒い息づかいが聞こえる。
「なんだ今の胸さわぎは・・・。」
びっしょりとかいた汗を拭っていると、洩矢諏訪子が障子を開けて入ってきた。
「まさかあんたも?」
「なんだ、お前もか?」
「うん。とてつもない恐怖と絶望の入り混じった感覚だった・・・。これは調べる必要がありそうだね。」
そう言うと諏訪子はカエルの置物を取り出してきて呪文を唱え始めた。
「・・・何してるんだ?」
神奈子の問いかけを無視してブツブツと唱え続けた。
しばらくするとなにやら妙な煙が出てきた。
「ウワッ!?何だこりゃあ!?」
「詳しい説明は後で!」
驚く神奈子をねじ伏せ、その後しばらく煙を見続けた。
数十分後、それまでだんまりを決め込んでいた諏訪子がその口を開いた。
「まずいね。」
「どうした?龍神が怒りでもしたか?」
「それよりタチ悪いよ、これは。」
「え?」
「封印が解かれた。」
その言葉で全身から血の気が引くのを神奈子は実感した。「封印が解かれた」その言葉が何を意味するのか、それはさかのぼること300年前になる。
300年前
その時代、幻想郷では千宮寺百鬼という男が強大な勢力を誇っていた。ただ、勢力と言っても横暴だとか独裁的だとかそういうものではない。
単純に強かった。神でさえ超越するほどの"力"を持っていた。どんな強者でも彼には歯が立たず、まず間違いなく当時の幻想郷では最強だった。
そして、誰より優しかった。百鬼は以前、幻想郷で当時では唯一の寺子屋を開いていた。今、幻想郷に住んでいる博麗霊夢や霧雨魔理沙、八雲紫や西行寺幽々子も百鬼から寺子屋で何らかの手ほどきを受けている。
だが、それらの徳は皮肉にも彼を苦しませることにもなってしまった。
幻想郷では未だに語られていないが神やそれに近しい者の間では秘密裏に進められていた計画があった。
"百鬼封印計画"
その名の通り、百鬼を幻想郷に二度と出てこれないよう、封印する計画である。なぜこのような計画が練られたか、その理由は至極単純。神達が信仰を集めるのに皆から好かれている百鬼が邪魔になったのだ。限りなく自己中心的な理由に聞こえるだろう。だが、神にとって信仰を集められないということはそれ即ち消滅を意味する。それだけは絶対に避けなければならなかった。だから、彼を封印する、そういう決断に至ったのである。そして、その決断を最も推したのが、八坂神奈子だった。
そして決行日、千宮寺家に何万、何億という大軍が押し寄せた。彼の反撃を恐れての対策であった。そして、家から出てきた百鬼は、
「用件は分かっている。」
そう言った。それを聞き、一同臨戦態勢に入った。が、
「抵抗などするつもりは毛頭ない。私は幻想郷が平和であればそれでいい。」
と言い、素直に投降し、その後、静かに洞窟に封印された。
その男が、300年経った今、封印を解かれ蘇ったのだ。神々、特に神奈子にとっては都合が悪いことこの上ない。
神奈子は焦った。今すぐにでも所在を突き止め、封印し直さなければならない。
「場所はどこだ!?」
神奈子が声を荒らげて聞いた。が、
「場所までは・・・・わからない。」
諏訪子は申し訳なさそうに答えた。
「洩矢に伝わるこの占いは起きたことが分かるっていうだけで、その者がいる場所や名前なんてものは分からないんだ。」
「なら自分で探す!」
「おい!神奈子!」
神奈子は守矢神社を飛びだし、朝日が顔を見せだしたばかりの森に消えていった・・・。