絶対に死んではいけないダンまち日記 作:tototoro
俺はユウト。
つい先日ひょんなことで死んでしまって、天国で神様と出会って転生する流れとなった、所謂ただの転生者である。
最近はWeb小説とかで転生者も激増してるし、まあなんてことはない数多き転生者の中の一人って感じだな。
特典も勿論貰ってきたぞ。なんと『直死の魔眼』である。この能力さえあればどんな世界だろうと死にはしないだろう。ふっはっはっは(慢心)。
と言うわけでやってきました異世界です。ここはどこかの森の中か。それほど深い森ってわけじゃ無く、木々の間から開けた草原が見えている。
とりあえず森を抜けてみると、遠くに天高くそびえる塔が遠くに見えている。
「ひゃっほーい!本物の異世界だー!」
俺は日々の社畜生活からやっと抜けさせた事に対する喜びを実感できて、そう叫んでしまった。開放感と爽快感に身を包まれ、そしてこれから迎えるであろうチートやらハーレムやらで包まれた輝かしい日々に万歳した。
が、いつまでも浮かれてばかりではいられない。まあ異世界って逆に言うと死亡フラグ満載の世界だしな。
ひとまず人のいる場所まで行かねばなるまい。塔の方角へと向かって俺は歩き出した。
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辿りついた塔の足元には、街が広がっていた。
「よお、旅人…にしては軽装だな。この街に何の用だ」
「えっと…旅人であってます、はい。この街には出稼ぎに来ました」
こういう時の為に考えておいたセリフを言う。あたりさわりのない、そして嘘でもない言葉だ。まあ素直に『転生してきたんで近くにあった街に来てみました』なんて言えないだろう。
「そうか。じゃあ冒険者志望か。ようこそ、迷宮都市へ。歓迎するよ」
「冒険者?迷宮都市?」
俺は首を傾げた。
「なんだ、あんたお上りさんか?気ぃ付けろよ。あんたみたいなやつはいいカモになるんだ。ま、色々と大変だとは思うが頑張りな。それと、いつまでもここにいられると邪魔だからとっとと街に入れ」
「あ、はい」
流石に仕事の邪魔をしてまで知らない事を尋ねるわけにはいかないか。
いや、確かに知らないが、推測ぐらいはできる。冒険者とか、迷宮とか、いずれもWeb小説で良く聞く単語である。なるほど、ここは迷宮都市、そして冒険者が多い…となると、あの天まで届く塔が迷宮で、冒険者はそこによく行くから街として発展したパターンなのかな?
それにしても迷宮都市に冒険者とは。テンプレ過ぎだろう。
嫌いじゃないけどね!是非も無いヨネ!
しかし情報が必要なのもまた事実だ。推測だけで判断するほど馬鹿じゃあないつもりだ。
とりあえず冒険者っぽい感じの人にギルドの存在と場所を聞くべきだな。
「あの、そこのお嬢さん」
俺は目の前を歩いていたフードの少女に声をかけた。別に顔がかわいいからとか、屈強の男に物を尋ねるのが怖いだとか、そういう事じゃないからね。
「はい?なんでしょうか?」
「こんにちは。ちょっと訪ねたい事がありまして」
「はあ…リリに分かる事なら」
そういってギルドの方角を尋ねると、少女は普通に教えてくれた。それとやはりギルドは存在するらしい。テンプレ万歳。
「あなたは冒険者になるおつもりで?」
「え?あ、はい。折角ここに来たんだし、冒険者やろうかなぁ、と」
「…そうですか。では、その節はどうぞこのリリをよろしくお願いしますね!リリはサポーターをしていまして、冒険者様のお手伝いをさせていただいているんです!」
「へえ!そういうのもあるのかー」
確かに彼女は彼女自身が二人丸まって入っても余裕のありそうな程大きなリュックを背負っている。それでもなお体幹が一切ぶれないなんてすごい力持ちだ。流石異世界。
「じゃあ、教えてくれてありがとう」
「いえいえ」
あまり引き留めても悪いかと思って、そういってその子と別れて、俺はギルドへと向かった。
ギルドへの道すがら、すれ違う人々を眺めていて思った事なんだが、やっぱり異世界はすごいな!
あれだ、ほぼ下着同然の防具を付けた褐色肌のお姉さんとか、ゴスロリの魔法少女とか、大剣背負ったロリっ子とか、弓背負った猫耳少女とか!眼福眼福である。これだけで異世界に来た甲斐があったというものだ。
「えっと…ここがギルドか」
ギルドにたどり着いた。ギルドは意外と清潔感があって、モンハンとかその辺のギルドの印象とはかなり違っていて驚かされた。中もカウンターとかもう完全に日本の役所と似た風景で、かなり親近感がわく。
俺はとりあえずカウンターの一人に話しかけた。
「あのー、すいません」
「はい、何か御用でしょうか」
俺を迎えたのは耳の長い短髪の女性だった。眼鏡の良く似合うお姉さんだ。もしかしてエルフなのだろうか。
「あの、もしかしてエルフ…ですか?」
「え?あ、はい。私はエルフのエイナ・チュールと言います」
そういって頭を下げるエルフさん…いや、エイナさん。エルフだあああ!初めての実物エルフ美少女!めっちゃ可愛いな、おい!
っと、しまった。いかんいかん冷静になれ。
「あの、冒険者になりたいんですが、最近ここに来たばかりで色々と分からないことが多くて…ここに来れば色々と聞けるかなと思ってきたのですが…」
「はい、分かりました。では、冒険者になるための過程を説明させていただきますね」
そういってエイナさんは話し始めた。
まず、冒険者という存在を説明する為には『神』の存在を説明するほかない。暇を持て余した神々が天界から下界へと降りてきて、人間と共に暮らすようになって幾星霜。神々は下界に降りてきた次点で全知無能となる。つまり肉体的にはほぼ人間に近づいてしまうのだ。そんな神々が食べていくために、神は下界の子供を集めてファミリアを形成し、眷属とし、下界へと根を下ろしたのだ。神は子供達に『神の恩恵』を与え、成長の制限を取っ払って力を持たせ、眷属はその代わりに忠誠と信仰を持つ。
そして、ファミリアに入り、迷宮を探索、冒険する存在を冒険者というのだ。
「…えっと…」
俺は困惑した。ウェブ上での小説では一切こういった感じの設定は無かったから、完全に想像外の話だった。
そりゃ、ここはもう現実だ。Web小説でのテンプレに当てはまるような事が続く訳じゃないか…しかし神様が実在するとか、流石異世界とかいう範疇を超えてるだろこれ。
「つまり、冒険者になるためにはファミリアに入らないといけないってことで?」
「ええ、そういう事になります」
うーん、てっきりギルドに来れば冒険者になれると思ってたんだが、そう簡単にはいかないか。
「ありがとうございます。ファミリアに入れる様自分で頑張ってみます」
「はい。頑張ってください!冒険者になったら、まずはギルドに登録をしにきてくださいね」
「分かりました」
ファミリアか。今日中に見つかればいいのだが…。
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見つかりませんでした。
異世界で初めて見る朝日は、空腹も相まってキラキラ光って天国の光に似ているような気がしました。
「…はらへった…」
ぐー、と腹の虫がなる。あかん、これ。もう腹が減りすぎて活力が出ない。立ち上がるのも億劫である。
ため息を吐き出すと空っぽの腹がさらに悲鳴を上げそうなので何とか飲み込む。昨日の事を思い出すとさらに気が滅入る。
何というか、俺は結局日本人である。見た目的には俺を転生させた神が色々と考慮して俺の高校生の時の身体にしてくれたが、今まで争い事に全くかかわってこなかった貧相な身体と覇気の無い見た目にどのファミリアも門前払いである。そりゃ弱い人間なんて誰も取りたがらないのは分かるけど、いくら何でも5,6件回って全部追っ払われるとは思わなんだ。
「あー…死ぬ…」
俺は思わず地面に寝っ転がって空を見た。真っ白なパンツに健康的な肌の足がすらっと伸びて繋がっている。
「……」
女の子がそこにはいた。俺は図らずとも女の子のスカートを大胆に覗くような態勢になってしまったらしい。
「…あの、免罪です」
こういう時男の立場は酷く弱い。とりあえず先制を狙って謝ってみるが、昨日この世界に現れたばっかりの謎の多い不審な男とパンツを見られた女。どちらが有利かは言わずとも分かるだろう。声が勝手に震えるのが分かる。
「別に気にしてないぞ」
パンツがしゃべった。いや女の子がしゃべった。俺は慌てて起き上がってその子の顔を改めてみた。
そこには絶世の美女がいた。人間離れしている程の美貌の顔と、美しいクリーム色の髪の毛。たわわに実った胸は巨乳と表現するに十分で、腰つきも足もムチムチしていてどこも豊かだ。抱くときっと柔らかいのだろう。
着ている服は真っ赤な和服だ。色っぽい彼女をどこまでも引き立てている。
「私はウカノミタマ。神様だ…お前は?」
「えっ?えっと、俺はユウトです」
いきなり自己紹介されたんご。っていうか今なんていった?神様?ウカノミタマって日本神話の神様にそんな名前の神様を見た事があるぞ?
唐突の事に俺は目を白黒させながらも、しかし神様の手前でいつまでも座ったままというのもあれだと思って立ち上がる。ウカノミタマと名乗った彼女は顔を赤く染めてこちらを見つめている。
「そうか…」
「えっと、はい」
「お前が昨日様々なファミリアに声をかけているのを、後ろからずっと見ていた」
「は?」
急に怖い事を言ってきた。
「えっと、今なんて…?」
「だから、お前が様々なファミリアに声をかけているのを、後ろについてずっと見つめていた」
「なにそれこわい」
ちなみにいつから?と聞いてみると、「ギルドから出た時から」と答えられた。なにそれこわい。
「そ、それで…俺に何の用で?」
俺は意を決して聞いてみた。この神様すごい嫌な予感がしてやばいんだが。
「…待て、実はお前に話しかけようと思ってたんだが、ずっと勇気が出なくてな…少し心の準備をしていいか」
「はあ」
「あと下着見られた事に関して心の整理をしないと死にそうだ…」
「あ、やっぱり気にしてらっしゃったんですか…」
さっきから顔が赤いと思ってたら。ま、まあ当たり前の事ですよね。ほんとごめんなさい。俺の不注意で…。
っていうか、さらっとスルーしたけど勇気が出なくてって、もしかして俺に何か用があったけど勇気が無くて話しかけれなかったとかそんな事なのだろうか。
「ふう、よし言うぞ。実はお前に、私のファミリアに入ってほしくてだな」
「え!?ふぁ、ファミリアに入れてくれるんですか!?」
「ああ。どうだ、共に迷宮を踏破して、我がファミリアの名をオラリオ全体に轟かせようではないか。報酬は思いのまま、今ならユウト、お前を団長に任命するまであるぞ」
「だ、団長に!?」
いきなり超出世だな俺!?
なんかうまい話しすぎてちょっと怖いけど、こんなかわいい女の子が悪い人間…っていうか
「俺、入ります!これからよろしくお願いします、神様!」
「そ、そうか!入ってくれるか!いや、ユウトならそういってくれると思ってたよ。本当に良かった。ほっとした…はあ…」
「ちょ、大丈夫ですか神様!?」
ふらっと力が抜けたように倒れ込んだ神様をとっさに支える。いい匂いがふわりとして、触れた部位が至高の感触に包まれる。
「安心したら貧血が…けほっ、けほっ…うう、と、とりあえず今日からよろしくな、ユウト…」
「は、はあ…」
「二人で一緒にこの…ファミ…リア…を…」
「ちょ、神様あああ!?」
こうして俺は冒険者としてスタートラインに立ったのだった。
っていうかおい、今なんて言った?二人でって言ったか?え、もしかして現時点で団員が俺一人だけって筈無いよね?そうだと言ってよバーニー!?
気を失って顔を真っ青にしつつぐったりとする神様の姿に、俺は言い知れぬ予感をひしひしと感じていたのだった。