絶対に死んではいけないダンまち日記   作:tototoro

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ユウト、ダンジョンに立つ

俺は今、ギルドに来ている。

 

ファミリアに入ることが出来たから、冒険者として登録してもらう為にだ。

 

あの後俺は目を覚ました神様にファミリアの拠点、ホームへと案内された。

 

ホームと言う名のあばら家…っていったら全力で泣かれたのでこれからは言わないように気を付けよう…っていうか神様、心豆腐すぎないですか?身体が病弱でさらに心豆腐って、属性盛りすぎな気が…。

 

まああの時倒れたのは俺を徹夜して追い続けてた所為もあるから、病弱って程じゃないか。

 

まあそんなわけで連れてこられたホームは和風の小さな一軒家だった。いい土地が買えなかったのか街の中心部からちょっと離れた場所にあった。

 

俺はそこで『神の恩恵』を授けられた。背中に『ステイタス』が刻まれ、冒険者の卵となったのである。

 

俺は昨日話しかけたカウンターの人、エイナさんにまた話しかける。

 

「あ、昨日の」

「その節はどうも。ファミリアに入ったので、冒険者の登録をしに来ました」

「え、もう?」

 

俺がそういうと、エイナさんは意外そうに眼をぱちくりとさせる。

 

「あ、ごめんなさい。ただファミリアを見つけるのってそれなりに時間かかる場合が多いから」

「いえ、気にしてませんから」

「ふふ、そう?だったら良かった。じゃあ冒険者の登録をするから、所属してるファミリアの名前と、君の名前を教えてくれますか?」

「はい。所属してるファミリアは『ウカノミタマファミリア』。名前はユウトです」

「はい…って、ウカノミタマファミリア?そんなファミリアあったかしら…」

「あ、俺が初の団員みたいで、今日出来たばかりなんです」

「じゃあ発足したばかりのファミリアなのね…じゃあ、主神様にギルドに足を運んでもらえるよう言ってもらえますか?ギルドにファミリアの登録をしなきゃだから」

「…わ、分かりました」

「…?どうしました?」

「いえ、なんでもないです」

 

俺はあの病弱なウカノミタマ様の姿を思い出して、果たして彼女はここまでたどり着くことが出来るのだろうかと頭を悩ませた。いざとなれば俺が背負って来ればいいにして、体力続くかなあ…いや、神様なんだし流石に外に出るくらいは…。

 

「はい、それじゃあ一応冒険者としての登録は終わりました。ユウト君、でいいのかな?改めまして、私はエイナ・チュール。君の冒険者としてのサポートをさせてもらうね」

「あ、はい」

「それと、年も下っぽいし、敬語はやめていいかな?」

「え?」

 

そういえば俺、今高校生くらいの年だったっけか。エイナさんもどちらかっていうと高校生か大学生くらいだけど、別に敬語とか気にしないしな。

 

「はい。これからよろしくお願いします、エイナさん」

「うん、よろしくね」

 

と言って、早速エイナさんは俺の身体を見渡した。

 

「んー、冒険者になるとすると、まずは装備を整えなきゃだね。ギルドの支給品で冒険者としての最低限の装備が与えられるけど、自分で買う事もできるよ。どう?」

 

支給品が貰えるのか。

 

今の俺がいるファミリアはかなりの零細。俺が無一文だと分かって、色々と入用だからと神様から1万ヴァリス程お金をもらったが、それでも節約できるのなら節約した方がいいだろう。

 

「まず支給品で慣れようと思います」

「そっか。じゃあ、早速支給品を持ってくるから待っててね」

 

そういって奥へと消えていくエイナさん。それにしても武器と防具か。いやあ、やっとスタート地点に立ったって感じだな。

 

エイナさんが戻ってくると、手に色々と持ってきていた。それは一本のナイフと胸当て、それと簡単な小手だった。

 

「いい、ユウト君。私から一言言える事と言えば、この一言だけ。『冒険者は冒険をするな』。勇気と無謀をはき違えて迷宮に消えていった冒険者は本当に多いから、気を付けてほしいんだ」

「わ、分かりました」

 

勇気と無謀をはき違えるな、か。命を懸ける仕事なのだ。その辺りの線引きはちゃんとしなければいけないな。

 

「最初だから、まずは迷宮の1階で少しずつ慣れて、それからーーー」

 

そして始まったエイナさん講義。エイナさんはかなり面倒見がいいらしく、細かい所まで説明してくれた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

迷宮。それは、魔物の巣窟にして母体。中はモンスターだらけ、壁から、天井から、様々なところからモンスターが絶え間なく産み落とされ、入ってきた冒険者たちを待ち構える。

 

ここはその第一層。俺はやっと冒険者としてスタートを切ったのだ。

 

目の前の洞窟を心置きなく探索したい気もするが、まずは俺のステータスについてだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ユウト

LV.1

力:I0

耐久:I0

器用:I0

敏捷:I0

魔力:I0

《魔法》

【直死ノ魔眼】

・常時発動。

・万物の死を見る

・魔力を込めれば込める程より鮮烈に、明確に死を捉えることが出来る

《スキル》

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

とまあこんなもんである。

 

直死の魔眼がちゃんと発現してくれて助かった。神様はこの能力を見て「…絶対にこれに関しては秘密にしろよ」と忠告してきたので、多分やっぱりこの能力はかなり危険な物なんだろう。

 

それにしてもステイタスが刻まれて能力が発現したというのに、死の線が一切見えないのは能力に慣れていないからなのだろうか。魔力を込めればと書いてあるが、魔力ってどうやって込めるんだ?

 

俺は取り合えず目を力ませてみた。目を凝らして、まるで目の悪い老人のような感じだ。

 

するとうっすらと壁に赤い線が現れて、それを切った後の風景が少しだけ見える。おお、これが魔眼の力か!

 

俺はそのまま、支給品のナイフで線に沿うようになぞってみる。

 

まるでバターの様に刃が通り、壁に一つの傷を付ける。手で触れてみるが、決して壁は柔らかい訳じゃない。逆に岩の如く固い。

 

これが直死の魔眼の力か…この力さえあれば、俺が冒険者として名をはせるのも時間の問題だな!(慢心)

 

俺の戦いはこれからだ!いくぞ、俺!

 

俺は意気揚々と洞窟の奥へと足を向けたのだった。

 

 

 

 

「んあああああああ!?あああああ!」

「ギャッ、ギャッ!」

 

そして俺は今、ゴブリンに追いかけまわされている。

 

良く考えればわかる事だ。俺は日本人。虫や魚などを除けば動物を殺した事などない、平和の真っただ中に過ごしてきたただの一般人だ。

 

ナイフを手に持ってゴブリンの前に飛び出る。そこまでは良かった。

 

ただ、それからだ。早速倒そうとナイフを抜くと、ゴブリンが動いて俺の目をまっすぐ見つめてきた。そして持っていた棍棒を振り上げて、逆にお前を殺してやろうと俺に向かって「ぎゃあああ!」と吠えたのだ。

 

その時点で俺は自分の腰が引けているのに気が付いた。そのまま迎えうたずに踵を返して逃げ出したのはきっと間違った判断ではあるまい。こんな有様ではまともに戦り合う事すらできなかったろう。

 

だけど奴さん、そんな俺に対して何を思ったのかしつこく追い回してきやがる。くっそ、調子に乗りやがって!

 

「ええい、迎えうってやる!」

 

俺はもう覚悟もへったくれも何もかも投げ捨てて、怒りのままに向き合う事に決めた。

 

「なめんじゃねえぞ、このドチビ!」

 

ナイフを構えて迫ってくるゴブリンを迎えうつ。目に魔力を込めて相手の死を見る。赤い線が浮かび上がって、どこをどう切ればいいかが見える。

 

「っ、こ、のぉ…!」

 

だが、ここでさらに問題が。

 

死の線。それは文字通り死そのものだ。その存在のほころび、コマの様に回り続ける存在の、その中心の様な物。一度崩れれば全てが滅ぶ、そんな物を俺の目は捉える。

 

しかし、それは線だ。線なのだ。

 

包丁以外に碌に刃物を持ったことの無い俺に、動いている標的の線を正確になぞって斬れとでも?

 

無理無理無理。そんなの出来るわけがない。

 

俺が付きだしたナイフはゴブリンにたやすく見切られ、棍棒によって受け止められる。返す刀で俺に棍棒を振り下ろし、それを慌てて後ろに後ずさって避けた俺に対して一気に肉薄、俺の腹を蹴って距離を取る。

 

結構な力で蹴られたので、俺は後ろによろめいて壁に激突した。痛い。

 

「くっそ…!」

 

俺は慌てて立ち上がる。このままだと殺されかねない。というかゴブリンにやられる転生者とかお笑い物もいいところだ。

 

「…よく見ろ」

 

俺の武器はこのナイフと、そしてこの目だ。しかしそのどちらも俺にとっては今日初めて触れた一切慣れてない力である。

 

だからこそ慎重に、良く狙いを済ませて一瞬で命を刈り取る。

 

ゴブリンは壁際に追い込んだ今こそ好機だと思ったのか、一気に俺にとびかかってくる。

 

しかし、それは俺にとっての好機だった。やつは今空中。そして棍棒は振りかぶっている。この一撃を避ける事など出来まい!

 

俺は一気に飛び出して一つ踏み込みナイフを引き絞る。目にはバッチリとやつの死の線が見える。そこに一気にナイフを突き出した。

 

「ぐげえっ!?」

 

刃は例の如く何の抵抗も無く肉を割き骨を断ち切り、一気に通過する。俺も慌てて前転して一気に距離を取る。ゴブリンは斬られた衝撃に碌に受け身も取れずに壁に強かに体を打ち付けて倒れ込んだ。

 

「はあ、はあ…」

 

鼓動がドクドク言っている。身体全体が熱い。生き物の肉を立つ感触が未だに手に残っている。

 

「や、やったか…?」

 

ゴブリンはそのまま動かずに、一気に灰となって消えていった。どうやら無事倒したようだ。

 

灰の中には綺麗な青紫色の小石が埋まっている。これが魔石なのだろうか。

 

「は、はぁ~…」

 

俺は思わず座り込んだ。こんなに緊張したのは初めてかもしれない。

 

それにしても一つの命を奪ったというのに、案外何も思う事は無かった。ただ生き残ったという安心感の方が強いのだ。まあそれでも肉を断ち切る感触は気持ち悪かったけどね。

 

っと、いつまでもへたり込んでいる場合じゃないな。魔石を回収して、更に経験を積むとしよう…。

 

 

 

 

 

…そ、その前に、がくがくする足を何とか落ち着かせよう。うん。

 

 

 

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