絶対に死んではいけないダンまち日記 作:tototoro
人間とは慣れる生き物のようで、俺はゴブリンを切り飛ばしながら息を整えた。
初戦から数時間後。俺はあれから敵を見かければ戦いを挑み敵を殺してを繰り返し、今では2手3手、うまくいけばこちらから行って1手目で殺すことが出来るようになってきた。
直死の魔眼は一時間前からあまり使ってはいない。ずっと絶え間なく使っていると、頭がぼやけて体がふらついた、エイナさんから聞いた『マインドダウン』の兆候が見られたのだ。少し休めばマシになったが、今は使わずに戦っている。
少し戦っていると魔力も使わずにどこを刺せば殺せるかが感覚的に分かるようになってきたし、初戦の様に死の線に狙いを定めてナイフを振るよりも、感覚を信じて振りぬいた方が成功率が高い事に俺は気が付いた。
それと、俺自身の死も見える様になった。つまり俺に対する攻撃を事前に予期することが出来るというわけだ。攻撃限定だが相手の一手先を読めるというのは大きなアドバンテージだろう。
「ふう…そろそろ帰るかな」
俺はナイフを振って鞘に納めて、やっと満足して帰路に付いたのだった。
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「やあ、お帰り、ユウト」
換金が終わってやっと家に帰ってきた俺は、ベッドに寝ていた神様に迎えられた。
「良いですよ、寝たままで」
「そうか?」
「あと晩御飯も買ってきましたんで、一緒に食べましょう」
「何から何まですまないな…」
俺は買ってきた肉の串を、サンドウィッチを神様に渡した。
「おいしい…」
「そうですねえ」
今日は買ってきたが、明日からは俺が作ろう。この神様には栄養の整った食事が必要なのだ。
だが食事をするためにもお金が必要なんだよなぁ…。
ちなみに今回の稼ぎは3000ヴァリスだった。エイナさんには「無茶は駄目って私言わなかったっけ?」と少し怒られた。確かに初めてのダンジョン入りで2,3時間潜って敵を倒しまくってしまったのはちょっと無茶だったかなと反省する。初戦に関してもかなり危なかったし、あの時点に帰っても良かったのかなとふと思った。
だけどあのままあの気持ちを忘れないうちに戦って乗り越えないと、色々と遠回りになりそうだなと思ってしまったのだ。
「すまないな。下界に来た時点で私の身体は人間本位となるのだが…神としての私の身体を人間にまで落とすと、かなり病弱になってしまうらしくてな…」
「仕方ないですよ。気にしないでください」
身体の個性は気にしても仕方が無いしな。それに神様はファミリアを見つけれずに飢えていた俺にとって命の恩神だ。
「じゃあ、そろそろステイタスの更新をしようか」
「あ、はい」
食べ終わって、俺はステイタスの更新を行った。
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ユウト
LV.1
力:I48
耐久:I5
器用:I35
敏捷:I56
魔力:I62
《魔法》
【直死ノ魔眼】
・常時発動。
・万物の死を見る
・魔力を込めれば込める程より鮮烈に、明確に死を捉えることが出来る
《スキル》
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「おおっ、結構上がったなあ」
「そうだな。お前はもしかしたら才能があるのかもな」
「だといいんですけどね」
だけど、今日の戦いを見ても才能があるとは思えない。初戦の無様さを見てみても分かるだろう。
まあ、人並みに戦えるってだけでまだマシだけどな。
「だけど、耐久はあんまり上がってないですね」
「まあ今日が初めてだ。そう焦るな」
「ですね…」
神様の仰る通りだぜ。ちょっと急いてたのかもしれない。
そう、今日から俺は冒険者なのだ。泣いても笑ってもそれは変わらない。なら少しずつでも成長していけばいいだろう。
ただし慢心はしない。もうあんな思いはこりごりだからな。
「疲れただろう。そろそろ寝ろ」
「あ、はい…って、何してるんですか?」
「布団が一組しかないんだよ…は、恥ずかしいからとっとと入って寝ろよ」
「はあ…」
神様は俺が布団に入った途端に布団に顔を隠して頭から煙を噴き出して気を失ってしまった。
うちの可愛らしい主神様は大胆なんだか小心なんだか…まあ俺も今日は神様の言う通り疲れてるし、すぐに寝るとしようかな。
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「じゃあ、行ってきます!」
彼は屈託のない笑顔を浮かべて私に手を振る。
彼は、ユウトは私にとっての初めての眷属だ。
ユウトを始めてみたのは、ギルドから出てきた時。ファミリアを作りたくて、だけど下界に降りてきたばかりだからあんまり情報を持ってなった私はギルドへと赴いた。その時に彼を見つけたのだ。
始めてユウトを見た時の気持ちは、恐らく一目ぼれと言うやつなんだろう。決して恋だとかそういうものではなく、ユウトは確実に何かを持っている。それを理解し、そしてユウトがその何かを携えてどの様な事を成し遂げるのか、それを間近で見てみたくなった。
彼が欲しい。私のファミリアに入れて、一番近くで彼の活躍を眺めていたい。
そう思ったから、私はギルドに行くのを中断して彼を追いかけることにした。もしかしたらもうファミリアに入っているんじゃないかと不安がよぎったが、何度かファミリアに特攻して追い返されているのを見てまだ無所属だと分かってほっとした。
私は何度も話しかけようとした。だがその勇気が中々出てこなかった。私はちょっと、いや、ほんのちょっとだけかすかに、わずかにコミュ障な所があるからな。仕方がないよな。
しかしそれからずっと話しかける機会を伺い続けて夜を外で明かしたのは流石にバカだったかなと思ってる。その所為で今体調を崩して布団から出ていけない状態なのだ。
まあ、そのお陰でユウトを私のファミリアに迎えることに成功した。
成功したので、私は早速誰かに取られる前に彼に『神の恩恵』を与えた。
そして私は目を見張った。なぜって、ユウトのステイタスのそのあまりの規格外に理解が及ばなかったのだ。
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ユウト
LV.1
力:I54
耐久:I5
器用:I35
敏捷:I56
魔力:I38
《魔法》
【直死ノ魔眼】
・常時発動。
・万物の死を見る
・魔力を込めれば込める程より鮮烈に、明確に死を捉えることが出来る
《スキル》
【生死経過】
・死を迎え、新たな生を迎える。その過程を経験した者の証
・生に輝きを与える。
・成長に大きな補正
・所有者が死亡するまで効果は続く
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何かを持ってる、だって?ああそうだ。彼は持っていた。やつは、ユウトは一度死に、どこかを通じてこの世界に転生してきたんだ。
一度死を迎え新たな生をも迎える。その過程を、もしユウトの奴が意思を消さずに体験したとすれば、それは一体人間としての何世紀分の進化に該当するのだろうか。少なくともユウトの奴の格は、そこら辺の冒険者とは比べ物にならない程高く、激しい輝きに包まれているだろう。
しかし、だからこそユウトは歪んでいる。
ユウトはただの一般人だ。少なくともその人格は、ただの子供と同じなのだ。
中身と器が釣り合っていない。その矛盾は何時かほころびを招くだろう。
現にユウトは魔法に置いてその影響を表している。『直死ノ魔眼』はユウトが実際に死に、そしてこの世界に生まれたという経験によって生まれた魔法なのだろう。
死を見る目。なるほど、死を体験し、見てきたあいつにはふさわしい能力だ。
私は私の子供を信じている。ユウトはきっと、まっすぐに育つだろう。
だが、だからと言って放っておくのは間違いだろう。暇を持て余して下界に降りてきた神々はこういった異端な魂が大好物だ。私の子供だからという理由で手を出さない訳がない。
だから私は、このスキルについてユウトに秘密にすることにした。魔法に関してはどうせユウトが戦いの中で発現するのも時間の問題だったからな。
だけど、スキルだけは私の口の中に閉じ込めておくに限る。いつどこでどんな目が見ているのか、分からないのだ。
私は布団の中から、ユウトが消えていった玄関を眺めた。
もうここはお前の家だぞ、ユウト。お前がどんな事を成そうとも、私だけはお前の味方だ。
なんせ、私はお前の神なのだからな。
「げほっ…い、いかんいかん、血が…」
その前に、この病弱を何とかしないとな…。
情けない限り…だ…(がくっ)