絶対に死んではいけないダンまち日記   作:tototoro

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ユウト、バベルの塔に立つ

リーチが欲しい。ここ最近ナイフばかり使っていて思う事だ。

 

ナイフだと切っ先が届きにくいことがあるし、それにやっぱり貧相に思えてならない。階層が上がって敵が強くなってきたっていうのもあるけど、そろそろ武器を強化したいな。

 

迫ってきたコモドオオトカゲもどきを輪切りにしつつ、俺は一つため息をついた。

 

俺が冒険者になって数週間が経った。俺は毎日欠かさずにダンジョンに潜って、今では満足に動けるようになってきたかなと思い始めてきた頃だ。

 

ちなみにステイタスはこんな感じになっている。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ユウト

LV.1

力:F328

耐久:H130

器用:F392

敏捷:F368

魔力:E402

《魔法》

【直死ノ魔眼】

・常時発動。

・万物の死を見る

・魔力を込めれば込める程より鮮烈に、明確に死を捉えることが出来る

《スキル》

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

敵に攻撃される前に殺すというのが俺の基本的な戦闘スタイルなので、耐久が上がらないの何のったら。

 

逆に魔力はダンジョン内で魔眼を絶え間なく使っているのでもう既にEまで上がっている。次点に敏捷と力も結構上がっているが、敏捷はダンジョンを走り回ってたり、敵を殺す為にささっと近寄ったりしてるからだろう。力は日々の鍛錬の成果だ。朝の筋トレは気持ちいゾコレェ。

 

器用は線に沿って斬るのに苦心してたらいつの間にか上がってた。

 

「ゲコォ!」

「ん?」

 

洞窟の曲がり角からでかいカエルが姿を現した。

 

「うおっと!」

 

カエルは俺が来ている事を理解していたかのように舌を伸ばして迫ってくる。俺はそれをひょいと避けて、相手を改めて見極めた。

 

カエル。カエルだ。ぬめぬめと湿った肌、ぎょろっと動く丸い瞳。大きな口から放たれるのは長くてぬめぬめと粘着質な液体を纏った舌。

 

「…うわぁ…」

 

余談だが、少し昔話をしようか。

 

あれは俺が小学生の頃だっただろうか。

 

とある夏の日、俺はセミを捕まえるのに近くの神社に来ていた。汗だくだくに流しながらセミを追いかけ続けていた俺は、あまりの暑さに参って神社に合った苔むした石に座ることにした。ちょうど木の陰になっていたし、風が気持ちよさそうだったからだ。

 

腰を下ろした。次の瞬間、尻にぶちゅ、と何かがつぶれる感覚が広がった。「え?」と思って慌てて立ち上がって座っていたところを見てみると、そこには赤い液体をまき散らして息絶えたあの両生類の姿が…。

 

まあなんだ。ありていに言って俺はカエルが嫌いだ。嫌いっていうか生理的嫌悪が強い。台所に現れる黒く蠢く神話生物と同じような感じで。

 

「…」

 

そいつと目が合った。確か名前は何とかシューターだかフロッグ何とかだかだったが、できれば出くわしたくはなかった。

 

出くわしたくは、無かったのだ。

 

「ゲコォッ!!!」

「ひえぇっ!?」

 

この日、俺は改めてナイフの短さに憤慨した。

 

絶対武器を買う。新しい武器を。

 

金が溜まったら、絶対にーーーー(涙目)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

金あるわ。俺は換金所で魔石を換金しつつ、冷静になった頭でふと気が付いた。

 

俺の一日の稼ぎは、ダンジョンに丸一日中入って10000ヴァリス程。神様と俺の食費、ポーション類の追加、摩耗した防具やナイフの新調などなど、様々な出費を差し引いても貯金は結構ある。

 

良し買おう。新しい武器を。

 

出来れば刀が欲しい。日本人だし、日本刀だと馴染み深いしな。

 

そうと決まれば早速エイナさんに相談しよう!俺は意気揚々とエイナさんのいるカウンターへと足を運んだ。

 

「だからねーーー」

 

と思ったがエイナさんは他の冒険者さんを相手にしていた。白い髪の毛と赤い瞳が特徴的な少年だ。

 

今の俺よりも年下なのに、冒険者なんてよくやるなぁと他人事のように感心しながら、話が終わるのを待つ。

 

「今は小さなファミリアだけど、きっと頑張っていればいつか結果は出てくるよ!頑張って、ベル君!」

「エイナさん…はい、ありがとうございます!それじゃ、僕もう帰りますね!」

「うん、ばいばい」

 

どうやら彼も零細ファミリアに入って頑張っているらしい。なんだか親近感がわいた。頑張れよ、少年。

 

「あ、ユウト君」

「こんにちは、エイナさん」

「ごめんね、待たせた?」

「いや、全然大丈夫です。それよりもエイナさん、ちょっと相談したいことがあるんですけど」

「何?ユウト君が相談って珍しいね」

 

そして俺はいい武器を売っている店の場所を教えて欲しい旨を伝えた。エイナさんは心当たりがあるのか、すぐに教えてくれる。

 

「だったら、バベルの塔が良いかな」

「バベル?え、バベルの塔ですか?」

「うん。あそこは初心者の鍛冶師たちが自分の作品を売っててね。値段もそこそこで掘り出し物とかも結構あるから、もしいい武器を探してるんならそこに行ってみるといいんじゃないかな」

「へー!ありがとうございます、早速行ってみます!」

「うん。ふふふ、なんだか結構様になってきたね。これからも頑張ってね、ユウト君!」

「あ、はい!」

 

俺はエイナさんの声援に応えようと、今すぐにでもバベルの塔へと足を向けたのだった。

 

 

エレベーターを降りると、そこは確かに武器屋だった。薄暗く、ちょっとかび臭い感じがして無骨で雑多。そこら辺にあるちゃんとした武器屋とは違って装飾などもないし、本当に多種多様の武器をただ置いてあるだけの倉庫のような感じだった。値札が備えてあって、それだけがここが店なのだと主張しているような感じだ。

 

「ほー…」

 

俺はしばらく物色する事にした。棚の奥の方にカウンターに座って気だるそうにする男性が一人いたので小さく会釈して、さらに物色。

 

そして俺はやっと見つけた。

 

沿った刀身を包む黒塗りの鞘。手に持ってみると結構軽い。長さはちょっと短いかな、と思うが…。

 

刀だ。値札を見てみると結構良い値段をしていた。この辺りの値段帯だと普通に買えるだろう。

 

「んー…」

 

やっぱり少し短いかな。と思ってその辺りをさらに探してみる。と、長さの異なる刀を何本も突っ込んだ筒を見つけることが出来た。

 

俺は一つずつ手に取って、感触を確かめる。刀を持つなんてこれが初めてだから詳しいことが分からないので、持ちやすいか、振るいやすいかだけで確かめてみる。

 

「おっ…」

 

その中で長さも重さもちょうどいい感じの刀を見つけた。抜いてみるとぬらりと光沢を放つ美しい刀身が覗いて、俺の顔を映した。

 

これはいいな!というか、是非ともこれを振って戦いたい!

 

直感的に俺はそう感じて、後はわき目もよらずにカウンターへとその刀を持って行ったのだった。

 

「15000ヴァリスだよ」

「たかっ」

 

今日の教訓。買い物をするときは値札をちゃんと見よう。俺は半分ほどの重さになった財布を手に、しかし刀をしっかり握りしめて家路についたのだった。

 

明日はこの刀で迷宮に挑むぞ!今からが楽しみで仕方がない俺は、家に帰って腹をすかせて布団に横たわる神様を見てやっと飯を買って来ていない事に気が付いた。

 

ごめんなさい神様…。

 

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