あんさんぶるガールズ‼~転校生と少女たちの日常~ 作:ファントムベース
では、どうぞ。
「コホ、コホ…ねぇ黒崎くん。ちょっといいかな?」
ある日の休み時間。次の授業の準備をしていた裕也は、クラスメイトの『八朔つゆり』に声をかけられた。
「どうしたの八朔さん」
「今日保健委員会で保健室の整理があるんだけど、いつものメンバーしかいないから手伝ってほしいんだ。その…私はこんな体だし…」
そう言ってつゆりは「コホ、コホ…」と咳をする。つゆりは生まれつき身体が弱く、学校も休みがちだ。今日は比較的体調が良いため、何とか登校できたらしいが重い荷物を運ぶなどといった作業は彼女には無理である。
そのため、男子である裕也はよく頼まれごとをされることが多いのだ。
「わかった。俺でよければ手伝うよ」
「ありがとうね黒崎くん。それじゃあ放課後によろしくね…コホ、コホ」
つゆりはつらそうに咳をしながら自分の席に戻る。と、入れ替わるようになつみが彼に話しかけてきた。
「ねぇ裕也くん。放課後にななちゃんと繁華街に行くんだけど、一緒に行かない?」
「悪い。すでに先約があるから、断らせてもらうよ。それとなつみ、話すときは屈んでくれ。首が痛くなる」
「そっか、それは残念…って最後私のこと遠回しにおっきいって言ってるよね⁉」
「マッサカー、ソンナコトハナイヨー。オレガソンナコトイウワケガナイジャナイカー」
「棒読みになってる時点で隠せてないよ⁉ねぇ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐなつみに、教室内の全員はまたかと苦笑する。もはや裕也となつみの夫婦漫才は2-Aクラスの名物となっていた。
「まったく…何してんだが…」
自分の席から見ていたさあやは呆れて溜め息をついた。
*
放課後。裕也はつゆりと共に保健室へと向かう。その間につゆりは苦しそうに何度も咳き込んでいた。
「コホ、コホ」
「大丈夫?八朔さん」
裕也はつゆりの小さな背中を優しくさすってやる。その度に背後からナイフのように鋭い視線を感じるが、とりあえず気にしないでおく。
「うん。ごめんね黒崎くん、気を遣わせちゃって」
「気にしないで。それに八朔さんが倒れたりしたら、皆が心配するからね」
「そっか…黒崎くんは本当に優しいよね、だから皆が信頼してくれるのかもね」
「うーん…そうかな?」
「きっとそうだよ。あ、保健室に到着したね」
会話しているうちに2人は保健室へ到着した。扉を開けようとした瞬間、「きゃ――っ⁉」という声と共に物凄い物音が中から聞こえてきた。
「「………」」
裕也とつゆりは顔を見合わせる。扉を開けて保健室に入ると先生の姿はなく、床一面には備品が散らばっている。そして彼らの目の前には、包帯でミイラのようになっている1年生の『小鳩あずさ』がいた。
「あ、つゆり先輩にお兄ちゃん☆こんにちは☆」
ぐるぐる巻きになって動けないにもかかわらず、あずさは穢れを知らない天使のような笑顔を2人に向ける。
「えっと…あずさちゃん、何をしてるのかな?」
「これはですね、つゆり先輩が来る前に少しでも片づけておこうとしたんですよ☆そしたら転んでこうなっちゃいました☆」
「転んでそんな風に絡まるか、普通…」
あずさがこんな状態では手伝いどころではないので、裕也はとりあえず彼女に絡まっている包帯を取ってやる。その際に余計に絡まって、あずさが同人誌のようないけないシーンのようになったりしたが、数分ほどかけてようやく包帯を全て取ってやった。
「これでよし。次は気をつけろよ」
「はい☆ありがとうございます、お兄ちゃん☆」
裕也に笑顔で感謝するあずさ。これでやっと整理が出来ると思ったが、『氷野くるみ』と『夢路まりあ』の2人がまだいないことに気づく。
「ねぇ、あずさちゃん。他の2人はどうしたの?」
「えっーとですね。くるみちゃんとまりあ先輩は今日は体調不良でお休みだそうです☆」
「え、じゃあ保健室の整理って…」
「俺たちだけでやるってことだな…」
まさかの保健室メンバーの4人中
「とりあえず役割分担して片づけよう。そうした方が八朔さんへの負担を減らせていいと思うんだ」
「はい、あずさはそれがいいと思います☆」
「私もそれでいいよ」
裕也の提案につゆりとあずさも賛成し、作業を開始した。
*
それから数分後。役割分担をして片づけたこともあって、すぐに終わらせることができた。
「ふぅ、ちゅかれた…」
「そうですね~、あずさも疲れちゃいました☆」
「そうか?俺は全然平気だぜ」
疲れてベッドの上に座るつゆりとあずさ。裕也も椅子に座っているが全く疲れる様子もなく、ケロッとしていた。さすが男子である。
「コホ、コホ…ちょっと動いたら喉が渇いちゃった。あずさちゃん、ちょっと購買で飲み物を買ってきてくれるかな?」
「はい、わかりました☆あずさにお任せください☆」
つゆりに頼まれたあずさが飲み物を買いに、保健室を出ていく。彼女がいなくなると、つゆりは裕也に小さく頭を下げた。
「今日は本当にありがとうね。黒崎くんが手伝ってくれたから、すぐに終わることができたよ」
「だからそんな気にしなくていいって。俺は困ってる人の手助けをしたい、ただのお節介焼きだよ」
「そんなことないよ、黒崎くんは本当に…あっ」
ベッドから立ち上がるつゆりだが、立ち眩みを起こして倒れそうになる。裕也は咄嗟に椅子から動き、つゆりの背中に手を回して支える。
「八朔さん、大丈夫?」
「ご、ごめんね。ちょっと立ち眩みがしただけだか…ら…」
つゆりは言葉が途切れ途切れになり、顔がほんのり赤く染まった。
「どうした?どこが具合が?」
「く、黒崎くん。その…顔が近いよ///」
「あ……」
言われて裕也は気づく。咄嗟に支えたため、今2人の顔はキスできそうなくらいに近かった。
(ど、どうしよう。このままだと私、黒崎くんとキスしちゃいそうだよ///)
(こ、こういう場合はどうすればいいんだ俺!ここで離したら八朔さんが倒れてしまう、マジでどうすれば!)
と保健室の扉がガラッと開き、ペットボトルを抱えたあずさが戻ってきた。
「只今戻りました――☆ってあれ?」
「「あっ…」」
あずさに今の状態を見られ、顔を真っ赤に染めて固まる2人。
「きゃ――っ☆つゆり先輩とお兄ちゃんがラブラブしてます――☆あずさはお邪魔になるので、ここで失礼しますね☆」
「ま、待てあずさ!これは誤解だ―――‼」
裕也はつゆりをベッドに座らせると、あずさの誤解を解くために保健室を出ていく。
「はぁ…さっきのはちょっとドキドキしたなぁ…」
1人残されたつゆりはベッドに横になり、保健室の白い天井を見上げる。
病気のせいであと何年生きられるかわからない自分。そんな運命がとても恐ろしくて、苦しくて、逃げ出したかった。
でも
「私、とっても幸せ者だなぁ…」
つゆりは小さく微笑み、天井に手を伸ばす。彼女の心は今、幸せという気持ちでとても満たされているのだった。
次回に続く…
あんガルがまさかのサービス終了…実に悲しいものです。
ですが私は、たとえあんガルが終了してもこの小説を書き続けます。これを楽しみにしている方でもそうでない方でも、彼女たちが恋しくなったらぜひ読んでください!
…何を言っているんだ、私は。
とりあえず次回は早めに投稿しますので楽しみにしていてください。ちなみに予定は3年生の誰かと考えております。
感想やご意見、お待ちしております。
では、また次回。