緑谷出久の個性に関する最初の思い出は
「諦めた方がいいね」
である
なんでも足の小指の関節が二つ有る無いで個性の有無がきまるとか。
ショックのあまり、あまり覚えていないが、確かにそんな事を聞いた気がした。
時が経ち、いつものようにヴィランの逃走によるヒーローの追跡ルートをインターネット上のマップにて見ていた。
「ふんふん、こう逃げてこう追って先回りしつつ逃げ道を選ばせない追い方を~」
カチカチ、かりかり
クリック音と『将来の為のヒーロー研究』と書かれたノートに書き込む音が出久の声にかき消されつつなっていた時だった。
手が滑りマウスが動きポインターが動いた。
そして、森の中にあるある建物の名前が目に入る。
「複詐写欺異能研究所?」
本当に偶然に目に入っただけだった。
だが、引き付けられる何かを感じ、出久はそこにどうしても行きたくなり。
そして、母親に頼った。
電車とバスで一時間ほどで研究所に付いた
「はいどうも、初めまして私が複詐と言います。今日はなにようで?」
研究所内の個室にて3人が椅子に付く。
「えっと、初めまして緑谷出久と言います。その僕は・・無個性でしてその」
「無個性?本当に?」
「えっと、はい」
笑うでもなくあきれるでもなく、じっと出久を見ていた複詐は立ち上がって周囲の実験器具をあさりだす。
「出久くんは個性診断を受けたのかい?」
「えっと、幼いころに、ねぇ母さん」
「はい、出久の個性発現が周囲の子たちと比べて遅いなと思いまして診断を受けたんです。小指の関節が二つあると言われまして」
探していた手を止めて、緑谷引子ほうを見る複詐は緑谷親子にとってとても衝撃的なこと言いだした。
「ああ、あの無茶苦茶な理論。昔流行りましたねー」
「へっ?無茶苦茶?」
そのまま複詐は本棚に行き一冊の本を取り出す。
「これにその理論が載っているんですが、結構前に発行された個性に関する本なんですけどね、海外で発行された本なんですよ。で、現地の言語に詳しい人が翻訳したんじゃなくて日本人の個性研究者が翻訳しましてね。翻訳が正確じゃないんですよ」
そのまま、ぺらぺらと複詐は固まる親子に向かって語りだす。
「日本言語的なニュアンスだと本来は恐れがあるって感じなんですけど現地の言語だと恐れがあるって言う日本語的なあいまいな単語が存在しなくてですね本当は日本語にするのに多言語を2つくらい経由しなくてはならないのに無理やり直接日本語にしましてねその結果小指の関節が2つあると個性が無いって言う無茶苦茶な翻訳をされちゃったんですよ」
「「・・・」」
「個性発現は人類の進化だって言う人が多いんですけどね例えばペンギンは空を飛ぶ能力を失う代わりに海を泳げるようになりましたがこれは海を泳ぐと言う『進化』と空を飛べないって言う『退化』何です進化退化は同じ意味で表側から見たのを進化裏側から見たのを退化と言っているような物なんです個性発現ってのが進化だとすると何らかの方向からみると反比例するように退化していなくてはならないんですけどねどうやって見ても個性もちの人は足の小指以外の退化は見られないんですよそしてそれは釣り合わない事から個性発現は進化ではないと言う事になって来るんですよでは何なのかと言いますと実はいまいちまだわかっていないんですよ今現在最も有力的な説がですね昔にあった超能力者が最も近いんじゃないかって言われているんですよ超能力者の逸話は世界各地にありまして有名どころでは発火能力者や瞬間移動に予知でしてねそれでね」
「ま、待ってください!」
まだまだ続きそうな複詐の話を遮り出久はまるで、叫ぶように言った。
「そ、それじゃあ僕にも個性があるかもしれないんですか!?」
その声に対し複詐はうなずき言った。
「可能性としては非常に高いと思うよ?」
「・・・」
その問いに対し出久は声も出なかった。
「私も研究であちこちに行き無個性だと言う人を見てきたが、自覚のない個性か言いたくない個性持ちの人ばかりだったね」
「え?自覚のない人と言いたくない個性?」
「ああ、例えばだけど4・5歳の時に自身の体重を1㎏軽くする個性だったら発言して気が付くと思うかい?」
「あ」
出久は思わず確かにと思い頷く。
「それと、中には知られると思わず近づきたくなくなるような個性なんてのもあってね、そういう時はごまかすか無個性と名乗っている人が多いね」
「なるほど」
「それで、君が個性持ちの可能性が多いいりゆうなんだけど、この世で一番最初に個性が発現した人は中国人、その次はインドとアフリカなんだけど君の5・6代前の祖先に外国人はいるのかな?」
その言葉に出久は母をみる。
「えっと、私たちの家系で外国人がいたと言うのはちょっと聞いた事がありません」
「だろうね」
そして、複詐は語り始める。
もし仮に個性が親からしか受け継がれない物だとすると世界中の8・9割が最初の個性発現した中国人・インド人・アフリカ人の子孫と言う事になってしまうが、それは無理がある。
500年で達成されるのかも怪しく、それはつまり個性とは親から引き継がれはするがその最初の個性もちは無個性の親から生まれなければならなくなる。
ではどうやって個性が最初に発現したかと言うと、恐らく個性を与えるもしくは個性を植え付ける個性持ちが中国・インド・アフリカのいずれか、あるいは全てに生まれて死に、火葬等されて煙なのか灰なのかは不明だが、世界中にその個性がばらまかれたと言う説が最も有力なのではないかと思われる。
そして、個性は親から子へ強制的に受け継がれるものと変化していき、それが無いと言う事はその個性の効果が無くなると言う事で、ある程度世代交代が終わった所で個性持ちがが徐々に減っていかなければならないがそのような報告は無く、結果親が個性持ちならば子が無個性と言うのは、個性発現は進化ではないと言う理屈から少々怪しくなっていく。
「で、結論としては出久君は個性を持ってはいるが非常に解りずらく、少々の検査では判明しないと言う事なのだろう」
「・・・僕が、個性持ち」
「で、ご両親それぞれの個性は何で?」
出久の母である緑谷引子は引き付ける個性、父親は火を吐く個性だと聞くと複詐は関心したように引子をみる。
「それはまた、お母さんは随分と強力な個性をお持ちで」
「強力ですか?」
複詐は話を切り、実験器具を引っ張り出していく。
「じゃあ、まずは分かりやすい火を吐く個性を受け継いでいるかどうか調べてみようか」
出久は今まで火など吐いた事が無いと言うと、複詐は個性について説明を始める。
「良く、個性は一人に付き一つなどと言われているがそれは間違っていてね、火を噴く個性だとすると、まず口の中に火を発生させる個性・火の強弱をつける個性、そしてこれが最も大切なんだけど発生させる火に口が耐える個性が必要なんだよ。じゃないと火を吐いたら口が無くなっちゃうからね。はい、これ口に加えて力強く息を吐いて」
出久が息を吐き終わると、複詐はディスプレイに出久の口内を映し出した。
「この映像の中に少しだけど赤く光っている所があるね、これが引き継いだ口から火を吐く個性だね」
「え・・・これが?」
余りに弱い個性に出久と引子は半ば茫然とディスプレイを見る。
「火を強くする能力が低いか、耐える能力が低いのかどちらかだとは思うけど、恐らく後者だろうね。幼いころ口を火傷した結果半ばトラウマ化に近い形になって出せないんだろうね」
そう言いながら複詐は手を出久に出した。
「私の個性は一定以上触れた相手の個性を、触れた時間に比例する時間コピーする個性でね」
そう言いながら複詐は出久の手を取る。
「口から火は下手にコピーして再現すると、私の口が無くなっちゃうからね」
そして複詐は手を話し、机の上に向かって手をかざし力む。
「う、動いた!」
机の上のいくつかのものが僅かだが、複詐の手に向かって動いたのを見た出久は思わず叫ぶ。
「しっかり調べてみないとわからないけど、感覚からして恐らくすべての細胞が全ての方向に引っ張っているね」
「全てのですか?」
全ての細胞が全ての方向にということは、互いに打ち消しあい結果として微々たる引力にしかなら無いため今まで判らなかったのだろうと、複詐は続けた。
「まあこれは訓練次第でどうにでもなるけども、火を吹く個性は使わないほうが良いだろうね、下手すると口がなくなるからね」
そうして出久の人生は変わった