腐り目悪魔のダンタリオン   作:silver time

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今度は羅生門イベか·········。
私はあと何度イバラギンの羅生門大怨起ィィィ!を見ることになるのやら······あそれとみこーん!の玉藻さんが来てくれました!キャットじゃなくてみこーん、コレ重要ネ。



取り敢えず次どうぞ。


terminated

駒王町に夜の帳が下りる頃。

 

宵闇に飲まれた町並みは道端に立つ街頭と小さな家々の光がぽつりぽつりと灯り、それはまるでもう一つの夜空を映し出しているかのようだ。

 

時刻で言えば既に二時を過ぎたあたり、丑三つ時と呼ばれる事もある、大体の人間が床につき寝静まった(一部の人間はその限りでは無い)頃。

 

 

 

そんな夜の闇に包まれる家々の一つ、人界拠点ダンタリオン家の居間で、ハチマンは灯りも付けずに机の上で淡い水色の光を放つ円筒状の機械を片目(・・)で見つめていた。

 

 

 

彼が見つめている円筒状の機械、その瓶のような形状のそれは側面がガラス貼り、上下に機械がそれぞれ底と蓋をするように取り付けられており、まるでSFモノに登場しそうな培養ポッドをそのまま小型化したような外見だった。その瓶のような機械の中には、光の届かぬ深海で明かりを灯したような仄暗い光を発する液体と、その中をぷかぷかとさまよう幾何学模様の描かれた球体(・・・・・・・・・・・・)が漂っている。

 

 

 

「······そろそろか。」

 

 

 

ハチマンはポッドのような機械(彼の場合は魔道具)から球体を取り出し、軽くタオルで付着した水を拭き取ると、その球体を瞼を下ろした右目へと宛てがった。

 

 

 

そしてそのまま、左手で下りた瞼を引っ張りながらコンタクトレンズを入れる要領で───

 

 

 

 

 

そのまま球体を押し込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ッ───っ痛ェ。」

 

 

 

彼の脳内で火花が散ったかのような鋭い痛みが走り、今まで世界を映していた左目と、たった今納まるべき場所へと納められた右目の視界が明滅する。

 

 

 

右目は徐々に薄暗い居間の景色を脳裏に伝え、ピントの合っていない写真のような光景は少しずつ世界の輪郭を鮮明な物へと修正していく。

 

 

 

右目(・・)の全ての作業が終了すると、今度は左目に指を突っ込み、眼球を引き抜いた。

 

 

 

「ッ痛、――――!!」

 

 

 

血が流れることはなく、若干の生理食塩水で濡れたのか少しの湿り気がするだけだった。

 

 

 

右手に収まっている眼球、の代わりをしている物。それにもまた、先ほど右の眼窩に納めたばかりの球体と同じく、幾何学模様が描かれていた。

 

 

 

「もう何年もの付き合いになるが、未だに慣れないな。コレばっかりは。」

 

 

 

右の掌に納まったままの球体、義眼と呼ぶべきソレを弄びながら、ハチマンは独り言を零す。

 

 

 

時刻は深夜。明日からの本格的な特殊作戦のための布石を打ち、それぞれが休息のために床についたが、この男はその時間帯にこうして義眼のメンテナンスを行っているのだ。自分の眼窩に収まっているものを抜き取ったり嵌め直したりと、唯でさえ常軌を逸したこんな光景を生で見ようものならSANチェックは免れない。

 

 

 

そのような配慮もあって、こんな時間に一人でメンテナンスのために起きていたのだが、そんな気配りも水の泡と化した。

 

 

 

何故ならば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「·······························································」

 

 

 

 

 

ここに控えめに言ってしょぼーんとした、どストレートに言って悲観したかのような沈痛な面持ちで彼の作業を目を逸らさずに、それでいて辛そうにそれを見ている緋色の髪の幼馴染がいるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事の始まり、というか何故こんな状況になったかを簡単に説明するならば真相はこうだ。

 

 

 

00:00~全員就寝。

 

 

 

01:24~ハチマン覚醒(眠気的な意味で)。

 

 

 

01:30~義眼修理開始。

 

 

 

01:54~喉を潤そうとリビングに降りてきたリアスに義眼の事がバレる。

 

 

 

02:01~現在。

 

 

 

 

 

ざっと説明すればこうなり、今に至る。

 

 

 

ちなみに何故わざわざリビングに降りてきたのかと言うと魔道具を満たす液体、水溶液用の水を確保するためである。

 

そんな意味不明な偶然により、現在の状況になったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

···················································································································································································································································································································································。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(凄く気まずい···············)

 

 

 

さっきからずっとこんな調子なのだ。

 

半分の作業が終わり、もう片方の義眼のメンテのみなのだが、このまま切り上げてしまうと明日からの活動に支障が出るだろう。何とかしなければと彼は思うが、対人レベルたったの5か······ふっゴミめ。な彼のコミュ力ではこの状況を穏やかなものへと戻す事などまず出来るわけがない。

 

むしろこの状況から笑いに持ってける訳ねぇだろ俺は芸人じゃねえんだよなどと心の中でも荒ぶっており、一向に空気が重たくなっていくばかりなのであった。

 

 

 

そして意外にも、この余りにも気まず過ぎて身動きの取れなくなった空気を打ち破ったのは、対面するように座り腐り目の少年を見る幼馴染だった。

 

 

 

「·········ねえ。その、義眼を、着けるようになったのって·········やっぱりあの時の·········」

 

 

 

そこまで言いかけ、再び俯いた。

 

 

 

この重苦しい空気が打破されることは無く、結局また同じように沈黙の連鎖が続くのみ······と思われたが。

 

向こうから話を切り出してくれたお陰で言い出しやすくなったのだろう。

 

ハチマンはSFポッドのような魔道具からは目を離さずに、リアスが言おうとした言葉にこう返した。

 

 

 

「······そうだな。確かにあの時だが、別にお前らが原因なんかじゃねえから気にすんな。俺の自業自得······いや、自惚れた結果だ。」

 

 

 

今は何も無い、空虚な窪みの存在する左の眼窩へと手を当てながら、自嘲するようにハチマンはそう言葉を零した。

 

 

 

「でも私が、まだ子どもだったからだとしても、私が動かなければ······!」

 

 

 

「だから気にすんなって言ってんだろ。あの時自分に降りかかるリスクすら考え付かなかった俺のミスだ。早くに魔術を扱えるようになったからって、ヒーロー気取って後先考えずに魔術ぶっぱなした俺がアホだったんだよ。」

 

 

 

「·········ごめんなさい。」

 

 

 

「謝る必要は無えって。············それにまあ、アレだ。こういうのは名誉の負傷ってやつだ。実際、あの時に何もせずに全滅エンド迎えるよりは遥かにマシだったし、その·········俺の目が逝かれただけでお前らが無事だっただけでも御の字だよ。」

 

 

 

その負傷は、失った元の眼球は昔の自分の愚かさの象徴であり、戒めであり、そして唯一の誇りでもあった。

 

 

 

ハチマンが過去の自分にこれはと自信を持って誇れる物は、これから先もずっと、この眼だと胸を張ってこたえるだろう。

 

普段言葉には出さないが、というかこれから先も面と向かって言うことはないのだろうが、リアス達三人を助けることが出来て、失わずにすんで良かったとハチマンは心の中で安堵していた。

 

その対価として、たかが目が見えなくなった事くらいハチマンにとっては屁でもなかった。

 

 

 

今はこうして魔道具の義眼を使うことでしっかりと世界を見据えることが出来ているのだが。

 

 

 

「朱乃とソーナは、その、義眼の事は───」

 

 

 

「知ってる。お前には·········敢えて話さなかった。」

 

 

 

「·········やっぱり、私じゃ頼りにならないの?」

 

 

 

「そうじゃねえよ。お前の事だから、自分のせいだって思い詰めちまうだろうから、お前には話さないように言っといただけだ。」

 

 

 

 

 

窓から射し込む月の光と、魔道具の瓶を満たす液体から放たれる淡い光のみが、暗闇の世界に唯一の光を灯す。

 

その暖かいようで、冷たいような水色の淡い光は、今のリアスの心象を表すかのようだった。

 

 

 

想い人の今まで知らなかった秘密。

 

それを聞かされなかったとはいえ、今の今までのうのうと過ごしてきたそれを知った今、彼女心を満たすものは自分のせいだという自身への怒りではなく、それを知らずに、今まで彼の優しさに甘えていた自身への嘆きだった。

 

 

 

今思えば、自分自身で立派な大人になろうと思い始めたのはその事件がきっかけだった。

 

ハチマンが負傷し病院へと運ばれる中、自分達は何もする事が出来なかった。

 

傷を治すことも、自分の身を守ること、ハチマンを助けることも出来なかった。

 

 

 

思い返せばそれからだった。ハチマンと会わなくなり、今よりも立派な大人に、悪魔になろうと。そのために距離を置くようになった事。

 

 

 

そうして、全く追い付けない背中を目指してきたものの、それでも縮まらない決定的な差を見せつけられた。

 

その事実が、何よりも悲しかった。

 

そして彼女の追い付こうとする決意はいつしか彼への嫉妬となり、強くなろうと躍起になるもその根幹を忘れていったのだ。

 

 

そして今回に至っては、自分の大切な眷属が自ら死地に赴こうとしている。

リアスにとって祐斗は眷属の一人であり、それ以上に大切な家族と思っている。それは彼女の眷属全員に対しても同じ様にだ。

 

グレモリーの悪魔は情愛に深いと言われているが、それを抜きにしても彼女のいっそ甘さとも取られかねない優しさを持ち合わせていた。いっそ人々の悪魔像からはかけ離れている位には、だ。

 

そんな彼女が、眷属の暴走とその悲しみに寄り添うことが出来ない不甲斐なさを噛み締めながらも、自分に出来ることをして行こうと奮起した最中に、それは昔の幼馴染みの怪我を、それによって発生した弊害を知ってしまった彼女の心境は、決して穏やかなものではない。

 

 

尚も自己嫌悪に陥り自身を責めるリアスを尻目に、嘆息しながら言った。

 

 

 

「·········忘れろとは言わん。ただ、これ以上自分を貶すのはやめろ。お前のその優しさは最大の美徳だが、今のそれは全く違うものだ。」

 

 

 

魔道具からピーッと小さな電子音が鳴り、義眼の修復を終えた事を告げた。

 

ポッド型の魔道具から義眼を取り出し、付着した液体をしっかりと拭き終え、左の眼窩へと納めた。

 

 

 

さっきと同じような痛みが頭の中を駆け回り小さく表情を歪めつつも、仕方の無いやつと心の隅で思いながら未だチカチカと輪郭の定まらない視界でリアスを見ていた。

 

 

 

さっさと寝るぞ、そう言いながら自室に戻ろうとして、リアスの横を通り抜ける前にその無防備な頭のてっぺんへと──

 

 

 

「────ふみゃっ!?」

 

 

 

ぐわしっ!と勢いよく頭頂部を鷲掴みにした。それと同時に良く分からん悲鳴のような何かがリアスの口から漏れ出たが、少し恥ずかしかったのか顔を赤くするに留まった。大丈夫、損害は軽微だ。

 

 

 

「いきなり何!?突拍子すぎないかしら!?というか幼馴染みとはいえ女の子の頭を鷲掴むとかどういう了見!?」

 

 

 

「ほらほら騒ぐな騒ぐな。上の奴らが起きるだろ。」

 

 

 

「誰のせいよ!」

 

 

 

明らかに雑なようで、しかしその手付きは最初以外優しく繊細なものだった。

 

長い長い緋色の髪を、慣れたように自前の手櫛で優しく梳いて行く。まあ簡単に言って、撫でているのだ。

 

その感覚を、リアスは覚えている。

 

昔の方はおぼつかない手付きで、それでも髪の一本一本を労るかのように丁寧に梳いていたあの懐かしき感触。

 

やはり今は時間が大幅にたったのか、昔よりも確実に上達していたようだ。

 

リアスは幼馴染みの撫で撫でハンドを目を細めて頬を朱に染めながらも、流れに流されるままに受け入れていた。

それでも、自分自身への嫌気が無くならないことには変わりない。

 

 

 

 

──そんな思考に至るのを、彼は許さなかった。

 

 

 

 

「面倒な案件がまだ残ってる。取り敢えず今はそっちに集中すんぞ。それが終わってからなら好きにすればいい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それとも、またただ見てるだけか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「·········冗談でしょ。」

 

 

 

その一言が起爆剤となった。

 

 

 

助けられる側に居続けるのは物語の中のお姫様だけで十分だ。

 

ならば、貴族という誇り高き存在であるべき自分は、ソロモン72柱に名を連ねるグレモリーの血を引く者であるならば、そんな情けない醜態を晒すのはごめんだ。

 

ならばこそ。彼女はもう待ち焦がれる姫君(シンデレラ)ではいられない。

 

 そして、自分は主だ。一人の王なのだ。

 

自分を信じてくれる眷属(かぞく)がいる。

 

自分を慕ってくれる家族(けんぞく)がいる。

 

そして、自分をなんだかんだで見てくれている幼馴染み(おもいびと)がいる。

 

 

 

 

 

「分かったわよ。少なくとも今は、コカビエルの件を片付けるのが先。ハチマンに言いたい事とか聞きたい事、謝りたい事ととかは全部終わってからに。それでいいでしょ?」

 

 

 

「だから、お前が気にすることじゃないって言ってるだろ·····」

 

 

 

 

 

 

 

月と星の光のみが輝く宵闇の中、再び少女は決意した。

 

自分の足で立ち、前へと進む。

 

そんな当たり前の事を成すために。

 

そしていつか追いつくのだ。

 

世の女性達が一度は夢見る白馬の王子様には程遠い、灰被りの王様の隣を歩いていくために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはそうとな、流石に下着くらいは身につけろ。恥じらいがないのかお前は···」

 

 

 

「私の脱ぎ癖知ってるでしょう。元々水を飲もうとして降りてきただけだったのに、まさか幼馴染のとんでもない秘密を目にするなんて誰も予想できないわよ。」

 

 

 

「だからって全部すっぽんぽんなのはマジで勘弁してくださいこっちの精神がマジで持たないから。理性決壊するから。」

 

 

 

 

 

 完全にとは言えないが、リアスも少しずつ調子を取り戻していった。

少なくともさっきまでの必要以上の自己嫌悪の気も薄まり、表情も僅かにではあるが、彼女の持ち前の明るさを取り戻したような気がした。

 

そんな彼女の様子を、呆れながらも彼は見守るように目を細め、微笑をこぼした。

義眼に描かれた幾何学模様が無くなった、いつも通りの腐った目で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖剣使い来襲から翌日。

 

やはりと言うべきか、案の定木場は学校に姿を現さなかった。

 

普段の立ち振る舞いや成績の良さと言い、正に模範的な優等生として学園の教職員生徒一同から認識されている彼が何の連絡もせずに休むという事態に、大半の生徒達は何かあったのかと彼の身を案じていた。

 

その真実を知る極小数の者達もまた、祐斗の先行きの危うさに不安を募らせ、勉学に励む事すら叶わなかった。

 

だが、それと同時になにかしら行動を起こすのも彼ら、祐斗の過去を知って尚も力になりたいと願った少年少女達だった。

 

仲間が死に限りなく近い方へとゆらりゆらりと歩んで行くのを、ただ指を咥えて見ているなんて事など、出来るわけがないのだから。

 

なればこそ、先ず最初に祐斗か昨日の聖剣使いかに接触して、どう協力に持ち込むかが目先の課題である。

もちろん、これは自分達のご主人様には内密に、だ。

 

気取られることなく、また戦闘も視野に入れて出来るだけ多くの戦力が必要になるのは明白であった。

 

 

 

 

 

 

「嫌だぁぁぁぁああ!! 俺は帰るんだぁぁぁぁああ!!」

 

「落ち着け匙! 大丈夫! エクスカリバーをぶっ壊すだけだから! 部長と会長に黙って!」

 

「全然大丈夫じゃねぇじゃねぇかボケぇぇぇぇ!」

 

「大丈夫だ、問題ない。」

 

「大ありなんだよ!!その台詞自体が!!俺まで巻き込むんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 天下の往来、人々の行き交う駅前で醜態など知った事かと言わんばかりに叫ぶ哀れな男がいた。

 

シトリー眷属の匙 元士郎。

 

兵士の駒を四つ使い転生した、ヴリトラの神器を宿す期待の新人である。

そんな彼は今、駅前で、恥も外聞もなく、嫌がる子供のように叫んでいた。

 

───なかなかにシュールな光景だが、どうか待ってほしい。

彼も一応自らの主からなるべく今回の件には干渉するなときつく言われており、何より匙は今回の事に何も関係がない。

祐斗の過去を知らなければ、今回の事に協力する義理も無いのだが、彼はいつの間にか同期の新人悪魔一誠の策略によって呼び出され、力仕事担当小猫ちゃんによって退路を絶たれた。

そしてこの事が主にバレればお仕置きは確定········うん、実に先行きに幸がない。

 

 

 

「そんなに嫌かよ?」

 

「当たり前だ俺はまだ死にたくない!」

 

「はぁ、しょうがねぇ······」

 

「あ、諦めてくれたか───」

 

「小猫ちゃん、バン○ルビーがラン○ージにやったみたいに腕を背中側に引っ張っちゃって。」

 

「········私が言うのも何ですが、イッセー先輩貴方悪魔ですか。」

 

「小猫ちゃんと匙もな。」

 

「いだだだだだだだだ!?ホントふざけんなよ兵藤お前!?それと塔城さんも結局やるのかよ!腕!腕もげる!!背中に足乗せないでホントにもげる!」

 

「さあ匙君。俺たちに協力するかこのまま肉体的ダメージと近隣の人の哀れみの視線による精神的ダメージを受け続けるか、どちらでも好きなのを選んでくれて構わんよ?」

 

「このド外道!鬼!悪魔!変態三馬鹿!兵藤!」

 

「だから悪魔だって。それと俺の名前を悪口みたいに言うな!」

 

·········この状態である事が既に恥ずかしいと思うの私だけですか?

そう小猫が冷静になるのと匙が「手伝うから離してくれ!」と懇願したのは奇しくも

同時であった。

 

そしてようやく解放された匙はというと、肩の辺りを労わるように擦りながらも何とか復帰を果たし、詳しい話を聞くことにした。無論涙目で。

 

「それで、結局どうするんだよ。手伝うにしても目的が不明瞭な事に首を突っ込むのは勘弁だからな。」

 

「エクスカリバーぶっ壊す。」

 

「すまん。お前に説明を求めた俺が馬鹿だった。」

 

「教会の遣いが来訪。コカビエルがエクスカリバーを盗んで逃走。この町に潜伏しているそうです。教会の遣いの二人が残りのエクスカリバーを持ってとっちめに来ました。木場先輩が教会の遣いの持つエクスカリバーを前にして暴走。エクスカリバー絶対ぶっ壊すマンに変身。現在行方不明。私達教会の二人を探す。協力してエクスカリバーを奪い返す若しくは壊す。以上です。」

 

「ごめん、帰っていい?」

 

「逃がしません。」

 

残念無念。匙君の未来には不安しか見当たらないぞう?

しかしこのまま放っておけば大惨事になる事も確実なのだ。

 

故に、匙は渋々ながらも了承するのだった。

 

「それで、その教会の遣いの奴らを探すのか?」

 

「今はそうだな。」

 

「······それってどんなヤツらだ?」

 

「片方が青髪にメッシュの入ったボーイッシュな感じの人でした。」

 

「おっぱいの付いたイケごふっ!?」

 

「───もう片方はオレンジっぽい色のツインテールの人です。」

 

「············もしかして、それってアレか?」

 

如何にも関わりたくないと言わんばかりに首を明後日の方へと向け、それと真反対の方へと匙が震える指を指し示した。

 

 

 

 

「えー、迷える子羊にお恵みを~」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私達にお慈悲をぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

聞き覚えのある声と、見覚えのおる白ローブ。

あれが先日、お互いに拳と刃を交えた聖剣使いと思えるだろうか。

 

 

『(関わりたくない······)』

 

 

三人の心の声が見事にハモった。

なにせ傍から見れば明らかな変人なのだから。天下の往来で人目を気にせずに騒いだ彼らにもそれは言えることなのだが。

 

「くそっ、誰も止まらないとはどういうことだ! 日本人は宗教に優しくないと聞いたが、そもそも人へ無償の愛を施そうという精神性すらないんじゃないのか!?」

 

 「駄目よゼノヴィア! いくらホントの事でもそうやって当たり散らしても無駄にお腹が減るだけよ!」

 

 「そもそもお前があんな絵を買うから資金が足りなくなったんだろうがっ!? 人を諌める前に己の行動を鑑みろっ! 大体なんだこの絵は誰が描かれているというんだ!」

 

「え、えーと、多分、ペテロ様······?」

 

ああ、そうこうしている内に向こうは向こうで仲間割れを始めてしまったようだ。

なにせ彼女等の生命線となる活動資金が底をついたのだから。そしてその理由が訳の分からん絵画を購入した事による自業自得とも言えるのであるが。

と言うよりも日本人がというか、その無償の愛を施す相手が如何にも近寄り難い雰囲気を放ってしまっているせいなのではないかとツッコミたいところだ。

とにかく、もうこの時点でさっさと帰りたい。そう思う三人の感性と思考は決して間違いではないだろう。

各々が家で好きなことをして気を紛らわせたいと強く願うのも無理はなかった。

 

しかしあのまま放っておく理由にも行かず、このままだと話が進まないので仕方なく接触を図る三人であった。

 

 

はてさてこれからどうなる事やら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、わざわざ私達に接触した理由をそろそろ聞いても良いだろうか?」

 

人々が行き交う駅前の路上から近くのファミレスに場所は変わり、青髪メッシュの少女、ゼノヴィア・クァルタはそう切り出した。

面倒な事にはならずに何とか話を進められそうなのは願ったり叶ったりだった。

一誠としてはアーシアに対しての罵倒を許したわけではなかったが、今は話し合いの場なので余計な発言は控えることにした。

うむ、多少(・・)のイレギュラーな事態はあったが何とか話し合いにまで漕ぎ着けた。

後は協力の確約さえ出来れば彼らの目標へと大幅に進むだろう。

敵対している協会勢力の者との同盟は少々アレな気もするが、その辺は後でいくらでも理由付けができる。

 

何はともあれ、無事に話を進められそうで良かった、良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テーブル一面に広がった多くの空の皿が無ければ、更に良かったのだが······

 

この数日禄なものを食していなかったのかと聞きたくなる位に、気付けば追加注文された品々が次々に彼女等の胃袋へと消えていった。

そしてこの代金の受け持ちは一誠であり、あまりの量に彼の金銭面へのダメージが致命傷レベルで当たってしまった。

そして同時に、彼にとってのライフラインが購入出来なくなったという自体に気づくのはそれから少し後のこと。

 

目の前の惨状に唖然とする二人(小猫からしてみればそれほど驚く事ではない)だが、直ぐに脱線しかけた思考を元の線路に復帰させる。

 

人生何事も切り替えが大事なのだ。

 

「······色々言いたい事はあるけど、さっさと本題に、単刀直入に言わせてもらう。

 

エクスカリバーの破壊に協力させてくれ。」

 

その言葉と同時に、二人の表情から僅かに浮かんでいた笑みが消えた。

 

「······正気か?」

 

「イッセーくん、それってどれだけ危ないことか、わかってる?」

 

「危ない? そりゃ確かに聖剣は俺達悪魔にとっての天敵だけどさ。それ位覚悟の上─」

 

「そうじゃなくて、私が言いたいのはその後の事だよ。」

 

「その後?」

 

イリナの言うその後のことが分からず一誠は首を傾げる。

二人はため息を大きく吐き、

 

 

「つまりだな兵藤一誠、『悪魔』が『聖剣』を破壊する。それが問題なんだ。」

 

「「あっ······」」

 

そうして、転生したばかりのルーキー二人は理解した。

自分たちがやろうとしていることの意味を。

 

「君達悪魔が我々教会、若しくは天界の管轄の聖剣を破壊すれば、それは天界と冥界の確執をより深いものにしてしまう。我々としては余計な火種をわざわざ作り出すつもりは無い。」

 

「それに、今回私達が敵対しているのは堕天使。これがもし堕天使の組織的なものによるなら。」

 

「······私達は二つの勢力を敵に回す。つまりは、もう一度戦争を起こす火種になるかもしれない、という訳ですか。」

 

小猫の補足に二人は頷いた。

今回の事件はかなり複雑な事情が幾つも絡まっており、とてつもなく面倒な事態に成り果てていた。

だがもちろん、それだけ複雑になっているからこそ、突ける穴もあるわけで。

 

「だが、私としては君達の申し出を受けたいと思う。」

 

「ちょっとゼノヴィア!?」

 

「イリナ、どのみち私達だけではコカビエルを打倒するどころか聖剣を破壊する事も叶わないだろう。」

 

「だからって、悪魔の手を借りるのは─」

 

「なら、悪魔としての彼ではなく、赤龍帝としての彼に協力を仰ぐというのはどうだ?」

 

堕天使とも悪魔とも何かしらの関係を持つのは得策とは言えない。ならば、第三者のように見えるグレーゾーンの人物ならば、どうだろうか?

 

たまたま訪れた場所に今代の赤龍帝が居て、共闘の後に彼が悪魔に転生したとしても、問題は無いと言い張ることは出来る。(勢力としては無視出来ないが)

幸い教会には悪魔側に赤龍帝がいるという話は未だに伝わってはいなかった。

そしてたまたま、彼の知り合いの悪魔による助力を得られるという筋書きにさえ出来れば、直ちになにかしらの影響が起きることはそうそう無い、筈だ。

 

「それなら······いいのかな?」

 

「そういう訳だ。こっちは君達の提案を受け入れようと思う。」

 

「あ、ああ。」

 

「本格的に逃げ場が無くなってきたなー·········」

 

「匙先輩、そろそろ覚悟決めてください。」

 

かくして、教会と悪魔による共同戦線が築かれた。

目標は聖剣エクスカリバーの奪還若しくは破壊。

 

ならば、ここにはもう一人の役者いなければならない。

 

 

 

 

「なるほど、それが僕を呼んだ理由かい?イッセー君。」

 

復讐に燃える一人の騎士。

木場祐斗という此度の舞台の主役が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「収穫は今のところ無し、か。」

 

「なるほど、向こうには相当の手練れが居る様ですな。これ程迄に巧妙な隠れ方、我々人狼の嗅覚を持ってしても追う事が難しいとは。」

 

「そう簡単にアタリに辿り着いても、すぐさま乗り込むわけには行かんがな。しかし、こうも上手く隠れられると面倒だな······」

 

「これは長期戦になるやも知れませんな。お茶の準備をしてきましょう。」

 

「アッサムの砂糖増し増しで頼む。」

 

「承知しました。角砂糖二つ分にしておきます。」

 

「俺の話聞いてた?」

 

 

ダンタリオン家人界地のとある部屋で、二人は情報収集に勤しんでいた。

一人は言わずとも分かるよね?なこの物語の主人公、ハチマン・ダンタリオン。

そしてもう一人は彼の、というよりダンタリオン家の執事長。ヴァルケンハイン=R=ヘルシング。

 

以上の二名が居るのは情報統括室。

本来は駒王町管理のための部屋であったが、臨時で司令室としての機能を増設した簡単司令部だ。

 

そして何をしているのかと言うと、駒王町に散らばった眷属達からの情報を総括し、整理する為である。

 

だがこれと言って重要そうな情報は未だに来ていない。

 

 

『こちら覗覚星。東方面の商店街は特に手掛かり無し。足跡どころか痕跡とかすら何も見えない(・・・・)。ホントにコカビエルなんてバケモノが居るのかも怪しいんだけど。』

 

「管制塔より返答。引き続き東方面の捜索を行え。観測所も同様。」

 

『了解。』

 

「──ふう、またハズレでしたな。」

 

「問題無い。少しづつ捜索範囲を狭めていけば自ずと見つかるさ。」

 

「だといいのですが。こちら、アッサムになります。」

 

「おう。···············ヴァルケンハイン、本当に角砂糖二つにしやがったな······」

 

「どうしましたか?ハチマン様。」

 

「いや、何でもない。」

 

このように、今のところめぼしい成果は無し。

なんの痕跡も残さない敵の手腕に脱帽すると共に、ハチマンは思わず頭を抱えた。

 

それ以外にも······

 

 

《溶鉱炉より定時報告。目標の痕跡未だ確認出来ず。》

 

『大尉!向こうのアレがかんらんしゃなのか!?とっても大きいぞ!おお!向こうにあるのは天誅ガールズのDVDだ!?

あ、ハチマン!こっちは何も無かったぞ!そーさくかつどうはちゃんとやっているからな!大尉!次はあっちだ!』

 

《·········報告終了する。》

 

 

 

 

 

 

『こちら防壁堤。こちらも痕跡を発見できません。それと、ファウス······生命院が警察の方に連れていかれました。指示をお願いします。』

 

 

 

 

 

 

『こ、こちら情報室!こちらもハズレでしたわ、引き続き捜索を······待ちなさいな!切り刻んでもいい?じゃありません!お願いですから、私の話を聞いて、コラ!?だからダメと言っているでしょう!?ああ、もう!通信終了しますわ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやー申し訳ありません。私としたことが抜かりました。こちらは隙を見て脱出しますので、ハチマン様はご自分の仕事を。しかし警察の方々も早とちりをしますねぇ。私が身につけている白衣を見れば医者だと言うのは丸わかりでしょうに。え?頭の被り物が原因?そんなまさか。何処にでも売っている紙袋ですよ。マスクとサングラスにニット帽の強盗スタイルよりも簡単に、そして自然な変装を両立し──』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何やってんだアイツら·········」

 

 

ハチマンは再び頭を抱えた。

大尉とマシュとネイトはまだいい。

延寿も歳相応でまだ許容できる。

だが、だ。

揃いも揃って問題児が多すぎる······

 

「不安しかしなくなってきた······」

 

なまじスペックが高い為、こういう暴走を起こされると実に面倒である。

誰かの上に立つ主という者は、こういう所で面倒くさいのだ。

それは何処ぞの赤龍帝が目指すハーレム王とやらも例外ではない。

 

この先に不安しか感じられないハチマンであったが、そんな時だった。

 

 

プルルルルルルル!

そんな無駄に喧しい電子音が情報統括室の中を響き渡った。

 

 

「······塔城?」

 

 

電子音の源はハチマンの携帯から鳴り響き、画面には塔城の二文字が映し出された。

 

 

「塔城様からの連絡、なにかあったのでしょうか?」

 

「まさかな·········」

 

 

若干の嫌な予感を抱きつつも、ハチマンは少しの間迷った挙句通話ボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダンタリオン、聞こえているだろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

声の主は小柄な後輩ではなく、先日の厄ネタの片割れだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木場祐斗という一人の少年を、匙元士郎は始めて理解した。

 

優等生であり、非常にモテるイケメン。

そして性格も良しと非の打ち所のない人間。そしていけ好かないという個人的な感想。少なくとも、学校での彼を見て、匙はそんな印象を抱いていた。

 

それは間違いなく木場祐斗という少年の人がらである。しかし、それは一側面にしか過ぎないのだ。

 

心の奥で誓った、忘れられる訳の無い感情。復讐という罪。

 

その思考に至るまでの木場祐斗という少年の過去は、普通の人生を送ってきた彼からすればとても想像しえない、重すぎるものだった。

 

そしてこの男、基本的に同級生からも普通だと思われてる割には情に厚い性格をしている。

同時に感情移入しやすく、ちょっとしたドキュメンタリー番組でも涙腺にきてしまうという涙脆い一面もあるのだ。

そんな男が悲しい過去話を耳にすれば

 

 

 

「木場ぁぁぁぁぁ!!」

 

 突然そう叫び声を上げた匙は、ガシッと祐斗の肩を掴むと前後に激しく揺らしながら泣き叫んだ。

涙脆い彼がそんな重たく悲しい過去語りを聞いて、何も思わないわけがない。

 

「辛かったな……っ! 辛かったろう! チクショウ、俺はお前の事を誤解してたぜ! ただのいけすかねぇ爽やかイケメンで、顔で世の中なんだって巧くいってきた甘ちゃんだとばかり……………」

 

 鼻水と涙で顔を汚しながらも、今まで思っていた本音をここぞとばかりに撒き散らす匙。悲しみの涙と同時に何か色々漏れ出しているのであった。

 

「………え? 僕、そんな風に思われてたの?」

「俺は今、モーレツに同情している! そして憤っている! ああ酷い話だ!」

 

そう泣きながら豪語する、ちょっとウザくなりだした匙の勢いに流石の祐斗も困惑の表情、どころか若干引き気味になりだした。

 

「最初俺は、この話を降りようと思ってた! だが気が変わったぜ! 俺はやる! やってやる! ああ、会長の制裁を敢えて受けよう! それでも俺は、お前に協力してやる! 聖剣をぶっ壊す? 上等じゃねぇか!」

 

「あ、ありがとう、匙くん」

 

「礼なんて要らねぇやい! 俺がやりたいからやるんだ! それと、俺の事は元士郎って呼んでくれよな!」

 

「匙先輩、落ち着いてください。」

 

「げぼっ!」

 

そろそろ落ち着いてもらいたく思ったので、腹に拳を打ち込んだ小猫は後にそう語る。

というかいい加減静かにしなければ遠くでとても恐ろしい笑顔を浮かべている店員様から強制退去の死刑宣告が告げられるのが明らかだからだ。

 

「ご、ごめん。」とようやく落ち着きを取り戻した匙を尻目に、ゼノヴィアは本題の確認を行った。

 

「では、これで同盟の締結は完了したと認識していいな?」

 

その言葉に、一同は首を縦に振る。

祐斗自身はあまり肯定的ではなかったが、折角訪れたチャンスを一時の感情で不意にする彼ではない。

 

それに、先日主の幼馴染みはこう言っていたではないか。

 

『利用できるものを全て利用しろ』と。

 

ならば、感情の抑え時は今だ。

耐え忍び、そして目的を果たす。

 

そんな単純な解を手にするために、祐斗はそれを受け入れた。

 

 

 

「しかし、どうせならばもう少し戦力が欲しくはあるな。」

 

「流石にこれ以上誰かを巻き込むのは出来ないからな?部長たちにバレる。」

 

「だけど、実際俺たちだけで勝てるかなんて聞かれたら······なあ。さっきは勢いに任せて言っちまったけど、こっちは間違いなく力が足りない。」

 

そして目先の問題はそれだった。探すのも勿論目先の目標ではあるが、いざ相対した際に今の戦力で戦えるかと聞かれれば、即答でYESとは答えられない。

 

なにせ相手は聖書に名を記した最上級クラスの堕天使であり、恐らく向こうには与していると思われるはぐれ悪魔祓いの存在。

バルパー・ガリレイを戦力に数えなくとも、かなりの厄介な者達が立ちはだかるのだ。

 

そして、だからこそ。

ゼノヴィアはその問題を解消するために、却下される前提である提案を打ち出した。

 

 

 

 

「ダメもとで聞きたいのだが、千の魔術を携えし者(グランドキャスター)······ダンタリオンに協力を仰げないだろうか?」

 

 

 

それから少しして、それを全力で却下しようとした二年生二人は小猫によって力技で抑え込まれ、連絡手段を提示したのだった。

抑え込まれた被告人二人は、ハチマン経由で自分たちの主にバレるのではないかと危惧し止めにかかったが、それも後に意味をなくすことになろうとは、この時はまだ誰も知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「······何故塔城の番号からお前の声が聞こえるんだ?」

 

 

部屋の温度が徐々に下がっていく感覚がした。口から飛び出た言葉も、まるで冷えきった鉄のように冷たいものだった。

 

「教えてくれよ。何故お前が塔城の携帯から掛けてきてるんだ?」

 

携帯電話の向こう側から、息を呑む音が聞こえる。

下手なことを言えばその後がどうなるかなど分かったものではない。

 

「お、落ち着いてくれ。私達は彼女達に危害を加えていない。私達は君に話がある。その為に彼女の携帯が必要だったんだ。」

 

だから、極めて慎重に、状況と情報を整理しつつ簡潔に用件を伝えた。

 

「······用件はなんだ?」

 

少しばかり、凍てつくように冷たい声音に幾らかの暖かみが戻った。

最悪の展開は避けれたとゼノヴィアは安堵し、本題を切り出す。

 

「君の力を貸して欲しい。謂わば協力の要請だ。」

 

「協力だと?こっちがそう持ち掛けた話をお前達自身が不要だと断じただろ。それに表立っての協力は互いに不利益が生じるんじゃないのか?」

 

 

「確かにそうだ。だから一度は君の話を断った。だが私達も進んで死にたいとは思わない。こちらは目的を果たせればそれでいいのさ。そして私達は兵藤一誠の協力の申し出を了承し、一時的な同盟を組むことにした。」

 

「だから俺たち『悪魔』が介入する事自体が·········いや、なるほどな。」

 

「流石千の魔術を携えし者(グランドキャスター)と言ったところか。頭の回転も早いと来た。」

 

「その名で呼ぶな。しかし、そうか。『赤龍帝』というグレーゾーンを利用するか。」

 

「どうだ?そちらとしてもやりやすいのではないか?」

 

実際、勢力同士故の確執という枷が無くなれば幾分動きやすくなる。

ただ、その材料が限りなく黒に近い(コチラ寄り)グレーゾーンであることが唯一の懸念ではあるが、それを差し引いてもその選択は今のところ一番の解決法だ。

それに加え、この地は悪魔側が管理しているとはいえ、元々日本神話群の神々により統治されている場所であり、その地で何かが起き、その原因が聖書勢力にあると知られれば実に目も当てられぬ事態になる。

わかりやすく言えば日本神群からの追求により何かしらのダメージを負うことになるのが目に見えてわかるのだ。

だが逆に言えば、問題解決のために動き見事事態を収めさえすれば、他勢力との確執云々の前に日本神群からの追求やらなんやらは回避できる。加えてそもそもが教会の不手際と堕天使勢力の者がこの事態の発端ならば、残りの二勢力は強く出れはしない。

それからのハチマンの脳内リスクリターンシュミレーションは早く、最終結論を出した。

 

 

 

 

「──了解した。ならばこちらも協力を惜しまん。だが、こちらとしては条件というか、今のところ俺を戦力には数えないでおいてくれ。」

 

「······それは何故だ?少なくとも君の力は私達よりも上ではないのか?」

 

「俺は元々ガチの戦闘は専門外なんでな、俺の常套手段は敵の不意を突いてさらに出来た隙を突く。最後に罠に陥れるって言う前準備前提の力なんでな。それにコカビエルを相手にするのなら念入りな準備が必要になる。素の殴り合いだと負ける自信があるぞ。」

 

「なら、君の言う協力とは?」

 

「代わりと言ってはなんだが、今この街には俺の眷属が揃い踏みしていてな。もしも戦闘になったら俺の眷属に協力を仰げ。唯でさえ注目を集めやすいヤツらばかりだからすぐに分かるだろう。」

 

「······こちらから断っておいて今更だが、済まないな。」

 

「じゃあな。こっちはこっちで情報収集に戻る。何かあったらそっちにも情報を送ってやるよ。」

 

「感謝する──「ハチマンさん。イッセー先輩と匙先輩からのお願いがあるそうです。」

 

「ん?」

 

「部長と会長には内緒にしておいてほしいと。」

 

「·········了解了解。んじゃ後はそっちで勝手にやれ。危なくなったら取り敢えず逃げろよ。」

 

「ありがとうございます。では、失礼します。」

 

通話を終えて、ハチマンは一際大きく息を吐いて後ろへと振り返り、一言問いかけた。

 

 

 

 

「んで?お前らのジャッジは?」

 

「「お仕置き(ね/ですね)」」

 

 

彼の後ろに、呆れたように苦笑し有罪判決を下した二人の王がいた。

先ほど黙っていてほしいと言われたが、実に運が悪い。この場にその相手が居合わせているなど、彼らは考えていないだろう。

今回ばかりは見逃しても良いのではないかとも思うが、こちらに決定権は非ず、笑えないレベルで危険な件に頭を突っ込もうとしているのでどうにも出来ない。

ハチマンはそっと心の中で合掌した。

 

「そのお仕置きとやらは少しばかり加減をしてやれよ······?とにかくこっちも本腰を入れていくとするかね。」

 

「考えておくわね。それじゃあ私達も出てくるわ。何かあったら連絡お願いね。」

 

「お二人共、くれぐれも無理をなさらぬようお願いします。」

 

 

 

 

 

 

様々な要因(ファクター)が入り交じり、物語は急激に加速し、本来の形よりも歪なものへと変じてゆく。

その結末として描かれるのは王道の御伽噺(ハッピーエンド)か、それとも悲哀の戯曲(バッドエンド)か。

 

その結末を、今はまだ誰も知りえない。




文章長い割にはそこまで進んでないという罠。
孔明じゃ!孔明の仕業じゃ!

あーもうなー。ホントはフリードと遭遇するところまで書いて後はオリジナル展開を挿もうと思ってたのにこの始末·········自分のダメさ加減がよーく分かりますわ。



そんなこんなで7話、どうでしたでしょうか。
まさかハチマンの目が義眼だったとはなー驚きだなー。
え?じゃあ何で腐り目って表記したのかって?





············そりゃあハッチーのアイデンティティですし。
実際のところカモフラージュの為の偽装魔術を使用すると本人の心象が知らずのうちに浮き出てるとかそんな感じで、ここのハチマンも原作よりは軽いとはいえ捻くれてますし······

ああそれとも一つ。
ここのハチマンは八幡ではなくハチマンである。

本編/原作の八幡らしく、それでいてifの可能性から生まれたハチマンであることをお忘れなく。




それではバイにー!







IT'S SHOWTIME(さあ、制裁の時間だ)!!







S「···············(ニコッ)」←玉藻当てた人

D「································································(ニッコリ)」←玉藻LOVEなみこーん教徒
S「············執行猶予は?」

D「無し。死刑。」

S「優しく殺してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


ざんねん!!しるばーの ぼうけんは これで おわってしまった!!
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