腐り目悪魔のダンタリオン   作:silver time

9 / 10
(暇つぶしの手段は)もう大丈夫だ、何故って?

私が来た!



米津さんのピースサインがマジで神曲過ぎる!
いつかこの話のサブタイトルに使いたい······というかイメージした話を作りたい······どれくらい掛かるかは分からないけどぬえ。

さあ物語的にはそろそろ中盤でっせ。






We have always stood on the borderland(我々は常に境界上に立つ).


Borderland

放課後の共同戦線締結から少し後、彼等彼女等は山の廃教会に集合していた。

 

時刻は既に11時を過ぎた辺り、仕事帰りのお父さん達が行き交う時間帯に、聖剣破壊同盟は全員がある格好をして夜闇に包まれた駒王町を闊歩していた。

 

それは悪魔である彼等からすればまず触れようとも思わない装い、神の教えを説く神父様の服装に身を包んでいた。

勿論、これにも訳があり、というか作戦の最中である。

 

それはゼノヴィアから齎されたある情報がきっかけだった。

 

 

「コカビエルの側についているはぐれ悪魔祓いは、何故か神父を次々と襲っているらしい。詳しい理由は分からないが、これを逆に利用してヤツを誘き出す。」

 

つまりは囮捜査である。

 

ちなみにこれを下に神父のフリをするといったアイデアの発案者はイリナだ。

悪魔が神父服を身に纏うなど誰も想像する事さえなかっただろう。

 

「悪魔が神父の格好をするなんて、普通なら考えないよな。」

 

「抵抗はあるだろうけど、そこは我慢してね。」

 

捜索は足が命である。そして何より、今回の作戦は例えるなら狩りだ。

多くの罠を仕掛け、引っかかるのを待つ。

つまりは戦力の分散だ。

薄く広く捜索網を張るのなら一人ずつ夜の駒王町を徘徊するのでも構わないのだが、相手の実力は未知数だ。確実を期すのなら戦力を二分にするのが望ましかった。

 

結果、一誠、匙、小猫。

 

そしてゼノヴィア、イリナ、祐斗の二組に別れ、それぞれが手始めにはぐれ悪魔祓い

の捜索を始めたのだった。

 

準備は整い、日がだいぶ落ちてきた夕暮れ時。今宵、この町で何かが起きようとしているのを、現実を生きる人間達は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

段々と夜の帳が落ちてき街灯の明かりがポツポツと照らす夜道を、一誠、匙、小猫の班は神父服で歩いていた。

本格的に暗くなり、敵が奇襲を仕掛ける絶好の隙になりつつあるが、もとよりそれが狙いである。さらに言えば、悪魔である彼らの視界はこの真っ暗になりつつある夜の街でも良く見通せる。

例え襲われたとしても引けは取らないはずだ。

 

「いまさらだけどさ、聖剣を破壊するって言ったって、悪魔の俺達が聖剣で、その、斬られたら······」

 

「洒落にならない痛覚に悶え苦しんで消滅しますね。」

 

「うわーい慈悲がねーや。」

 

「だ、大丈夫だろ。聖剣にさえ気をつければ······」

 

「ハチマンさんの言うフラグにしかなりえないのでやめて下さい。」

 

そんな会話を交わす神父に扮した悪魔組一行だが、彼らが通る道を照らす街灯の光が一瞬途切れた(・・・・・・)

 

それは単なる明滅などではなく、なにかに遮られたような不自然なもので──

 

「っ!上です!」

 

「なっ!?」

 

「クソッ!」

 

各々がその場から四方に散らばるように飛び退き、寸でのところで回避した。

 

それからすぐに、ブオン!と風を切る音が耳に届く。さっきまでいた場所に、何かが居た。

 

一同は道のど真ん中に視線を向けると、一誠と小猫がアーシアの件で知ることになったある人物が立っていた。

 

「いやー失敗失敗。天才秀才フリード君でもミスの一つや二つは日常茶飯事ですわ!だから三回目は無えんだよテメェらの生には。さっさとおっ死んでてめぇの不要さを噛み締めて死ね。」

 

街灯の光に照らされ、鈍い光を放つ歪な剣、そして脱色したかのような白髪の神父。オマケに特徴的すぎる言葉遣い。

 

後者二つの情報だけで、一誠と小猫は一瞬で脳内検索に引っかかり、視認した人影を見て、完全に記憶のものと一致した。

 

 

「フリード、またてめえか!」

 

「あーりゃりゃ?神父一行をチョンパしようと思ったら悪魔の扮装ですかい?それに誰かと思えばこの前のクソ悪魔クンに怪力ロリに·········誰アンタ?」

 

そう、教会から追放された狂人神父、フリード・セルゼン。

かつて相対した狂気の者がそこに居た。

 

「ほうほうほう?ナールほどねぇ?もしかしてもしかしなくても、聖剣(コレ)を狙ってきたのかにゃー?まあ何であろうとどの道ぶっ殺すけどな。」

 

「な、なんか知らねぇけどヤバそうな雰囲気しかしねぇ奴が来た!」

 

「うむうむ。そこの知らねぇクソ悪魔君大正解。まさにヤバくて失禁もののイカレ神父ことフリードさんでっす!どうぞよろヒー──っと危なっ!そこの怪力ロリ!人様が自己紹介してる時に攻撃とか!大体の戦隊モノのルール違反だろコラ!!」

 

「知りません···!あと怪力ロリって何ですか。死んでください···!」

 

若干シリアスが崩れた気がしたが、それでも一瞬でお互いの命をもぎ取ろうとぶつかり合うフリードと聖剣破壊戦線悪魔組。

遅れて一誠も赤龍帝の篭手を顕現させた左腕で殴りかかり、それに追従する形で匙も手甲のような神器を顕現させ、援護を開始した。

 

「うおっと!随分見ねえ間に強くなったじゃねえかよイッセークン?」

 

「ハッ!なめんな!」

 

「いやいや別になめてるつもりなんてねえどすわ!っと、なんだなんだよなんですか?この青白いラインはよぉ!」

 

「そこです。」

 

「あぶっ!お宅らちょっと容赦無くね!?」

 

一誠が真正面から突撃し、匙の神器『黒い龍脈(アブソーション・ライン)』による援護、そして死角からの小猫の一撃。

即興の連携にしては及第点を付けれるレベルではある。だが逆に、一対三という割と分の悪いどころか不利でしかない状況においても、この三人を同時に相手にしても一歩も引かないでいる。はっきりと言って異常だ。何せまだ未熟とはいえ今代赤龍帝とヴリトラの神器を宿した者、そして力に関しては他の追随を許さない戦車の猛攻を生身の人間がたった一人で凌いでいるのだから。

 

「クッ、攻めきれねぇ!」

 

「ぐっ、このっ!」

 

この異常な攻防も、ようやくの終わりを見せると思われた。だがそれは、外からの要因によって変貌を見せるのだった。

 

「ハッ!」

 

「っとお!?」

 

上方から襲い来る黒き破壊の刃、壊す事に特化した破壊の聖剣がフリード目掛けて牙を向く。破壊の聖剣の振り下ろしには流石のフリードも死を感じ、自身が持つ聖剣の権能を発動させ間一髪で全力回避した。あと数センチズレてただけでトマトをグチャっと潰したようなスプラッタな絵面が広がり、放送禁止待ったナシになっていただろう。

 

「チッ!ハズした!」

 

「あっぶねえことすんな!オイ!そんなもんでやられちゃ放送禁止のミンチよりひでぇになっちゃうでしょうが!」

 

別行動していたゼノヴィアの奇襲は失敗した、だが。

 

「まだまだ!」

 

背後から襲い来る斬撃を、フリードはこれまたしゃがむ事で避けた。正に紙一重。

あとコンマ数秒でも遅ければフリードの胴体が綺麗にスパッと寸断され、フリ/ード

となっていたかもしれない。

 

「隙を生じぬ二段構え!?アンタら飛○御剣流でも会得してんの!?」

 

「さっきからなに言ってるの?」

 

「······何言ってんだオレっちは。」

 

何だか思考が揺れに揺れているというか、ごちゃ混ぜに近い事になっているがそれはそれとして、背後には鎌へと姿を変えた擬態の聖剣を構えるイリナが立っていた。

不意打ちの初撃(ファーストコンタクト)が外れると、鎌からまた日本刀のような姿に変化させ構えをとる。これで五対一。四方を囲まれ逃げ場を失いつつあるフリード。だがここにはあと一人足りない。

ここに居るべき、もう一人の騎士が。

 

「はぁぁぁぁっ!!!」

 

渾身の力を込め、憤怒などの複雑な感情を載せた叫びを上げて、創り出した魔剣で斬り掛かる悪魔の騎士。

 

即ち、復讐者木場祐斗。

復讐に燃える魔剣を振るう騎士が、そこに居た。

 

「またですかい!!ホントに!ホントにうぜえっすわアンタら!」

 

いい加減ヤバそうと感じたフリードは距離を取ろうとして懐から取り出した銃、洗礼銃と呼ばれるその火器を手に取り、牽制としてがむしゃらに発砲した。

乾いた音と共に、その黒鉄の物体の先端に空いている空洞(じゅうこう)から無数の光弾が飛び、突き刺さらんと空を突き進む。

 

だがそれらは、木場の創り出した魔剣、光喰剣(ホーリーイレイザー)によって裂き吸われ、残りの数発もイリナとゼノヴィアにより斬り落とされる。

 

「チッ!こういう時はさっさと退散──」

 

「逃がすか!」

 

「ちょっ待、バランス崩れぶげらっ!」

 

すぐさま回れ右して逃げるんだよー!と走り出そうとすれども、右足を絡め取られすってんころりん顔面強打。

匙の手の甲を覆うトカゲのような手甲から舌のように伸びる青白いラインは、フリードの右足に蛇のように巻き付いて離さない。

 

「な、なんじゃこりゃァァァ!?ちょっと待って、タイムタイモ!ちょっ、全然外れねぇ、うぜえ、うぜえ!ウゼエエエエエ!!」

 

まるでどっかの英国製最高級のり巻きを被った子安ボイスのちんちくりんな変な生き物を相手にしたリアクションのように絶叫するが、それはそれとして、立ち上がって匙の黒い龍脈の解除しようとするも、絡みついて離さないラインを取り外すのに四苦八苦し、天閃の聖剣で切断しようとしてもなかなか斬れない。

 

「コイツから逃れると思うなよ!今だ木場!やっちまえ!」

 

「ありがとう、匙くん!はああああ!」

 

その隙を見逃すはずも無く、祐斗はフリード目掛けて疾走し、魔剣を以て斬り掛かる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

魔剣の一閃がフリードを袈裟に斬り裂き、フリードは力無く地に伏せた。確かに感じた手応えととも。

 

「や、やったか。」

 

「·········。」

 

不安そうに一誠が呟く。

フリードは間違いなく倒した。それは間違いない。今眼前に居る自らの血で広がりつつある血の池に沈み、体はピクリとも動こうとしない。

 

「しまったな。これでは情報が聞く事が出来ない。」

 

「って言ってる場合じゃないよゼノヴィア!このままだと死んじゃうから!」

 

「仕方ない、まずは手当てをしてから情報を聞き出そう。助かるは分からないが。」

 

情報が聞けなければそもそもこの作戦に意味がない、幸いにも天閃の聖剣はこれで回収できるが、他の聖剣の在り処を聞き出し、コカビエルの目的を暴かなくてはならない。一応騙し討ちの可能性も考慮して、警戒しながらフリードに近づこうとした。

 

 

 

 

 

「甘ぇよ。」

 

 

 

 

ザシュッ、と。肉を裂く音が聞こえた。

 

「───え?」

 

その音源は彼らの後方、一番後ろで援護を担当した匙の居る場所からのものだった。

 

今思えば、彼ら彼女らはしっかりと理解出来ていなかったのかもしれない、フリード・セルゼンという狂人の狡猾さ、最も好む戦い方を。

そう、何時から目の前のフリード・セルゼンが本物だと錯覚した?

 

「──カフっ。」

 

恐る恐る、一誠達は真後ろへと首を動かした。

 

 

視界に映ったのは、匙の口から溢れる血が顎を伝いこぼれ落ち、純白の制服の襟を少しづつ紅く、朱く侵食していく光景。

 

 

 

 

 

 

 

 

その真下、腹部からまるで寄生した宇宙人が腹を食い破って出てきたかのように、一本の鋭利な、一目で剣とは呼びづらい歪な剣が匙の腹部を貫き、それを中心に赤い液体が溢れ出す光景。

 

脅威は、彼らの真後ろにいた。

 

 

 

「さ、匙ィィィィィ!!」

 

ズルっ、と、フリードが天閃の聖剣を引き抜くと同時に、匙は膝から崩れ落ちた。

ベチャッ、と水滴の音が聞こえた。

フリードは匙の倒れる姿に目もくれず天閃の聖剣から滴る紅い血液を一瞬見やり、ブンッと振り払う。

 

「はーい、ワンダウーン。ったくよお、お宅ら容赦なさすぎンだろ。」

 

うんざりとした声音と共に、神父服の前部を左右に広げる。まるで見せびらかすように、神父服の裏で眠るそれらを一誠達の眼前に晒した。

 

「バルパーからパク、借りたエクスカリバーちゃん達が無かったらマジで三途リバーに直行してたんスけど?」

 

そこには三本の残りの奪われた聖剣(エクスカリバー)祝福(プレッシング)透明(トランスペアレンシー)夢幻(ナイトメア)、その全てが存在していた。

 

「ま、まさか、途中から入れ替わっていたのか!?」

 

「いやー流石エクスカリバーって所かなぁ!透明と夢幻と天閃の合わせ技で作った分身のジツってヤツだ。正に質量を持った残像、見事に騙されてやんの。まあ、俺様さんは途中からここで透明になって見てたんだけどにゃ。」

 

嗤ってそう言いながら、フリードは手に持つ天閃の聖剣を眺めて、

 

「───まあ、俺にとってのエクスカリバーは、アイツのやつだけだけどな。」

 

一瞬、目を細めてそう呟いた。一誠達には分からなかったが、それはとても、悲しい目だった。

 

「つーかこれ以上油売ってても意味無いんで。僕ちんはここでさいならーっと──」

 

「待て!フリード!」

 

「待たない!二ゲロ!」

 

懐から取り出した円柱状の物を地面に叩き付けて、全力疾走を開始した。直後。

 

耳を劈くような鋭い音と共に、目の前が一瞬で真っ白に塗りつぶされる。

スタングレネードによる閃光爆発だ。

 

耳鳴りがやみ視界が元に戻る頃には、もう既にフリードは姿を消していた。

 

「クソッ、追うぞ!」

 

「絶対に逃がさないんだから!」

 

「次こそ······!」

 

「あっちょ!木場!」

 

「イッセー先輩!今は匙先輩を!」

 

「ああもう、色々訳わかんなくなって来た!」

 

ゼノヴィアとイリナ、そして木場の剣士組はすぐさまフリードを追いかける。

一誠と小猫は負傷した匙の治療を行おうとするが、ここには専用の医療器具も無く、アーシアもいない。

 

「ええっと、どうすりゃいいんだこれ!」

 

「とにかく、まずは止血です。何か布で傷口を覆わないと。」

 

腹部から大量に血を流した人物の介抱など出来るわけがない。

 

 

「何やっているのよ、貴方達。」

 

聞き覚えのある声がした、そして一瞬、心臓を鷲掴まれたような感覚と異様な寒気が全身を走った。

 

くるっと振り返れば、外れて欲しかった予想通りのお人が。

 

「という訳でイッセー?ちゃんと話を聞かせてもらう訳だけど、弁明はあるかしら?」

 

「ゲエッ!?ぶ、部長!?」

 

内緒にしていた対象のご主人様。穏やかすぎて逆に怖い笑顔で眷属兵士のお迎えに。

その隣でこれまた微笑みを浮かべている副部長様。それと倒れている匙の下に向かう会長さんの三段構え。

 

「それでイッセー、弁解は?」

 

 

 

 

 

 

··················ありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠のお仕置きタイムが始まろうとしたその横で、ソーナ・シトリーは深手を負った後輩に歩み寄り、大きなため息をついた。

 

「まったく······匙?私は言ったはずです。この件には干渉しないようにと。」

 

「す、すいません······会長。」

 

「本当に分かって·······いえ、とりあえず死んでいないようで、一応、安心しました。」

 

ソーナはとりあえず幼馴染み印の霊薬水を傷口にドバドバとぶっかける。

そんな事すれば染みて痛みが生じるのも当たり前の事で、

 

「いだだだだだだだた!!?会長!痛いです!!」

 

「痛くしてるんです。少しは反省なさい。」

 

実際、腹部から血を大量に流す匙の姿を見た時は、思考やら何やらが吹き飛び目の前が真っ白になった。

何せ自分の眷属なのだ。

自分の家族なのだ。

 

そんな彼が死を強く認識させる事態に陥った光景を見て、何も思わない主が何処にいる。

 

心配しないわけが無い。

動揺しないわけが無い。

 

「すいません、会長。でも俺、協力出来て良かったです。木場の、アイツのために行動出来たことが。」

 

「匙?」

 

痛みに顔を顰めながらも、謝りながらも、そうして匙は喋り続けていた。

ソーナは傷口の手当をしながら、ただそれを聞いているのみ。

 

「俺、普通の人間から悪魔になって、力を手に入れて、お話の中の主人公になったみたいで、でも、俺にはその行動を起こせるほどの勇気がなかった。」

 

「俺は、なんというか感情移入しやすくて、誰かの悲しみに必要以上に寄り添って、同情して。ドキュメンタリー番組見てるだけでもウルッときちゃって。」

 

 

 

 

 

 

 

「でも、俺はそこ止まりなんです。同情するだけなんですよ。」

 

独白に近い匙の言葉は止まらない。

口を止めることが出来ずに次々と言葉が飛び出していく。

 

「誰かの悲しみに、他人の悲しさに共感出来ても、同情出来ても、そこから先、その人に何かをしようとは思わなかったんです。わざわざ自分から動こうとはしなかった。それが普通の人間何でしょうけど、そうやって同情する癖に自分は何もしない、しようとしない事が嫌だと思いました。」

 

「今回の事も、半ば無理矢理の強制参加でしたよ。でもその後に、木場の話を聞いて思いが変わりました。木場のやろうとしてる事に、手を貸したくなったって。」

 

「·····················」

 

「だから、その······」

 

言葉を止めて、匙はバツの悪い表情を浮かべて視線を逸らす。まるで叱られてる最中に弁明しようとして、逃げ場を失った子供のようだった。

しかし、彼の吐き出した心情は全て紛うことなき真実だ。

ソーナは無言だった。何も言わないが、手だけは休めずに手当を続け、腹部に包帯を巻き終えたあたりで、もう1度ため息をついた。

 

「それで怪我を負ってきたら元も子も無いでしょう。」

 

「うっ、」

 

「それに、一歩間違えれば匙は確実に死んでいました。協力するにしても、なにかしらの保険は用意しておくべき、そうですよね、匙?」

 

「······神器があるからって高くくってました。本当にスミマセン!」

 

まったく······と、思わずこめかみを抑えてしまうソーナ。最初は拒否していたのは分かったが、協力するにしても対抗策を練らずに協力しこの有様。これから先が少し心配になってしまう。

 

まあ、だが。

 

「無事で良かった·········」

 

それだけは確かだ。

生きていてくれて良かった。

死なないでくれて良かった。

 

ただそれだけで、本当に良かった。

 

 

 

 

 

「それはそうと、怪我が治ったら匙にもお仕置きが待っているので、覚悟していてくださいね。」

 

 

 

 

次の瞬間には、生気を無くし燃え尽きたように項垂れる事になる匙だったが、まあ、本人は最初から覚悟していた事なのでまあ大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

·········頑張れ!匙少年!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お仕置きを終えたリアス達は木場の後を追うべく廃教会への道を進んでいた。

ソーナはと言うと負傷した匙を連れて学校へと走っていった。念のための準備に取り掛かるためにだ。

 

余談だが、あとから追いついたアーシアの手によって匙の負傷はほぼ完治したものの、聖剣で刺されたことによる恐怖や脱力感、つまり疲労した体力の回復に務めるべく、匙の休息の意も兼ねての移動だった。

 

「まったく、一通り終わったら祐斗にも説教決定ね!」

 

「ほ、程々にお願いします······」

 

「もちろんイッセーにも説教が待ってるから覚悟するように。」

 

「俺さっきので許されたんじゃないんっすか!?」

 

リアス達は祐斗と聖剣使い達が向かった方角へと走る。

 

彼女達は既に人気の失われた夜の街を駆け抜ける。先を走る騎士に追いつけと願いながら、手遅れなんて最悪の終わりを迎えない為に。

 

そう夜の駒王町を走る事数分、方角的に恐らく祐斗達が居るだろう場所、山の中の廃教会へとたどり着いた。

小猫が中の様子を窺いながら両開きの扉を開ける。

 

中には先を行った三人が居た。

 

「あっ······部長······」

 

一瞬表情を曇らせ、目線を横へと逸らす。

主の命に背いて一人で突っ走った事が尾を引いているのだろう。

 

リアスは祐斗へと歩み寄る。

踵が地面を打ち付ける度にカツカツという音が寂れた教会の中を木霊する。威圧感を孕んだその音が耳を震わせる度に、不思議と体が固まる。

手を伸ばせばすぐに触れれる距離まで詰め寄ると、リアスはその華奢な手を上げて─

 

 

バチンっ!と、瑞々しい音が炸裂した。

 

 

「·········」

 

「······馬鹿なことをしないで頂戴···!」

 

リアスの平手打ちが祐斗の左頬へと吸い込まれるように炸裂した。

声が震えているのは怒りからか、それとも悲しさからか。いや、恐らくはその二つが混じりあった様なものなのかもしれない。

 

「······すみません、部長。」

 

祐斗が返せる言葉は、そう謝罪の言葉を述べる事だけだった。眷属でありながら、自分の感情を優先、いや、爆発させたこの事実を、いまさら覆せなどしない。

 

「·····もう二度と、こんな勝手な事はしないで。そうじゃなきゃ、何のための(わたし)なのよ。眷属(かぞく)を救えない王なんて、必要ないじゃない······」

 

王は自身に仕える臣民を護れてこその王である。国を、人を殺す事を良しとしたした王など、そんなものは必要ない。

 

「······すみませんっ、すみません······!」

 

祐斗は復讐を遂げようとする事を未だに諦めてはいない。だがしかし、自分勝手に暴走して周りの人々を、仲間を心配させた事を、祐斗は心の底から悔いた。

俯いて悔やむ祐斗を抱き寄せて、頭を撫でる。親が子供をあやすように、いつかの日、幼馴染みがしてくれたように優しい手つきで。

 

暫ししてリアスは祐斗を腕の中から解放し、ゼノヴィアに向き直った。

 

 

「······ごめんなさいね、見苦しい所を見せてしまって。それでフリードは何処に?」

 

「······すまない、見失ってしまった。ここに入ったのは確かだが、扉を開けると既に姿を消していた。」

 

恐らくは透明の聖剣を使った透明化による姿の隠蔽、そして天閃の聖剣による高速移動で即座に離脱。

恐らくはこんな所だろうと推測する。

 

「しかし、これでまた振り出しに戻ってしまった。」

 

唯一の手掛かりを見失った以上、次の標を探すしかない。だがそれにもまた時間が掛かるのは事実。情報を提供してくれる協力者(ダンタリオン)に連絡するべきか、ゼノヴィアの思考が次の手を模索する中─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プルルルルルルル!と、廃虚とはいえ教会

似つかわしくない電子音が鳴り響いた。

 

 

 

 

「?」

 

音は教会の中心に立つ小猫から聞こえた。

彼女の制服のポケットにある携帯電話から。

取り出し画面を見ると非通知の三文字、番号も知らないものだった。

 

こんな時に誰だと訝しみつつも、小猫は通話ボタンに指を置き、押した。

電子音が止み、向こう側の緩やかな風の音が耳に残る。

 

やがて、携帯電話から声が聞こえる。

 

「こんばんは、グレモリー眷属の(・・・・・・・・)塔城小猫ちゃん。」

 

──自分の体が硬直するのを感じた。

 

「·········どなたですか?お仕事の依頼は召喚用紙からお願いします。今は訳あって応じることができませんが。」

 

動揺から震えそうになる声を押し殺し、いつも通りの対応をする。

電話の向こうの(恐らくは)男性は今自分の事をグレモリーの眷属と前置いて呼称した。仕事の依頼ならば召喚の用紙を用いる筈。ならば電話の向こうの彼は一体何者か?少しずつ、嫌な予感というものが全身を襲い来る。

僅かな可能性ではあるが、小猫は湧き上がる恐怖を抑えていつも通りの依頼だと願いつつ応対する。

それでも押し留められなかったほんの僅かな声の揺れに、比較的近くにいる朱乃にも小猫の異変に気付く。

念のために、小猫は携帯のハンズフリー機能をONにし周囲にも会話が分かるようにする。すると教会内の端にいるリアス達にも届く音量で、男の声が教会の中を木霊した。

 

「ああ、残念だけど俺は君に依頼があるわけじゃない。

 

 

 

 

 

用事があるのはそこの二人が持つエクスカリバーだよ。」

 

 

 

 

瞬間、ヒュン!と空気を裂く音が確かに聞こえた。

 

「───え、」

 

そして、ソレが向かったとされる方角にゆっくりと振り返る──

 

 

 

 

 

 

そこには崩れ落ちる紫藤イリナの姿が映った。

 

 

 

「イ、イリナ!?」

 

ゼノヴィアが声を荒らげて相棒の名を呼ぶも、イリナの体は教会の固い地面へと背中から堕ちた。

 

「狙撃!?リアス!!」

 

「皆伏せて!!」

 

王の言葉に全員がその場で伏せる。

しかし小猫は動けないでいた。

 

「おおっと、下手に動かない方が良いぞ。そうだ。懸命だね塔城小猫ちゃん?」

 

「·········」

 

「下手に動くと、その真っ白で綺麗な銀の髪が君のご主人様と同じ真っ赤な色に変わっちゃうからね?」

 

「っ·········!」

 

突然の襲撃に場の空気が一瞬で変わった。

元々教会という場所は悪魔にとって忌むべきもので、長居するなど考えられない程に嫌悪する場所なのだが、その嫌悪感よりも唐突に訪れた死神の鎌が首に掛けられるような、そう錯覚するほどに濃厚な死の香りが漂う。倒れ伏せるイリナから流れる血の匂いが、そんな感覚を助長する。

 

「クソっ、一体どこの誰だ!」

 

「一旦落ち着きなさい、聖剣使い。いえ、ゼノヴィアだったわね。下手に動くと貴方もそうだけど、向こうのイリナって娘も今度は問答無用で殺されるわよ。」

 

「くっ、悪魔に諭されるとは私もまだまだか······!」

 

「一先ず、状況の整理から始めるわよ。今私達は山の中の廃教会に居て、現在進行で外部から攻撃を受けているわ。敵の素性は不明。声や喋り方からして恐らくは男。攻撃の手段は恐らく狙撃。ここまではいいわね?」

 

「······敵の攻撃によってイリナが負傷。被弾したのは左の脇腹、傷は思ったよりも小さい、少なくとも口径の小さいものを使っている筈だ。対物狙撃銃を持ち出されてたらその時点でアウトだが。そもそもこの国は銃の所持事態が認められていないのではなかったのか?」

 

「本来ならね。でもこうして攻撃してきてる······ダメね、余計にこんがらがってきたわ。」

 

何処から撃たれているかもわからないこの状況で無闇に動くのは悪手である。そして何より、攻撃を行っている者が何者かはこの際置いておくとしても、遠距離の敵に対する攻撃手段は無く、ここから出ることすら叶わない。ならばどうするかだが、現状打開策と言えそうなものもこの監視されている状況ではとても無理だ。こちらの内情を知っていて、尚且つ向こう側にマークされていない自由に動ける者など───

 

 

「·········!そうだ、外にいるダンタリオンの眷属!」

 

「なんですって?」

 

「今この街にはダンタリオンの眷属が揃い踏みしていると聞く。彼等に狙撃手を無力化してもらうのはどうだ?」

 

「······そうね、ハチマンが通信で呼び掛けたのは昨日の夕方······その情報までは流石に掴んでいない筈······いけるかも。」

 

「よし、グレモリー、ダンタリオンに連絡を頼む。こんな所で死ぬつもりは毛頭無い!」

 

突如の襲撃者によって絶体絶命のリアス達、彼女達の生死の如何はハチマンとその眷属達に委ねられた。

時計の長い針と短い針が同じ12を示す頃、コカビエルとの戦いの狼煙が上がる前、謎の襲撃者との静かなる前哨戦が始まろうとしていた。




次の話はオリジナルになるじゃろな。
次の話はまた暫くかかりそうだけど、何とか書き上げますとも。
·········っていうか今回ハチマンの出番が無かったにゃ。
ゴメンネ読者様方。

次こそは、ハチマンとその(一部の)眷属達による作戦じゃ!!心して待つよろし!!
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