〈10〉
大陸歴1315年9月18日───
極東帝国という帝政国家がこの世界に転移して来てから今日で約1ヶ月が過ぎようとしていた。
そしてその極東帝国が大陸に初めて上陸し友好関係を持たんとしている国、ここ『アルセルフ王国』では友好条約締結とそれを祝す為極東帝国皇帝を自国に招待、祝賀会が行われやんとしていた。
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祝賀会会場前
「調印式前に祝賀会ね……気が早いような気がするけどこれが普通なんですか?」
「国によりけり……です陛下、しかしアルセルフも思い切った行動をするものです。友好条約締結後その場で通商条約の締結と同盟関係の打診とは……想定内の想定外ではあります」
「そうだな、私の方も友好条約から同盟まで少々時間が空くものだと考えていたのだが……見事外れてしまった」
祝賀会の行われているのは王城の中、そして国賓であり条約締結の主役ともなる極東帝国皇帝 天城 刀夜は会場の入場を待つ間に己の補佐官である桐咲 深雪、神ヶ浜 千冬の2人と話していた。
「確かに、ここまでトントン拍子に事が進むとは考えてなかった。文明レベルが中世で魔法とかのあるファンタジーな世界だとは夢にも思わなかったし……まあ、それでも深雪
「へ、陛下⁈」
「い、今私達を名前で……」
「うん、今は軍の仕事じゃないし普通に呼んでも良いかなって。それに君達は今日のパートナーだから」
そう、今2人はいつもと違い皇帝のエスコートする女性パートナーとして軍服ではなくドレスに見を包んでいた。
「そ、その陛下、似合ってますか?」
「わ、私もだ。余りこういうのは来た事がなくて自信がないのだが……」
「2人共似合ってるよ。深雪さんの薄桃色のドレスも千冬さんの空色のドレスも」
「本当ですか⁉︎」
「うん」
「本当に本当なのだな⁈」
「本当だよ、そんな事で嘘ついても何にもならないし」
詰め寄った2人は刀夜にそう言われて顔を真っ赤に染め上げる、少々顔が暑いようで手で扇いで熱を冷ましていた。
『それでは国王陛下御入来』
扉の向こうから聞こえてきた声に3人は前を向く。アルセルフ国王が会場に入ったという事は自分達が入るのももうじきであるという事だ。
『続きまして我が国と新たに友好関係を築く事になります極東帝国皇帝、トーヤ・アマギ陛下及び側近、ミユキ・キリサキ様、チフユ・カミガハマ様御入来』
音楽隊の演奏とともに扉がゆっくりと開く。
「さて、行こうか」
「はい」
「喜んで」
3人は扉の向こう側へと足を踏み出した。
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国王陛下が祝賀会の行われているこの大広間に入ってから少し、司会の紹介の後大広間の扉が開く。
「おお、あれがかの帝国の……」
「随分と若いな……」
入って来たのは3人の男女、先頭を歩く黒の軍服を身に纏う少年と青年と間くらいの男とその側に寄り添うように歩く左右の薄桃色と空色のドレスに身を包んだ2人の美しい女性。会場にいる者が拍手を送る中囁かれる囁きの通り皆若い、俺と同じくらいの男女だった。しかしそんな相手に会場に招待されていたかの帝国の軍人は真っ直ぐな敬礼を送り続けている、それはつまりかの皇帝がどれだけ軍の支持を集めているかの証拠でもあった。
「極東帝国……か」
「お兄様」
「ユミィ、君がここに来るのはもう少し後のはずじゃ?」
軍からの支持を集めマストの無い鋼鉄の城の如き巨船の艦隊を有する強大国、極東帝国。そんな国に思いを馳せているとまだここにいないはずの妹がいつの間にかすぐ側まで来ていた。
「私も最近噂のかの帝国の皇帝を姿を早く見て見たかったのです……済みませんお兄様」
「はぁ……あとで父上に怒られるよ?なんで勝手に出てきたんだと」
「ううっ、それは……」
「……しょうがない、父上には多少口引きはしておくよ。でもそろそろユミィも16なんだから自重すべきだよ?」
儚そうな見た目でかなりやんちゃというか地位の割に行動力高めな妹を一応フォローする事にしつつ俺はため息を吐く。このやんちゃでいつか大変な目に遭わないといいんだが……。
そう思っていると父上に呼ばれたようだ。俺は呼び出しに応える為ユミィの手を引き前へと向かって行った。
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「こうして対面して会うのは初めてですなトーヤ皇帝、私がアルセルフ王国国王ユーサー・アルセルフです」
「こちらこそ国王陛下にお会いできて光栄です。極東帝国皇帝刀夜・天城と申します」
2人の国のトップ同士が対面する。にこやかに笑い合い2人は横並びに立ちその手にグラスを手に取った。
「我が王国と貴国帝国との間に
「我が帝国と貴国王国との間にの堅き友情のあらん事を」
2人はそう宣言しグラスを軽く合わせた。再び会場は万雷の拍手に包まれる。
これで友好条約の締結は確実となりその事実は会場にいる者全てに知れ渡る事となった。
そしてその後政治的な幾つかの会話を刀夜は情報担当の補佐官でありパートナーとして側にいる深雪を交えて行い、内容はいつの間にかユーサー王の息子、娘の話へと変わっていた。
「私には2人の子がいましてな、1人は王子で1人は王女なのですが……おお、丁度いい所に2人が来たようです」
ユーサー王はタイミング良くやって来た自分の息子と娘だという紫色の髪をした刀夜と同い年くらいの少年と
「では紹介しよう、息子の第一王子のフェリオだ。歳はトーヤ殿と同じ17になる」
「お初にお目にかかりますトーヤ皇帝、第一王子のフェリオ・アルセルフです」
「初めてましてフェリオ殿」
「そしてこちらが娘の第一王女のユミエルだ」
「初めまして皇帝陛下、私が第一王女ユミエル・アルセルフです。ユミィとお呼び下さい」
「こちらこそユミィ殿。私の名は刀夜・天城と申します」
紹介された2人に刀夜は会釈しこちらも名を名乗る。一通り自己紹介などを終え話していると唐突にウーサー王はとんでもない事を切り出してきた。
「ところで同盟締結を打診するにあたり貴国皇帝であるトーヤ殿には我が娘ユミエルと婚姻関係を結んで欲しいのだが如何かな?」
「「「はい?」」」
アルセルフ王、ユーサーの突然の婚姻の申し込みに当事者となる刀夜、深雪、千冬の3人は目を点にする。一瞬の間を空け3人はその提案の意図を読み解き、そして驚きしてやられたのだと理解した。つまりまだこの話は政治的な話の真っ只中でありユーサー王がこの手では刀夜と深雪の上手であったという事であったのだった。
つまりこの日、アルセルフ王国と極東帝国には皇帝と姫君の婚姻による同盟成立が周知されそれと同時にほぼ確定してしまったという事だった。
やはり年の功には勝てなかった
次話、『できてしまった嫁、どうしよう』です。