ARMORED CORE Phantasma Plase 作:SUNRISE
NORTH FRONTIER中部。
巨大な山脈と広大な平地の間に位置するここに、地下深くへと繋がるであろう大きな設備があった。
規模はタワーやその他旧世代施設と比べると小さいが、それでも一人で行くには些か持て余すほどの大きさであることは想像に難しくはない。
がしかし、そのような無鉄砲な依頼であっても完遂するのが傭兵が傭兵たる所以であり、誇りでもある。
『この施設から、時折大量の突撃型らしき自律兵器が湧き出てくるんだそうだ。今のところ被害は極軽微だが来襲するたび迎撃するのも手間がかかる。後は頼んだぞ。』
『ロクでもない話だな。増援くらい呼んでも良かったんじゃないですかね。』
『こちらとしても人手を割かれるのは面倒なのでね。報酬は弾もう。』
「一人で基地を制圧するってのもよくある依頼だ。別に構わんよ。」
『おいおい正気かよ?いつもとは規模が違うんだぜ?』
「むしろその方が滾ると思うがな。」
地表の施設を軽く探索し、大型リフトを使って降下する。リフトのシステムがACのものよりも古いようで解析に時間がかかってしまった。
リフトの扉が開くと、細い通路のみが延々と伸び、複雑に曲がりくねっていた。
「施設内部は迷路みたいだな。何処かに岐れるでもなく延々と伸びてる。通路もAC1機が通る程度だ」
『奇妙だな。ACの利用を想定していないのか?いや、あの大きさのリフトならそれは無いな。』
「リフトのコンピュータから入って中枢コンピュータを軽く漁ってみたがACのシステムよりもかなり古かった。」
『となると旧世代よりもさらに前の時代か。ふむ、興味深い。注意して進んでくれ、どうもキナ臭い。』
『そうは行かないようですな。通路奥から未確認機。数が多いぞ。』
ファットマンからの通知どおり通路の奥からは赤い塗装の奇妙な自律兵器が接近してきていた。大きさはACの半分ほどもあり、AMMON Aと比べて大きい。そして尤も特徴的なのが、「数が多い」。それこそ通路を埋め尽くすほどに。
「さしずめ【蟲】ってとこかね。」
そう毒づき、両手に持ったHEATハウザーを放った。
HEATハウザー自体の火力が高いのか、幸いにも【蟲】の装甲が薄いのかは分からないが、その二射だけで通路を塞ぐ【蟲】は一掃できた。
その後通路を進んで行くと頻繁にその【蟲】が現れた。
戦闘の過程で分かったのが、【蟲】が依頼内容にもあった突撃型らしき特攻兵器であり、大きさの割には装甲が薄く(そもそも特攻する自律兵器なので厚くする必要性はないが)破壊力もAMMON Aと比べて少ないようだ。
しかしながらその数は異常と言うに相応しく、また1機あたりの衝撃も大きい。そのため道中のみでHEATハウザーを使い切ってしまった。
『その先に中枢部と思われる空間がある。我々としてはその施設は興味深い、ハッキングでもすれば機能は止まるだろう。内容変更の追加料金は支払おう。』
「随分と気前がいいんだな。」
『この施設の価値は報酬以上に成り得るからな。少なくとも、技術は流用できる。』
細い通路を進み続けると、行き止まり・・・いや、そこから直下の中枢部へと繋がっていた。このACでは降りたところで復帰する術はないが、雇い主やファットマンが何とかしてくれるだろう。
「・・・広いな。」
『今までに見たことも無い形式だな。コンピュータなどはそこにはないか?』
『そのような暇はないようですがね。敵反応上からだ。これまた見たことも無い奴だ。』
視線を上に向けた瞬間、紅い光の塊が押し寄せてきた。咄嗟にハイブーストを噴かすが、間に合わず真に受けてしまった。
幸いにも威力は低く致命傷とはならなかったが、目の前の敵はやる気のようだ。
蒼い塗装をした細身の上半身と、蜘蛛の脚を逆さにして背中にくっつけたような機体。機体の各所には、紅い光が脈打つように走っていた。両腕はブレードのような形状をしている。
緑色の誘導弾が多数押し寄せる。自律兵器のミサイルと違って弾道は素直だ。弾速はそれほど早くもないため、ハイブーストで回避する。
蒼いレーザーを連射してくるが、機体を左右に振ってFCSを騙す。その隙に両手のHEATマシンガンを放つ。機体が細身のため当てづらいが有効打になり得ているようだ。
時折突飛な機動こそすれど、追えないほどではないため容易にサイティングすることができた。尤も、空中を自由自在に飛び回るため首が痛くなるが。
両肩のHEATロケットも交えて砲弾の幕を作る。すると敵は一気に降下し、急接近してきた。両手のブレードには光が集まっている。
未確認機のブレードを
「目標排除、それほど強い敵でもなかった。」
『了解、周辺の捜索を・・・再び反応だ。再生産されたのか?』
「機体形状や武装も変わっている。さっきの戦闘データがフィードバックされたのか?」
『とにかく気をつけろ、たぶん倒しても同じように再生産されるだけだ。』
なんとも面倒な相手だ。生産施設を破壊しない限り、恐らく終わることは無いというわけだ。
機体形状はさらに複雑な形になり、大きなブースターと巨大な砲を携えている。その砲が放たれるが、回避はまだ容易だった。
「こいつの生産場所はどこだ。」
『その施設内部だ。中枢の真上だな。』
「となるとここと直に繋がってるわけか。」
『破壊は容認できないが。実証して不可能と判断したのなら止むを得ん。』
そのときであった。壁面が大きく爆ぜ、巨大な瓦礫が散らばった。
危険から逃れるため自分はグライドブーストで飛び退き。未確認兵器は瓦礫を避けた。
穴の開いた壁面の奥から、緑色の光が飛来し、中央のエネルギー収束装置に直撃した。エネルギー収束装置は爆炎を上げ始める。
穴の開いた壁から現れたのは、マギーの操っている旧世代兵器だった。
『遅かったわね。もうここに用はないわ。』
「何を言っている?」
そう嘯いて天井にエネルギーキャノンを放ち、大穴を空けて飛び立った。
『もうすぐよ。もうすぐ、力が手に入る。』
「おい!どこへ行く!くそっ!」
雑音交じりな彼女の無線が完全に切れる。
飛び立った彼女の機体を追うように、未確認兵器が天井の穴へと向かう。
このままでは取り残されて爆発に巻き込まれるだろう。それは避けたい。
HEATマシンガンを捨て、飛び上がらんとする未確認兵器に無理やり取り付く。バランスを崩しながらも無理やり上昇していくあたり、意外にパワーはあるようだ。
しかし、地上へ出る瞬間に飛び出た瓦礫に当たり振り落とされる。辛うじて地上へと出れたが衝撃で意識が朦朧とする。
『ありゃぁマギーか!おいどうなってんだ!』
「ファットマン!ここはもう無理だ!崩壊するぞ!離れろ!」
機体を建て直して、グライドブーストで可能な限り距離を置く。あの規模のエネルギーが収束しているのだ。恐らく爆発の規模も相当だろう。
そう思っていた矢先、強烈な光と共に地面が噴き上がり、爆炎と風圧で辺り一体の砂が巻き上げられる。風圧に巻き込まれて錐揉み回転しそうになるが、脚を付いて安定用のサブレッグを展開した。
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「結局あの施設はなんだったんだろうな。」
「旧世代よりもさらに古い施設。それしかわからん。」
「そんなことはわかってんだ。マギーもいたしよ、あれはなんか重要なモノだったことには違いないぞ。」
「・・・もうすぐ力が手に入ると言っていたが・・・あぁ。なにもわからん!」
結局あの依頼は失敗に終わった。施設は破壊されたが、今までに無いタイプだったためその価値は計り知れないだろう。故に報酬は0だ。
マギーも意味不明な行動に出てくる上、新種の未確認兵器は行方不明に。苛立ちが募り、声を荒げた。
「まぁ、そう悲観することでもないだろう。意味不明なのはもっと前からだったしな。」
「あの時と今回とはもっと別だ。よく分からん奴まで出てくるしよ。」
憂鬱に眺めたキャノピー越しの風景は、曇りの無い青空と薄汚れた大地だけだった。
その1週間後、ある宣戦布告と同時に世界中の勢力都市が特攻兵器により爆撃された。