ARMORED CORE Phantasma Plase   作:SUNRISE

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ACT11 ~Thinker-reprise-~

 南の果て、氷に閉ざされた極地。見渡す限り広がるのは、浅く昇った太陽とその光を受けて白く輝く雪原。

 

"Lost Field"

 

 便箋的に名付けられた凍てつく大地には、世界中に7つある”タワー”と同じものが忽然と、悠然とそこに聳えていた。

 しかし、尤も異形であるのは、その周りの施設の規模だ。

 タワーを中心に円環状に配置された巨大な砲、その内側に見える大きな球状のエネルギー施設、それらの間を埋めるALGと同類の施設と見慣れない砲台群、見慣れた自立兵器や良く見る砲台等様々だ。見るからに、これまであったどれよりも広大かつ巨大であろう。

 

「すさまじいな」

『あぁ、各勢力もこの地を奪い取ろうと躍起になるだろうな。』

「ということは、これまで以上の混沌が生まれるか。」

 

 先日の主要都市大量爆撃。それと合わせての宣戦布告は、各勢力に多大な混乱と新たな存在への欲望を生み出した。

 しかしながら、各勢力へ多大な被害を与えたことには変わりなく、未知数の存在に対して戦力の十全を図るため3大勢力が共闘するというのは合理的な行動であった。

 また、俺達のような独立傭兵を積極的に雇用する動きも見られている。尤も、俺達は自分の意思で向かったわけだが。

 

『熱源!前の再生する奴だ。』

「再生というより、フィードバックして再生産するってのが合ってるがな。」

 

 行方不明となっていたあの機動兵器もここにいる。どうやら目標はこちらではなくタワーのほうへ向けられているようだ。

 理由は不明だが、敵になるよりはマシではあろう。

 

 遠くでは、猛烈な対空機銃が展開されているが、その弾幕を飽和するほどの特攻兵器に陣地は潰されてしまう。しかしやはり打たれ強さではこちらのほうが上手のようで対空機銃は健在だった。

 それを眺めている間に機動兵器は静かに加速し、タワーの根元まですっ飛んで行った。

 

『こっちにもきやがったぜ。呆けてる場合じゃないぞ。』

「一人で捌けってのか?まったく面倒だ。」

 

 今回は先日の件から長期戦が予想されるため武装は弾数重視に変更されている。また、来るべき決戦のためにコアを高防御高伝達率のCA-215に変更している。

 弾数の多いガトリングAM/GGA-206を両手に、ショルダーユニットには弾数の多いKEロケットSL/RCC-207を装備、軽量化のためジェネレーターはSUZUMUSHI mdl.1、反応速度が必要でミサイルの運用はしないためF.C.SはARMロック演算が早くそれなりの距離を持つFA-215を搭載している。。

 

 KEロケットをまっすぐ向かってくる特攻兵器に放つ。ばら撒かれたロケットは爆風と合わせて特攻兵器を瞬く間に吹き飛ばし、また特攻兵器の爆発の余波で更なる数の特攻兵器が吹き飛ばされた。

 しかしそれでも尚数は減らない。ショルダーユニットのトリガーを引いたままで、両手のガトリングも撃ち続ける。

 猛烈な弾幕を掻い潜り特攻兵器が数機激突するも構わずトリガーを引き続けた。

 そしてトリガーから指を離す頃にはガトリングの3500発*2とKEロケット360発が空になっていた。

 

「凄まじい物量だ。ファットマン、補給を頼む。」

『あいよ。そこで待ってな。』

 

 ファットマンのヘリを待っている間、円環上に配置された巨大な砲台のうち一つが爆散する。良く見ると緑色の軌跡が残っており、タワーの根元あたりから打ち出された流れ弾に巻き込まれたのだろう。

 

「あそこか。」

『アセンブルは決戦仕様か?』

「わかってるじゃないか。手伝ってくれ。」

 

 その場でアセンブリーモードへ移行する。コックピットハッチが開いて機関部と共にシートが迫り上がる。

 ファットマンのヘリが横付けし、大型コンテナブロックが開く。クレーンが展開された。

 コンソールを操作して、ジェネレーターを護る装甲版を開ける。同時に固定用のアームが外される音が聞こえた。すぐさま自分は立ち上がって機関部へもぐり、ジェネレーターのプラグやヒートパイプを外す。スピード勝負だ。

 クレーンのフックをジェネレーターに接続し、クレーンのカメラに合図を送る。

 

「バイタルを頼む。あとはL-K29とジェリーフィッシュを。」

 

 Ge-D-G23、通称バイタル。完全な生産が可能になる以前は「UGN-70/Ho」という名称であり、そのコードネーム「VITAL」から今も略称として呼ばれている。

 L-K29は旧名が「LR-81M KRSW」と呼ばれた高出力レーザーライフルで、自分の愛用品だ。こちらも生産可能となった折名称が変更されているが、発展元の「LR-81 KARASAWA」はレーザーブレード「X100 MOONLIGHT」やブレード「MURAKUMO mdl.1」と同じ解析不能な素材で出来ているため生産されておらず、微妙に名前を変えたのみとなっている。また、KRSWの名はKARASAWAと混同されるため大きく変わっている。

 ジェリーフィッシュは新規開発されたVLSミサイル「SU09」のことで、高い誘導性能と長い加速時間から命中精度が高く、新開発徹甲弾頭と改良型装薬により高い貫通力、爆発力を持つため直撃すればトップクラスの瞬間火力を持つミサイルである。欠点としては垂直発射のため狭い空間では事実上使用不可能であることだが、今は問題ないだろう。

 左手は変更せず最大容量の弾倉を持つ大型ガトリングGGA-206のままにしている。

 

 スナイパーライフルでは全体的な投射火力の少なさから回避が容易になってしまい、粒子フィールドの影響は少ないとは言え威力減衰によって有効打になりにくかった。

 そのためガトリングないしはVLMによって粒子フィールドを剥ぎ取り、脆くなったところへレーザーライフルを突き刺す戦術を取ることにした。幸いにも本体の装甲はそこまで厚くない上、VLMの貫徹力は高いためこちらも有用なダメージソースとなるだろう。

 

 クレーンにGe-D-G23が吊り下げられて運ばれる。ゆっくりと運ばれたそれを受け止め、ACの機関部へ誘導する。

 下部固定アームに嵌ったことを確認すると、クレーンのフックを外して機関部へ上半身を潜り込ませ、プラグやヒートパイプ等を接続する。機関部から上半身を戻すとミサイルを搭載したVLSが上を通り抜けていった。

 肩部の上に止まったVLSを誘導してユニット内に納め、フックを外してプラグとアームを接続する。素早く終わらせ、反対側も同じようにして内装系を終わらせる。

 シートへ座りコンソールを叩き、ハッチを閉める。エネルギー供給に過不足はなく、肩部ユニットもちゃんと認識している。

 クレーンに吊り下げられたレーザーライフルとライフルをマニピュレータで保持し、システムが認識したことを確認する。

 

「良し」

『あそこにマギーがいるってのか。』

「たぶんな。さっきの未確認機もそれが目的だろう。」

『近くまで運んでやる。ちょっと待ってろ。』

 

 ファットマンのヘリが浮き上がり、ACの真上で止まって繋留クレーンをACに接続する。

 コンソールを叩いて頭部センサーの望遠モードを起動し、MCP(Main Control Panel)に表示する。視線の先には粒子の残楼が残るタワーの根元だ。そこへレーザーポインターでスポットし、ヘリに情報を送る。

 

『低空で進入する。衝撃に注意しろ。』

「対空砲火に巻き込まれるなよ。」

『俺がそんなことするタマだと思うか?ハッハッハ』

 

 ACがヘリに係留され、低空のまま速度を上げていく。猛烈な対空砲火を横目にしながらタワーの根元へ一直線に突き進んでいった。

 上空を大型の爆撃が飛んでいく。そこから投下される自由落下爆弾に混じってACが数機ほど降下していった。

 

『いたぞ。例の未確認機と戦ってるのか?』

「マギーが一方的に押しているようだが・・・奴もやられているだけではなさそうだ。」

 

 未確認機はすでに蜘蛛の脚のようなパーツはすべて吹き飛んではいたが、その機動力と二種類のキャノンはいまだ健在で本体にも目立った外傷は少ない。

 対するマギーもこれといってダメージこそないが、少なからず蓄積されているようだ。

 戦闘地域に近づいたので望遠モードを切って戦闘モードへ切り替える。

 すると、視界の端にこちらへ砲口を向けるスナイパーキャノンの砲台が見えた。

 

「避けろっ!」

『ちぃ!』

 

 ヘリを地面スレスレにまで降下させようとするが、ヘリの右格納庫に着弾してしまう。

 辛うじてターボシャフトエンジンに影響は少なかったが、出力低下と高度のためにACの脚が地面と擦り始める。

 係留装置が外されてヘリは回転しながら不時着し、地面を削りながら滑っていく。

 

「・・・クソッ!」

 

 不時着の仕方から死んではいないと思うが、エンジンの暴発などが危険だ。しかしながら引っ張り出すにしても回りは自立兵器が蠢く極寒の地だ。そう考えるとコックピットのほうがまだ安全なため、最悪の事態にならないことを祈るほかない。

 

『行け!俺の事は構うな!』

「あぁ。死ぬなよ!」

 

 ファットマンの叱責を受けて、日没間際の日を背に、グライドブーストで先に見えるマギーの元へ向かった。

 

 

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 聳え立つタワーを背に佇む旧世代の負債(00-ARETHA)

 その姿はあまりにも異質でありながら、酷く美しく醜い。

 傍らには炎を上げ、それでありながらも未だ事切れない未確認機が鎮座していた。

 

「・・・これで何度目だ。」

『数え切れないほどは対峙していない。いずれも僅かに銃を交えただけ。』

 

 00-ARETHAと呼ばれた兵器の頭に位置するであろうカメラアイに光が灯った。

 

『もう何処へも逃げない。ここが私の墓標、魂の眠る場所。』

 

失われた大地(Lost Field)で、黒い鳥(Raven/Thinker)再来する(reprise)。』

 

『それは、あなたなのか。それとも私なのか。』

 

『私は、諦め切れない。』

 

『これが最後、評決の時(Verdict Day)よ。』

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