ARMORED CORE Phantasma Plase 作:SUNRISE
今、俺達はMIDDLE EASTの砂漠を行軍している。
先ずはSOUTH ISLANDSへ続く、インド半島を目指すためだ。
吹き荒れる砂塵がACの装甲を叩く。HE-119の独特なカメラアイが砂嵐の中で文字通り目を光らせている。
今は前線への輸送部隊の護衛任務を請け負っている。前回同様、移動ついでにできる依頼を受けたのだ。たとえ自陣営の領地であっても反体制組織なども存在するため、こうして依頼を発注しているのだ。
「クリア。異常はない。」
『了解、進軍を再開する。』
先ほどまで輸送部隊の大型トレーラーが砂嵐によってエンジン周りが故障していたため、休止して応急処置を施していた。
無理もない。経年劣化さえほとんど無効化し。驚異的な剛性、硬度、耐熱性を備える特殊な金属によって装甲から内部構造、アクチュエータまで構成されるACやMT、大型ヘリとは違ってトレーラーは従来の安価で調達しやすいチタンや鉄などが主流だ。
『こちらアルファ3、激しい砂嵐だ。こちらからは何も視認できない。ソナーセンサーを起動してくれ。』
『ブラボー1、こちらも同じく。それに突風のせいでバランスが取れない。飛行型でこれ以上の活動は危険だ。』
『了解。傭兵、こちらのソナーセンサーだけではACは感知できない。索敵を頼む。』
『了解。この砂嵐なら敵さんもうかつに動けないはずだ』
ファットマンがヘリのスキャンモードを起動する。
この砂嵐なら敵も同じだ。高速で突進力のある飛行型や長距離からの狙撃ができる支援型などの活動も困難なはず。十分な索敵と足の遅い防衛型であればトレーラーの速度で逃げられるはず。
『ん?巨大な敵影を確認!見たこともない奴だ!速いぞ!』
ファットマンのヘリからデータが送られる。
ACにしても非常に大きい。それだけでなく、異常なまでのスピードだ。おそらく音速は超えているだろう。脚が地面を削り、大きく砂を巻き上げながら突進してくる。熱砂強襲というわけか。
「戦闘体制に入る!MTでは相手にならない!できる限り逃げろ!」
『馬鹿な!この速度で飛行できるACなど聞いたことがないぞ!』
「常識の通用しない相手だってことだ。おそらく相手はまだ大まかな反応しか捉えられていない。俺が囮になる。ファットマン、輸送部隊の先導を頼む。」
『了解だ。無茶はするなよ。』
あの大きさとあの速度、おそらくは
直に接敵するだろう。視界も悪い中での戦闘は厳しい。だが引くわけにはいかない。此方は命と金が掛かっているのだ。
熱砂強襲。まさにその言葉が似合うシュチュエーションだ。
唐突に大きな爆音と共に緑色に光る光弾が飛来してくる。それをハイブーストで躱す。
避けたにもかかわらず若干のダメージが入り、後ろであまりにも大きな爆音と閃光が発生する。
だが目を向けている暇はないし、その事実に驚愕する余裕もない。敵を見据え、左手の
やはり予想したとおり。トンデモの仲間らしい。機体の周りに粒子フィールドが張ってある。それのせいで此方の攻撃が通りにくくなっている。
しかしあの粒子フィールドは連続して攻撃を当てたりプラズマガンやパルスガン、パルスマシンガンであれば大きく減衰させることが可能である事が判明している。また、レーザーライフルやスナイパーライフルであればそのフィールドを容易に貫通できるようだ。
チャージが完了した右手のレーザーライフルを放つ。が、しかし。ブースターの後光を残しながら文字通り視界から消えた。
だが狼狽えてはならない。後光の方向から察して右に振り向く。目の前には文字通りの弾幕が飛来していた。即座にハイブーストを噴かすがそれでも大量の砲弾を受けてしまった。
KEに強い機体構成のため大したダメージにはならなかったがそれでも通常のガトリングと比べれば無視できないダメージ量だ。
ブーストを噴かしながら横移動し、ライフルとレーザーライフルを続けざまに放つ。
レーザーが着弾し、有効打を与え。ライフルが粒子フィールドを減衰させながら少なくないダメージを与える。
ふと、相手の動きが鈍っている事に気がつき、左手のライフルをと換装し、チャージしたレーザーライフルを放ちながらグライドブーストを起動して一気に近づく。
懐に入り込み、レーザーブレードを振りかぶった。
しかしその瞬間、粒子フィールドが収縮する動きを見せた。すぐさまブレードモーションをキャンセルし、グライドブーストの慣性を利用してチャージブーストを相手に当て、直後相手を利用してブーストドライブで離れ、そのままハイブーストで可能な限り逃げる。
目の前で巨大な火の玉が生まれる。爆風で巻き上げられた生身の人間にとっては十二分に凶器とも言える砂や石が装甲で弾かれる。危機一髪、まさに紙一重だった。
コンデンサ内にENは残っていない。回復のためスキャンモードに変更する。
『さすがね。私が目の敵にしただけはある。』
「・・・!マギー!?」
唐突に無線通信が開かれる。ここで出会えるとは思っても見なかった相手だった。しかし、あの時と同じように声にはノイズが掛かっていた。
「お前は何をしていた・・・どこにいたんだ。」
『ずっと戦場にいたわ。言ったでしょう、戦場が私の魂の場所だと。』
「その機体は何だ。どこで手に入れた。」
『あの機体N-WGIX/vと同じ、かつて世界を破滅させた力。尤も、これは世界を混乱させたTricksterと言うほうが正しいかもね。』
「その機体を使って何をするつもりだ。」
『何もしないわ。私はただ戦うだけ。力がほしかったのよ。だれも寄り付かせないほど強力な力が。』
彼女の機体は背を向ける。その両肩が開き、光が集約される。
『また会いましょう。前も言ってたけど、今度は手加減しない。殺してみせるわ。絶対に。』
「おい!どこへ行く!」
一瞬で加速したその機体は周りの砂嵐を晴らしながら急速に離れていく。無線が切断されるときのノイズが聞こえた。
『おい!大丈夫か!』
「あ・・・あぁ」
『輸送部隊は無事だ。すでに危険区域を脱出している。』
ファットマンのヘリが近づき、懸架用のユニットが稼働する。
ふと彼女が向かった方向へ視線を向かわせる。すでに砂嵐の中に消え、何も見えなくなっていた。
「今度は捕まえて見せる。絶対に。」
ファットマンのヘリに懸架されて輸送部隊の下へ向かう。ふと彼女が消えた方向へ目を向け、そう嘯いた。
これからの決意を下に。