戦闘狂マスターと愉快な狂戦士たち   作:clockman

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初めまして。 よろしくお願いします。


特異点F-1-

戦闘狂マスターと狂戦士たち 第一話

 

吹雪の吹き荒れる高山にひっそりと存在する場違いなほどに近代的な施設、人理継続保障機関フィニス・カルデア。

 

人類の未来を語る資料館であり、魔術だけでは見えず科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐための各国共同で成立された特務機関である。

 

自分の名は藤丸立香。本日付でここに勤務することになった戦闘員である。

 

性別は男性、身長は180cm、体重は82kg、少し筋肉質な一般人寄りの魔術師だ。

 

魔術師と言っても使えるのは念話と強化くらいしか使えない。 他人を強化できることが唯一の長所であるくらいか。

 

まぁそんなものなので、魔術の世界とは関わらず一般家庭と同じ暮らしをしていた。根源もそこまで真剣に目指しているわけではない。この前までは公立高校にも通っていたくらいだ。

 

 

 

そんな自分がなぜ、このような大それた機関の戦闘員なんかになるのかというと、どうやら自分にはとてつもなく高い”レイシフト適正”というものがあるらしい。

 

レイシフトというのは簡単に言うと別の時代へのタイムスリップだ。なんでそんな適性が自分にあるかはわからないが、まぁあるものは仕方がない。

 

幸い給金もよく、就職先に困っていたこともあり即決で就職を決意した。

 

業務内容は別の時代へ赴き人理を揺るがす異常を調査することらしい。場合によっては戦闘もあるそうだ。

 

これまた幸いなことに自分は戦闘が嫌いではない。むしろ好きだ。なのでこの職場は非常に自分と合っているといえるだろう。

 

 

 

と、言うワケでここに来たのが数時間前。道中遭遇したマシュ・キリエライトとレフ教授に案内されて自分は中央管制室に来ていた。

 

今からここの所長による説明会なるものがあるらしい。入社一日目の大事な時期だ。気合を入れていこう。

 

と思ったら訓練期間0を理由に部屋から追い出されてしまった。これは少し理不尽ではないだろうか。もしやここはブラック企業なのでは・・・?

 

追い出された自分を気遣ってマシュが着いて来てくれた。非常に申し訳ない。

 

 

「すまないマシュ、君まで付き合わせてしまって。」

 

「いえ、私はもともと出席する予定ではありませんでしたので問題ありません。」

 

「そう言ってもらえると助かる。 ところでこれはどこに向かっているんだ?」

 

「今は先輩の部屋に向かっています。先輩はファーストミッションから外されてしまったので、きゃっ!」

 

 

マシュの顔に白い小動物が覆いかぶさっていた。 こいつの名はフォウ。 どことなく知性をうかがわせる品のある顔をしているがその正体はマシュに突撃を仕掛ける獣である。

 

 

「ははっ、懐かれているようだな」

 

「はい。 ですが、それを言うなら先輩もですよ。 フォウさんは滅多に人前に姿を現さないですから。」

 

「特に何もしてないんだけどな。 もしかして名付け親は君が?」

 

「その通りです。特に理由はないですが直感で―――」

 

 

そうこうしているうちに、目的地に着いたようだ。

 

 

「では、私はこれで。 運が良ければまたお会いできると思います。」

 

「あぁ、自分も君の幸運を祈っているよ。」

 

 

そう言ってマシュは来た道を戻っていった。 また管制室に戻るのだろう。

 

自室のドアを開けるとベッドの上でパフェを食べる見知らぬ男がいた。

 

 

「はーい、入ってまー―――ってだれだ君は!?」

 

「それはこっちのセリフだ。 自分は藤丸立香。本日付でここに勤務することになった戦闘員だ。」

 

「あー、ということは君が最後のマスター候補か。 ボクは医療部門のトップ、ロマニ・アーキマン。 なぜかみんなにはDr.ロマンと略されているね。」

 

「なるほど、医療部門のトップでしたか。 これはとんだ失礼をしましたアーキマンさん。」

 

「いやいや、そこまでかしこまらなくてもいいから! ボクのことは気軽にロマンと呼んでくれ。 こっちのほうが好きなんだ。 ほら、響きがいいし格好いいし、どことなく甘くていい加減な感じがするし」

 

 

なるほど、ゆるふわ系か。 いい上司っぽい人だな。 ここで会えたのは運が良かったかもしれない。

 

 

「わかりました、ではロマンと。 自分は藤丸でかまいません。 下の名は少し女の子みたいなので、こっちのほうが好きなんです。」

 

「なるほど、わかったよ。 じゃあ藤丸と呼ばせてもらおう。 あー、いいサボり場だったのに今日でお別れかー。」

 

 

これ本当に医療部門のトップなのか? 実は下っ端だったりしないか?

 

軽い会話をしていると、ふとロマンの目線が足元にいった。

 

 

「あれ、そこにいるのは噂の怪生物? うわぁ初めて見た!」

 

 

マシュから聞いてはいたけどほんとにいたんだねぇ、と言いながら彼は自分の食べさしのパフェから生クリームを一すくいしてこちらに向かってきた。

 

 

「はい、お手。 上手くできたらパフェをあげるぞ。」

 

 

するとフォウは呆れたように一鳴きして耳の裏をかき始めた。

 

 

「あれ、今すごい哀れなものを見るような目で無視されたような。」

 

 

少し可哀想になったので話題を変えよう。 恩は小さいところから売っていくのが吉だ。

 

 

「ところでDr.ロマンはここで何を?」

 

「ボクかい? ボクは所長に叱られちゃってね。 待機中だったんだ。 ”ロマニが現場にいると空気が緩むのよ!”ってね。 理不尽だとは思わないかい?」

 

 

そう言ってベッドの上で拗ねるDr.ロマンはとても医療部門のトップには見えなかった。 所長が言いたいこともなんとなくわかるが、自分も所長の理不尽でここにいるので同調しておく。

 

 

「奇遇ですね。 自分も所長に叱られたんですよ。 ”訓練期間が0なんて舐めてるとしか思えない!”ってね。」

 

「ははは。 それはまた災難だったね。 でも彼女も失敗の許されない大事なミッションの前で気が立っているんだ。 少し多めに見てくれないかな?」

 

「まぁ、それは。 人理の異常を調査するなんて大事業を前にすれば多少はそうなるのもわかりますけど・・・。」

 

「だろう? 彼女も苦労してるんだよ。 ボクが言うことじゃないけどね。」

 

 

そう言い終えると、彼は自分の隣を叩いて言った。

 

 

「さ、そこに突っ立ってないで座ってはなそうじゃないか。 まぁ、ここはボクの部屋じゃなくて君の部屋なんだけどね。」

 

 

 

叱られた者同士世間話を楽しんでいると、Dr.ロマンに呼び出しがかかった。

 

 

『ああ、急いでくれ。 いま医務室だろ? そこからなら二分で到着できるはずだ。』

 

 

残念、ここは自分の部屋である。

 

 

「・・・あわわ・・・どうしよう。 ここからじゃどうあっても五分はかかるぞ・・・。」

 

「まぁ、自業自得ですね。 素直に言って怒られたらどうですか?」

 

「うーん、それはちょっとなぁ。 ま、少しの遅刻くらいは許されるよね。 Aチームは問題ないようだし。」

 

 

そこからもなんやかんやとグダグダしていると急に明かりが消えた。

 

 

「なんだ? 明かりが消えるなんて、何か―――」

 

 

その時、不穏なアナウンスとともに遠くから爆発音が聞こえた。

 

 

「今のは爆発音か!? いったい何が起こっている・・・!?」

 

「ほら、Dr.ロマンが早く行かないから・・・!?」

 

「ぼ、ボクのせいかい!? とにかく、モニター、管制室を映してくれ! みんなは無事なのか!?」

 

 

映像が切り替わる。そこには赤く燃えている管制室が映し出されていた。 機器もかなりの損傷がうかがえる。 人命は絶望的だ。

 

そういえばキリエライトがあそこに・・・!

 

 

「藤丸君、すぐに避難してくれ。 ボクは管制室に行く。」

 

 

Drロマンが言った。先ほどまでの緩い空気はすでにない。

 

 

「もうじき隔壁が閉鎖するからね。 その前にキミだけでも外に出るんだ。」

 

「それは無理だ。 これでも戦闘員として雇われているんだ。 不測の事態なら手伝う。 それにあそこにはまだキリエライトがいるかもしれない。」

 

 

フォウが心配そうにこちらを見上げている。 そんなに弱そうに見えるだろうか。

 

俺は屈んで、フォウの頭をそっと撫でた

 

 

「心配するな。 こう見えても体はそれなりに鍛えている。 キリエライトは必ず救って見せるさ。」

 

「・・・戦闘員として配属されているわけではないんだけどなぁ。 まぁいい。 素人じゃないようだし、手伝ってもらうよ。 今は少しでも人手がほしい。 行くよ!」

 

 

そう言うや否や走り出すロマン。自分とフォウもそのあとに続く。フォウは離れる気はないようだ。できれば逃げてほしいが、今はそれを気にする時間もない。

 

 

「まずは管制室に言って生存者の探す。 隔壁が閉鎖するまでがタイムリミットだ!」

 

 

 

しかし、現実は非情である。

 

自分たちがたどり着いた時には、すでに管制室は瓦礫と炎になっていた。とてもではないが生存者がいるとは思えない。

 

 

「・・・生存者はいない。 無事なのはカルデアスだけだ。」

 

辺りを観察しながら、彼は言った。

 

「ここが爆発の起点だろう。 これは事故じゃない。 人為的な破壊工作だ。」

 

 

アナウンスが予備電源の異常を伝えてくる。ロマンは顔を伏せながら言った。

 

「・・・ボクは地下の発電所に行く。 カルデアの火を止める訳にはいかない。」

 

「しかし、まだちゃんと探したわけでは―――」

 

「ダメだ! こんなところにいたらキミも死んでしまう。 君は来た道を戻るんだ。 まだギリギリ間に合う。」

 

 

話はこれで終わりだと言わんばかりに自分の手を握って言い放った。

 

 

「いいな、寄り道するんじゃないぞ! 外に出て外部からの救援を待つんだ!」

 

 

Dr.ロマンはそう言うと管制室を出ていった。 地下に向かったのだろう。

 

 

「・・・GAME START(魔術回路、起動)

 

 

魔術回路を起動する。使うのは念話。部屋全体に向けて無差別に信号を送る。

 

 

【生存者、生存者はいるか。 こちら救助に来た。 反応を求む。】

 

 

しばらくそうしていると、微弱ながら反応があった。

 

自身に強化を施し、そちらに向かう。そこには、下半身が瓦礫に押しつぶされたキリエライトがいた。

 

 

「キリエライト! まだ息はあるか!」

 

 

明らかに助からない。だがもしかするとまだ生きているかもしれない。

 

自分の声に反応して、彼女はこちらに顔を向けた。

 

 

「先・・輩・・・。」

 

「無理に喋るな。 肺がやられる。」

 

「いえ、私はもう・・・。」

 

「諦めるな。 足を捨てればまだ助かる。」

 

「・・・いえ、お気持ちはありがたいですが、もう目も見えないんです。」

 

 

そういう彼女の目にはすでに光がなかった。

 

 

「私はもういいんです。 だから、先輩も早く、逃げないと。」

 

「なら俺が最後まで看取る。 大丈夫だ。こんなんじゃ俺は死なない。」

 

「でも・・!」

 

 

他の生存者にも念話を送り続けているが、意識がないのか死んでいるのか、反応はない。

 

 

火の海に包まれながら、カルデアスが、赤く染まっていく。

 

アナウンスが、人理の異常を伝えてくる。

 

まるで、人類の終焉を告げるように。

 

 

「カルデアスが・・・真っ赤に、なっちゃいました・・・。 いえ、そんな、コト、より―――」

 

 

隔壁が、閉まっていく。 外界とは切り離されてしまった。

 

 

「・・・隔壁、閉まっちゃい、ました。 ・・・もう、外に、は。」

 

「安心してくれ。 最悪ぶち破って出ていけばいい。 だから、自分の心配はいらない。」

 

「・・・そう、ですか。それを聞いて、安心し、ました。」

 

 

 

『適合者48番 藤丸立夏を マスターとして 再設定 します。』

 

しばしの無言。

 

『アンサモンプログラム スタート。 霊子変換を開始 します。』

 

 

 

「・・・あの・・・せん、ぱい」

 

躊躇いがちに、少しはにかみながら、何も見えない目で自分を見て、こう言った。

 

「手を、握ってもらって、いいですか?」

 

 

 

『レイシフト完了まで あと3』

 

俺は。

 

『2』

 

何も言わずに。

 

『1』

 

手を、握った。

 

 

 

『全行程、完了。 ファーストオーダー 実証を 開始 します。』

 

 

 

 

 




ちなみにこの藤丸君は瞬間強化Lv.10を毎ターン全体にかけることができます。
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