戦闘狂マスターと愉快な狂戦士たち   作:clockman

3 / 3
特異点F-3-

戦闘狂マスターと愉快な狂戦士たち

 

「早速で悪いが、君は圧政者かな?」

 

 

 

召喚されたのは、筋骨隆々の灰色の巨体だった。明らかに只者ではない。

 

 

「いや、自分の名前は藤丸立香だ。 よろしく頼む。」

 

 

手を差し出す。スパルタクスは何のためらいもなく握り返した。

 

その瞬間、まるで万力で握られているような圧力を感じた。

 

「っ!?」

 

慌てて自身に強化を掛け、握り返す。するとさも面白いとばかりに、大男は微笑みながらさらに力を強めた。

 

ここで負けたらコイツは従わない。そう感じた自分は対抗すべくさらに力を込めた。

 

 

友愛の証、静かな微笑みの下で繰り広げられる筋肉と筋肉のぶつかり合い。骨が軋み、空気が撓む。

 

そこに待ったをかけたのは意外にも所長だった。

 

 

「ちょっとあなたたち! いつまでやってるの! そんなことよりもやるべきことがあるでしょう?」

 

 

どうやら所長は水面下で繰り広げられていた争いには気づかなかったらしい。こちらとしてはあのままでは負けそうだったので助かったが、スパルタクスはそうはいかなかったようだ。

 

 

 

「なるほど、君が圧政者かな?」

 

 

 

標的は所長だと判断したらしい。自分ならともかく所長はまずい。瞬殺されてしまう。

 

 

「待てスパルタクス。 所長は圧政者ではない。」

 

「ふむ、ではそこの盾を持った少女か? いや、違うな。」

 

「あぁ、その通りだ。 ここに圧制者はいない。」

 

「いや、君が圧政者ではないのか?」

 

「違うさ。 自分は雇われているんだよ。 ちなみに雇用主はそこの所長だ。」

 

「なるほど、つまり同朋、叛逆者であったか。 よろしい。 ではともにあの女性に叛逆しようではないか。」

 

「いや、だから彼女は圧政者ではない。」

 

「何、私の愛が分からないというのか? ならば君は圧政者ではないのかもしれない。」

 

 

 

なんだコイツは。埒が明かない。これはやばいのを召喚してしまったかもしれない。

 

念話で二人にコイツの相手は自分がするから黙っていてほしいと伝える。

 

 

 

「まぁ、聞いてくれ。 自分たちは今窮地に立たされているんだ。 満身創痍と言ってもいい。 どうにかするためには君の力が必要だ。 力を貸してほしい。」

 

「・・・なるほど。 君たちもまた叛逆者であったのだな。 ならば私とともに逝こうではないか。」

 

「・・・その認識でいい。 とりあえずしなければいけないのは、この特異点の調査だ。 この時代の日本は本来平和な町なんだが、どういう因果かいまは焼け野原になっている。 カルデアに帰還できるまでになんとか原因を発見したい。」

 

 

理解してくれているとは思えないのでそのまま続ける。

 

 

「難しいことはこっちでやる。 その分戦闘に関しては二人に任せる。 だから君のできることを教えてくれ。」

 

「なるほど、心得た。 ならば教えよう。 私が何者であるかを。」

 

 

 

聞いたところによると、スパルタクスは耐え忍び反撃することを得意とするサーヴァントらしい。宝具は【疵獣の咆哮】。敵から負わされたダメージの一部を魔力に変換し、その魔力はステータス強化や治癒能力に強化に用いられる。いわく、絶体絶命になるほど効果が増すのだそうだ。本来は際限なく魔力が増えていくのだが、今回の召喚ではある一定まで魔力が貯まると強化が打ち止めになり、代わりにその魔力を爆発という形で攻撃に転用できるらしい。

 

先に知っておいて本当に良かったと思った。

 

話してみるとちょくちょく脱線する以外は非常に紳士的で常に微笑みを絶やさない朗らかな男だった。キリエライトとの相性もいいし思っていたよりいいサーヴァントを引いたかも知れない。

 

 

「あなた意外とやるわね。」

 

「まぁ、真摯に話せばちゃんと答えてくれたましたからね。」

 

「流石です先輩!」

 

 

二人からの心象もよくなったところで、早速調査に取り掛かろう。

 

 

 

 

 

港跡を調査していると、キリエライトが思いついたように所長に問いかけた。

 

「資料にあった冬木の街と、この冬木の街はあまりにも違います。 いったいこの街に何が起きたのか、市長はどうお考えですか?」

「・・・そうね、歴史がわずかに狂ったのよ」。 そうとしか思えない。

 

 

この先を考えると頭が痛くなる、と言わんばかりにこう言った。

 

 

「マシュ、藤丸、一度しか言わないからよく聞きなさい。」

 

 

所長はカルデアの時間観測の仕組みを詳しく教えてくれた。 そして、それによると2004年のこの街では特殊な聖杯戦争が行われていたと。

 

「失礼、所長。 聖杯戦争とはいったい何でしょうか?」

 

「ああ、あなたは来たばかりだし知らなくても当然ね。 いいわ。 ついでに教えてあげる。」

 

 

「聖杯とは、所有者の願いをかなえる万能の力、あらゆる魔術の根底にあるとされる魔法の釜のことでしょうか?」

 

「えぇ、マシュ。 よく勉強しているわね。 冬木にいた魔術師たちが聖杯を完成させ、その起動のために七騎の英霊を召喚した―――」

 

スパルタクスやキリエライトを見て、言った。

 

「それが聖杯戦争の始まり。 この街では人知れずサーヴァントが呼ばれていた。 英霊はそのままだとリソースが足りなくて呼べないの。だから英霊が持つ一部の側面だけをクラスとして固定化して召喚するの。セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーの七つのクラスにね。」

 

 

一息でそう言った。

 

それは、なんというか大変そうだ。 だがとてつもなく楽しそうでもある。

 

 

「サーヴァント、弩級の戦力が七騎も揃えば戦いが起こるのも当然、だから戦争ですか。」

 

「察しがいいわね藤丸。 聖杯戦争のシステムは簡単よ。 お互い競い合って最後に残ったものが聖杯を手にする、というシステム。」

 

 

それをもとにしてカルデアは英霊召喚システムを作り上げたのだという。 そしてここがサーヴァント発祥の地だとも。

 

 

「ということは、特異点の原因は聖杯戦争にある、と。」

 

「まだわからないわ。 でもその可能性は高いわね。 本来の聖杯戦争は、人々に知られることなく終わったはずなの。」

 

 

まぁこの大参事じゃ目撃者もみんな死んでるかもしれないけど、と付け足した。

 

 

 

 

 

事態が進展したのはそれから一時間後。戦闘を終えて一息ついていたとき、ロマニから警告があった。

 

 

『ごめん、話はあと! すぐにそこから逃げるんだ三人とも!』

 

『まだ反応が残っている! しかもこれは―――』

 

 

その時、前方から強烈な気配を感じた。

 

一見髪の長い女性のように見えるが、その身からあふれ出す黒いオーラが尋常のモノではないと教えてくれる。

 

 

 

『あれはサーヴァントだ! この距離じゃもう逃げられない!』

 

「どうするのよ藤丸! あなたなんとかしなさいよ!」

 

「そう焦らないで。 何のためにスパルタクスもいると思ってるんだ。」

 

 

そう言って自分は隣にいる巌のような巨体を叩いた。

 

 

「その通り。 圧政者いるところに叛逆の兆しあり。 君はわかってくれると信じていたよ。」

 

「あぁ、それにキリエライトもいる。 二対一だ。 絶対に勝てる。」

 

「はい! 私頑張ります!」

 

 

自分は心配がる所長を見て言った。

 

 

「だから、安心してください。 負ける気がしないんで。」

 

「言ったわね! そこまで言っておいて負けたら許さないわよ!」

 

「負けたら死にますからね。 そのときは、まぁ、すみません。」

 

「すみません、じゃないわよ! 私も援護するから、頑張りなさい!」

 

『軽口をたたくのはそこまでだ。 みんな、来たよ!』

 

 

黒いオーラに隠れてよく見えないが、敵は女性で間違いないようだ。手には鎖を持っているが、あいにくと自分の知識ではどの英霊かはわからない。

 

キリエライトとスパルタクスに強化をかけ、指示を出す。

 

 

「スパルタクスは交戦してくれ。 キリエライトはスキルで防御力を上げて伏兵を警戒だ。 追って指示を出す。」

 

 

もしかするとサーヴァントが徒党を組んで襲い掛かってくるかもしれない。 様子見といこう。

 

 

 

「ははは!!! ではともに愛を語ろうではないか!!!」

 

 

スパルタクスが悠然と向かっていく。 先に仕掛けたのは黒いサーヴァントだった。

 

鎖を鞭のようにしならせて襲い掛かる。 対するスパルタクスは避けることも構えることもせず、ただその場で受けた。

 

 

「弱い! 弱いぞ。 君の愛はその程度のモノなのかな?」

 

 

だが問題はない。 彼にとって痛みとは快感、人生を彩るスパイスである。

 

怯むことなく臆すことなく、ただ微笑みを浮かべながら進み続ける。

 

その様はまさに、狂戦士というほかない。

 

 

しかし、敵もさるもの。全く動揺していない。いや、というよりもこれは。

 

 

「もしかして、相手も意思がないのか?」

 

『確かに、さっきは動揺してちゃんと見れてなかったけどよく見てみるとサーヴァントとしては少し反応が薄い。 もしかすると正規のサーヴァントじゃないのかもしれない。 シャドウサーヴァントと言うべきかな。』

 

「なるほど、それならラッキーだというべきか。」

 

 

鎖を手繰り寄せられ、シャドウサーヴァントはすでにスパルタクスに捕らえられていた。終わるのも時間の問題だろう。

 

気を緩めてしまった。

 

まだ終わっていないというのに。

 

 

 

『っ!? 大変だ! シャドウサーヴァントと同じ反応がそっちに向かってる。 それも四体!』

 

「なんですって!?」

 

 

敵はすでに目視できる地点にまで近づいてきていた

 

仮面を被った片腕が異様に長い男、数多くの武器を背負った男、そして杖を携えたフードの男だ。

 

まずい。 非常にまずい。

 

 

「キリエライトは迎撃に行ってくれ! 所長、自分たちは身を守ることだけを考えましょう。 スパルタクス! 新手が来たぞ! 遊んでいないで早く来てくれ!」

 

「はい、マシュ・キリエライト、突撃します!」

 

「なんであなたに指示されなきゃいけないのよ! ・・・わかったわ。 そこら辺は私が何とかするから、貴方はサーヴァントの指示に全力を尽くしなさい。」

 

「了解しました。 スパルタクスまだか!?」

 

「ははは! 私は逃げないよ。 なぜならば、私は弱者を救うためにいるのだから。」

 

 

ちょうど終わったらしい。スパルタクスがこちらにやってきた。

 

 

「いまキリエライトが一人で戦っている。 援護を頼む。 敵の詳細が分かり次第追って伝えよう。」

 

「了解した。 喜びが向こうからやってくるとは、私はなんと幸運なのだろうか!」

 

 

 

頭はおかしいが力は本物だ。 自分の言葉を聞くや否や、飛ぶように走っていった。

 

 

敵シャドウサーヴァントを観察する。 杖を持っている奴は時折火球を放っていることからキャスターで間違いないだろう。仮面は戦い方が正面からのものに見えない。 アサシンだろう。 もう一体は武器が多すぎてわからないが、セイバーかランサーだ。

 

そのどれもが意志薄弱に見える。あれでは本来の実力を発揮することはできないだろう。

 

だがそれは好機でもある。

 

 

「キリエライト! スパルタクスの援護にまわってくれ!」

 

【それと、防御バフの貼り直しを頼む。 敵は杖がキャスター、仮面がアサシン、もう一体はランサーかセイバーだ。 返事は返さなくていい。】

 

 

声と同時に念話で指示を出す。こういうときにすごく便利な魔術だ。

 

キリエライトがうなづいたのを遠めに確認する。

 

 

スパルタクスとキリエライトの共闘は、連携を取るというよりも暴走するスパルタクスの穴をキリエライトがカバーすると言ったほうが近い。あいつは戦えと戦うな以外の指示は受け付けないのだ。

 

だが戦闘に慣れていないキリエライトがそういう動きをするのは非常に難し。だから、細かい指示は全て自分が出している。

 

まぁ面倒と言えば面倒だが自分はこういう戦いも嫌いじゃないので別に苦ではない。キリエライトも懸命に戦ってくれているしな。

 

 

 

だが、戦闘にばかりか負けているわけにもいかない。

 

 

「Dr.ロマン。シャドウサーヴァントたちの反応をたどって敵の本拠地を確認できないか?」

 

『なるほど、その手があったか! わかった。 やってみるよ。』

 

 

 

よし、これで調査がだいぶ楽になるはずだ。

 

 

戦闘では、アサシンがやられていた。正面からの戦いの上に弱体化しているのだから、当然と言えるだろう。それにしてはキャスターがしぶといが。

 

スパルタクスの魔力も貯まってきているが爆発させるにはまだ足りない。キリエライトの疲労も気になるが、ここは調査を優先させよう。

 

 

【キリエライト。 いまDr.ロマンにシャドウサーヴァントを逆探知して敵の本拠地を調べてもらっている。 それまで耐えてくれ。】

 

【はい、了解しました!】

 

 

「所長、回復の魔術は使えますか? キリエライトを回復させたい。」

 

「使えるにきまってるでしょ。 ちょっと待ってなさい。」

 

 

こういうときに使える魔術が少ないのは不便だ。

 

 

「・・・帰ったらあなたにも教えてあげるわ。 その様子だとろくな魔術を教えてもらっていないんでしょうし。」

 

「そう言ってもらえるとありがたいですね。 ・・・全員で無事に帰りましょう。」

 

 

 

 

戦いも佳境に近づいてきた。 そろそろか。

 

 

『みんな、敵の本拠地が分かった! 今から座標を送るよ。』

 

「ナイスタイミングです! キリエライト、スパルタクス! 一気に畳みかけるぞ!」

 

 

そこからは早かった。キリエライトが多くの武器を背負ったシャドウサーヴァントを落とすと、その隙をついてスパルタクスがキャスターを絞め落とした。戦士の方は結局どのクラスかわからなかったが、終わったので問題ない。

 

 

 

「弱者の盾となる以上の快感はない。」

 

「お疲れ様です。 先輩。」

 

「あぁ、よくやってくれた二人とも。 一旦休憩を挟んだら、敵の本拠地に向かうぞ。」

 

 

 

向かう先は、変動座標点0号。

 

 

 

 

 




連続投稿はこれで終わりです。

明日も上げれたらいいな。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。