◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

12 / 105
レベル5ラリー

 珱嗄の目の前に現れたのは、御坂美琴だった。こめかみからバチバチと電気を奔らせ、珱嗄を睨みながら威嚇する。周囲の人々はその様子に風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)を呼ぶべきかとざわめく。といっても、喧嘩とは程遠い、これは殺し合いなのだが、平和に浸かっている人々は全く気付く事はない。

 珱嗄は御坂美琴の殺気に対して欠伸を漏らす。本当の殺し合いの間に身を置いていた珱嗄だ。女子中学生が相手を叩きのめすものに電撃を使うだけで生まれたちっぽけな殺気程度、そよ風程度だ。

 

「丁度良かったよ。みこっちゃん、一方通行(アクセラレータ)の居場所知らない?」

「は?」

「ここでお前とドンパチやるのも良いんだけど、お前はもうダブってんだよ」

「何言ってるか全然分かんないけど、アンタらのせいであたしの行動も無駄になったのよ!」

「へー」

 

 そんな事はもう知っているとばかりに珱嗄は聞き流す。どうでもいい事のように、よそ見をしながら淡々と。

 

「それで、みこっちゃんは俺に食い掛かってどうしたい訳? 俺を此処で殺したとして、それで実験が止まるとでも?」

「それは……! そうだけど……!」

「それでもいいってんなら相手になるけど?」

 

 御坂美琴は此処まで言われて、継続するつもりはなかった。力なく両手を下ろして俯く。バチバチと音を立てていた電気も収まり、唇を噛む。

 

「それで、一方通行の居場所。知らない?」

「……知ってる。でも、アイツに会ってどうするつもり?」

「決まってんじゃん、おちょくってくんだよ」

「アンタ馬鹿なんじゃないの!?」

 

 珱嗄の言葉に美琴は素で突っ込んだ。

 

「まぁ実際の所はレベル5巡りなんだけど。今んとこ第三位と第四位とは知り合いになったから上から順に会ってこうと思ってるんだ」

「レベル5巡り? ああ、だからさっき私はダブってるって言ったのか………」

「そういうこと。それじゃあ第一位の居場所教えてくれよ」

「あたしが知ってるのは実験の場所だけよ。アイツが今何処で何をしてるかなんて知らないわ」

 

 御坂美琴はそう言って、珱嗄に次の実験場を教えた。

 

「なるほど、ありがとうみこっちゃん。お礼にコレ上げるよ」

「コレって……ゲコ太!?」

 

 ゲコ太、それは御坂美琴絶賛のキャラクターマスコット。カエルのデザインで、かなりの種類があるらしい。先程、お土産として買ったお菓子に付いて来たのだ。

 

「それじゃ」

「う……あ、ありがと……」

 

 珱嗄は小さくそういった美琴に対してゆらりと笑い、去って行った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 その後、珱嗄は実験時刻はまだ来ていないので、実験場に第一位はないだろうと思い、とりあえず手当たり次第に探す事にした。とりあえず、コンビニに入ってみる珱嗄。すると、御坂美琴の助言虚しく

第一位は見つかった。籠の中に缶コーヒーをこれでもかと入れている第一位は、なんとなく頭おかしいんじゃねーのと思わせる程馬鹿に見えた。

 

「やぁ」

「あン? テメェは……ああ、そうだ。ちっとばかし前に実験途中で割り込ンで来た奴じゃねェか」

 

 第一位、あらゆるベクトルを操る超能力者、一方通行(アクセラレータ)は意外そうな顔でそう言った。それに対して、珱嗄はゆらりと笑って会話を(おちょくり)始めた。

 

「よく覚えてたな。俺はお前の事なんてうろ覚えだったのに。あれ? 髪切った?」

「切ってねェよ」

「アレ? 女の子じゃなかった?」

「女じゃねェよ」

「アレ? 何そのTシャツ?」

「ファッションだよ」

「黒髪じゃなかった?」

「白だよ」

「もやし」

「喧嘩売ってンだな? よォし分かった、表に出やがれ」

 

 最後はもはや質問では無く唯の貶し文句だ。珱嗄は思った通りに良い反応をしてくれる第一位に内心満足していた。レベル5とはかくも弄りやすい性格をしている。御坂美琴しかり、麦野沈利しかり、一方通行しかりだ。

 

「で、何の用だよ。俺に喧嘩でも吹っ掛けようってか?」

「んな訳ねーだろ。誰でもお前に喧嘩売ろうとしてる訳じゃねーよ。自意識過剰め」

「いやテメェ絶対喧嘩売ってるだろ? 売ってンだよなァオイ?」

「缶コーヒー好きなの?」

「話を聞けよテメェ!」

 

 珱嗄はゆらゆら笑って一方通行を弄る。第一位も珱嗄に掛かればやはりツッコミに回るようだ。やはりある程度常識を学んだ者は基本的に珱嗄のペースに乗せられるのだろう。

 

「冗談は置いといて……まぁ見かけたから話しかけただけだよ」

「ハン……ンな訳ねェだろ。このアクセラレータに見かけたから話しかけるだと? 冗談にしては笑えねェな」

「お前………友達いないだろ」

「うるせェよ!」

 

 一方通行(アクセラレータ)は不機嫌にレジに向かい、コーヒーを大量に購入し、そのままコンビニを出た。珱嗄も続く様にコンビニを出る。そして彼と並んで歩きだした。

 

「オマエ、付いてくンじゃねェよ」

「良いじゃないか別に。俺は俺でお前に用があんだよ」

「ンだよ用って」

「お前と友達になってやるよ。喜べ」

「滅茶苦茶上から言ってくれンじゃねェか。この第一位によ」

「……なぁお前さ、中二病引き摺ってたりしない? 相当ヤバいよ?」

「素で最強なンだよ」

 

 珱嗄はその言葉に確かに、と苦笑した。そして苦笑した後、なら、と一言おいて続けてこう言った。

 

「それじゃあさ、第一位。俺と勝負しようぜ? 俺が勝ったらメアド交換な」

「ほォ……そンじゃあ俺が勝ったら二度と俺の目の前に姿を現すな。ま、俺が勝った時お前が生きてっかどうかは分かンねェけどなァ」

 

 一方通行(アクセラレータ)は歯を剥き出しにして鋭く笑みを浮かべ、珱嗄はそれに対して吊り上げる様にゆらりと笑った。二人の間に張りつめた緊張感が生まれる。そして、一方通行の案内で人気のない所へと二人して歩き始めた。ビニールの中の缶コーヒーがカタカタと音を立てる。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、俺携帯持ってねーや。ちょっと今から一緒に買いに行ってくれる?」

「オマエ前提条件から崩すんじゃねェよ!!」

 

 やはりというか、締まらない珱嗄だった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。