◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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打ち止め編
ジェンガ


 八月三十一日、夏休みの最終日であり、馬鹿な学生達は総じて宿題の消費に精を出している日だ。珱嗄達もあの大魔術が終わって既に学園都市に帰ってきてから二日が経ったという訳だ。

 

 とは言っても、今はその三十一日に入ったばかりである。午前0時24分、八月三十一日はまだ23時間と36分も残っているのだ。当然空は暗く、コンビニやファミレスの明かりが目立つ時間帯。そんな時間、暗い夜道を、学園都市最強のレベル5、一方通行(アクセラレータ)は歩いていた。好物である缶コーヒーを大量に購入して帰る途中なのだ。

 あの妹達の一件以降、一方通行は少しだけ変わった。突っ掛かってくる不良を叩きのめす事には変わりはないが、自分を最強とは思わなくなっていた。そもそも自分が負けを認めた相手が二人もいるのだ、最強を名乗る訳にも行かないだろう。あの最弱の彼が最強足る素質を持っている事を認め、あの無敵の彼が人外足る証拠を認めたとはいえ、一方通行も馬鹿じゃない。自分があんな風になれるとは欠片程も思っていない。

 上条当麻が主人公なら、自分は精々悪党が限度だろうと認識している。上条当麻(あっち)は光の世界の住人で、一方通行(こっち)は闇の世界の住人なのだから。

 

 自分の能力が依然として破壊にしか使えないというのは、最早確定事項になっているし、救済の為に使う勇気も無いのだ。だから、悪党なら悪党らしく、破壊する事で救える物もあるのではないだろうかと、思う様になったのだ。

 

「………はァ……」

 

 ため息を吐いて、空を見上げた。夜中に相応しい黒々とした空は、不安を誘う様な暗闇を作り出し、恐怖を誘う様な枯れ尾花を作りあげる。だがしかし、それでも夜空に浮かぶ散りばめた様な星々は、やっぱり美しかった。

 ただ、自分の思っている事はこの星空の様な矛盾を成立させなければならない。恐怖や不安を誘うのに、それでも輝きを放つ存在。そこに至るまでに、どれ程の苦悩が待ち構えているのか、果たして自分に辿り着ける領域なのか、さっぱり分からない。

 

「やっぱ、俺もどっか変わっちまったみてェだなァ……」

「なにが変わっちゃったの? って、ミサカはミサカは訪ねてみたり」

「あン?」

「やっほー! って、ミサカはミサカは元気よく挨拶してみる!」

 

 一方通行は後方から聞こえた幼い声に、怪訝な顔で振り向いた。そして、そこには汚いボロ布を巻いた小さな子供が立っていた。ちょこんと見える足は、裸足で靴すら履いていない。フードの様に頭まで巻いているので顔は見えないが、ストリートチルドレンとでも言いたげな風貌の子供がそこに居た。

 

「……何だオマエ」

「おお! ちゃんとコミュニケーションが取れた事にびっくり! って、ミサカはミサカはテンションを上げてみたり!」

「? 待てよ、ミサカだと?」

「え?」

「オマエ、ちょっとその毛布取っ払って顔見せてみろ」

 

 一方通行は、聞き覚えしかない『ミサカ』というワードに眉を潜めてそう言った。あの実験は既に中止された筈で、もうクローンは作られていない筈だ。なのに、何故か知らないがミサカを名乗る通常より小さな子供が存在している。もしもこの子供もクローンの一体なのだとしたら、実験はまだ続いているということになるのだ。少なくとも、レベル5のクローン量産実験の方は。

 

「え、えと……女性に往来で服を脱げというのは些か理不尽で――――」

「―――!」

 

 一方通行はボロ布を掴んで引っ張る。すると、その下にあった子供の姿形が鮮明に現れた。まずは顔、御坂美琴そっくりの幼い顔立ちだった。次に胸、幼女体型に相応しいつるぺたの胸がそこにあった。次に腰、まだくびれらしく線は無いが、無駄な肉も付いていない健康的な腰付き、次に下半身だが、まぁ特に異常は無かった。

 ただ、ボロ布の下が裸という事態で無ければ、の話だが。

 

「なンだこりゃァ!?」

「わぁぁ! 返して! ミサカの大事なパートナーを返して! ってミサカはミサカ―――わぷっ!」

「チッ……誰にも見られてねェだろうな……」

 

 一方通行はボロ布を投げ付ける様に返した後、幼女がボロ布を纏い直す間に周囲を見渡す。今の光景が見られていたら唯の犯罪者だ。まして、写真にでも撮られていたら最悪だ。

 学園都市最強のレベル5はロリコンの性犯罪者という嫌な烙印を押されてしまう。

 

 

 ―――ピロリン♪

 

 

 だが、その不安は的中した。携帯の音が鳴り、一方通行はその方向を見た。するとそこには、

 

 

 (^o^)=☆|柱|      ‼(゜゜;) (幼女)

 

 

 カメラを構えた珱嗄が、ばっちりその光景を抑えていた。

 

「最近はさ、ツイッターなんてものが流行ってるらしいよ?」

「止めろォォ!!」

 

 一方通行はその時、全力で珱嗄に飛びかかって行った。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 とりあえず、珱嗄を一晩泊めるという条件で、写真を消させる事が出来た一方通行は、内心ほっと息を吐いていた。

 

「いやー、中々味気ない部屋だね」

「生活感の無い部屋って言っても良いかも。って、ミサカはミサカは感想を述べてみたり!」

「オイ待て、なんでオマエもいンだよガキ」

「え? て、ミサカはミサカは至極今更な疑問に疑問で投げ返してみたり」

「良いじゃねーか子供は大切にすべきだぜアセロラ」

「……テメェは気になンねェのか? コイツの存在が」

 

 一方通行は実験を中止に追い込んだ張本人にそう問う。実際、彼女の存在は異常だ。ミサカを名乗る他とは違う個体。最早意味が分からない。

 

「正直どうでもいいかなって。というか、この世界って結構ロリキャラ多いよね。ロリコンなのかな作者は」

「何言ってンだオマエ」

「まぁ気にしないでくれ。というか、気になるなら調べれば良いじゃないか。研究者に宛てはあるんだろ?」

「ミサカとしてはその方が都合がいいかも、ってミサカはミサカは進言してみる」

「……チッ……まァ良い。俺は寝る」

「よしうるさいのは寝るみたいだ。さぁミサカモドキ、俺とジェンガやろうぜ。倒した時にアセロラを起こした方の勝ちな」

「オマエマジふざけンなよ!!」

 

 一方通行は、珱嗄の相変わらずさにうんざりした様子で叫んだのだった。

 

 

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