◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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あ、ちなみに時系列的に言えば原作3巻位です!


絹旗の無邪気さ

 翌朝

 

 目を覚ました珱嗄は、寝た時にいた屋上にいなかった。見れば、腕は縄で拘束されており、能力を制限する手錠も掛かっていた。周囲を見渡せばどこか生活感の残る部屋の中だった。転がっている空の缶詰、なんとなく見覚えのあるぬいぐるみ、微妙に散らかっている部屋は見た感じ女子の部屋だった。

 

「………何この状況」

 

 とりあえず珱嗄は腕力任せで縄も手錠も引き千切る。そして腕に残った手錠は握りつぶすことで粉々にして取った。腕を擦りつつ、ベッドを見つけて寝っ転がった。

 脱出は考えていない。折角拠点が自分からのこのこやって来たのだ、思う存分使わせて貰おうと考えたからだ。幸いなことに、冷蔵庫やベッド、テーブル位の必要最低限の家具はある。故に生活するには困らなそうだ。

 

「誘拐犯としてはまぁ及第点かなぁ……俺じゃなきゃ」

 

 珱嗄はそう言って、肘を立てて寝ながら頬杖を付く。所謂おじさんがテレビを寝転がってみる時の体勢である。服装は変わっていないし、財布も無事、中身も取られていない所を見ると、目的は金では無く珱嗄自身。ならば、ここでこうしていても特に害はないだろう。

 

「さて、確か昨日はここがとあるの世界だってことを知って寝たんだっけ……主人公忘れたけど、確か身体能力的にはどの敵も大したこと無かった気がするなぁ……体術は皆そこそこ身に付けてたっけ……」

 

 珱嗄は現状確認を終えて、この世界での立ち回り方を考える。これまでの世界ではそこそこ身体的に優れたキャラが多かったので、手加減は程々にしていたのだが、この世界は異能の力の方が戦闘においてメインになる。となると珱嗄の身体能力は持っている能力と組み合わせると少し圧倒し過ぎる。

 そこで、珱嗄は手加減しつつ全力で戦える方法を考えた。それは、今までの変幻自在で掴みどころのない戦い方から、規則性のある戦い方に変えること。つまり、柔道や剣道なんかにある、一定の『型』にそって戦うのだ。

 

 こうすることで、敵は技の前の『構え』から次の動作を予測し、繰り出される技に対抗する事が出来る様になるだろう。これまで構えず自然体から技を繰り出していた珱嗄からすれば、これは相手に対する最大の手加減。そして、その型に沿いながらなら全力を出す事も出来るだろう。万事解決である。

 

「んじゃ、即席だけど型作ろ。技名とかも考えた方が良いかな?」

 

 中学二年生が色々な設定を考える様に、自身の行なう構えや技の名前を思考する珱嗄。あまり考えなかった事なので、少し楽しくなってきている。

 

「超何してんですか?」

「ああ、おかえり最愛ちゃん」

「ええまぁ……一応その挨拶で超合ってますが……少々落ちつき過ぎてませんか?」

「あれ、フレンダちゃん達はどうしたんだ? 学校?」

「私達は超学校には行ってません。行けるような環境で育ってませんし……麦野達は超買い出し中です」

 

 そこへ、相席になって知り合った絹旗最愛が帰って来た。珱嗄が拘束具を破壊している所とベッドの上で楽しげに鼻歌を歌っている所を見て引き攣った笑みを浮かべている。

 何処の世界に誘拐されたにも拘らず、拘束具を破壊出来たのに逃げずに寛ぐ被害者がいるのか。しかも鼻歌交じりに誘拐犯にお帰りと来たもんだ。マイペースにも程がある。

 

「買い出しか……見た所缶詰?」

「フレンダは鯖缶が超好きですから。麦野は多分鮭弁当だと思います」

「それ、俺の分ある?」

「超知りませんよ。麦野達の機嫌が超良ければあるんじゃないですか?」

「マジかー……仕方ない。俺も買い出し行ってくるわ」

「あ、はい。超行ってらっしゃ――――って待てコラ」

 

 思わず自然な感じで送り出す所だった絹旗。珱嗄の腕を取って引きとめる。珱嗄はいきなり腕を取られ、意外な怪力につんのめった。そして、絹旗に掴まれているかと思えば、彼女の手と珱嗄の腕の間には数ミリの隙間があり、実際には彼女の手は珱嗄に触れてなかった。

 

「……ふむ、これも能力?」

「ええ、まぁ……【窒素装甲(オフェンスアーマー)】といいます。詳細は超秘密ですが、抵抗は超無駄ですよ?」

「いや、そうでもないぜ?」

 

 珱嗄は能力を発動させ、自身の腕を掴んでいる絹旗の腕に纏っている窒素の鎧を『掴み』、剥がし取った。そしてそのまま直に絹旗の腕を掴んで引きはがした。

 絹旗はレベル4の大能力者だ。能力名は【窒素装甲(オフェンスアーマー)】。空気中の窒素を全身に纏い、鎧の様な防御力を得たり、鬼の様な怪力を得る事が出来る能力だ。故に、銃弾程度では彼女に傷一つ付ける事など出来ず、重トラック程度なら軽く持ち上げる事も出来る。だが、能力を使わない彼女自身の筋力は見た目通りの貧弱な物。大の大人である、まして珱嗄の力なら簡単に引きはがす事が出来た。

 

「なっ……私の装甲を……!?」

「ああそうそう、俺の能力言って無かったね。そっちも教えてくれた事だし、技名考えてる時に能力名も思い付いたんだ。俺の能力名は【危機処分(ディスパーザルシステム)】。よろしく」

 

 珱嗄の能力。【危機処分(ディスパーザルシステム)】は、今はまだレベル3程度の能力だ。その効果は、ただ『(さわ)れる』というだけ。あらゆるものに、ただ触れるだけだ。しかも、一回の発動時間はたったの5秒間。なんの役にも立たないクズ能力だ。

 だが、珱嗄が使う場合においてはとても役に立つ能力に変わる。『あらゆる』モノに触れられる。それはつまり、超能力で生み出された物にも触れられるという事だ。

 

 つまり、白髪の少年。レベル5の第一位―――『一方通行(アクセラレータ)』との一合では、ベクトル変換という能力で作られた、向かってくるもの全てを反射する反射膜を纏っていた彼を、その反射膜ごと能力で掴んで投げたのだ。触れられる、というからには触れる物から拒絶されてはいけない。つまり、珱嗄が能力を持って触れる物は、その性質を触れている間だけ無効化する。つまり、反射膜は反射せず、電撃は感電や伝熱の性質を失い、窒素装甲は装甲の性質を持たなかったのだ。

 故に、白髪の少年は反射膜ごと投げ飛ばされたし、御坂美琴の電撃は弾き飛ばされたし、絹旗最愛の窒素装甲は剥がし取られた。たったの5秒だけでそれが出来るのはやはり珱嗄の身体能力故なのだが。

 

「……ある意味、私と超似たような能力ですね」

「そうだね。5秒間だけなら俺は無敵だしな。しかも銃弾なら触れた瞬間『撃ち貫く』って性質を無効化されて止まるからね」

 

 5秒間は性質を無効化されるが、時間を過ぎればそれは再開するのだ。だが、それは5秒後もその勢いを止めていないモノだけだ。銃弾は5秒間止められれば当然勢いを失って、時間を過ぎれば地面に落ちるのだ。

 

「てことは、核爆弾も触れて勢いを止めれば超意図的に不発弾に出来そうですね」

「出来そうではあるよね」

 

 ある意味、絹旗や一方通行に似た能力。言ってしまえば反射膜や窒素を纏う感じでは無く、肉体自体に能力の効果が付与された様な感覚だ。絹旗の能力を身体強化系能力の様な発動形式にした感じだ。

 

「となると……超勝ち目がありそうにないですね」

「ま、5秒だけだからね。発動と発動の間には若干インターバルがあるし、隙を衝けば勝てるかもよ?」

「いえ、超止めておきます。でも、私としては超此処にいて貰いたい所なのですが」

 

 珱嗄のチート能力を知って尚、仕事は全うする絹旗。どうやら珱嗄には敵意はないと見て、交渉する事にしたのだ。

 

「ん……ま、ご飯くれるならいいか。朝ご飯も欲しい所だし」

 

 珱嗄は交渉の余地も無く、案外あっさりそれを承諾するのだった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「え、珱嗄にはAIM拡散力場が感じられない?」

「うん」

 

 麦野達は珱嗄と絹旗がごちゃごちゃやってる間に、買い出しを終えて拠点に帰る途中そんな会話をしていた。

 

「体晶は使ってないけど、AIM拡散力場は感じられなかった」

 

 AIM拡散力場とは、学園都市の開発によって超能力を得た能力者が全員漏れなく発している微弱な能力の波動の様なものだ。無意識下で微弱な能力の力場を身体から形成しているのが人工的に作られた能力者達の法則で、滝壺理后はその力場を記録し、特定の人物を捜索する事が出来る能力、【AIM追跡(AIMストーカー)】を持っている。ちなみにレベル4だ。

 それで珱嗄の力場を測ってみると、珱嗄には力場が無かったのだ。それもそのはず、珱嗄の能力は神様から与えられた物で、学園都市内の超能力者とは少し起源を別にしているのだから。

 

「ふーん……ま、無能力者か……原石だからか分からないけど……その辺は追々聞き出せばいいでしょ」

「結局、珱嗄って何者な訳よ……」

「……興味深いね」

 

 珱嗄に関しての興味が深まる中、麦野達は拠点の扉を開ける。中には先に戻した絹旗がいる筈だと思いつつ、入っていった。

 すると、中には……

 

 

 

「うわっ、何ですかコレ!? 超逞しいんですけど!」

「わはは、軽いなぁ最愛ちゃん」

 

 

 

 珱嗄の片腕にぶら下がってはしゃぐ絹旗最愛とそれを軽々と持ち上げる珱嗄の姿。足が地面に付いていない絹旗はいつも以上に子供っぽく見えた。

 

 

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