◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
珱嗄からの手紙の内容は、こうだ。
『全略』
A4用紙が丸々白紙で、一番上にぽつんとそう書いてあった。しかも、無駄に綺麗な字だからムカつく。
「ふざけんじゃねーよ!!?」
「まて、上条当麻。その手紙を寄越せ」
ステイルは手紙を破ろうとする当麻を止めて、その手紙を奪い取る。そして、自身の得意とする炎の魔術を行使して、その手紙を炙った。
「炙りだしだ」
「めんどくさっ!? というかいつ書いたんだよその手の込んだ手紙!!」
「えーと何々―――」
ステイルが炙りだしで出て来た文字を読み始めた。
『―――お前らがわざわざ炙りだしてまで読んでる頃には、俺はその場にはいないだろう』
「そりゃそうだろ!?」
『どうせお前の事だからそりゃそうだろ、とか突っ込んだろうな。上条ちゃん、お前の事だぜ?』
「ぐ……くそ、果てしなくムカつく……!」
『さて、という訳で俺はオルソラちゃんを攫って行った訳だが……ぶっちゃけ、面倒なんで、そこらへんのコンビニかどっかで涼んでる事にするわ。とりあえず……俺らの居場所のヒント1、『ミキサー』『この手紙』『長音の逆音』、とこんなところか? まぁヒント与え過ぎな気もするけどね。ま、最近俺もゴリ押しとかやったし、こういうのも悪くないでしょ。じゃ、頑張って』
珱嗄の手紙を読み終わると、ステイルはしゅぼっと燃やした。
「……なんだこの馬鹿にした様な文面は……」
「とうま、なんか私のフードの中にもあったんだよ」
「えーと……『手紙を燃やした貴方は、短気で怒りっぽい馬鹿です。だって行動読まれてるもん(笑)』だってさ……」
「おい何してる。さっさと奴を殺しに行くぞ!」
「待てよ短気!」
「誰が短気だ上条当麻!」
「ステイル、ステイなんだよ」
「これも奴の影響かぁぁああああああ!!!!」
ステイルは沈みゆく太陽に向かってそう叫んだ。
そして、しばらくした後。彼らは珱嗄の暗号を解き始める。まず、ヒントは『ミキサー』『珱嗄の手紙』『長音の逆音』だ。これだけでは全然解けない。何を指しているのか、さっぱりだ。しかも、手紙自体がヒントとなっているのなら、燃やしてしまった時点でそれは失われている。
「ミキサー……ふむ……あの手紙がヒントなら……どこかの文面が関わっているのかもしれないな」
「となると……炙りだしとかか?」
「いや、私は全略のトコだと思うんだよ」
「………ありそうで困る……」
そこで、インデックスの言った事を元に、組み立てて行く。全略、それは造語で元々は前略だ。となると、前を略す、ということで『ミキサー』の前を略してみた。すると、『キサー』になる。
そして最後のヒント『長音の逆音』だが、長音とは『ー』という伸ばしの棒線を示している。これが伸ばす長音では無く、短い単体の音である促音となる訳だ。
そして結果出来上がったのが、『キサッ』
「なんだこれは」
「キサッ!」
「キサッ!」
「おい止めろ。暑さでイライラしてんだから」
「タバコ吸ってっからそうなんだよステイルさんじゅうよんさい」
「嘘っ……14歳なの? もっとおっさんかと思ってたんだよ」
ステイルはインデックスの何気ない一言に崩れ落ちた。
当麻とインデックスはそんな彼を放ってすくっと立って携帯のGPSを弄りだす。
「じゃ、いくぞ」
「何処へだ」
「珱嗄達のトコだよ」
「なっ……分かったのか?! この暗号が!」
「ああ」
上条当麻もインデックスも、珱嗄という人間と関わったのは短い期間だが、それでも彼の人間性は良く分かっていた。
「いいか、『キサッ』は『キッサ』に入れ換えて、『喫茶』になる訳だ。つまり、この辺の喫茶店に居るんだよ。分かったか」
「いやいやいやおかしいだろそれは。力押しにも程があるぞ」
「何言ってんだよ。言ってただろ、珱嗄も手紙で」
ステイルは首を傾げて何を言ってるのか分からないという顔をする。上条当麻はステイルに珱嗄の真似でゆらりと笑ってこう言った。
「ゴリ押しも、悪くない」
手紙の文末に書かれていた事の要約。つまり『ッ』の位置など、力押しで動かして良いだろ別に、という暗号の理論をぶっ飛ばしたやり方であった。
◇ ◇ ◇
さて、そういう訳で、当麻達の結論通り喫茶店でオルソラと涼んでいた珱嗄。オルソラはどうしてこんな所に居るのか分からず、結局珱嗄の勧めるがままに紅茶を飲んでいた。
「あの、いいのでございましょうか……こんな所で涼んでいても」
「いーんだよ。どうせ向こうからうじゃうじゃと来るから。それこそゴキブリの様に」
「ゴキブリは言い過ぎでは?」
「じゃあぼうふらだな」
珱嗄の言葉にオルソラは苦笑気味だ。珱嗄はそんなオルソラを放って頼んだパフェをパクパクと口に運んでいた。ちなみに、36個目である。
「ま、あの暗号は普通に解けるし……さて、誰が最初に此処に来るかな?」
珱嗄はそう言って、スプーンを咥えながらにっと笑った。