◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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VS初瀬遊里

 ペイントボールの飛び交う空間を半分ほど進んだ時、それは現れた。珱嗄達の上空に一瞬で現れたかと思えば、一瞬で消えて珱嗄達の目の前に着地した。そこはペイントボールの空間を越えた道。彼らは珱嗄達は一瞬で追い抜いたのだ。

 恐らく、男女ペアの片方―――男の方の能力『瞬間移動(テレポート)』が原因だろう。風紀委員の白井黒子と同じ能力であり、彼もまた人を連れて転移出来る実力者だ。故に、彼女と子供役を連れて跳べた。

 とはいえここまで追い付けなかったことを考慮すれば、白井程の飛距離はないのだろう。精々、30m程くらいだろうか。

 

 男の方は珱嗄を見て、にやりと笑うと彼女と子供役を連れて走りだす。どうやら能力発動には数回ごとにインターバルが必要らしい。

 但し、そんな事が分かったところで関係無い。珱嗄的には、あの男のにやりとした表情がなんとなく、癇に触った。

 

「美紀ちゃん」

「はい」

 

 珱嗄の言葉に頷いた美紀は、光のレーザーを彼らに向かって一発撃った。それと同時に、珱嗄達はペイントボールの空間を抜ける。そして、そのまま男達の下へと走った。

 だが、男とは別―――平莱小学校の『幼き覇者』の一人、彼らに付く子供役の少女が、美紀のレーザーを『逸らした』。いや、『逸らした』というよりは『曲げた』というべきかもしれない。

 

「! 俺と同じ能力……ではなさそうだな」

「はい、この学校では私と最も相性の悪い相手です。名前は初瀬遊里(はせ ゆうり)ちゃんです」

「光を曲げたって事は、同系統の能力か……それとも他の能力かねぇ……」

「ふむ、ってことはあの男の彼女であるあの女が、操祈ちゃんの能力を防いだって事になるのかね?」

 

 珱嗄達はとりあえず、大まかに敵の能力の解析を終える。瞬間移動、精神干渉を防げる能力、そして光を曲げられる能力、中々に脅威的だ。それも、レベル5の精神干渉を防げる、レベル5級の光線を曲げられる、となれば……彼女達は全員レベル4。非常にバランスの良いチームと言えよう。

 

「どうするのぉ?」

「どうやらあちらさんは戦闘を行う気満々なようだし、ここで厄介なチームは潰しておこうか」

「上等よぉ☆」

 

 珱嗄達と初瀬遊里らは対峙する。こちらが能力を大体把握出来ているのに対して、彼女達は珱嗄達の能力を把握出来ていない。食蜂の事を知っていたとしても、珱嗄の能力は分からないだろう。

 

「お前らは一番厄介そうなペアだからな……ここで潰れてもらうぜ!」

「随分とまぁやる気満々だな、うっとおしいくらいだ」

「ゴメン、普通そこまで言う? 俺なんかした?」

 

 珱嗄に宣戦布告をした男に、珱嗄は毒を吐いた。すると、彼は普通に頭を抱えて落ち込んだ。メンタル弱過ぎて逆に吃驚した位だ。とりあえず彼女の方が慰めて気を取り直したようだ。初瀬遊里が溜め息を付いている。これではどちらが大人なのか分からないな。

 

「とりあえず自己紹介だ。俺の名前は野崎太郎だ!」

「アタシはコレの彼女の美谷志保よ」

「コレって何? 俺一応彼氏だよな?」

「ウチは初瀬遊里でーす! よろしゅう頼みます!」

 

 自己紹介してきたが、どうやら上下関係的には野崎太郎が一番下の様だ。

 

「じゃ、いくぜ」

「え、お前らは自己紹介しないの?」

「いくぜ!」

「話聞けよぉ!!」

 

 珱嗄がそう言うと、美紀がタイミングよく、空気を読んでレーザーを発射。初瀬遊里がそれをまた曲げた。光の光線は地面を高熱で溶かし、蒸気を上げるだけに終わった。

 だが、初瀬遊里の能力は光を曲げるだけに留まらない。珱嗄はその能力による変化に気が付いていた。

 

「なんや、あつない?」

「成程……そういう能力か」

 

 彼女の周囲……恐らく珱嗄達のいる場所までの空間の気温が上がっている。まるで真夏の猛暑日の様だ。

 つまり、彼女の能力は『温度操作』。空間、物体、生物、様々なモノの温度を操作する事が出来るのだ。上げるも下げるも彼女の匙加減次第。人の体温を上げれば人は熱死するし、下げれば下げたで凍死する。物の温度を上げれば融解するだろうし、大気の温度を上げれば生物を干乾びさせる事も出来る。

 

 そして、光線を捻子曲げたのは蜃気楼の原理だ。

 

 蜃気楼というのは、異なる空間で大気の温度が違うことで光が曲がることで起こる現象だ。

 光というのは、異なる空間で大気の温度が違えば、より冷たい方へと光は進む。直線移動である光を曲げることが出来るのだ。故に、彼女は自分の目の前と珱嗄達側の大気の温度を操作し、光の方向を操作した。彼女が大気を冷たくした方向へと光線は屈折したのだ。

 

「二つの場所を同時に操作出来るとはな、流石は『幼き覇者』」

「その呼び名は勝手に周囲が呼んでいるだけです!」

「どうした、美紀ちゃん」

「その呼び名、あまり気にいっていないんですよ……」

 

 美紀が肩を落とした。珱嗄は苦笑する。

 とはいえ、これは不味いことになった。珱嗄の能力的に言えば、初瀬遊里の温度操作は天敵といってもいい。何故なら、空間全体に対する干渉故に、逸らせない上に、触っても意味が無いからだ。

 精神干渉は向こうの美谷志保とかいう彼女に妨害され、光線は初瀬遊里によって曲げられ、珱嗄の能力も初瀬とは相性が悪い。さらには瞬間移動を持つ野崎太郎という男までいる。

 

 

 全体的に、相性が悪い

 

 

 とはいえ、珱嗄の身体能力までは防げない。能力の大元である能力者の方をどうにかすれば、相性の悪い能力はどうにでも出来るのだ。だが、瞬間移動は文字通り一瞬の間に移動する。近づくには少しばかり難儀しそうだ。

 

「どうするかな……」

 

 珱嗄は尚楽しそうに、ゆらりとわらってそう漏らした。

 

 

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