◇5 とある魔術と科学にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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女王艦隊編
お引っ越し


 イタリア、珱嗄が現在足を踏み入れているのはこの国だ。アレイスターの依頼ということもあり、イタリアへと訪れた珱嗄だが、その際乗った超音速航空機では能力を使わなかった。ぶっちゃけると使わなくても珱嗄の肉体なら耐えられるのだ、あの程度の重力は。それを知ったアレイスターは逆さまのまま納得いかないといった表情を浮かべたらしいが、珱嗄の知るところではない。

 さて、珱嗄がこのイタリアにやってきたのは特に目的が無い。何かをしろとも言われていないし、日帰り旅行的なものと考えて良いと言われているので、のんびりと街を歩いていた。

 

「何もする事が無い、学園都市じゃないから知り合いもいないしねぇ……」

 

 珱嗄はそんな感じで暇そうに、つまらなそうにしている。実はここまでに珱嗄からスリをしようとやってきた者が数名いたのだが、全員漏れなく捻りあげられている。やはり着物だとスリしやすいのだろうか。

 

「イタリアっていえばローマ正教だったっけ……どこかにいないかなー、ローマ正教の魔術師」

「あ」

「ん?」

 

 どうやら珱嗄は随分と運が良い様だ。歩いていたら出会った、魔術師に。ローマ正教の者ではないが、珱嗄も知っている魔術師だ。名前は確か、

 

「クワガタじゃん、久しぶりだねクワガタ」

「建宮斎字なのよな! 文字数しか合ってねぇ!!」

 

 天草式十字清教のトップ代理、建宮斎字。何故此処にいるのだろうか、ローマ正教の本拠地イタリアなのに。珱嗄はそう思いながらもまぁいいかと思考を切り捨てた。

 とはいえ、ここで見つけた知り合いにして騒動の中心である魔術師。逃がすわけにはいかないなぁと思いながら珱嗄は口を開く。

 

「何してんだお前」

「お前さんほんとマイペースよな……オルソラがイギリス清教に入ることになったからな、イタリアの住居から引っ越しするお手伝いってなわけよ」

「ああ……引っ越しねぇ、しかし魔術師ってのは暇なんだな……引っ越し屋使えよ」

「魔術師の拠点を引っ越し屋経由でばらしちまった日には目もあてらんねぇよ」

「そんなの使わなくても俺拠点分かるけどね」

 

 勘で。珱嗄の言葉だと嘘だと言えない所が恐ろしい、つくづく敵に回したくないなぁと思う建宮、背筋に走った悪寒はきっと気のせいでは無いだろう。

 

「今もやってんの?」

「ああ」

「俺も行くわ、案内しろ」

「お前さん、俺に対してちょっと冷たくねぇか?」

「案内して下さい、お願いします」

「止めてくれ! お前さんに敬語で丁寧に頼まれるとすげぇ怖ぇのよ!!」

 

 建宮は今度こそ背筋だけでは飽き足らない程の悪寒に襲われた。珱嗄はゆらり笑った。

 とりあえず、珱嗄の頼みもあってオルソラの住まうイタリアの家へと向かうことになった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「あれ? お、珱嗄さん?」

「やぁ上条ちゃん、やっぱりいたか」

 

 建宮の案内で、オルソラの元住まいとなる場所へとやってきた珱嗄は予想通り上条当麻と出会った。アレイスターがなんの考えも無くイタリア旅行をプレゼントするとは思っていなかったが、こうも予想通りに上条当麻がいるとは、なんの面白みも無いなぁと思った。

 正直な所、珱嗄はもう少し捻りのある展開を期待していたのだが、やはりアレイスターにはもう何も期待しない方が良さそうだと思った。

 

「その様子だとオルソラちゃんとインデックスちゃんのシャワーシーンでも覗いたか」

 

 くつくつと含み笑いをする珱嗄に、上条当麻はうぐっと息を詰まらせた。身体中に歯型を付けた所をみれば一目瞭然、よくまぁこれだけラッキースケベが出来るものだなと感心するほどだ。

 とはいえ、上条当麻は所謂主人公の気質を持った存在だと珱嗄は思っている。元々、珱嗄は転生する際この世界が漫画、アニメの世界だと知っているのだから、主人公がいるのは当たり前なのだが、これほどまでに主人公然とした存在も珍しい。

 

「それで? オルソラちゃんは?」

「ん、ああ……今荷物を纏めてるとこなんだ。もう後少ししかないから……もう終わる所だけど」

「あ、そう……じゃまぁ手伝ってやるよ」

「え、珱嗄さんが? 手伝ってくれる!? 嘘だろ!? 珱嗄さんが親切だ!?」

「ハハッ☆ ぶん殴るぞお前、珱嗄さんはやることが無くて暇なんだよ。暇潰しだ」

「はいすみません、ありがとうございます!」

 

 珱嗄が上条当麻の横を良い笑顔で通り抜けると、上条当麻は直角に頭を下げて謝罪と感謝の意を示したのだった。

 珱嗄が中へ入ると、そこは既に大分片付いている。空家状態になっている部屋も幾つかあって、残った荷物は一つの部屋に纏められていた。これならばもう終わると言った上条の言葉もあながち嘘ではないのだろう。そしてそこには既に服を着たインデックスとオルソラがいた。

 インデックスの服は珱嗄によって修復されたので、空港でも金属探知器に引っかかったりはしなかったのだろうが、上条当麻が触れれば即座に壊れるのがネックだ。このままではいつ壊されるのかも分からない。珱嗄はふと、そう思った。

 

「なぁ上条ちゃん」

「ん、なんだ珱嗄さん」

「お前コレ付けとけよ右手に」

「え?」

 

 珱嗄が渡したのは、黒い手袋だった。此処に着いた際空港で買った物だ。アレイスターにお土産で買っていこうと思って買ったのだが、ぶっちゃけアレイスターはこんなもの付けないなぁと思ったので、上条当麻に渡すことにした。

 

「で、でも俺の右手は異能の力は打ち消しちまうんだけど……」

「馬鹿、これはただの手袋だ。これが異能の力で打ち消せるならお前を隔離しなくちゃならなくなるな」

「あ……はい」

 

 上条当麻は右手でそれを受け取って、素直に嵌めた。まぁ右手を常時空気に触れさせておくのは魔術師や超能力者からしたら邪魔以外の何物でもない。迷惑行為と同じだ。こうして直接触れないようにしておけば多少は何とかなるだろう。

 

「さて……それじゃ残りの荷物を運び出そうか」

「ああ」

 

 ほんの少しの暇潰しの為に、珱嗄はその辺に置いてある荷物に手を伸ばしたのだった。

 

 

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