第16話・プロローグ
春が過ぎてから一週間が経ち、少しずつ夏の暑さが訪れ始めた頃、夢ノ宮中学校では夏服へ衣替えする時期が訪れていた。
雛子も要も今週に入ってから夏服に変えており、教室に入ると真と愛子を始め、一部寒がりな生徒以外はみんな夏服へと移り変わっている。
ちなみに夢ノ宮中学校の制服は、ワイシャツとブレザーの色を自由に選ぶことが出来る。
要は橙色、雛子は薄紫色とそれぞれ好きな色を選んでおり、制服1つとっても着ている生徒の個性が垣間見ることができるのだ。
「ひなこちゃん、おはよー。」
すると雛子が愛でてやまない蛍も夏服で登校してきた。夏服も可愛い。
蛍の着るワイシャツは予想通り薄いピンクである。可愛い。
「いや~最近暑くなって来たね~。」
半袖の割合が多くを占めている教室を見て要がボヤく。
何年か前の自分なら、夏の日でも四六時中クーラーの効いた部屋で本を読んでいるだけだったので暑さは大して気にならなかったが、今はこの身体を動かさなければ逆に疲れてしまうようなスポーツバカが炎天下の陽の元だろうとお構いなしに連れまわしに来るので外へ出る機会も多くなった。
この先どんどん気温が上がってくると思うと少し億劫である。
「わたしもそろそろ、なつもののおようふく、買おうかなっておもってたとこなの。」
「そうね、そろそろ買いそろえた方が良いかしら。」
本来なら夏の入り始めか春の終わり頃には買い換えているところだが、今年はプリキュアの活動で週末に時間が取りづらく、今も私服は去年のお下がりを使っている。
だがお洒落に無頓着な悪友と違い、雛子はそれなりに気を遣う方だ。
その年の流行りものに飛びつくほどミーハーでもないが、かと言って去年着ていたものと同じ服をいつまでも着るつもりはない。
今年は今年で気持ちを新たに、他の洋服を着てみたいのだ。
「それじゃあさ、今週の末みんなで洋服買いにドリームプラザまで行ってみない?」
すると要からそんな提案が上がって来た。
この悪友にとっては単にみんなで遊びに出掛けるための口実作りでしかないのだろうが、とはいえ悪い案ではない。
雛子としてもみんなと一緒に買いに出かられるのであればそれは有意義な時間だし、何より目の前にいる天使が大喜びするからだ。
「わはっ!そうしよう!みんなでいっしょに、おようふく買いにいこっ!!」
雛子の予想通り、要の提案を聞いた蛍が満面の笑みを浮かべてはしゃぐ。可愛い。
そんな蛍の天使の笑顔(エンジェルスマイル)を見ながら、雛子は蛍ならどんな洋服が似合うのだろうかとしばしの間妄想にふけるのだった。可愛い。