ホープライトプリキュア   作:SnowWind

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第21話・Bパート

 リリンを連れて川原まで訪れた千歳たちは、まず周囲を見渡して人がいないかを確認する。

 この辺りは街の子どもたちの遊び場になることも多く、今は夏休みだ。

 既に子どもが来ているか心配だったが、まだ昼も迎えていない時間のためか杞憂に終わってくれた。

 これならば周囲を気にせず腹の内を探ることができると、千歳は改めてリリンを睨み付ける。

 

「それで、こんなところにまで連れて来て、あたしに何のようかしら?」

 

 こちらからの視線に怯むことなく、リリンは余裕な様子でそう聞いてくる。

 密かに微笑みながら目を細めるその姿は、どこか見下されているようにさえ思えた。

 その様子には、普段蛍と一緒にいるときの優し気な雰囲気は微塵も感じられなかった。

 そんなリリンに要と雛子は息を飲むが、千歳は怯んでいられない。

 着々と、自分の考えが正解に近づきつつあるからだ。

 

「リリン、あなたに聞きたいことがあるの。

 あなた、どこの学校に通っているの?」

 

 正面切って尋ねたところで適当に誤魔化されるだけだ。

 だからまずは小手調べ。

 リリンの実態から暴き始めてやる。

 

「なんで今、そんなことをあなたに言わなきゃならないの?」

 

 彼女は答えようとはしなかった。

 蛍にすら話していないのだから当然だろう。

 だがその対応は想定済みだ。

 

「いいから答えなさい。少なくとも夢ノ宮中学校ではないわよね?」

 

 だから、こちらから逃げ道を1つずつ潰してやる。

 

「それはそうよ、だってあたしは・・・。」

 

「小学校、でもないんやろ?」

 

「えっ?」

 

 リリンの言葉に先回りし、要が1つの逃げ道を潰す。

 

「こう見えてもウチ、この街だとちょっと顔が広いの。

 夢ノ宮小学校にも知ってる子おるけど、リリンって子は小学校にはいないって言ってたよ。」

 

 リリンの背丈は目測140cm。この世界で言えば小学生の平均的な身長だ。

 だから小学生だと答えれば誤魔化せると考えていたのだろうが、こちらには交友関係の広い要がいる。

 彼女に頼んで調べてもらったが、案の定、リリンと言う生徒は近辺の小学校には見当たらなかった。

 このまま言い逃れの出来ない状況を作ってやる。

 

「この夢ノ宮市のどこに住んでいるの?

 ご両親は?兄弟はいるの?蛍以外の友達はいるの?

 私たち以外に、あなたのことを知る人がこの夢ノ宮市にいるの?」

 

「別にあなたには関係のないことでしょう?」

 

「どうしてそこまで自分のことを隠すの?

 何か答えられない理由でもあるの?」

 

 千歳の矢継ぎ早に質問に対しても、リリンは依然として涼しい顔で受け流し、答える様子を見せない。

 否、最初から答えなんて『持っていない』はずだ。

 だが話を背ければ背けるほど、リリン自身の逃げ道を塞いでいくことになる。

 

「答えなさい、リリン。

 あなた、本当にこの街に住んでいるの?」

 

 そして蛍がこの場にいない今、自分たちを止める相手だっていない。

 ここから逃すつもりは無い。そう千歳が思ったその時。

 

「・・・うふふっ、あはははは、あたしのこと、そこまで怪しむだなんて。」

 

 リリンが不気味な笑みを浮かべながら、こちらに挑戦的な視線を送ってきた。

 それが核心に近づいていると感じた千歳は、妖精たちに後ろに引くように促す。

 そして・・・。

 

「まるであたしのことを、『リリス』と疑っているみたいじゃない。」

 

「っ!?」

 

 リリンは狂気的な笑みを浮かべたまま、自白も同然の言葉を吐き捨てた。

 そこにはもう、蛍の親友『リリン』の面影は微塵も感じられなかった。

 人の心を平然と利用し、騙し、陥れ、絶望へと誘う邪悪な存在。

 行動隊長のリリスとしての顔が、リリンの姿を通して映り込んでいく。

 千歳と要は身構え、目の前にいるリリンを敵として認識する。

 

「『リリス』だなんて一言も言ってなかったはずだけど?」

 

「この期に及んで化かし合いを続けても意味なんてないわ。

 あなたは最初からあたしのこと、リリスだと確定付けていたのでしょう?キュアブレイズ。」

 

 不覚にも彼女の言う通りだ。

 それにお返しとばかり、こちらの正体にも気が付いていたと挑発されるが、千歳は気にせず敵意を剥き出しにした目でリリンを睨み付ける。

 

「やっぱり、あなたがリリスだったのね。」

 

「うふふっ、さすがにあなたたちの目までは誤魔化せなかったようね。」

 

 正体が発覚したにも関わらず、リリンは涼しい顔だ。

 こちらの正体を暴いた以上、もう欺く必要がなくなったのかもしれない。

 

「なんで正体を隠して蛍に近づいたん?」

 

 すると要が、リリンにそんな質問を投げかけた。

 自分と違い、要の表情からはまだ苦心が見られる。

 彼女は以前、リリンが本当に蛍を利用するだけの邪悪な存在ならば、戦いに協力すると言っていた。

 だからこの場で確かめるつもりなのだろう。

 本当にリリンには心がないのかを。

 

「あの子はプリキュアに関する情報を知っていたから。

 だから利用するために近づいた。それだけよ。」

 

「蛍はあんたのこと、心から友達だと思ってるよ。それなのに・・・。」

 

「おかげで何も疑われることなく、あの子に近づけたわ。」

 

「っ!?」

 

 事もなくそう述べるリリンに、要は目を見開く。

 

「そしてあの子の正体を知り、あなたたちの正体にも辿りつくことができた。

 だからあの子には本当に感謝してるのよ。

 あんなにも扱いやすくて、あたしにとって都合良く動いてくれたからね。」

 

 千歳は怒りで唇を噛みしめ、要もどこか諦めた表情を浮かべる。

 結局、リリンは心なんてもの、持ち合わせていなかったのだ。

 蛍から向けられた好意なんて何とも思っておらず、彼女の純粋な思いを利用していただけ。

 それならばもう、躊躇う理由なんてない。

 全てが自分の想像通りの結果に終わってしまったことに千歳は失望しながら、ブレイズパクトを手に取る。

 隣に並ぶ要も、覚悟を決めた様子でスパークタクトを手に取る。

 だけど雛子だけは悲しそうな表情のまま、妖精たちの位置まで後退した。

 ここまで来ても、雛子にはリリンと戦う覚悟が生まれなかったようだ。

 一瞬だけ、そんな彼女への罪悪感が過る。

 だけどすぐにそれを振り払い、迷いのない敵意をリリスへと向ける。

 

「リリス、あなたを倒すわ。」

 

「悪く思わんどいてな。

 こうなった以上、もうあんたのことを放っておけんよ。」

 

 だが敵意を向けられても尚、リリンは余裕の笑みを浮かべたままだ。

 

「あら、良いのかしら?

 あたしと戦って。」

 

「・・・どうゆう意味かしら?」

 

「もしこんなところを蛍が見たら、あの子はどう思うでしょうね?」

 

「っ!?」

 

 続くリリンの言葉に千歳は目を言葉を失う。

 

「あの子はあたしのことを信頼してくれてる。

 あの子はあたしのことをトモダチだと思ってくれてる。

 そんなあたしに、あなたたちが牙を向けたところをあの子が見たら、あの子はどっちの味方をしてくれると思う?」

 

 リリンの余裕に満ちた言葉からは、蛍は彼女の味方をしてくれると確信している様子だった。

 だが悔しいことに、もしも蛍がこの場を訪れたら彼女の言う通りになる可能性が高い。

 こちらの言葉に、蛍は耳を傾けてくれなかった。

 あの子は頭の中で分かっていても、リリンへの信頼を捨てることが、裏切ることが出来なかったのだ。

 それだけに、リリンが言うことが許せなかった。

 蛍から盲目的な信頼を得ているのに、リリンはそれを利用価値のある程度にしか思っていない。

 蛍の優しさを、純真さを利用してずっと騙してきたくせに・・・。

 蛍がどれだけリリンのことを信じて、どれだけ心を救われたのかも知らないくせに・・・。

 そして今、リリンの正体に勘付いてしまい、どれだけ苦しんで傷ついているのかも知らないくせに・・・。

 

「・・・あなただけは許さない。」

 

 千歳が今にも爆発しそうな怒りを堪えながらリリスを睨み付ける。

 例え蛍を傷つけることになったとしても、こいつだけは必ず倒さなければならないのだ。

 これ以上、蛍の心をこんなやつに利用させないために。

 千歳が握りしめるブレイズパクトに、強く光が灯り始める。

 だがその時。

 

「リリンちゃん!!」

 

「えっ・・・?」

 

 後ろから、リリンを呼ぶ声が聞こえてきた。

 振り向くとそこには、鞄にチェリーを入れた蛍の姿があった。

 

「蛍・・・どうしてここに・・・?」

 

 千歳も、要も雛子も妖精たちも、驚愕の表情で蛍の方を見る。

 そんな中リリンだけが、クスリと静かに微笑むのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 蛍が胸騒ぎに誘われるまま川原へ訪れると、すぐにリリンの姿を見つけることができた。

 それに一瞬安堵するも、信じがたい光景が広がっていた。

 千歳と要がパクトを構えながらリリンと向き合っている。

 その後方には、人に変身した妖精たちと雛子の姿もある。

 居ても立っても居られなくなった蛍は反射的にリリンの名前を叫び、リン子の側にチェリーを入れた鞄を置いてから、リリンと千歳の間に割って入る。

 

「蛍・・・。」

 

 千歳は驚愕の表情のままこちらを見るが、蛍はそんな千歳を睨み返す。

 

「ちとせちゃん・・・なにやってるの!?かなめちゃんも!

 どうしてリリンちゃんにパクトなんかむけてるの!!?」

 

 パクトを手に取った時点で、2人がプリキュアに変身するつもりであることは明白だ。

 そしてそれをリリンに向けていたと言うことは、2人はリリンを敵だと思っているのだ。

 そんなはずはない。リリンに限ってそんなこと、あるはずがないのに。

 2人はリリンのことなんて何も知らないのに、勝手に敵だと決めつけ、自分に秘密で、内緒で戦おうとしていたのだ。

 

(リリンちゃんは・・・なんかじゃないのに・・・。)

 

 心中でそう思いながらも、逆の疑問が脳裏を過る。

 ならば自分は、リリンの何を知っているのだ?

 どこに住んでいるのか?学校はどこなのか?家族はいるのか?友達はいるのか?

 リリンのことは何も知らない。それなのになぜ、『なんかじゃない』と言い切れる?

 むしろ2人の方が・・・。

 

「っ・・・ひなこちゃんも!!どうして止めようとしなかったの!!?」

 

 そんな思考を断ち切ろうと、蛍は怒りの矛先を雛子にも向ける。

 雛子だけはこの場に立っていないと言うことは、彼女はリリンのことを信じてくれているはずだ。

 それなのに、2人を止めようとする様子を見せてない。

 そんな傍観に徹している雛子のことも許せなかった。

 だが蛍の糾弾を聞いた雛子は、手を強く握りながら唇を噛みしめた。

 見るからに辛そうな、今にも泣きそうな雛子の様子に、蛍も心を痛めるも、再び迷いを振り払うように再び千歳たちを睨み付ける。

 千歳と要はパクトを取り出した。雛子も妖精たちもそれを止めようとしなかった。

 この場にいる誰もがリリンのことを信じず、敵とみなしているのだ。

 だったら、自分だけでもリリンのことを信じなければならない。

 自分だけでも、リリンの味方をしなければならない。

 

「蛍!あなただってもうわかっているはずよ!リリンは・・・。」

 

 だが千歳の言葉に、心の内側に渦巻くもう1つの疑念が拡大していく。

 

「ちがう!リリンちゃんはリリンちゃんだよ!だれがなんて言おうとリリンちゃんだよ!!」

 

 千歳の言葉を、自分の内側に眠る疑念を、蛍は大声で叫びながら否定する。

 正しいとか間違っているとか、そんなことはもう、どうでもいい。

 ただリリンのことを信じたい。リリンが敵だなんて信じられない。

 だってリリンは、大切な人だから。

 大切な人だから信じたい。側にいたい。守りたい。ただそれだけだ。

 だから・・・。

 

「・・・リリンちゃんをきずつけるつもりなら・・・。」

 

 リリンのためなら自分は、何だって出来るはずだ。

 

「例えちとせちゃんでもゆるさない・・・。」

 

 それが例え、友達と戦うことになったとしても・・・。

 

「嘘でしょ・・・蛍・・・?」

 

「蛍・・・あんた、そこまで・・・。」

 

「蛍ちゃん・・・。」

 

 千歳が悲しそうな声で呟く。

 要が憐れむような視線を向けながら、一歩後退する。

 後ろにいる雛子は、堪えきれない涙を流していた。

 自分は今、大切な友達たちを傷つけて悲しませている。

 それが蛍の心を抉り、深い傷跡を残していくが、それでも蛍は止まるわけにはいかなかった。

 自分だけでもリリンの味方をしなければ、今度こそリリンが遠くへ行ってしまうような、そんな不安に押し潰されそうだから。

 リリンを守るために千歳たちと戦う。

 覚悟を決めた蛍が、シャインパクトを召喚するために両手を胸の前に置いたその時。

 

「・・・あれ・・・?」

 

 異変は、すぐに感じられた。

 

「なんで・・・どうしてパクトがでてこないの・・・?」

 

 今まで無意識ながらも感じられた力が、希望の光が欠片たりとも感じられなかった。

 どれだけ強く願っても、どれだけ心を込めても、希望の光が一切沸いてこない。

 

「なんで・・・どうして・・・?」

 

「蛍・・・?」

 

 千歳と要も、蛍の異変に気付いたようだ。

 先ほどとは打って変わって、蛍を案じるような視線を向ける。

 だけどそれは、今の蛍には慰めにならなかった。

 これまで希望の光を自在に操れなくても、シャインパクトを召喚できないことはなかったはずだ。

 プリキュアに変身できた時点で、無意識ながらも力を行使していたのだ。

 それなのに今は、シャインパクトの召喚さえできない。

 それはつまり、今の自分には一切の希望がないと言うことになってしまう。

 そんなはずはない。リリンのことを守る。リリンの力になりたいって願っているはずだ。

 リリンとずっと一緒にいられることが、希望の光に変わってくれるはずだ。

 それなのに・・・どうして?

 

「どうして・・・変身できないの・・・?」

 

 失意に満ちた声で蛍が呟いたその時

 

 

 そんなこと、わたしにはわかっているはずだよ。

 

 

「え・・・?」

 

 頭の中に、声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 リリンの目論見通り、蛍は自分の味方をしてくれた。

 千歳たちの敵意を煽って自分と戦うように仕向けることで、蛍をやつらから奪うと言う目論見は上手く行ったのだ。

 だが、その後の蛍の様子に異変が見られた。

 プリキュアに変身するためのアイテムが、いつまで経っても召喚されない。

 それだけでなく、顔色が見る見る内に青ざめていき、頭を抱え始めた。

 蛍の身に、何か良からぬことが起きている。

 千歳たちもそう感じたのか、蛍の元へ駆け寄ろうとしたその時

 

「え・・・?」

 

 蛍が目を見開いて両手を凝視する。

 視線につられて蛍の両手に目を向けると、黒い霧が僅かに漂っていたのだ。

 

「なん・・・で・・・?」

 

 今にも泣きそうな声で蛍がそう呟き、リリンは蛍の身に起きた異変を知る。

 蛍の身体から、絶望の闇が生まれているのだ。

 その光景を前に、千歳たちも何が起きたのかを悟ったようだが、同時に周囲を見渡し始め、困惑と驚愕の表情を浮かべている。

 当然だ。なぜなら自分はまだ・・・。

 

「なんで?闇の牢獄はまだ展開していないのに・・・?」

 

 蛍の様子を見たリリンが、困惑した声色で呟く。

 そう、リリスはまだ、闇の牢獄を展開していない。

 闇の牢獄がなければ、絶望の闇からは何の力も生まれないどころか、視覚すらできないはずだ。

 それなのに今、蛍の身体からは確かな絶望の闇が感じられ、それは少しずつ目に見える形を成していく。

 まだ目を凝らさなければ気が付かないほどに薄く、靄がかかっている程度にしか見えないが、蛍の両手から放たれた黒い霧は、やがて彼女の全身から生み出されていき、彼女の身体を包み込んでいった。

 

「いや・・・いやだ!どうして!?なんでそんなことを言うの!!?」

 

 やがて蛍は誰からも話しかけられていないのに、1人泣き叫び苦悶の表情を浮かべていた。

 

「ちがう!そんなことない!そんなことぜったいにないもん!!」

 

「ほたる・・・。」

 

 いつも自分に笑顔を見せて、安らぎを与えてくれた蛍が、張り裂けそうな声をあげて泣いている。

 そんな光景を目の当たりにしたリリンは、気が付けば蛍の元へ駆け寄っていた。

 

「ほたる!だいじょうぶ!?」

 

 こんなこと、自分は望んでいない。

 蛍をやつらから奪うことができれば良かっただけなのに、訳も分からず苦しむ蛍を見ることなんて望んでなんかいない。

 蛍に声をかけようとした千歳を差し置き、リリンは蛍の肩に手を乗せる。

 その時、

 

 

 本当は信じてなんかいないくせに。心の中で疑ってたくせに。

 

 

(え・・・?)

 

 蛍の声が聞こえてきた。

 蛍の纏う絶望の闇を通じて、リリンの頭に蛍の声が響き渡る。

 

 

 リリンちゃんのこと何も知らないくせに、なんであの子を信じられるの?

 あの子の言葉が本心だなんて、何も知らない私にがどうしてわかるの?

 

 

(なに・・・これ・・・?

 なんでほたるがこんなことを・・・?)

 

 

 絶望の闇を通じて聞こえる言葉は、全てその人の本心だ。

 その人が内側に抱えている悩み、苦しみ、心の闇が曝け出されるものだと聞いている。

 だとすれば、これが蛍の本心?蛍は本当は自分のことを・・・。

 

「リリンちゃん!」

 

 肩に手を置かれた蛍は、振り向きながらリリンに抱きつく。

 だがリリンは、頭の中に聞こえる蛍の声を聞く度に、自分の中の何かが崩れ落ちていくのを感じていた。

 

 

 わたしだって本当はわかってるはずだよ。ちとせちゃんが正しいって。

 

 

 頭の中に聞こえる蛍の声が、リリンの心を砕いていく。

 

「やっぱり・・・ちがうよね・・・?だってリリンちゃんは、こんなにやさしいんだもん・・・。」

 

 懇願するように綴られる蛍の言葉が、リリンの心を乱していく。

 そして・・・。

 

 本当はリリンちゃんが、リリスだって、わかってるはずだよ。

 

「リリンちゃんが・・・リリスだなんて、ありえないもん・・・。」

 

 

「っ・・・。」

 

 

 無意識に呟いてしまった蛍の声が耳に届く。

 曝け出された蛍の声が、頭に響く。

 リリンの中で、これまで積み重ねてきた思いの数々が、全て瓦解していった。

 そして気が付けばリリンは、蛍のことを冷たく突き放していた。

 

「え・・・?リリンちゃん・・・?」

 

「なによ・・・それ・・・?あなた、本当はあたしのこと、疑っていたの・・・?」

 

「っ!?ちっ、ちがう!ちがうよ!リリンちゃん!!」

 

 蛍が必死になって弁明するが、耳に届いた言葉も、頭に響いた言葉も、どうしようもないほどにリリンの心に届いていた。

 まるで胸の内を抉り取られて作られた空洞から、得も言われぬ虚構が生まれていく。

 

「あたしのことトモダチだって!大切な人だって言ってたくせに!

 心の中ではあたしのこと、ずっと疑ってたんだ!!」

 

「ちがうよ!リリンちゃん!!」

 

「その名前で呼ぶなああああ!!!」

 

 怒りも、憎しみも、虚構も、彼女に抱いていた特別な想いも、全てを吐き出すような叫びをあげる。

 蛍から得た安らぎを、蛍への思いを否定されたリリンに残ったのは、堪えようのない痛みと、空虚だけだった。

 

「・・・あ~あ、バッカみたい。

 今までなんのために、こんなトモダチごっこを続けてきたのかしら・・・。」

 

 その言葉に、蛍は悲痛の表情を浮かべる。

 だけどそんな表情を見ても、もう何も感じなくなっていた。

 まるでこの世界に来る前の自分に戻ったような気分だった。

 心を持たない行動隊長に・・・。

 

(・・・そうだ。まだ任務が残ってたわね。)

 

 今までなぜ、この程度のことを躊躇っていたのだろう?

 だけどもう、自分を抑えるものは何もない。

 アモンから与えられた指令、キュアシャインの正体を暴き、そして・・・。

 

「いやだ・・・やめて、リリンちゃん・・・。」

 

 懇願する蛍の目の前で、リリンは左手を横に伸ばす。

 

「リリン!やめなさい!!」

 

 それが何を意味するのか悟ったのか、千歳と要が止めに入ろうとする。

 だけどもう、遅かった。

 

「ターンオーバー、希望から絶望へ。」

 

 リリンはリリスへと姿を変えて、闇の牢獄を展開する。

 その直後、蛍の周囲から感じられた絶望の闇が、より強い力となって周囲に解き放たれていった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 蛍の目の前でリリンが、リリスへと姿を変えた。

 それはずっと、心のどこかで引っ掛かっていたことだった。

 だけどそんなはずはないと信じていれば、あり得ないことだと目を背けていれば、ずっと変わらぬ日々を送ることができると思っていた。

 でも、そんな甘い幻想は許されなかった。

 リリンから与えられた幸せな時間が、思い出が、リリンからもらった小さな勇気で積み重ねてきた蛍の世界が、目の前に突き付けられた残酷な現実によって、全て手のひらから零れ落ちていく。

 それと同時に、蛍の頭の中に聞こえる声が、より大きな声となって脳内を支配していく。

 

 

 ほら!わたしが信じてあげられなかったから、こんなことになったのよ!!

 わたしがリリンちゃんを裏切った!わたしのせいでこうなったのよ!!

 

 

「いや・・・。」

 

 

 リリンちゃんはずっとわたしを恨んできた!!

 わたしが信じてあげられなかったからよ!!

 

 

 そう、リリンがリリスだったと言うことは、自分はずっとリリンに恨まれてきたことになる。

 頭の中に響き渡る声が、蛍に残酷な現実を次々と突き付けていく。

 

 

「いやだ・・・。」

 

 

 小声で呟く言葉は、周囲に渦巻く黒い霧によって遮られていく。

 

「蛍!!」

 

 千歳が蛍に近づこうとするが、蛍の纏う黒い霧によって弾かれる。

 蛍を纏う黒い霧は、徐々に蛍を周囲から閉ざしていった。

 

「ほたる。」

 

 そんな中でも、リリンの声だけははっきりと聞こえてきた。

 リリスの姿で、リリンと変わらぬ口調で蛍に話しかけてくる。

 だけどそれは、身も心も闇に染まり始めている蛍に追い打ちをかけていく。

 

「やだ・・・。」

 

「あたしがリリンとしてあなたに近づいたのは、あなたからプリキュアの情報を引き出すため。

 あなたに教えた勇気のおまじないも、ただのデタラメよ。」

 

「やめて・・・。」

 

 支えとなっていたおまじないを否定された蛍は、涙ながらに懇願する。

 だがリリスは動じずに言葉を続ける。

 そして・・・。

 

「リリンは最初から、あなたのトモダチなんかじゃなかったのよ。」

 

 

 わたしは最初から、リリンちゃんとトモダチなんかじゃなかったのよ。

 

 

 リリスの言葉が、自分の声が、最後の支えになっていた想いを奪っていく。

 

「いやあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 友達も、思い出も、勇気も、全てを失った蛍は、喉が裂けるほどの叫びをあげる。

 そして蛍の意識は、暗い闇の中へと堕ちていった。

 

 

 なんでわたしにこんな酷いことをするの?

 なんでこんな辛い目に合わなきゃいけないの?

 なんでわたしばかりが不幸な目にあうの・・・?

 

 

 頭の中に聞こえてくる、自分の声に身を委ねながら。

 

 

 みんなキライだ。キライだ。キライだ。キライだ。キライだ。キライだ。大キライだ。

 

 

 やがて蛍の心は冷たく凍てつき、絶望が憎しみへと変わっていく。

 

 

 ミンナ、キライダ。ダイキライダ。ワタシノキライナモノゼンブ。

 

 

 自分から幸せを奪った全てを呪いながら・・・。

 

 

 ゼンブ、コワレチャエ。

 

 

 蛍の幸せは終わりを告げるのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 リリスを止めようとしても、蛍を助けようとしても、蛍から放たれている絶望の闇に遮られてしまい、千歳はただ、蛍が泣き叫びながら絶望していく様子を見ていることしか出来なかった。

 そして蛍の周囲から、これまで以上に膨大な絶望の闇が解き放たれた。

 

「きゃああっ!!」

 

「うわああっ!」

 

 蛍の近くにいた千歳と要は、その余波を受けて吹き飛ばされてしまう。

 

「くっ・・・プリキュア!」

 

「「ホープ・イン・マイハート!!」」

 

 千歳と要は吹き飛ばされながらもなんとか変身し、再び蛍の元へと駆け寄る。

 

「プリキュア!ホープ・イン・マイハート!」

 

 雛子も遅れて変身し、バリアを展開して妖精たちを守っていた。

 だが蛍から解き放たれた絶望の闇は、一瞬の内に天まで届き、夢ノ宮市全土に渡って急速に広がり始める。

 蛍1人から、街1つを飲みこみかねないほどの膨大な絶望の闇が絶え間なく生み出され、その勢いは尚も留まろうとはしなかった。

 

「なに・・・この力・・・?」

 

 リリスが唖然とした様子で、蛍から生み出される絶望の闇を凝視する。

 蛍を絶望させた張本人でさえ、これほどの力は予期していなかったようだ。

 だが我に返ったリリスは、1枚の黒いカードを取り出して蛍に向けて掲げる。

 

「常闇に囚われし暗き心よ。深淵の牢獄に泡沫の如く集いて、全ての光を奪う力を顕現せよ!

 ダークネスが行動隊長、リリスの名の下に、その力を示せ!ディスペアー・カード!」

 

 そしてリリスの詠唱とともに、黒いカードは蛍を纏う闇を吸い上げていく。

 この期に及んでリリスは、蛍の負の心さえも利用するつもりなのだ。

 だが止めようにも、蛍を覆う絶望の闇が強力過ぎて近寄ることすらできない。

 

「蛍ちゃん!!蛍ちゃん!!」

 

 キュアプリズムが蛍の名前を呼びながら無理やりにでも駆けつけようとするが、キュアスパークが片手でそれを制止する。

 蛍を覆う絶望の闇は、まるで暴風雨のように荒れ狂っている。

 近寄ることさえできないのに、あの中に無理やり駆け込んだらどうなるのか想像もできない。

 だけど闇の暴風雨の中で、蛍は泣き続けていた。

 姿は見えないのに、声だけは聞こえる。

 辛く、悲しく、今にも裂けてしまいそうな声が絶え間なく聞こえてくる。

 それだけでも胸が潰される思いだった。

 そして蛍が今苦しんでいるのに、何もできない自分が不甲斐なくてどうしようもなかった。

 やがてリリスのかざしたカードが蛍の絶望の闇を吸い尽くしたようだ。

 蛍を囲む暴風雨は収まり叫び声も止んだが、蛍はその場に倒れ伏した。

 

「蛍ちゃん!!」

 

 キュアプリズムが急いで駆けつけ、倒れる蛍の身体を揺さぶる。

 だけどその体は既に色を失い、絶望の闇は勢いこそ収まれど、依然と身体中から発しているままだった。

 

「蛍ちゃん!しっかりして!!」

 

 キュアプリズムが蛍の身体を抱きかかえようとして持ち上げる。その時、

 ダラリと、蛍の両手は力なく宙をぶらついた。

 グニャリと、蛍の首が力なく仰向けに垂れた。

 

「蛍・・・ちゃん・・・?」

 

 まるで糸の切れた操り人形のように、蛍は力なく抱え上げられた。

 キュアプリズムが首を抱えて顔を覗きこむが、蛍の瞳は生気を失っており、焦点を合わせることなく虚空を見ていた。

 ただ目に浮かぶ一筋の涙だけが、今も頬を伝りながら。

 

「あ・・・ああっ・・・。」

 

 キュアプリズムが悲痛に顔を歪ませる。

 

「ああああああああああっ!!蛍ちゃん!!蛍ちゃん!!」

 

 いつも明るくて、笑顔で、みんなに愛されていた蛍からかけ離れた凄惨な姿に、キュアプリズムが泣きながら、蛍の身体を強く抱きしめた。

 それでも蛍は動かず、ただ目に涙を流しながら虚空を見つめているだけだった。

 

「・・・リリス!!」

 

 その光景を目の当たりにした千歳にかつてないほどの怒りと憎しみが湧き上がる。

 それは蛍を傷つけたリリスに対しての憎しみであり、同時に自分の不甲斐なさへの怒りでもあった。

 蛍のためと思って事態を遅らせた結果、最悪な結末を迎えてしまった。

 怒りに身を委ねた千歳は、リリスへと挑みかかる。

 だがリリスが左手に持つ黒いカードを目の前に掲げた直後、カードから強大な力が放たれ、千歳は成す術もなく吹き飛ばされた。

 

「きゃああっ!」

 

「千歳!!」

 

 キュアスパークが吹き飛ばされた千歳を受け止める。

 だが態勢を取り直して再びリリスに挑もうとした矢先、リリスの持つカードが宙を浮き、黒い光を放ち始めた。

 

「何・・・あれ?」

 

 キュアスパークが驚愕しながら黒い光を放つカードを凝視する。

 するとカードから放たれた黒い光が、人の影を照らし始めた。

 その人影は黒いカードを飲みこみ、少しずつ明確な人の形を成していく。

 やがて黒い光が収まると、そこには少女の姿は宙を浮いていた。

 

「え・・・?」

 

 だがその姿を見たとき、自分も、キュアスパークも言葉を失った。

 黒いカードが形を成したそれは、「キュアシャイン」の姿そのものだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 リリスの目の前でディスペアー・カードが、キュアシャインへと姿を変えた。

 だが外見こそキュアシャインと同じだが、全身は黒く染まっており双眸は赤く光っている。

 その容姿はむしろソルダークに近いもので、感じられる力も絶望の闇だった。

 黒いシャイン、『ダークシャイン』と言う名がリリスの脳裏に浮かび上がる。

 リリスはこれがアモンの話していたソルダークを超えた兵士、『ネオ・ソルダーク』かと思ったが、それだと話が異なってくる。

 アモンの言葉通りならネオ・ソルダークとは、ディスペアー・カードの力を与えられて強化されたソルダークのことのはずだ。

 だがこのダークシャインは、ディスペアー・カードが直接形を変えたものだ。

 そして何よりもダークシャインからは、ソルダークとはまた異質な雰囲気を感じられた。

 

「キャアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 ダークシャインが着地と同時に、ソルダークのような叫び声をあげる。

 だがその声は、ソルダークの発する獣のような咆哮ではない。

 その声は、紛れもなく蛍の声だった。蛍の声で、まるで泣いているかのようだった。

 

「・・・もしかして、ほたる?ほたるなの?」

 

 リリスが不思議そうにダークシャインに話しかける。

 もしもカードに封印した蛍の絶望が、闇の心がそのまま具現化したものがこのダークシャインだとしたら、彼女は蛍の心そのものと言うことになる。

 

「ダークネスが・・・これ以上蛍を利用するなああああ!!」

 

 するとキュアブレイズが、かつてないほどの怒りを爆発させてこちらに飛び掛かって来た。

 この子がキュアシャインの姿を模っていることが、やつの逆鱗に触れたのだろう。

 炎を纏わせた拳をダークシャインめがけて振りかざす。

 だがダークシャインは、キュアブレイズの拳を事もなく片手で受け止めたのだ。

 そして全身から闇の波動を放ち、キュアブレイズを一撃で吹き飛ばす。

 

「くっ、はああああっ!!」

 

 だがキュアブレイズは吹き飛ばされながらも両足から炎を噴射し、態勢を立て直す。

 そしてダークシャインにめがけて幾つのも火球を放つが、彼女はそれを片手を薙ぐだけで打ち消していった。

 続けてキュアブレイズが炎のヴェールを生み出し鞭のように薙ぎ払うが、ダークシャインは攻撃をかわした後、キュアブレイズにめがけて跳躍する。

 互いに拳を振り空中でぶつかり合うが、力はダークシャインが凌駕しており、力負けしたキュアブレイズは勢いよく地面に叩きつけられた。

 

「千歳!!」

 

 キュアスパークがキュアブレイズの元へと駆け寄ろうとする。

 だが次の瞬間、ダークシャインは一瞬でキュアスパークの目の前まで距離を詰めた。

 驚くキュアスパークは後退しようとするが、ダークシャインの攻撃が間に合ってしまう。

 間一髪のところで腕を交差し、咄嗟のガードが間に合ったキュアスパークは、殴り飛ばされながらも態勢を立て直してダークシャインへ挑みかかろうとする。

 だが突然、キュアスパークの視界からダークシャインが姿を消した。

 そして一瞬で、キュアスパークの背後へと回り込んだのだ。

 

「なにっ!?」

 

 再び意表を突かれたキュアスパークは距離を開けようと跳躍するが、ダークシャインはその更に先へと回り込む。

 プリキュアの中で一番の速度を誇るキュアスパークを容易く先回りしているのだ。

 

「嘘やろ。ウチより速く・・・。」

 

 言葉を言い終わる前に、ダークシャインはキュアスパークを蹴り飛ばす。

 

「要!2人で挟み撃ちにするよ!」

 

「あっ、ああ!」

 

 それでも尚、闘志を絶やさないキュアブレイズとキュアスパークは、互いに炎と雷を纏ってダークシャインへと突撃する。

 だがダークシャインは、キュアブレイズの打撃をかわし、続けて飛び掛かるキュアスパークの突進を片手で抑え、キュアブレイズから放たれた火球をもう片手で払い落し、キュアスパークが拳に電撃を発するのを見てから、宙へと投げ飛ばした。

 続いて宙に放り投げられたキュアスパークが放った雷撃と、炎を纏ったキュアブレイズの突撃が同時に襲い来るも、ダークシャインは立ち位置を僅かにずらすだけで上空から来る雷撃をかわし、こちらに向かうキュアブレイズを炎ごと蹴り飛ばした。

 そしてキュアスパークが反応できない速度で跳躍し、瞬時にキュアスパークの頭上を取って再び地面へと蹴り落とす。

 

「うふふ、あはははははっ。」

 

 その光景をずっと見ていたリリスは、妙な笑い声をあげ始めた。

 ダークシャインは、蛍の絶望から生まれた存在。

 蛍の絶望から成る力が、4人のプリキュアの中でも特に戦闘力に優れている2人を、一方的に手玉に取っている。

 希望の戦士たるプリキュアたちが、同じプリキュアの絶望に手玉に取られるのが滑稽で、蛍の絶望の闇が、想像を遥かに上回るほどに強大で、そして何よりも・・・。

 

「すごい・・・すごいわ、ほたる!

 あなたの絶望が!あたしをまもってくれる!

 あなたの絶望が!あたしの力になってくれてるのよ!」

 

 自分はあの子に一切命令をしていないのだ。

 それなのにあの子は、まるで自分のことを守るかのように、キュアブレイズとキュアスパークと戦っている。

 圧倒的な力で、2人を蹂躙しているのだ。

 

「あははっ!!あははははははっ!!ねえ、ほたる!!ほたる!!」

 

 蛍に裏切られ、蛍を裏切り、そして蛍の絶望によって守られる身となったリリスは、蛍の名を呼びながら狂ったように笑い続けた。

 それが悲しみからか、嬉しさからか、滑稽さからか、それとも他の何かから来るのか。

 心がぐちゃぐちゃになってしまったリリスには、もう何もわからなくなっていた。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 要は傷ついた身体を引きずりながらも、痛みを堪えて立ち上がる。

 目の前には正気を失い笑い続けるリリスと、そんな彼女を守るように一歩前に立つ黒いキュアシャインの姿があった。

 

(蛍・・・。)

 

 要は悲しさで唇を噛みしめる。

 あの黒いキュアシャインは間違いなく、蛍の絶望の闇から生み出されたものだ。

 そして自分の力も速度も敵わず、キュアブレイズの技も全て叩き伏せられているほどの強さを誇っており、かつ底が知れない。

 仮に雛子が、キュアプリズムが援護に入ったとしても、勝てる可能性は低いだろう。

 はっきり言って、異常な強さだ。

 フェアリーキングダムで巨人化したアンドラスと戦ったことを思い出しても、あれと同等かそれ以上のプレッシャーを感じられる。

 だけどそれは、今の蛍の絶望が、それほど強大な力を持つ闇の戦士を創り出してしまうほど、深く暗いものであることを物語っているのだ。

 こうなったのも全て、こちらの考えが甘かったせいだ。

 もし蛍に隠そうとせず最初から話していれば、せめて蛍とちゃんと話し合った上で、リリンとどう接するかを決めていれば・・・。

 

「これ以上・・・蛍の名前を口にするなあああ!!」

 

 そんな状況でも尚、キュアブレイズはリリスへの憎しみを滾らせる。

 要も悲観に暮れる感情を払い、キュアブレイズの横に並ぶ。

 そうだ。今は悲しんでいる暇なんてない。蛍の方がよっぽど辛く、悲しい状況にいるのだ。

 蛍を闇の牢獄から助け出す。

 それが今の自分にできるせめてもの償いだ。

 目の前にいる黒いキュアシャインは、蛍の絶望の闇から生まれたものであるなら、本質はソルダークと同じはず。

 浄化させることができれば、蛍の絶望の闇を少しでも祓うことができるかもしれない。

 そうでなくても、あれだけの力を持つ黒いキュアシャインを野放しにしておくわけにはいかない。

 このままでは彼女1人のために、この世界を失うことになりかねないのだ。

 

「千歳!タイミングを合わせて攻撃するよ!」

 

「ええっ!」

 

 リリスへの怒りを抑えきれなくとも、キュアブレイズは我を忘れていない。

 あるいは、冷静であるように努めているのかもしれない。

 蛍を助けるために、蛍を助けたいと言う思いだけは忘れてはいないのだろう。

 キュアブレイズの思いを無駄にしないためにも、このコンビネーションで全てを決める。

 

「光よ、弾けろ!ブレイズタクト!」

 

「光よ、走れ!スパークバトン!」

 

 黒いキュアシャインの力は絶大だ。

 まともに戦ったところでこちらの力では敵わないだろう。

 それならば、自分たちの思いと力を全てこの一撃に込める。

 全力の浄化技による同時攻撃。

 これならば、ほんの一時だけでもあの子の力を上回る可能性がある。

 

「プリキュア!ブレイズフレアー・コンチェルト!!」

 

「プリキュア!スパークリング・ブラスター!!」

 

 キュアブレイズが火球を次々と放ちながら、自らも炎を纏って突撃する。

 それに合わせて自分も雷を全身に纏い突撃する。

 初めての同時攻撃なのにタイミングはドンピシャだ。

 この一撃に全てを賭けるしかない。

 

「キャアアアアアアアアアアア!!!」

 

 だが黒いキュアシャインが突然、大声で叫び出した。

 その叫び声に乗り、膨大な絶望の闇が嵐のように要たちに襲い掛かる。

 そして次の瞬間、要の纏う雷が、キュアブレイズの纏う炎が、跡形もなく消し飛ぶのだった。

 

「え・・・?」

 

「ウチらの浄化技が・・・?」

 

 そのまま絶望の闇の奔流に飲み込まれ、要たちは元いた地点まで吹き飛ばされる。

 黒いキュアシャインが叫んだと同時に浄化技が打ち消され、無効化された。

 何が起こったのか全く理解できなかったが、要とキュアブレイズの目の前でさらに信じられない出来事が起こる。

 黒いキュアシャインが、前方の空間に絶望の闇を集中させているのだ。

 そして次の瞬間、小さな杖が彼女の目の前に現れる。

 その形はまるでシャインロッドのそれに酷似しており・・・

 

「まさか、」

 

 要の脳裏に嫌な予感が過った次の瞬間、杖から巨大な黒い光線が解き放たれる。

 

「蛍の、浄化技・・・。」

 

 隣に並ぶキュアブレイズが静かにそう呟いた次の瞬間、要の視界は黒い闇に覆われていった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

「千歳ちゃん!かなめえええ!!」

 

 蛍の身体を抱きかかえながら、雛子は2人の名前を叫ぶ。

 黒いキュアシャインの放った闇の光線が、2人の姿を完全に飲みこんでいった。

 やがて光線が収まると、そこには変身が解除され、身動き取れずに横たわる要と千歳の姿があった。

 

「そんな・・・ウソよ・・・。」

 

 まるで悪夢でも見ているかのような気分だった。

 ホープライトプリキュアの中でも特に戦闘に長けている2人が、黒いキュアシャインを前に手も足も出ずに敗北した。

 それだけでも絶望的な力の差を見せつけられたのだが、雛子が感じたのはそれだけではなかった。

 だが考える間もなく、黒いキュアシャインがこちらの方へと視線を向ける。

 

「さあ、あとはキュアプリズムだけよ。ほたる。」

 

 リリスが話しかけた後、黒いキュアシャインがこちらへと飛び掛かって来た。

 背後には妖精たちもいる。バリアで守られているが、雛子の脳裏に1つ嫌な予感が過る。

 かつて蛍は、フェアリーキングダムを1人で照らすほどの強大な希望の光を解き放ったことがあった。

 その蛍から生み出された黒いキュアシャインが、たった1人で夢ノ宮市全てを絶望の闇で飲みこもうとしている。

 

「みんな!逃げて!!」

 

 雛子は反射的に妖精たちに逃げるよう促し、せめてもの抵抗のために、さらに盾を展開する。

 だが黒いキュアシャインの拳が盾に触れた次の瞬間、雛子の盾はガラスのように砕け散った。

 

「きゃあああっ!!」

 

 アンドラスの攻撃さえも防ぎ切ったことのある雛子の盾が、たったの一撃で破壊された。

 それだけに留まらず、盾を砕いた余波だけで妖精たちを守っていたバリアをも破壊した。

 幸いにも距離を取っていた妖精たちにも、自分が抱えている蛍にもケガはなかったが、今の一撃で雛子は確信する。

 黒いキュアシャインの力は、蛍の持つ力が全て反転させたものに間違いない。

 つまり、蛍が秘めていた潜在的な希望の光が、全て絶望の闇に変わっているのだ。

 それだけでなく蛍の持つ特性さえも反転している。

 黒いキュアシャインの絶望の闇は、プリキュアの希望の光を打ち消す力が秘められているのだ。

 だからキュアスパークとキュアブレイズの浄化技も、自分の盾も、ダークシャインの前では容易く無力化されたのだ。

 

「みんな!このままでは危険よ!一先ずこの場を離れましょう!」

 

 するとリン子が全員に撤退を呼びかけてきた。

 その言葉と同時にベルが、倒れる要と千歳の元へと走り出し、リン子もその後を追う。

 彼女の言葉通り、今は逃げるしかない。

 黒いキュアシャインと戦っても、勝ち目なんてどこにもない。

 キュアシャインがダークネスの天敵であったように、あの子は自分たちプリキュアの天敵なのだ。

 

「レミン!しっかりしなさい!」

 

 サクラが、ショックのあまり放心してしまったレミンを揺さぶっている。

 だがレミンは呆然としたまま動こうとせず、やむを得ずサクラは彼女を抱きかかえる。

 

「逃がさないわ。」

 

 だがリリスは、この場での撤退を許してくれるほど優しくはなかった。

 その声と共に黒いキュアシャインが、要たちの元まで走るベルとリン子に視線を向ける。

 

「させない!」

 

 蛍が絶望し、要と雛子が敗れ、自分の力が一切通用しないことがわかっていても、このまま絶望するわけにはいかない。

 蛍を必ず、絶望から救い出す。

 ただそれだけを心の支えにして、雛子は希望の光を生み出し、黒いキュアシャインをバリアの中に閉じこめた。

 そしてバリアを意図的に爆発させ、彼女の視界を奪う。

 

「まだ抵抗するつもりね。」

 

 するとリリスが直接、ベルたちの元へと飛び出して来た。

 だが雛子はすかさず、リリスの目の前に盾を展開し進行を防ぐ。

 黒いキュアシャインには壊されても、リリス相手なら有効だ。

 そしてベルとリン子が要と千歳を抱えたのを合図に、雛子は自分と妖精たちを全員囲うほどに広域なバリアを展開する。

 

「ほたる!」

 

 リリスの呼びかけに応え、黒いキュアシャインがバリアの破壊に迫った矢先。

 

「みんな!目を瞑って!!」

 

 雛子は妖精たちに呼びかけてから、全身から強烈な光を発光させた。

 雛子の放った光はバリアの内側を眩しく照らし、リリスたちの視界を奪っていく。

 

「くっ!」

 

 そしてリリスと黒いキュアシャインが光に目を眩ませたのを確認した後、バリアを自ら爆発させるのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 バリアの爆発によって起きた粉塵が収まった後、リリスの目の前には誰の姿もなかった。

 恐らくは妖精たちの持つ力、転送術を使ってこの場から逃げたのだろう。

 だがそれは、やつらはダークシャインの力には敵わないと判断したことになる。

 それだけでも上々だ。

 このダークシャインの力を持ってすれば、キュアシャインを欠いたプリキュアなんて恐れるに足りない。

 それに例えやつらが力を隠そうとも、居所を見つけるのは容易いはずだ。

 なぜならキュアプリズムが抱えている蛍は、今も際限なく絶望の闇を生み出し続けているのだ。

 

(・・・見つけたわ。)

 

 案の定、遠方からダークシャインと同じ力が感じられた。

 キュアスパークとキュアブレイズは戦闘不能、そして蛍を抱えるキュアプリズムも、相当な力を消耗しているはず。

 今から追って追撃すれば、やつらとの因縁に決着をつけることができる。

 だがそう思った次の瞬間。

 

「ウッ・・・アアアッ・・・。」

 

「ほたる、どうしたの?」

 

 突然ダークシャインが微かな呻き声をあげだした。

 少し苦しそうに頭を抱えると同時に、その身体が霞み始めている。

 

 

 聞こえるかね、リリス。

 

 

 すると頭の中にアモンの声が聞こえてきた。

 

 

(はい、アモン様。)

 

 

 そちらの状況はある程度把握している。深追いは無用だ。

 一度ここまで戻ってきなさい。

 

 

(ですが、あと一息でプリキュアが・・・。)

 

 

 ディスペアー・カードの化身がいるのだろう?

 まだ力が安定していないようだ。

 このまま無理に酷使すれば、存在すら保てなくなるかもしれないぞ。

 

 

(・・・了解しました。)

 

 逸る気持ちを抑えながら、リリスはアモンの指示に従う。

 このダークシャインは、間違いなくダークネスの切り札だ。

 今焦って失うわけにはいかない。

 それにキュアシャインを失った今、やつらとの決着はついたも同然だ。

 その意味が成すことに、リリスは少しだけ胸を痛めながら、ダークシャインの方を向く。

 

「ほたる、帰るわよ。」

 

「・・・。」

 

 ダークシャインは何も言わない。

 だが自分の言葉に従い、共にモノクロの世界へと帰還するのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 要が目を覚ますと、ベルが自分の顔を覗きこんでいた。

 

「気が付いたか、要。」

 

「ベル・・・?」

 

 辺りを見回すと、どうやら住宅街の一角にいるようだ。

 目の前にはこちら覗きこむベルの顔、ついでに言えば今、自分はベルに抱えられた状態でいるみたいだ。

 いつもなら少し気恥ずかしく思うシチュエーションかもしれないが、残念ながら今は心を躍らせるほどの余裕はなかった。

 すぐさまここに至った状況を把握し、ベルの腕から下りようとする。

 

「まだ無理しなくてもいいぞ。」

 

「平気、もう大丈夫だよ。」

 

「要、気が付いたのね。」

 

 ややよろめきながらも立ち上がった要に、未だ変身を解かずにいる雛子が話しかけてきた。

 その隣にはサクラの姿もある。

 

「良かったわ、あなたも無事みたいで。」

 

 リン子に肩こそ借りているが、千歳も無事な姿を見せてくれた。

 

「それはお互いさまやろ、千歳。」

 

 その後ろには空を見上げるレミンの姿もある。

 そして雛子の両手には、未だに起きる気配のない蛍の姿もあった。

 一応のところ、全員無事。

 だがそれを喜べるほど、今の事態は楽観視できるものではなかった。

 要も千歳も、黒いキュアシャインに成す術もなく敗北した。

 雛子に大きなケガは見られないので、交戦を避けながらみんなを連れて撤退したのだろう。

 その事に感謝しながらも、黒いキュアシャインを倒せないと言うことは、蛍を助け出すこともできないと言うことになる。

 今も蛍の身体は黒い霧に覆われており、生気を失った瞳は虚空を覗きこんでいるのに、自分たちには彼女を助ける術を持たないのだ。

 

「蛍・・・。」

 

 要が蛍に触れようと手を伸ばしたその時、

 

「待って!要!」

 

 雛子が大声で静止にかかった。

 だが要は伸ばした手を引くことができず蛍に触れてしまう。

 

 

 どうしてわたしにウソをついたの?

 どうしてみんなわたしにだまってたの?

 どうして?なんで?

 リリンちゃん、かなめちゃん、ひなこちゃん、ちとせちゃん。

 みんなきらいだ、きらい、きらい、だいきらいだ!

 

 

「っ!?うわああああっ!!」

 

 突然頭の中に、蛍の声が流れ込んできた。

 リリンに裏切られ、騙され、そして、自分たちにさえ裏切られた、蛍の声。

 嘆き苦しむ絶望の声が、激流のように頭に流れ込んでくる。

 それに堪えきれなくなった要は、慌てて蛍から手を離す。

 だがそれでも、頭の中に聞こえてきた蛍の声が、まるで張り付いたかのように離れなかった。

 

「絶望の闇はね、触れた人を通じて声が聞こえてくるの・・・。

 だからみんな、今の蛍ちゃんに触れたらダメ・・・。」

 

 苦し気な表情を見せながら、雛子がそう説明する。

 妖精たちと千歳はその言葉を聞いても特に驚いた様子はなく、代わりに蛍を思って辛そうな表情を浮かべるだけだった。

 きっとフェアリーキングダムにいたときに似たような経験をしたことがあるのだろう。

 

「でも雛子、あんたは大丈夫なん?」

 

 大丈夫じゃない、なんて見れば分かるのに、要は敢えて質問にする。

 いつも無邪気な笑顔で、表裏のない純な心で、自分たちと一緒にいてくれた蛍のことが大好きだっただけに、そんな蛍の絶望の声は、心が裂けるほどの辛い言葉だった。

 蛍はリリンのことだけじゃない、黙って行動を起こそうとした自分たちのことさえも恨んでいる。

 蛍に嫌われるほどの辛い思いを与えてしまったこと、それがこちらの招いた結果とわかっていても、蛍から『きらいだ』と言う本心の言葉を聞かされたことがショックだった。

 

「何を言ってるの・・・?一番辛いのは蛍ちゃんなんだよ?

 これくらい・・・へっちゃら・・・だよ・・・。」

 

 だけど雛子は、そんな辛い思いさえも無理やり抑え込み、蛍を助けるためだけに全てを受け止めようとしているのだ。

 もしも自分が蛍の声を聞き続けたら、ショックと罪悪感で間違いなく絶望の闇に引きずり込まれていただろう。

 誰よりも蛍を大事に思う雛子だからこそ、耐え続けることができている。

 それでもキュアプリズムの変身を解除しないのは、絶望の闇の影響を少しでも緩和するためなのかもしれない。

 

「雛子・・・。」

 

「一先ず、私のマンションに避難しましょう。

 ダークネスがいつ追ってくるかもわからないし、幸いにもここからなら近いわ。」

 

 リン子の提案に要と千歳は頷く。

 雛子のためにも、蛍をどこか安全なところに降ろしてあげたい。

 

「・・・せやな、一度安全なところで休んで、これからどうするか考えよう。」

 

 そう思い、要たちが移動しようとしたその時、

 

「・・・ねえ、ダークネスの気配って、もうしないよね。」

 

 突然レミンがそんなことを聞いてきたのだ。

 

「レミン、どうしたの?」

 

「もう、リリスの気配も、黒い蛍の気配もないよね?

 なのに・・・なんで、空が黒いままなの・・・?」

 

「えっ・・・?」

 

 サクラがその言葉に驚き、空を見上げる。

 要たちもつられて上を見上げると、レミンの言った通り、空が絶望の闇に覆われたままだった。

 それだけじゃない。

 先ほど辺りを見回したときから、不審に思うべきだった。

 住宅街なのに人の気配が何も感じられない。

 

「どうして?ダークネスは既に撤退しているのに、なんで闇の牢獄が解除されてないの?」

 

 サクラが不振に思いながら、疑問を口にする。

 リリスたちがこの世界を離れたのに闇の牢獄がまだ解放されていないのだ。

 

「まさか・・・蛍?」

 

 その時、要の脳裏に嫌な予感が過る。

 雛子の手に抱かれる蛍は、未だに絶望の闇から解放されていない。

 もしもこの力が、闇の牢獄を維持しているのだとすれば?

 そして蛍が絶望の闇を放ち続けていると言うことは、この闇の牢獄の強度は今も・・・。

 

「おい、要。」

 

 するとベルがこちらを呼びながら指を差した。

 要が指の指す方に目を向けてみると、そこには絶望の闇に覆われて横たわる男性の姿があった。

 やがて辺りには、黒い霧に覆われた人が次から次へと姿を現していった。

 

「そんな・・・ウチらの街が・・・。」

 

 蛍の絶望が黒いキュアシャインを生み出し、夢ノ宮市の闇の牢獄を強固なものへと作っていく。

 自分が守ると誓ったあの子が・・・自分が守りたいと願う街を奪っているのだ。

 

「蛍ちゃん・・・。」

 

 雛子が苦しそうに蛍の名前を呟く。

 それさえもまだ始まりなのではないかと、要は漠然と思うのだった。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 次回予告

 

「リリスだけは絶対に許さない。私はあいつを必ず倒す!」

 

「でも、ウチらの力だけじゃあの黒いキュアシャインには敵わない。

 どうすれば・・・。」

 

「・・・1つだけ、あるわ。

 蛍ちゃんを助ける方法が、たった1つだけ・・・。」

 

 次回!ホープライトプリキュア第22話!

 

 届かない想い!蛍の希望とリリスの絶望!

 

 待っててね、蛍ちゃん。必ず助け出して見せるから!!

 


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