「…━というわけで、この世界はおそらくユグドラシルではない。つまり外の危険は未知数だ。まだ不確定な情報ではあるのだがワールド・チャンピオンに匹敵するやもしれぬ存在もいるらしい。慎重に物事に取り掛からねばならぬことを心得て行動せよ。」
「「━は!」」
菜月昴からのこの世界の情報を守護者へと共有しているアインズ。
有能な社員を腐らせるような事はしたくない。言うなればそのような考えがアインズにはあった。さらに加えて仲間が残した彼らに、心を持った彼らにただナザリックを防衛させる「だけ」という事が非常に心に刺さる。それも無論大切なことだが。
━わかっちゃうんだよなあ。
彼ら階層守護者は全く態度に出さないが、渇望が分かる。アインズの役に立ちたいという気持ちが
━答えて、あげたい。
「ここまでは、今回のことで私が手にいれた情報の共有と注意喚起だ。これより我らのナザリック地下大墳墓の目指す所を定める!心して聞け」
『━は!』
守護者達の纏う雰囲気が変わる。やっと待ち望んだ答えが聞けるかのように。一言一句聞き漏らさないという意志が爆発したかのように錯覚させられる。
━ナザリックの在り方。NPC達の求めているもの想像でしかないが。そしてもしこの世界に俺以外に仲間がいたなら…これらを考えてそれっぽく言おう
このとき実は仲間への思いよりもNPC達への思いが少なからず勝っていたことはアインズも気付いていない
「我ら、ナザリックはこの世界の全てを手に入れる!」
守護者たちが色めき立つのが全く表には出さないがひしひしと伝わってくる
「あらゆる地に赴き、敵を打ち砕く。さしずめ世界征服だ。異論はあるか?」
「至高の御方であられるアインズ様のご決定に異を唱えることなどありましょうか。貴方様の御心のままに我ら守護者全身全霊をもって努めさせていただく所存にございます。」
守護者全員が同意の意を示す
「よい。期待しているぞ。それにあたってのおおまかな話は守護者統括アルベド、防衛時の責任者であるデミウルゴス、時が来たら両名に伝える。守護者よ各々の努めに励め」
そう、言い終わると同時に転移門が開き、ローブを翻し舞台役者ばりにアインズはその中へと入っていった
アインズが去った後の闘技場に静寂以外のものはない。
「…ふふ」
誰ともなく込み上げる喜びに笑いがこぼれた
「す、すごかったね…」
「ええ、それに…世界征服。なんて甘美な響きなのかしら、」
「アア、胸ガ沸キ立ツナ…」
「そのための王候補者の関係者との接触だったのでしょうか。なんたる対応能力。感服いたしますね」
「アインズ様の世界征服に助力できるなんて!たのしみー!」
「…それは少し違うのかもしれないよ?」
「え?」
二人ほどの守護者を除き皆がデミウルゴスを見る
「アウラ、アインズ様の世界征服と言ったね?」
「ええ…」
アウラの顔には「違わないでしょ?」と書いてあるような素直な疑問が表れる
「おそらくだが、アインズ様ご本人はそこまで世界征服に重きを置いていないと私は感じたね」
「ドウイウコトダ、アインズ様ハ確カニ世界征服ト仰有ラレタ」
「重要な部分が違うのではという話だよ。アインズ様のお話の中の協力者は人間と言っていたのを聞いていただろ?そしてこの世界は人間、獣人などの人間種が多いとも仰られていたそこで世界征服などしても協力者様が悲しむとは思わないかね?」
「それは…、確かにそうだろうけど人間かぁ」
「納得ハイクガ、ソレデハ世界征服ガ出来ナイデハナイカ」
二人がそれぞれの疑問を口にすると
「アウラ、人間のいないナザリックではあったが。やまいこ様の妹様も人間種なんだよ?」
「え!そうだったの!?」
至高の41人のことを深く知れるのは喜びである。驚きと喜びのなかでアウラが表情をくるくる変えている
「そしてコキュートス、なにも世界征服をしないというわけではないのさ。セバスの言っていたように王候補者の関係者であり協力者のナツキ・スバルという方、彼の存在は大変大きい。アインズ様はおそらく力、ではなく慈愛心と叡智により世界を統べられるのではと考えている。」
「「おお…」」
複数の感嘆の声が上がる。
さらにそれに続いてデミウルゴスが話している最中に黙っていたアルベドが口を開く
「そして、そうお考えのアインズ様があえて、世界征服という言葉を選んだのにも理由があるわ。」
デミウルゴスに集まっていた視線は1人を除きアルベドへ集まる
「なんと慈愛に溢れることか。アインズ様は私たちのことをお考えになったからこそ世界征服と仰有られたのよ。」
デミウルゴスが満足そうに頷いている
「すでに最大の敬意を払っている私たちに発破をかける意味でね。世界征服と言われて素直に嬉しくならなかったかしら?」
「そりゃそうだね!」
「ウム、心沸キ立ッタノハ間違イナイ」
「なんとお優しい」
「さ、流石アインズ様だね!」
それぞれが顔をキラキラさせながらカンストしている忠義心が上限を突破させていると、急に苦虫を噛み潰したような顔をしたアルベドがここまで一言も発していなかったシャルティアに向かって唾を吐くように言葉を投げ掛ける
「して、シャルティア?どうしてさっきから微動だにしないのかしら?」
言葉に込められるだけの棘を込めきった声色で質問を投げ掛けられたシャルティアだったが顔を上げた彼女の表情はヨダレが垂れて顔も恍惚にそめられ蕩けそうなものだった
「アインズ様の強力な力の波動と言葉による慈愛の心に当てられてちょおっと、いや大いに下着がまずいことになってありんす。」
うわぁ…
という雰囲気の守護者たちと殺意を滾らせたアルベド。
この後アインズの夜事情に関して並々ならぬ討論がされた。だが結論はでてもそれが実を結ぶのは先のこととなるのだが
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ナザリック内のアインズの自室そこでベットに身を投げてシーツにくるまるアインズがいた
「もー、守護者達が集まるの早すぎない!?考える暇もなくて結局聞いた話をして目標は世界征服だーって言っただけだし。そもそも世界征服って言って勘違いとかしそうじゃね?しっかり軌道修正していかないとか。スバル君の邪魔になったら元も子もないからな」
━とりあえず情報だな
ベットから立ち上がったアインズは別の部屋へと移動するクローゼットなどがあり、全身の写る鏡がある
「剣を」
一言アインズが言うと寝室を出たときから付いてきていたメイドがその身長と同程度のグレートソードを手渡す。それを構えて振ろうとするとその手からあっさりと滑り落ちてグレートソードは地面に転がった
「ふむ、他のことは現実のようなのにクラスにない装備が使えないのはゲームと一緒だとは…」
一呼吸置いた後にアインズの全身を漆黒に金の細工が施され紅いマントを付けた全身鎧が覆うとともにその手には先程のものと似たグレートソードが握られていた「ふん!」それを力一杯ふるう
「魔法で作ったものなら使えるというわけか」
「…私は外へ行く」
「でしたら近衛のものを準備は済ませております」
━うーん…息抜きも兼ねてるんだけどなあ
「いや、極秘に進めたいことがあるついてくることは許さん」
「かしこまりました」
転移をするリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで転移できる最も地上に近い部分霊廟の階段の下まで転移すると
━んん!?
なぜこいつらがこんなところにいる?
そこには魔将の名を冠するレベル80を超えるモンスターがいた
━奴等はデミウルゴスの側近のはずなんでこんな浅い階層にいるんだ?
すると魔将たちは膝を折り敬意を表す。そしてその影から
━なるほどな
デミウルゴスが表れる。そして同じく最大の敬意を表しながら
「これはアインズ様。共を連れずにどうなされたのですか?」
「ああ、外へ行こうとおもってな」
内緒事を親にバレたようなむず痒さがあったが、堂々として「なにか悪いか?」といった態度で対応してみる。するとデミウルゴスが納得したように
「なるほど、その御慧眼さすがとしか言い様がございません。」
━え?特に何も考えてないんだけど…
「ですが、共を連れずにとなるといくら至高の御方だとしても見過ごすわけには行きません」
「そうか。ならば1人だけ追従を許そう」
「は!私ごときの考えにご配慮いただき誠にありがとうございます」
「ならば、行くぞ」
歩き出したアインズにデミウルゴスがついてくる形だ。
━お前が来るんかい!
「飛行/フライ」
マジック・アイテムによりアインズが飛翔すると「ォア、ガガガ…」と鳴き、蛙のあたまに蝙蝠の翼を生やしたデミウルゴスがそれに続く。
ナザリックの周りにそびえるのは高さ数十メートルはあろうかという木々の森林だ。だがただの森林ではなく全てが凍りついている。根元から葉の1枚1枚まで。
「抜けるぞ」
そう言ったアインズ達は凍った葉を突き抜け満天の星空の下へと躍り出た
「おお…!」
満天の星空。ただそれだけだが初めて見たアインズにとっての感動は大きいと言わざるをえない
━第六階層のブルー・プラネットさんの星空も凄かったけれど自然の星空はこんなに。
「素晴らしい。まるで宝石箱みたいだな」
「お望みとあらばナザリック全軍でアインズ様の下へとこの宝石箱を献上させて頂きます。」
「ふ、それは既に決定事項だ。だが、力業では宝石が傷付いてしまうかもしれぬな私は綺麗な宝石を所望するぞ?」
そんなキザなやりとりをしてアインズが少し気恥ずかしくなるがデミウルゴスは嬉々とした様子で
「かしこまりました。」
と一言
「しかし夜か、出る時間を間違えてしまったな。まあ星を見るためということにしておこうか。戻るぞデミウルゴス」
そして墳墓へと帰ったアインズに無断外出の制裁が下されてしまう。セバスのような普段静かな人ほど怒らせると怖いと言うことだ。まるでたっち・みーに怒られているような気持ちになりながら反省させられたアインズであった。