「……やはり、か」
アリエッタたちと残った魔力の調査に来たラギト。そこに残っていたのは、知っている人間の魔力。捨てられた黒猫の魔法使いが使っていたカードだった。カードには、黒い人型の魔物の絵が描かれている。多少形は違えど、ラギト達を襲った魔物たちと似ていた。
「悪い、散ったみんなを探してくれるか。話がある」
「ええ。こんなの……信じられないけど」
ラギトの呼びかけで、みんなを再び教会へと集める。ラギトは、机の上に拾ったカードを出した。
「みんな。これが何かわかるな?これが街の入り口で俺たちを襲ったところに落ちていた。絵は、見てわかる通りのものだ」
誰も、言葉を発せない。長い沈黙を破ったのはイツキだった。
「……嘘だろ。じゃあ今俺たちを襲っているのは魔法使いなのか!?魔法使いは俺たちを何回も助けてくれたんだぞ……?」
「けど、確かに魔法使いさんなら、私たちを召喚するのもできるかもしれない」
レナが冷静に考える。しかしいくら考えても答えは出ない。
「けど、普段異界に飛ばされてばっかりなのに、わたしたちを召喚することなんてできるの?」
「わからない。……けど、こうして様々な証拠が出そろっている以上、一番怪しいのは魔法使いさんね」
再び黙ってしまう一同。しかしいつまでもそうしているわけにはいかない。話題は、黒猫の魔法使いの力と目的について。
「魔法使いは確かに強力な力を持っていた。その力に何回も助けられている」
「わたしたちもだね。何回か迷惑かけたこともあるけど」
「……みんななにかしら魔法使いさんに助けられてきた。でも、彼の本質は違うのかもしれない」
そう言ったのは、アーシアだった。彼女の目が、何処か虚ろになっている。
「……もし、本当の彼が、元の異界にいる彼が、私たちを助けてくれたような人じゃなかったら。暴力を振るい、世界を支配するような人間だったら……」
「アーシア、おいアーシア!」
イツキに肩を叩かれ、我に戻ったようにハッとなるアーシア。
「あれ?私、なにか……ごめんなさい、ぼーっとしてた」
「連絡役やらなんやらで疲れてんだろう。アーシアは休んどけ」
ヒビキがアーシアを気遣う。しかし、全員の心の内には、先ほどのアーシアの言葉が刺さっていた。
「可能性としては、無くもないわね」
「とりあえず彼を探すのが目的になるんだろうけど……なにか手がかりがあればいいんだけど」
「それなんだが、ひとついいか」
提案したのはラギトだ。
「この街に一つ、確実に人がいる場所があるだろう?あの塔だ」
「確かにそうですね。あそこには誰も行っていない。……アーシアを除いて」
しかし、この話を途端に、アーシアが焦りだす。
「リーダーを疑っているのですか?彼は違いますよ。絶対に」
「……そうかもしれんが、念には念を入れてだ。アーシアはここで休んでな」
イツキが付き添い、全員で塔へと向かう。アーシアは、最後まで抵抗していた。
塔へ向かう中、メアレスの三人は周りに聞こえないような小さい声で相談していた。
「……ねえ、本当に魔法使いさんが犯人だと思う?」
「ありえない話ではないな」
「同感ね。否定派できない」
即答するラギトとリフィル。しかし、ラギトがすぐに説明する。
「……だが、少し出来すぎている気がするんだ。魔法使いが犯人だとしても証拠を残しすぎてる。まるで気づいてくれと言わんばかりにな」
「そうね。ま、会えばわかることでしょ」
「……そうだな」
やがて異界の戦士たちは、塔の前へとたどり着く。そして、大きな門を開けた。