魔法使いと黒猫のウィズ 異界戦争   作:烏零

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14話

「ウラガーン!そいつを叩きつぶせええええっ!」

 

偽物の号令で、ウラガーンが再び動く。そのまま無慈悲な拳を魔法使いに向けて振り下ろした。

 

「キミ!」

「はい、師匠!みんな、時間を稼いでくれ!」

 

魔法使いの言葉で、全員が一斉に動く、まるで力にブーストがかかったように、能力が強化されていた。空から降ってきたクレティアという少女がウラガーンの動きを鈍くし、止まった隙をディートリヒとアリエッタの超火力で押し返していく。リヴェータはさらに覇眼を使用し、全員の士気を上げる。

よろめいたウラガーンに向けて、魔法使いが魔力を溜めていたカードを使い、魔法を放つ。放たれた魔法は光り輝き、神々しい翼をもつ神の姿となってウラガーンを切り裂いた。

崩れていくウラガーン。偽物の顔がより苦痛に歪んでいく。

 

「魔法使い、ウィズ、あいつは一体だれなんだ?」

「クエス・アリエスの指名手配犯、トビトにゃ」

 

トビトと呼ばれた魔法使いが呻く。そして、それは笑いに変わっていく。

 

「指名手配犯……指名手配犯ね。確かにそうだよ。でもな。俺をこうしたのはお前だ。魔法使い!」

 

叫ぶトビト。魔法使いには、意味が全く分からなかった。

 

「俺はな、お前と同期だったんだよ。なのになんだ、お前は四聖賢のウィズに取り入って、ウィズをそんな姿にしたって言うのに、なぜお前はそこまで成り上がれた!

そこまでならいいさ。俺はクォ様に認めてもらったんだ。なのに、お前はクォ様まで手にかけた!」

 

激高するトビト。その手には、魔法使いと同じカードが握られている。

 

「異界に飛ばされて死ねばいいものを、また異界で媚びを売って生き残りやがって!」

 

トビトが魔法を放つ。それは異形の怪物となり、無数の触手を伸ばし魔法使いをとらえようとする。しかし、そのすべては異界の戦士たちに止められる。

 

「媚び?なんか勘違いしてねえか。お前」

「ええ。私たちは彼と共に戦った。彼はいつも前線に出てきた!」

 

魔法使いが魔法を放つ。放った魔法は、光を纏う英雄の姿となり、怪物を包み込むようにして浄化する。

 

「お前は勘違いをしているにゃ。トビト」

 

ウィズがトビトを諭すように告げる。トビトは、もう狼狽えるしかない。

 

「僕は確かに師匠を救えない。今でもそうだ。異界ではみんなの力を頼ってばかりさ」

 

再びカードに魔力を籠める。その目に、迷いはない。

 

「でも、僕にはみんながいる、みんなとの絆がある。だから……お前を許さない。トビト!」

 

放つ魔法は、トビトにはあたらない。しかし、アーシア達を包み込み、トビトの魔力から解き放つ。

 

「これでお前は一人にゃ。トビト。負けを認めるにゃ」

 

残されたトビトは呆然としている。しかし、勝ち誇るように告げた。

 

「絆、絆……ああそうさ。だから俺は、貴様の絆の無い魔物との相性がいいんだよおおっ!!」

 

燃え盛るような魔力、そこから生み出されたのは、白い大きな卵。

 

「もうおしまいなんだよ何もかも!お前らも全員道ずれだ!全員腐ってしまえ!ハハハハハハハ!」

 

卵が割れると、そこら中に瘴気があふれ出る。トビトは巻き込まれ、塵となった。

 

「トビトさん……っ!」

「だめにゃ!キミまで巻き込まれるにゃ!」

 

世界を瘴気で飲み込まんと割れ続ける卵。瘴気は広がり、白い部屋が崩れ落ちていく。

 

「このままじゃ、全員やられる!」

 

魔法を撃てる者は魔法を、銃を持つ者は銃をと遠くから攻撃するも、瘴気は全てを塵にしていく。そうしているうちに、瘴気は部屋全てを覆いつくそうとしていた。魔法使いが防御魔法を張るものの、徐々に押されている。

その光景を見て、ずっとディートリヒの後ろにいたオメガが動く。眼帯を押えながら。

 

「オメガ。どうした」

「思い、出した」

 

船から飛び降りるオメガ、剣を構え、瘴気の中へと進んでいく。

 

「危ないにゃ!……にゃ!?」

 

オメガの体は、腐らない。一歩一歩確実に、卵へと近づいていく。

 

「俺がこの世界に来たのは、お前がここにいたからか……全く、互いに災難だな」

 

眼帯を外し、その目で卵を見据える。力を剣に込めると、雷を纏い始めた。

 

「俺の名は……カイン。カインだ!」

 

そのまま突進し、一撃で卵を砕く。中から出てきた人のような何かの首を、一撃で跳ね飛ばした。

心なしか、人影が笑ったような気がする。卵が消えると、瘴気も消え去っていった。

 

「……今度は、間に合ったな。バシレイデ」

 

力を使い果たしたカインは、光に包まれていく。カインだけじゃない。異界から来た戦士全員、黒猫の魔法使いの体すらも、光を纏っていた。

 

「終わった、のね」

 

リフィルが呟く。全員、満ち足りた顔をしていた。時間もない、と思った、魔法使いは、最後の挨拶をする。

 

「みんな。今回は迷惑をかけてごめん。イツキなんか大けがさせちゃって……」

「気にすんなって。俺たちだって助けられてるんだ」

 

イツキが笑う。それだけで、少し救われた気持ちになった。もう全員体が消えかかっている。最後に、別れのあいさつを。

 

「みんな、またどこかで会おう!」

 

体が消えていく。そして、作られた偽りの異界には誰もいなくなった。残された異界は、崩壊を始めていた。

 

 

 

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