「……フィル、起きなさい!リフィル!」
誰かが呼ぶ声がする。その声を聞いて、少女――リフィルは目を覚ました。少し寝ぼけていたが、すぐに異変に気付く。
「……門は、どこ?」
リフィルが目覚めたのは、街一体を見渡せそうな高い塔の上だ。リフィルがいた世界では、巨大な門が都市の中心に立っていた。しかし、ここには門がない。しかもリフィルがいた世界の町並みですらない。
「俺たち全員夢を見ているのかもな」
「メアレスが夢を見るとか冗談になってないわよ。《夢魔装》」
リフィルのそばにいる男女が声をかける。男の名はラギト。リフィルを起こした声の主でもある女性の名はルリアゲハという。彼らは夢を無くし、夢を持たざる者としてある世界で戦っていた。しかし、ここはその世界ではないらしい。
「ここに来ているのは私達だけなの?」
「さあ。私たちも今目覚めたところだから」
リフィルたちには他にも共に戦う仲間がいた。しかし、ここにいるのはこの三人だけらしい。
「……とりあえず、情報収集しましょう。他のメアレスたちもここに来ているかもしれない」
三人は塔を降り、街へ出る。街並みはリフィルがいた都市より少し古いというべきか。タイムスリップしたような感覚に陥る三人は、せわしなく走り回っている女性衛士のような人を捕まえ話を聞くことにした。
「ごめんなさい。すこしいいかしら?この街のことを聞きたいのだけど」
「え?……旅の方ですか?今、この街は危険です。すぐに外へ出るか、この街の避難所へ……」
「危険?どういうことだ」
「はい。この街は今、他国に攻められています。それだけでなく、多数の野党がこちらに向かっているとの噂もあり……だから、全員で防衛に当たっているところなんです。」
なるほど、と三人はこの国に起こっている出来事を理解した。このような状態では、元の世界へ帰る方法を聞くことは難しいだろうと判断しとりあえず街を出ることにする。衛士にお礼を言い、街の出口へ案内してもらった。
「しかしなんだ。こうして危機に陥っている異世界に飛ぶなんて黒猫殿みたいだな」
「確かに。魔法使いさんならこういう世界に飛んできそうねぇ」
軽い雑談のつもりだったが、先行する女性衛士が振り向いた。女性は、恐る恐る三人に質問する。
「あの……もしかして、今話している人は喋る黒猫を連れた魔法使いさんのことでしょうか……?」
「ああ。もしかして知り合いか?」
ラギトが聞くと、衛士は頷く。そして、ゆっくりと自己紹介を始めた。
「まだ名乗っていませんでしたね。私の名前はアーシア・ベネットと言います。黒猫の人とはクロム・マグナ魔導学園というところでお世話になりました」