「あの、本当によろしいんですか?」
黒猫の魔法使いと知り合いと分かってから、メアレスの三人はアーシアを手伝うと決めた。
「これも何かの縁だ。俺たちも防衛を手伝う」
「それに、魔法使いのパターンだとこの世界を救えば元の世界に戻れそうだしね。どうせ敵もロストメアと似たようなものだろうし」
「ロストメア……?」
ラギトとリフィルはアーシアと共に正面を、ルリアゲハはアーシアの知り合いらしき衛士と共に野党が攻めてくるという背面を守ることにした。正面、といっても目の前には海が広がっている。
「敵は海から攻めてくるの?」
「はい。彼らは船で……空を飛ぶ艦隊で、攻めてきます」
「空飛ぶ船だと?この世界にはそんなものもあるのか」
ラギトが呟く。リフィルもそんなものを見たことがない。そろそろ攻めてくるとのことだが、まだ影も見えない。
「そういえば、あなたはどうやって戦うの?武器も持ってないけど」
「私は魔法を使って皆さんを援護します。攻めは得意じゃなくて……」
「……この世界には、ちゃんとした魔法があるのね」
魔法がなくなった世界に住むリフィルは、複雑な表情になる。
「《黄昏》、悪いが感傷に浸るのは後にしてくれ」
ラギトが構え、その身に禍々しい鎧を纏い始めた。海を見ると、いくつもの船が空を覆いつくすほど飛んでいる。先頭の戦艦の砲門がラギトとリフィルを捉える。
「二人とも!危ないですよ!」
「心配しないで。――繋げ、《秘儀糸》!」
リフィルが叫ぶと、足元に魔法陣が生まれる。そこから生じた糸を引っ張り、巨大な人形を召喚した。召喚を待っていたかのように、大砲が放たれる。それを見た夢見ざる者たちは――――
「はあっ!」
「やあっ!」
人形が弾き飛ばし、修羅が砕く。次々と放たれる大砲は、全て街に被弾する前にラギトとリフィルにより防がれる。二十発ほど打たれたところで、爆撃は止んだ。
「あら、これで終わり?」
「気を抜くな。まだ終わりではないだろう」
船団の中心、その巨大な船にディートリヒは鎮座する。ローヴィをから戦況を聞き、作戦を練っていた。
「奴らは傭兵でも雇ったのか?」
「わかりません。しかし、砲撃を防いでいるのはおそらく前線にいる二名です」
「面倒だな。ファーブラの連中がいれば楽になったのだが。……あの新入り達を前へ、奴らの力を試す」
「了解です」
ローヴィがディートリヒの指示を受け、各艦隊に指示を出す。その傍に、オメガもいた。
「あんた、楽しそうだな」
「そう見えるか。ならそうなのだろう」
ディートリヒは笑わない。そして、高らかに宣言する。
「魔導部隊。私にその力を見せつけてくれたまえよ」
「敵の陣形が変化した。仕掛けてくるぞ」
「わかってる。あんたも気をつけなさい。」
構えを解かず、相手の出方を待つ。相手が海上にいるため、こちらから仕掛けることはできない。前に出てきた船は、砲門をのせていない。輸送艦のようにも見える。その船の前に、何やら魔法陣のようなものが出現する。
「来るぞ。構えろ!」
魔法陣を通り、いくつもの矢が放たれた。そのすべてが雷を纏い、雨の様にリフィルたちへ降り注ぐ。
「修羅なる下天の暴雷よ、千々の槍以て降り荒べ!」
糸を操り、人形が陣を描く。そうして放たれた雷は放たれた矢の半数を落とす。
「《夢魔装》!そっちは!」
「ああ。問題ない」
ラギトの方を見ると、大きな水の壁が出現していた。どうやらアーシアが守ってくれたらしい。しかし、矢の雨は降り止まず、絶えずリフィルたちを襲う。
「このままじゃ埒があかない。直接叩く!」
「どうやってだ?」
ラギトが聞くと同時に、リフィルは走りだす。そして、近くに止めてあった船に乗る。陣を結び、船を高速で走らせた。矢を躱し、防ぎながらの船の下まで走る。下についたところで、人形を投げ船の底に張り付かせ、そのまま自分を持ち上げた。船に侵入したリフィルは、そのまま甲板へと駆け上がり上にいる兵士たちを倒していく。その無双を、船の兵士たちは止められない――――かに思われた。大きな弓を持つ少し装備が豪華な女性の兵士が、リフィルの進撃を止めた。
「あんたがこの船団のボスかしら?」
「さあ、どうでしょうね!」
弓を大きく振り、距離を取る。下がったリフィルに向け、複数の弓が放たれる。それをリフィルは雷を発生させ撃ち落とした。そのまま、一気に距離を詰める。
「しまっ……」
兵士は弓を構え直している。もらった、と力を籠め――――
パン、と乾いた音がした。同時に崩れ落ちるリフィル。足からは血が出ている。
「なんで……くっ」
「危ないところでしたね」
いつの間にか近づいていた別の船。その甲板からローヴィが狙っていた。気づかなかったリフィルは、右足を狙撃されていた。体制を崩したところを狙い、兵士から追い打ちが来る。
「仕方ない、一旦引かせてもらう!」
人形に引っ張ってもらい、船から飛び降りるリフィル。甲板の兵士が魔法で英フィルを狙ったが仕留められず、リフィルは海へと落ちた。
「ありがとうございます。ローヴィさん」
ローヴィは何も言わず、船内へと戻っていく。兵士は再び弓を街へ向けて構えた。
船からリフィルが落ちるのを見たラギトは、海へと飛び出した。
「すまないがあいつを助けに向かう。アーシアはそれまで耐えてくれ!」
「は、はい!わかりました!」
再び放たれる数々の矢。アーシアは、それをすべて水の壁で受け止める。かろうじてすべてを受け止めるが、船団が動き砲塔がこちらへと向けられる。
『これ以上は……もう……!』
狙いを定める砲台。そこから、多数の砲弾が放たれる。
……前に、横から飛んできた流星が、いくつかの船を撃ち落とした。
「……え?」
何が起こったかわからないアーシア。混乱している暇などなく、次は隕石が船を次々に襲う。予想外のことに見舞われたのか、船は次々に引き返していく。
「……一体、何が?」
街を守れたが、現状を掴めず座り込むアーシア。そこに、数人の魔法使いのような人たちがやってきた。
「危ないところでしたね……大丈夫ですか?」
手を差し伸べたのは一番大人びている女性だった。礼を言いながら立ち上がる。
「ええと……貴方たちは?」
「申し遅れました。エリス=マギア・シャルム。そして……」
「わたし?わたしはアリエッタ!こっちはリルムで、それからソフィ、レナ!」
海から、ラギトがリフィルを担ぎ戻ってくる。
「援軍か?」
「いえ、それがどうも気が付いたらここにいて……」
「助けに来てくれてありがとう。すまないけど話はあとよ。まずはルリアゲハ達の援護に向かいましょう」
傷ついた足で歩こうとするアリエッタ。しかし、ソフィと呼ばれた魔法使いがそれを止める。
「あなたは休んでいてください。私のお友達が付いていきますから大丈夫です。けがを見せてくれますか?」
「……わかったわ」
納得していない風のリフィルと治療のためソフィ、また海から襲ってくることも考えてアーシアが残る。残ったラギトと魔法使いたちは、ルリアゲハの援護に向かった。
クロマグ勢の口調わかんねぇ……