「おかしいねぇ……野盗って話だったはずなんだけど、こいつらそんな強さじゃなくない?」
「すまない。けど、やるしかない!」
ルリアゲハとアーシアの知り合いの剣士――イツキという名らしい――は押されていた。野盗と聞いていたためこちらの兵力は減らしていたものの、敵は野盗とは思えないほどの兵力、
そして統率をもっていた。彼らのリーダーと思われる女性が、高らかに宣言する。
「進軍せよ!ただ私だけのために!」
敵の士気がさらに上がる。もはやイツキとルリアゲハのほか数名しか残っていないような数では、とても止められはしなかった。
「行かせるかっての……!」
止めようとしたルリアゲハの頬を銃弾がかすめる。前には、銃を構えた細身の男が立っていた。
「やってくれるじゃないの。お返しよ!」
「……!」
銃を打ち合う二人、その弾のどれもが互いの急所をかすめていく。イツキは援護に入ろうと男に剣を振るう。
……が、横から現れた剣がイツキの首を狙った。皮一枚というところでかわし、体制を整える。
「残念。斬れなかった」
「……くっ!」
イツキは、斬りかかってきた女を見て震えていた。女から感じる殺気は、イツキが今まで経験したことがないほどに冷たく、鋭くイツキを刺してくる。このままじゃ死ぬ、と構え直し、女を見る。
「次は上手く斬りますね?」
女の剣が揺れ、一瞬でイツキの喉元に届く。反応し、防ごうとしたときにはもう遅く――――
「っとぉ!」
しかし、横から現れた男が剣を止めた。止めただけでなく、そのまま女を蹴り飛ばし距離を取る。
「大丈夫か?」
「っ、はい……」
周りを見ると、どこからか現れた援護が次々と野盗を襲っていた。突然のことに驚く女性指揮官は、引くことを命じる。
「チッ。退却よ!ハーツ・オブ・クイーン!」
「……」
「残念、もっと斬りたかった」
次々と下がっていく野盗たち。それを見て、イツキは安堵する。
「どなたか知りませんが、助かりました」
「なーに、いいってことよ。……ん?」
イツキを助けた剣士が、イツキのことをじろじろと見まわす。
「あの……なにか?」
「いや、ちょっとうちの息子たちに似てると思ってな……」
何が何だかわからないイツキ。そこにルリアゲハと他の援軍らしき人物が戻ってきた。
「ヒビキさん。そっちは大丈夫でしたか?」
「おうサユリ。無事だぜ」
「ヒビキ?……まてよ、ヒビキって……確かうちのひいひいじいじゃんがそんな名前だったな……」
「何だって?俺の名前はヒビキ・マスグレイヴ。お前の名は?」
「イツキ。……イツキ・マスグレイヴ」
そこへ、ラギトと魔法使いたちがやってきた。異界へ集められた彼らは、とりあえず休憩とお互いの知りうる情報をまとめることにした。