「あなたたちはいつもこんな乗り物で移動してるの?」
「うん!ソフィの箒はわたしの杖なんかよりずっと早いし便利なんだよ!」
元の世界へ戻る方法を探す組であるリフィルたちは、ソフィの黒塗りのリムジン箒にのって移動していた。中には飲み物まで用意してある豪華さだ。メアレスの三人は経験したことのない乗り物に興奮、あるいは困惑している。
「子供のころを思い出すわねぇ。こんな立派な箒はさすがに想像できなかったけど。リフィルもこういう魔法を使えるのかしら?」
「箒をどうこうするなんてのは専門外ね。こんなことが出来るなんてそれこそ本の中の物語だと思ってたわ」
「わたしも箒を持ちたいんだけどねー。この杖があるからかさばっちゃって」
「小娘、貴様黙って聞いていれば勝手なことばかり言いおって!」
リルムの持つ杖が突然喋った。メアレスは、これはさすがに予想できず驚きを隠せない。
「自己紹介してなかったな。我は魔杖エターナル・ロアだ。ロア様と崇め……小娘!振るな!酔う!」
「うるさいしゃべるな変な杖!」
「……本当に世界は広いな」
そんなことをしゃべっていると、リフィルが咳払いし今後の方針を話し始めた。
「私達は元の世界に戻るための手がかりを探さなければならない。あの街には教会と塔以外にめぼしい建物は無かった。アーシア達によると異界に詳しい人もいないみたいだしね。だから、とりあえず街を襲ったっていう野盗を追って後をつけ、出来れば情報を聞き出す」
「わかりました。とりあえず野盗が逃げた方向を……きゃっ!?」
リムジン内に大きな衝撃。箒の中が揺れ、草原に不時着した。外に出たリフィルたちを待っていたのは、影のような魔物たちだった。
「なによこいつら。こんな魔物見たことないわよ」
「わたしもないなー。とりあえずグレートザッパー!」
リルムが魔法を放つ。すると魔物はどろどろと崩れていった。
「柔らかいのか?ならば速攻で叩く!」
一瞬で装備を纏ったラギトが次々と魔物を倒していく。魔物はどれも脆く、一撃を加えたところで崩れ去っていった。だが、魔物は崩れ去った直後に新しく生まれてくる。
「キリがないわ。全部一撃で吹き飛ばしましょう。リルム、合わせて!」
「よくわかんないけどおっけー!」
リフィルが高速で陣を組むのに合わせ、ロアに魔力を込めるリルム。そしてリフィルは雷を上へ放つ。
「目覚めよ神雷、空の静寂打ち砕き、あえかな夢を千切り裂け!」
「超超グレェートザッパァー!!!」
リルムの放つ魔法がリフィルの雷を巻き込み、雷と炎の雨をあたりに降らせた。その威力はすさまじく、魔物の一掃に成功する。
「いえーい!」
「なかなかやるわね。リルム」
ハイタッチする二人。急いで箒に乗りなおそうとするが、また魔物が湧いてくる。
「しつこいわね!みんな。先に乗って!」
「ルリアゲハさんはどうするんですか!?」
「私は殿を務めるだけよ。飛ばす準備しといて!」
次々魔物を打ち抜いていくルリアゲハ。後ろを任せ急いで箒に乗る。
……リムジン箒の上、そこに、見知らぬ人影が座っていた。
「困るんだよ。あそこから出られると」
言葉を聞くや否や、リフィルが雷で人影を打ち抜く。しかし、人影には当たらずすり抜けていった。
「血の気が多いね。君たちはあの街から出てはいけない。……ほら。また新しい敵が攻めてきてるよ?」
街の方を振り向くリフィル。町の方角から、煙と大きな音が響いてきた。
「貴様……!」
再び攻撃の構えをとる。しかし、人影は消えていた。いつの間にか魔物も消えている。
「リフィル!ラギト!何があったの?」
「事情が変わったわ。急いで街に戻る」
戻ってきたルリアゲハ。街の方を見てすぐに察して、急いで箒に乗った。箒は高速で街の方へと向かっていった。
箒が去っていくのを見て、近くの岩陰から人が出てくる。フードで顔は隠れて見えないが、口は明らかに笑っている。……その横で、猫が鳴いた。