妖精の尻尾 -王の器-(一時凍結)   作:さまそくん

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世界に、光が満ちた。
宿敵は朽ち果て、死んだ。
明けなかった夜は、照らされた。

だが、犠牲が生まれた。

それはこの世界の唯一無二の〝王〟である、ノクティス・ルシス・チェラム。

王としての器。それの答えがなんなのか、王自身が分からないまま、死んだ。愛する者の為、世界の為に、自らを犠牲にして。


「────長かったなぁ…」


手を伸ばしても届きそうで届かない、目と鼻の先にあるのに見えない、いつか最後があると思っていた物語は、王の〝死〟で幕を閉じた。閉じられた幕は、開かない。

なら、無理に開かず、また新たな道を歩めばいい。道を作るのは時間がかかる。そのかかった時間の中で、どんな出会い、どんな別れ…どんな思い出を作るか。人というのは、それが大事だ。最後の冒険を終えた、星を救った王は、それを噛み締める様に理解している。だが、井の中の蛙大海を知らず。世界は広い。別次元の世界も、ありとあらゆる苦難を強いれている。それに直面した時、王は何を思うのか。


「…ん?誰か倒れてるぞ、ハッピー!」


これは、あるギルドとある王の話。










序章 動き出す物語
【再誕】


 目が覚めると、そこは知らない天井だった。木で作られているのか、木独特の自然な匂いが鼻孔を啜り、俺から〝苦〟を取り、俺に〝楽〟を与えた。

 そんな匂いとは裏腹に、辺りはどんちゃん騒ぎ。覚醒しきってなく、まだ重たい瞼を開き、体を起こす。目をやってみると、右手の中指には〝光耀の指輪〟が────無かった。唖然としたが、壊れてしまったのだろうと落胆する。そして、全身を見てみると、いつもの戦闘服────黒いシャツと黒いズボン、長めのブーツという着こなしの上に黒の半袖ジャケットを羽織った物────だった。俺が最後に着ていた、あのインソムニアの王の象徴である衣装ではなかった。訳が分からなかった。俗に言う、天国という物か、と結論を出す。

 その結論は虚しく、返ってきたのは老人の声だった。

 

 

 「おぉ、目が覚めた様じゃの。」

 

 

 声のする方向へ目を向けるが、何も無い。幻聴か?それとも、脳内に響いた、あの六神の声の様な感じか…?

 その考えも虚しく、返ってきたのはまたもや老人の声だった。

 

 

 「下じゃ!下!」

 

 

 少し怒りが混じった声の通り、下を向いた。

 立っていたのは、かなり小さめの老人だった。声にあった見た目(小さめだが)をしていて、何故か納得してしまった。軽めに頷いていると、老人は呆れた様に溜息をつき、名前を尋ねてきた。

 

 

 「ワシはマカロフ。お主、名前は?」

 

 

 「ノクティス・ルシス・チェラムだ。ありがとな、マカロフさん。」

 

 

 名を名乗り、軽めの礼を告げた。

 堅苦しいのを好まないのか、マカロフは一言「もっと軽くせえ」とだけ、俺に告げた。

 俺自身、何故ここにいるのか分からない。イグニスは?グラディオは?プロンプトは?気になる事ばかりだ。マカロフさんには申し訳ないが、質問を幾つかさせて貰う。

 

 

 「マカロフさん。ここは、何処なんだ?」

 

 

 初歩中の初歩だ。まず、ここが何処なのか把握していないとこれからの方針に関わる。

 マカロフさんは答えてくれた。

 

 

 「妖精の尻尾…フェアリーテイルのギルドじゃ。お主が倒れている所をうちのガキが見つけてな。見た所、外傷は無かったが一応、な。」

 

 

 ニヤ、と笑うマカロフさん。要するに、俺を助けてくれた。俺自身、どうしてここにいるか分からない。死んだ筈だ。死んだのに生きてるってのは、六神が関係してるのか?

 答えのない自問は空虚に響いた。もし、ここが別次元の世界だとしたら、イグニスもグラディオもプロンプトもいない筈だ。そして、それは目に見えて結果に出ている。三人共、居ない。

 

 俺のその様子を察したのか。

 

 

 「妖精の尻尾はいつでもお主の味方じゃ…頼れよ。」

 

 

 とだけ言い残し、マカロフさんは部屋を出ていった。

 正直、下がった頭が上がらない。助けてもらった上に、ちらりと見た時に見えたが、父王の剣まで回収してくれている。

 ファントムソードが使えるかは分からないが、回収してくれた父王の剣は、大事そうにベッドの横の棚に立て掛けられていた。

 

 

 「…。」

 

 

 口にこそ出さないが、安堵をこぼす。この剣が無ければ、俺はあの世の親父に怒られていただろう。「私が、皆が、レイヴスが命を落としてまで託した剣をどうしてそうも粗末に扱う!」って。想像出来てしまう分、更に笑みがこぼれてしまう。

 

 そんな中、俺は徒ならぬ気配を感じた。ドアの向こうにいる、一人と一匹の気配。皆がどんちゃん騒ぎしている五月蝿さで、今まで気付かなかったが。

 俺は意をけして、ドアの向こうにいるであろう誰かに話しかけた。

 これで誰もいなければ、恥ずかしい。

 

 

 「あ、俺に何か用があるのか?」

 

 

 俺のその言葉に、返ってきたのは、ドアを乱暴に開く、ギギっという音と、乱暴に開かれたドアが俺の顔面に直撃した痛み、そして、桜髪が特徴の白いマフラーをした青年と、目がくりくりした青い猫の、

 

 

 「大丈夫かー!!!?」

 

 

 という言葉だった。生憎、大丈夫ではない。ドアが俺の顔面に思い切り直撃した。すげえ痛い。

 

 

 「ナツー。この人ナツが思いっきりドア開けたのにぶつかって顔痛くしてるよ?」

 

 

 この猫は分かってるらしい。俺に「大丈夫?ごめんね。」ってハンカチを渡してきた。結構痛かったが、生憎そこまでではない。ハンカチは受け取らなかった。

 

 よく見てみると、マカロフさんの言っていた二人(一人と一匹)に当てはまった。

 

 

 「俺が倒れてた所、助けてくれたんだってな。ありがとな。俺は、ノクティス・ルシス・チェラム。お前らは?」

 

 

 俺は礼を告げ、ついでに名前を聞いた。仲良くなれそうな予感がしたからだ。

 桜髪の青年は、ニカッと笑って、大声で、俺を指さしながら言った。青い猫は、くるくると飛び回りながら、俺に微笑んで言った。

 

 「俺はナツ!ナツ・ドラグニルだ!ノクティス・ルシス・チェラム…なげーからノクト!!よろしくな!」

 

 「あい!よろしく〜、ノクト!」

 

 親しかった盾…であり、仲間であり、友人であった、三人を思い出し、俺は泣きそうになった。が、過去の事は振り返ってられない。そうは言い聞かせても、過去の事など忘れられない。

 

 思えば、これがナツとハッピーとの出会いだった。

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