1話もの 俺ガイルクロス   作:まーぼう

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俺ガイルとバカテスと中二恋とニセコイのクロス。
出番というかセリフ量に偏りがあるけど気にしない方向で。いや、主人公じゃなくてヒロインで作品を選んだんで。


収束する結末

 俺は知らなかったのだ。

 

 

 アトラクタフィールドという概念を知っているだろうか?

 世界と時間は線で表すことができる。これを世界線と呼ぶ。

 世界線は人の行動、選択、その他様々な要因によって分岐する。まるで細かい糸のように。

 しかしどれほど世界が分岐しようとも、例えば誰かの『死』のような大きな出来事は、必ず全ての世界線で起きてしまう。

 この、分岐に関わりなく同じ結末に辿り着いてしまう世界の構造がアトラクタフィールドだ。宗教的な言い方をするなら運命と呼んでも良いだろう。

 先ほどの糸の例に例えると、世界線が糸ならば、アトラクタフィールドは世界という糸がより集まった紐だ。これ以上詳しいことが知りたいならシュタゲを観てくれ。俺文系だし。

 とにかく何が言いたいのかと言うと、世の中には、どうやっても避けられない運命ってやつが存在する、ってことだ。

 

 

 

「じゃあヒッキー、ハイこれ!」

「お、おう」

「悪いけどあたし、今日は優美子たちとご飯食べるから。後で感想聞かせてね?」

「ああ、分かった……」

 

 後があったらな。

 由比ヶ浜は俺に包みを渡し、パタパタと音を立てて去っていった。

 俺は少し前から由比ヶ浜と付き合い始めた。鳥肌立ちそうではあるが、俺もリア充の仲間入りを果たしたわけだ。

 そして今回のこれはリア充の定番イベント、彼女の手作り弁当である。

 大事な事なのでもう一度言おう。彼女の、由比ヶ浜の手作り弁当である。

 ……気のせいなのは分かっている。なのに可愛いナプキンに包まれた弁当箱からは、地雷臭どころか死臭が立ち上っている気がした。ごめんな、小町。お兄ちゃん、もう帰れないかもしれん……。

 

「比企谷くん、どうしたの?」

「ん?……ああ、吉井か」

 

 弁当箱を抱えて途方に暮れていた俺に声をかけてきたのは、我が2年F組を代表するバカ、吉井明久だった。

 

「……なぁ吉井、死に場所を選べるとしたらどこで死にたい?」

「何その嫌すぎるアンケート!?答えると僕どうなるの!?」

「いや、単に昼飯どこで食おうかなと思っただけなんだが」

「なんだ、そういうことか。天気も良いし、屋上とか良いんじゃない?」

「何故あっさり納得する……?でもまあ屋上か。悪くないな」

「でしょ?じゃあ昼休みも短いし早く行こうよ!」

「何?着いてくる気?いや、別にいいけど。そういやその弁当、もしかして姫路の手作りか?」

 

 吉井もまた弁当箱を抱えていた。

 姫路瑞希というのは吉井の彼女だ。

 ふわふわぽわわんとした美少女で、学年2位の成績を誇る才女でもある。こいつのおかげで俺の国語は4位に落ちてしまった。ん?落ちたってなんだ?最初から4位だったよな?

 吉井は俺の質問に、昔日を惜しむかのような表情で答えた。

 

「……うん。そうなんだぁ……」

「だから何故人生を儚むような眼をする……?」

 

 良いじゃん、彼女の手作り弁当。爆ぜろリア充。あ、これだと俺も死ぬのか、面倒くせぇ。

 

「まあいいか。行こうぜ」

 

 こうして俺達は屋上に向かった。

 

 

 屋上には先客がいた。

 

「富樫か」

「一条くん、こんにちは」

「あ、比企谷先輩、どうも」

「吉井先輩、こんちわっス」

 

 この二人は富樫勇太と一条楽。共に一年生でありながら彼女持ちだ。

 吉井が挨拶した一条の方は一年の有名人で、金髪ハーフの許嫁がいるにも関わらずクラスメイトに彼女を作ってしまったという剛の者だ。もげればいいと思う。

 何故吉井と知り合いなのかは分からんが、まあ吉井は顔広いしな。

 一方富樫の方は、本人ではなく彼女の方が有名人だった。

 常に眼帯を身に付けた、邪王真眼を名乗る真性の中二病で、普段の素行からしてアレな為に平塚先生に奉仕部へ連行されてきた。富樫はその時付き添いにきて知り合ったのだ。

 彼女である小鳥遊六花の病状は重く、材木座と意気投合してしまうほどだった。

 俺は自身がリア充になっても、やはりリア充が嫌いだった。なので彼女いる奴とか見ると無条件で死ねとか思ってしまうのだが、富樫の場合、普段の気苦労が理解できてしまう為同情せざるを得ない。だが死ね。

 

「お前らも屋上で飯か?仲良いの?」

 

 この二人も弁当を持っていた。多分彼女の物なのだろう。

 

「いえ、たまたま鉢合わせただけなんですけど」

 

 富樫が答える。偶然一緒になっただけらしい。

 

「そうなんだ。じゃあせっかくだしみんなで一緒に食べない?」

「あ、良いっスね。そうしましょうか」

 

 吉井の提案を一条が快諾する。いや、ちょっとくらい考えてから答えろよ。

 言い出したのが葉山辺りだったら「へ、『みんな』で、ねぇ……?」とか嫌味の一つも返すところかもしれんが、コイツら相手にそんなことするつもりは無い。別に嫌いなわけじゃねえしな。死ねっつってた?リア充見てそう思うのは人として自然な反応だろ?

 しかしどうすっかな。一緒に食うのが嫌とは言わんが、人生最期の食事くらい一人静かに穏やかな心で採りたいところなんだが……いや、まてよ?

 

「それならよ、弁当シャッフルしてみねえか?」

「……え~と、弁当をシャッフルって、なんで?」

「他人の弁当って、なんか気になんねえ?」

「ん?う~ん……?」

 

 俺の言葉に他の三人は揃って唸る。

 よしよし。興味はあるようだ。これで交換が成立すれば俺は命を長らえる事ができる。

 済まん、由比ヶ浜。お前の気持ちは嬉しい。嬉しいんだが、俺はやはり死にたくない。

 

「……そうだね、たまには面白いかも」

 

 吉井から肯定的な言葉。他の二人からも否定は出てこない。よし、勝った!

 

 

 

 そう。俺は、俺達は、知らなかったのだ。

 選んだ答えに関わりなく、同じ結末に辿り着く。そんな選択がこの世に存在することを。

 

 

 

「……交換は終わったな?」

 

 確認の言葉を放つと、三人は神妙な面持ちで頷いた。……神妙?なんで?

 まあいい。奴らの気が変わらない内に食ってしまおう。

 

「んじゃ、時間も押してるし食うか」

 

 

(由比ヶ浜の料理を食う奴には悪いが……)

(小野寺、ゴメン……!)

(……せめて六花の飯で死人が出ませんように)

(姫路さんの料理は本気で命に関わるからね)

(俺の為に犠牲になってくれ……!)

 

 

 全員で手を合わせる。

 

「「「「いただきます」」」」

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