俺妹キャラがどこに出てくるかは秘密。
どうしてこうなった……?
俺は、というか俺達は今、親父の前で正座している。
「おいコラ八幡テメェどういうことか説明してみろや?」
「だから!小町とお兄ちゃんは愛し合ってるの!お兄ちゃんいじめるともう口きいてあげないよ!?」
「だ、だ、だ、だけどな小町?お前達はれっきとした兄妹であって法律上結婚できないっていうかむしろ誰とも結婚させる気は無」
「ごちゃごちゃうるさい!もうお父さん嫌い!」
「こ、小町ぃ~~~~!?」
オロローンと泣き崩れる我等が父。マジ威厳ゼロ。いやもうちょっと粘れよマジで。
小町のセリフから予想はついているかもしれないが、俺、比企谷八幡は、妹である小町と付き合うことになってしまった。本当なんでこうなったんだっけ……?
発端は確か先週の頭頃だっただろうか。
朝目覚めると横に小町がいた。多分夜中にトイレか何かに起きて、そのまま寝ぼけて俺のベッドに潜り込んだのだろう。
俺は特に慌てることもなく、ため息を一つ吐いて小町を起こそうとした。そしてそこでハプニングが起こった。寝ぼけた小町に唇を奪われたのだ。
これには俺もさすがに固まらざるを得ず、硬直してる間に小町も意識を覚醒させ、俺をボコボコに殴って逃げ出した。
で、それ以来小町が俺のことを意識し出したらしく、目が合う度に真っ赤になられたり声をかけるとビクッとしたり。
ただの事故なんだから気にしなくていいだろと思ってほっといたんだが、それ以降なんかの嫌がらせかと思うレベルでエロハプニングが連続し、ふと気がつくとギャルゲーよろしく小町の好感度がMAXを突破。先日告られ、わずか一日で親バレして家族会議勃発。今に至る。……告られた時に断ればよかっただろって?俺を誰だと思ってる。妹が泣きそうな目でしてくるお願いを拒否れるわけねえだろ。
んで、肝心の会議だが、親父が俺に因縁ふっかけ、小町が俺をかばい、小町に強く出れない親父が落ち込み、すぐに復活して俺にからむの繰り返し。全然話が進まねえ。今何ループ目だっけ……?
「いつまでやってんの、あんた達は」
ループを断ち切ったのは、これまで事態を静観していたお袋だった。
「いや、だけどな、簡単に済ませていい話じゃないだろう?」
「はしかみたいなもんでしょ?小町はまだ子供なんだから、お兄ちゃんを好きになるくらい別に不思議でもないでしょ」
「子供ったってもう中学生だぞ!?」
「まだ中学生よ。このくらいの年で性別の違う兄弟だったら普通の事よ、こんなの。ほっとけばその内勝手に飽きるわよ」
「このままだったらどうする!?」
「小町お兄ちゃんに飽きたりしないもん!」
「ほら!小町もこう言ってるじゃないか!」
「そうなったらその時に考えればいいでしょ。それより明日も平日よ?ほら、もう遅いんだから解散解散」
「いや、でもな……」
「いいからさっさと寝る!ほら、あんた達も!」
そう言って俺と小町をリビングから追い出すお袋。いや適当すぎんだろ、もうちょい危機感持てよ。
二人して階段を上る。
「……んじゃ、おやすみ」
そう言って小町の部屋を通り過ぎようとすると、袖に小さな抵抗を感じた。立ち止まって見ると、小町が小さく摘まんでいる。うおぅ、嫌な予感……
黙って待っていると、小町はおずおずと口を開いた。
「あの、お兄ちゃん……今日、一緒に寝てもいい……?」
ほらー!やっぱりー!お袋がちゃんと厳しく言わないからー!
告られた時はついOKしちまったものの、正直なところ小町とそういう間柄になるつもりは無い。いや、可愛いと思うよ?世界一。でも妹だし。
俺は千葉最強のシスコンを自称しているが、真面目な話、シスコン・ブラコンってのはあくまでも家族愛の延長であって恋愛には結び付かないものだと考えている。だから法律や倫理観を抜きにしても、小町を『女』として見れるかというと、首を捻らざるを得ないところなんだよな。
そんなことを考え、どう答えたものかと迷っていると、小町が顔を伏せたままで言葉を続けてきた。
「……分かってるよ?これが普通じゃないことも。お兄ちゃんが、小町のワガママに付き合ってくれてるだけだってことも。分かってるの。どうしようもないことなんだって。でも、どうしようもないんだもん。どう言われたって、小町はお兄ちゃんが――」
己を苛む苦痛に耐えながら言葉を紡ぐ小町を見てられず、頭にポン、と手を乗せてセリフを遮る。
小町はそんな俺を不安そうに見上げてきた。おいやめろ。抱き締めたくなっちゃうだろ。
「……今日だけだぞ」
「……うん」
小町は俺の腕に抱き着くと、嬉しそうに顔をすり付ける。
俺はそれを見下ろし、またため息を漏らした。――保ってくれよ、俺の理性。
「どうしてこうなった……」
娘達が出ていったリビングでソファに深く腰掛け、ため息を吐く。
「ま、仕方ないんじゃないの。あたし達の子供なんだし」
「……それを言われちまうと何も言えん」
湯呑みを寄越しながらの妻のセリフに、ため息と共に答える。
実際仕方ないとも思ってしまうのだ。
未成熟な内は異性の家族に惹かれるというのは、実は珍しくない。そしてこうなってしまえば、当事者の熱が冷めないことには他所から何を言っても無駄なのだ。
それはよく分かってる。前例を知っているだけに。
だからこそ、小町が産まれた時に、八幡と近付き過ぎないようにしようと決意したというのに。
「……にしてもあの子達、将来的にはどうするつもりなのかしら。あたしらには助けてくれる友達が居たけど」
「なんで子供が駆け落ちする前提で話してんだ。そうならないように止めることを考えろよ」
言っても無駄だと知りつつ突っ込む。昔からそうだが、こいつが俺の話をまともに聞いた事など無い。
「色々世話になっちゃったわよねー。新しい名前まで用意してもらっちゃって」
「まぁ……確かにな」
若い頃に出会って以来世話になりっぱなしの、ぐるぐる眼鏡の親友のことを思い浮かべる。しばらく会っていないが、たまにニュースで見かける限りでは元気そうだ。
「ていうか、名前に関しちゃお前が千葉から離れたくないとか言い出さなきゃ変える必要も無かっただろうが」
「だって千葉テレ見らんなくなったらイヤじゃん」
「……八幡の千葉好きは間違いなくお前の遺伝だよな」
言って、またため息を吐く。
「……なんか、昔のこと思い出しちゃったわね」
「……そうだな」
色々あった。本当に、色々。
結婚する前も。した後も。
それらのことを、思い出した。
「……今度、久しぶりに二人でどっか行くか。桐乃」
「楽しみにしてるわ、京介」