ある昼下がり。人類の置かれた状況など知るよしもない太陽が、今日も安堵の日差しを地表に注いでいた。しかし巨人の森で任務中の調査兵団に、その恩恵は皆無であった。
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◇
「こちら、異常ありませんっ!」
私はついこの間までただの訓練兵だった。五年ぶりの超大型巨人が再来した時、奇跡的に多くの巨人を討伐することに成功した。その数七。決して誇れる数ではないにしろ、緊急事態というシチュエーションと訓練兵という立場として高い評価を得ることができた。そして何よりも、視力が人の三倍以上いいことが調査兵団の仮入団を決めたらしい。
功績があるとはいえ私は新米だ。そんな私に課せられた任務は"見張り"だった。内容は簡単、巨人及びその他異変を見つけ次第報告。巨人に対して迎撃の義務はない……遠回しに戦うなということだろう。不謹慎ではあるが、戦わなくていいだけでかなり気が楽だ。
そんな日和っている私を一喝するように、雷火のごとく空気を貫くものが――。
「何者っ?」
思考するよりも早く声が出た。得体の知れないものが私の背後を突き抜ける瞬間、私のありったけの視力をその何かに向けた。
「へ、兵長?」
私の脳に焼き付けられた刹那の空間に写っていた者、それは……人類最強と謳われるリヴァイ兵長その人だった。普段は冷静であまり顔を変える人ではないが、このときの表情は明らかに張り詰めていた。
「兵長! 何事ですかっ」
私は叫びながら夢中で兵長を追いかけた。さすがに兵長は速い。私がバランスを保てる限界までガスを噴出をさせているのに、姿を見失わないようにするので精一杯だった。
「誰かを呼びましょうか!」
今までの叫びかけには応じてくれなかったが、この問いかけに関しては「必要ない」と返ってきた。兵長のただならぬ形相を見てしまった手前、何の役にたつかは分からないけど、私はただただ兵長を追いかけることしかできなかった。
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この時から数刻前のこと、「光」というぬくもりこそなけれど、うららかな陽気が地上を覆っていた。巨人が出現していない今、普段冷たい雰囲気を漂わせている調査兵団も、このときばかりは穏やかであった。しかし兵長であるリヴァイにはその恩恵すら皆無であった。
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◆
くそ、何ていうことだ。こんな時に限って、こいつに襲われるとはついてない。任務前に片付けておいたはずなのだが……まぁ仕方ない。前線基地まで飛ばせば、まだ間に合うはずだ。ガスの無駄になるが、事が起きるよりはましだ。
「兵長! 何事ですかっ」
順調に自分の任務を遂行していたのだが、重大な問題が発生した。この俺の後をどこのどいつか分からないが、女兵が追いかけてきやがった。移動の要領が随分と下手糞だ。新兵か。このまま振り切ることも、普段であれば可能だ。しかし如何せん今は、ガスの出力を増やす事ができない。なんて間の悪い女だ。
「誰かを呼びましょうか!」
冗談じゃない。こんなどうでもいいことで、誰かを呼ばれてたまるか。俺は精一杯の声で「必要ない」と叫んだ。ここまで簡潔な一言でさえ、俺の事情にはかなりの支障が出てくる。そんな俺を尻目に、あの女は未だに追いかけてきやがる。そもそも何故よりによって女なんだ、くそっ。
でかい用を足しに行きたいだけだから、ついてくるんじゃねぇ!
――
「兵長は空中で撒き散ら……したりはしませんよね」
太陽もすっかり傾き、兵団も駐屯基地に戻っていた。エレンは先の話を聞いて妙に気が高揚していたが、リヴァイに一瞥されただけでテンションを削がれてしまった。女性兵は夕日の色も手伝って顔が真っ赤だ。
「俺だったらそこらへんでするがな」
エレンを片手でどかせて、オルオが話しに入ってきた。そして女性兵の顔を覗きこんで「お前も偉ぇことしたな」と声をかけた。その台詞に対して女性兵は「すいません」としか言わなかった。リヴァイはその状況を見て、深いため息をついた。
「オルオ……新人に茶々を入れてないで、もっと人としてプライドを持て。いつまでも初陣時の気持ちじゃ困る」
その言葉にオルオは「な、何のことだ」と必死にごまかしていたが、エレンはそんなこともお構いなしに元気を取り戻した。
「さすがオルオさん! う○こも空中で撒き散らすんですね」
「ばっ……その辺とは言ったが、ズボンは下ろすぞ」
「きたねぇ話をでかい声でしてんじゃねぇよ」
赤面の女性兵、プライドを削がれたオルオ、変に生き生きしたエレン、黙って立ち去るリヴァイ――
今日も調査兵団は元気です。
トイレネタさーせんww
この後、任務で基地を離れる際
簡易トイレが必ず持っていかれたのは言うまでもない……のか?