チョイワルビッキーと一途な393   作:数多 命

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ご感想ありがとうございます。
楽しく読ませてもらっています。
ただ、一つだけ。
フィーネさんがポンコツっぽく見えるのは、私の文章の拙さが原因でして・・・・。
だからそんなdisらんどいだって・・・・!


天下の往来独り占め作戦

わぁ。

わぁー。

わあぁー・・・・(呆)

離れなきゃ離れなきゃ言ってたくせに、未来ちらつかされた途端ホイホイついてっちゃってまぁ・・・・。

ちょっと、わたしってばチョロすぎませんかね。

フィーネさんも呆れてるんじゃないかなぁ、『何この子チョロすぎ』って。

これじゃ威厳もへったくれもないよ。

『賢者』が『賢者(笑)』になっちゃうよ。

一応あの後、報酬として『日本出国の手引き』を約束させた。

当然渋られたけど、こっちも怪我させられたんだし、別に『あの目的』(あいのこくはく)を邪魔する気も無いしで。

どうにかこうにか説得出来た。

出来たんだけど、念の為って受けさせられた身体検査でまた獲物見る目されちゃったし。

ああ、やっぱりとんでもないところに来ちゃったなって。

今更どれだけ後悔したところで遅いけどな!

で、だ。

実はアレから一週間経っているわけだけども。

わたしはずっとこの館でお世話になっている。

で、ここに居座っているということは。

『あの子』にもエンカウントするわけでして。

 

「何でこいつがここにいるんだよッ!!!!」

 

ずどん、なんて音を立ててテーブルが叩かれる。

歯を食いしばるギリギリという音が、かすかに聞こえた。

大ダメージを与えたとばかり思っていた『雪音クリス』ちゃん。

実は『ネフシュタン』の鎧としての機能と、再生能力がお仕事したとか何とかで。

つい昨日には復帰していた。

なお、例のビリビリは施された模様。

 

「契約を結んだの、病み上がりの貴女が快復するまで手伝ってくれるわ」

「だからってこいつじゃなくてもいいだろうッ!?」

「・・・・ぶっちゃけわたしも賛成」

 

思わず呟くと、前と横から睨まれる。

きゃー、怖い。

これ以上突っつくと痛い目を見そうなので、お口をナインチェにしておく。

・・・・・意外とカッコイイ本名なんだよな、あのウサギさん。

 

「まあ、いい・・・・それより今度の仕事よ」

 

フィーネさんが切り換えたので、クリスちゃんも睨むのをやめる。

 

「明後日早朝、二課で大規模な作戦が実行されることとなった。内容は完全聖遺物『デュランダル』の移送だ」

「かっぱらってこいってことか?」

「その通りよ」

 

そういえばこないだ、広木防衛大臣が暗殺されてたね。

あえて厳しく当たって法を尊守させることで、二課を守ってくれてた人なんだっけ。

それを考えると、惜しい人を亡くしたもんだ。

 

「デュランダルは私が運転する車両に乗せる。怪しまれないために、本気で攻撃してきなさい」

「ああ、分かった」

 

意見は特にないので、わたしも頷いておく。

 

「響は風鳴翼の足止めを、必要なら仕留めても構わない」

「はい」

 

まあ、翼さんに死なれちゃこっちも困るので、生かしはするけど。

そういえば、翼さんとガチで立ち会うのはこれが初めてか。

どうやってK.O.するか考えとかないとなぁ・・・・。

 

「では、決行までは好きに過ごせ・・・・ただし」

 

きろり、と。

『満月』がわたし達を捉える。

 

「諍いを起こすのは許さない」

「・・・・分かった」

「承知しました」

 

『余計な面倒増やすな』ってことですね、分かります。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

その日、特異災害対策機動部二課は緊迫していた。

強力な後ろ盾であった広木防衛大臣の急逝。

大臣自体は副大臣が繰り上がるので問題は無いが。

新たに防衛大臣となる石田氏は、国際協力を唱える親米派。

日本の国防に、米国の意見が通りやすくなるのではという懸念があちこちで囁かれている。

二課もまた、もろに影響を受ける部署の一つであるため、人事でいられない。

――――前防衛大臣が暗殺されたその日、面会する予定だった了子は運よくすれ違って難を逃れた。

そんな彼女が持ち帰った資料により、大規模作戦が決行されることになった。

二課が保有する唯一の完全聖遺物『デュランダル』。

度重なる襲撃や、『ネフシュタンの鎧』を纏う何者か。

そして、二課本部のカモフラージュでもあるリディアン音楽院周辺の、ノイズの異常な発生率。

様々な不安要素を考慮し、デュランダルの移送作戦が決行されることとなった。

移送先は永田町にある演算施設『記憶の遺跡』だ。

途中で、ネフシュタンを始めとした第三者の妨害も予測された。

早朝のリディアン音楽院。

太陽も昇っていない中、翼含めた二課エージェント達が並んでいる。

 

「大臣殺害の犯人捜索の為として、検問を張る!その中を、永田町まで一気に駆け抜ける!」

「名付けて、『天下の往来独り占め作戦』よ~」

 

緊張を程よくほぐすためか、了子の呑気な声で作戦はスタートした。

了子は自身の車にデュランダルの入ったケースを乗せ、その周囲をエージェントが乗った護送車と、翼のバイクが護衛する。

車両はリディアンを飛び出し、トップスピードを維持したまま街中を駆け抜ける。

商店街にも人気がないのは、何か理由をつけて住民に退去してもらっているからだろう。

普通なら警察のお世話になりそうな速度だが、この場合そうは言っていられない。

街を抜け、やがて湾内を繋ぐ橋の上へ。

変化は、ここで起きる。

 

「な――――!?」

 

前方の道路が爆発し、黒煙が上がる。

了子の車はギリギリ避けられたが、他の車両が一台海の下へ。

バイクを駆り、瓦礫から瓦礫へ飛び移った翼は、苦い顔でそれを見送りながら。

それでもエージェント達の無事を信じて、向こう側へ渡りきる。

再び街の中へ、ここでも妨害が。

突如マンホールの蓋が飛び上がったと思うと、色とりどりの噴水が湧き上がる。

振ってくる飛沫は全てノイズ。

 

「ッImyuteus Amenohabakiri tron...!!」

 

当然無視する道理は無い。

翼は即座に唱えてギアを纏い、無数の剣を打ち出してノイズを一掃する。

だが、これも当然一度で終わるはずがない。

マンホールと言うマンホールから、次々ノイズが湧き上がってきた。

 

『聞こえるか!?そのまま行けば、薬品の工場地帯がある!了子くんには、そこに行ってもらいたいッ!!』

『そこで爆発でも起きたら、いくらデュランダルでも木っ端微塵よ!?』

 

耳元の通信機から、弦十郎と了子のやり取りが聞こえる。

前日に周辺の地形を叩き込んでいた翼も、会話に入れないなりに怪訝な顔をしていた。

 

『敵の目的がデュランダルの確保なら、あえて危険地帯に飛び込もうって寸法だ!』

『勝算はあるの!?』

 

焦燥と疑問が渦巻く声でまくし立てられた弦十郎は、次の瞬間自信たっぷりに答える。

 

『――――思い付きを数字で語れるものかよッ!!!!』

 

頼もしい返事に、翼も自然と笑みが浮かべる。

即座に了子の車は速度を上げた。

ハリウッドばりの大ジャンプをかまして、件の工場地帯へ飛び込んでいく。

翼もまた、出現したノイズを一掃した上で、追従していこうとして。

 

「――――ッ!?」

 

バイクの前で、爆発。

突然のことで衝撃に備えきれず、翼は放り出されてしまう。

何とか身を翻して体勢を立て直し、着地。

こんな時に横槍を入れる無粋者は、どこのどいつだと。

刀を構え、鋭く睨みつける。

土煙がはれた先、立っていたのは。

 

「お前・・・・・!?」

 

頭がハンマーで殴られたようだ。

 

「どーも、お久しぶりです」

 

ひん剥かんばかりに目を見開いた翼へ、響は達観しきった笑顔を浮かべる。




お口ナインチェ(・x・)

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