毎度ありがとうございます。
ご感想もありがとうございます。
いつも皆さんの反応を楽しませてもらってます(笑)
もう三度目ともなると、感慨が薄れちゃう限定解除である。
あ、でも未来のは初めて見るから新鮮だなぁ。
何気に執行者事変の時はいなかったからねぇ・・・・。
羽や腰布が追加されて、ひらひらふわふわな一方で。
頭の装甲はちょっととげとげしい感じ。
いやいや、大変お似合いですよ(にっこり)
「ふん、土壇場で奇跡を手繰ったか・・・・」
なんてよそ事考えてたら、キャロルちゃんの声が聞こえて。
現実に戻る。
「みんなで掴みとったエクスドライブを、奇跡の一言で片づけるデスか!?」
「――――片づけるともッ!!」
むっとなった切歌ちゃんが、アームドギアを構えながら肩を怒らせれば。
キャロルちゃんはくわっと目を開いて、どっと咆えた。
おおう、プレッシャーがビリビリと・・・・。
見た目で誤魔化されがちだけど、キャロルちゃん何気に長生きなんだよね。
さすがに了子さんからすればまだまだお嬢ちゃんなんだろうけど。
「オレの父は、村の流行病を錬金術によって救った。だが、奇跡を妄信する村人達によって、勲刑の煤とされたッ!!!!」
吐き出すように、ため込んでいた怨嗟を語るキャロルちゃん。
「故にオレは、奇跡を殺すと誓ったのだッ!!!!!」
そりゃあ、人のためにって行動したのを仇で返されちゃったら、怒って当然だよね。
・・・・多分わたしも、同じことをやっただろう。
そういえば、フランスでの魔女の処刑方法は火あぶりらしい。
魔女裁判における『魔女』の基準に当てはまれば、たとえ男性であっても『男の魔女』として拷問され、処刑されたとか、なんとか・・・・。
薬草に詳しくて、ちょっと不思議な術を使う人・・・・残念ながらどんぴしゃですね。
申し訳ないけど。
「・・・・お前も、少なからず同じだと思っていたよ。立花響」
おっと、話がこっちに来た。
「程度は違えども、父を虐げられた者同士・・・・分かり合えると思っていた・・・・!」
・・・・死に体の融合症例から復活した、『奇跡の象徴』ってだけの理由で絡んでたんじゃないんだね。
でも。
「他でもない君に、お父さんを傷つけられちゃね。残念だけど、すぐには仲良く出来ないよ」
「減らず口を・・・・!」
「でも」
――――でも。
「なんでだろうね、散々大変な目にあわされたはずなのにさ。不思議と憎んではいないんだよ」
「・・・・何?」
キャロルちゃんどころか、仲間達すらもびっくらこいた目で見てくる。
・・・・いや、なんか、こう。
みんなにまで驚かれるのはちょっと落ち込む。
むぁー、味方はなんか優しい目を向けてる未来だけだよう。
とかなんとか考える一方で、不思議な気持ちに首をかしげていると。
『――――お姉ちゃん!』
・・・・んっ!?
「あれっ!?香子!?なんでそこに!?」
『は、入り込んだのは普通に謝るけど、それよりも!!』
行動力ある子だと思ってたけど、ここまでとは・・・・。
お姉ちゃんびっくり。
『ここに、泣いている子がいるの!!』
「・・・・ッ」
なんて思ってるところへ、通信の向こうの香子がそんなことを言ってて。
・・・・頭をよぎったのは、キャロルちゃんと初めて出会ったあの日。
燃え盛る炎を見ながら、声もなく泣いていた横顔が。
何度も思い出されて。
「・・・・ああ、そうだね」
思わず、苦笑い。
だけど、やりたいことは決まった。
「泣いてる子は、ほっとけないね!」
「・・・・はっ、ほざけッ!」
ちょっと得意げに、泣いてる顔へ笑ってやれば。
対するキャロルちゃんは、憎々し気に睨むなりアルカノイズの結晶をばら撒いた。
っていうか、相当な数出したねコレ。
「ッ放置するわけにもいくまい!」
「ええ、いくわよッ!」
翼さんマリアさんの年長者ズの号令で、一斉に散開。
街にあふれだしたアルカノイズを掃討に・・・・って、あっ、あいつ!
『フォフォフォフォフォ!』な宇宙人似の奴がいる!!
わあー、こんな状況だけど感動ー!
倒すけどな!!!!
全力で拳をぶつけると、どかーんと大穴が開く。
そのまま手甲をさらっと『槍』に変形、突っ切って飛行している小型を片づけつつ。
小型を吐き出し続けている、ポケモンっぽい大型を撃破する。
「・・・・ッ」
ちらっと見えたルンバをなかったことにしながら、次ッ!
「響ッ!」
また飛行型の群れに飛び込むと、未来の声。
すると、わたしの周囲に無数の鏡が展開された。
とくに考える間もなく、鏡を足場にしてバウンド。
突撃しようと、あるいは逃げようとするアルカノイズを、次々ちぎっては投げ、ちぎっては投げ。
最後に飛びついた鏡を、未来が砲撃でわたしごと押し出して吹っ飛ばす。
哀れ、飛行型の群れは、拳で思いっきり爆ぜた後。
破魔の光で消し炭にされた。
他のみんなも、今更ノイズに加減なんてしない。
斬って、撃って、貫いて、
あちこちでマゼンダの爆発が上がる。
(たーまやー!!)
なんて、胸中でおどけていると。
「あ、アレッ!!」
調ちゃんが指さす方を見てみると、陣を展開してるキャロルちゃん。
「アルカノイズは時間稼ぎだったか・・・・!!」
「いや、どっちみち『お片付け』はしなきゃですし」
判断を誤ったと思ったのか、苦い顔で悔しそうにする翼さん。
何とかフォローを入れていると、キャロルちゃんから無数の弦が、目に見える糸束になってうごめく。
編み込まれて、固まりになって。
翡翠の輝きから聞こえてくる、獣の唸り声。
『碧の獅子・・・・太陽を喰らう、または吐き出すバケモノとはね』
あっ、了子さん無事だった。
そういえば太陽を食べる獅子って、赤くてちっちゃな錬金術師にも出てきてたね。
確か食べる方が賢者の石を表してるんだっけか。
で、吐き出す方がエリクシールだとか、何とか・・・・。
「だったら!やられる前に!」
「やるだけデス!」
「あ、おい!」
顕現したライオンさんへ、調ちゃんと切歌ちゃんが果敢に一番槍。
だけど、堅牢な装甲と重たい一撃の前に。
たやすく吹っ飛ばされてしまう。
・・・・君達、ネフィリムの時も似たようなことになってたね?
未来と一緒に、調ちゃんと切歌ちゃんを受け止めていると。
ライオンさんの口にチャージされてた燐光が、解き放たれるのが見えて。
「ひゃ・・・・!」
「わわわッ・・・・!」
咄嗟に未来の手を引いて、抱えてた調ちゃんごと引っ張ると。
そこそこすれすれのところを、放たれた砲撃が通り過ぎて行った。
一拍おいて、爆発。
暴風にあおられて、たまらずもう少し後退してしまう。
「あの威力・・・・どこまで・・・・!?」
「あの鉄壁は金城!散発を繰り返すだけでは突破できない!」
「ならばッ、アームドギアを形成するエネルギーをぶつけて、鎧通すのみッ!!」
クリスちゃんと同じく、とんでもないパワーアップに戦慄していると。
翼さんとマリアさんのそんな声が聞こえる。
「身を捨てて拾う、突貫攻撃・・・・!」
「ついでにその攻撃も同時収束デース!!」
空にいると狙い打たれるので、着地。
降ろした調ちゃんと切歌ちゃんは、やる気たっぷりに身構えた。
ふむふむ。
つまりみんなで力を合わせてドカーンってなわけか。
「御託はあとだッ!マシマシが来るぞ!!」
なんて理解をしてる合間に、第二射。
牽制だろうけど、当たったらただじゃ済まなさそうな乱れ打ちが迫ってきた。
これは、前に出ざるを得ないッ!!
「ッわたしが受け止めている間に!!」
手甲を『槍』に変えて、受け止める。
見えない後ろから、六つの波動。
続けて飛翔音がしたと思うと、まるで虹みたいな彩の光が突貫していく。
いけるかな?と期待しちゃいそうな、きれいで頼もしい攻撃なんだけど。
光がライオンの額に直撃する。
殻は砕けたようだけど、それだけだった。
「・・・・アームドギアが一振り足りなかったな」
剥き出しになったキャロルちゃんが、にやっと嗤ってくる。
そうだね、足りないね。
――――足りないから、
「・・・・ッ!!」
束ねようね。
まるでそうすることが当然のように集まってくれた、みんなのアームドギア達。
なんだか、未来やみんなだけじゃなくて、それぞれのシンフォギアも信じてくれているような。
そんなくすぐったさを感じてしまいながら、掲げた右手に力を収束させる。
「奇跡は殺す・・・・皆殺す・・・・!」
再び充填される砲撃。
都市部を一気に吹っ飛ばすエネルギーが、目の前で溢れかえっているんだけど。
右手の、そして後ろのみんなのおかげか。
特に恐怖は感じない。
何より。
「オレは、奇跡の殺戮者に!!!!!!」
よりどころが無くて、泣いている子へ。
この手を届けたいっていう想いの方が、強い!!
臆せず飛び込む、極光の中。
伸ばした右手が、完成した。
◆ ◆ ◆
「響ッ!」
届かなかった一撃をさらに束ねて、放たれた極光へ飛び込んでいく響。
あわややられたかと一瞬身構える一同だったが、
「――――伸ばす、この手が」
次の瞬間には無用だと悟った。
「わたしのアームドギアだッ!!!」
『巨大な手』とも言うべき変化を遂げた手甲が、驚愕するキャロルの目の前で極光を振り払った。
(当たれば壊す、この拳)
――――響にとっての拳とは、邪魔するものを暴力的に砕いて、奪い去るものだった。
(だけど未来は、この手が護ってくれたって言ってくれた!)
だが、仲間達に恵まれ、望まない殺生をせずともよくなったこの頃は。
『壊す』以外の道を探す余裕も生まれていた。
そんな中立ちはだかった、
程度は違えども、同じ壊す者として。
放っておけなかった。
「ッ枕をつぶ・・・・!?」
響の心情など露知らず。
歯ぎしりしたキャロルは迎え撃とうとして、しかし。
突如、体に違和感。
「っぐ、こんな時に拒絶反応・・・・!」
初めはそう思った。
ところが脳裏に過ったのは、優しい笑顔。
パパと過ごした、温かくて、大好きだった時間。
「違う・・・・これは、オレを止めようとする、パパの想い出・・・・!?」
まるで、他でもないパパに引き留められているようで。
だからこそ、
「認めるかッ・・・・認めるものかッ・・・・!」
駄々をこねるようにかぶりを振り払う。
「オレを邪魔する想い出など、いらぬッ!!全て燃やして!!力と変えるッ!!!!!」
走り出してしまった、走り続けてしまった復讐心は。
最後の大切な宝物さえも、薪にくべてしまった。
価値あるものを贄とした為か、火力が数段飛ばしで跳ね上がる。
「うおおおおおおおおおおッ!!」
再び放たれた砲撃へ、響は臆することなく突っ込んでいった。
「立花に力をッ!天ノ羽々斬ッ!!」
もちろん、指をくわえてみている仲間達ではない。
「イチイバルッ!」
「神獣鏡ッ!」
「イガリマッ!」
「シュルシャガナッ!」
「アガートラームッ!」
翼を筆頭に、こちらも再びエネルギーを収束して放ち。
響へ与えて、援護する。
キャロルも、装者も、両者一歩も譲らず。
暴風と衝撃と閃光を以って、激しく競り合う。
もはや、地図の書き直しを心配するレベルで崩壊していく都庁周辺。
激突を制したのは、限りある焼却を行うキャロルではなく。
共鳴にて増幅する、シンフォギア。
「ガングニイイイイイイイイイイイイイイルッ!!!!」
一度は『足りない』と嗤われた一振りを叫びながら、ダメ押しと言わんばかりに『拳』を押し込む響。
哀れ、はち切れんばかりに頬張った『獅子』は。
まっさらな燐光をほとばしらせながら、力尽きてしまった。
「ッキャロルちゃん!!」
獅子の中。
呆然と自嘲の笑みを浮かべながら涙するキャロルの下へ、駆けつけようとする響。
だが、無数の弦に絡めとられ、動きが鈍ってしまう。
「お前にもいずれわかるさ・・・・奇跡では救えぬ世界の真理を・・・・」
「ッそんなことない!!奇跡だって、手繰って見せるッ!!」
反論が、口を突いて出た。
だって、今響が見下ろせる場所にいるキャロルが、あまりにも独りぼっちだったから。
「奇跡は呪いだ、縋る者を取り殺すッ・・・・!!」
そんな必死をなおあざ笑えば、ひときわ大きな爆発。
体を変化させるだけのエネルギーすら消費したのか、元の子供の姿で放り出されてしまう。
激しく消耗した今、地面に激突すれば一たまりもないだろう。
拘束を振り払いながら飛び出した響は、必死になって手を伸ばした。
「キャロルちゃん、手を取って!!」
「お前の手で救えるものか・・・・救えるものかよォッ!!!!」
半ば自棄のような叫び。
声に穿たれて、響の心にためらいが生じてしまう。
「・・・・ッそれでも救う!!!」
しかし、それはほんの一瞬のこと。
今まで相対してきた者達が、今まで手にかけてきた者達が。
脳裏をよぎれば、迷いは消えた。
「抜剣ッ!!!」
『ダインスレーイフッ!!!』
エクスドライブに、更にイグナイトの黒が重なる。
「わあああああああああああッ!!」
『キャロルッ!!』
雄叫びの中。
キャロルはまず、こちらに手を伸ばすエルフナインの幻影を見た。
それだけだったなら、彼女の心は動かなかっただろう。
「・・・・ッ!?」
だが、次。
現れた、伸ばされた。
もう一つの手には、思わず息を吞んでいた。
「パパ・・・・?」
――――キャロル、世界を知るんだ
娘のしでかしたことを知ってか知らずか、あの頃と変わらない優しい笑みで寄り添ってくる父イザーク。
――――世界の真理を読み解き、人類の相互理解を実現すること
――――それこそが、錬金術師が目指すべき場所なんだ
あの時、今わの際に託してくれた『命題』。
そのヒントを与えてくれながら、そっと手を差し出してくれる。
――――賢いキャロルなら、分かるね?
――――その為にはどうすればいいのか
響とエルフナインが見せた現実なのか、それとも自分の都合のいい妄想なのか。
どちらとも判断がつかなかったキャロルは、涙を一筋こぼしながら。
「ッパパァー!!!!」
――――散々拒否した手を掴んだ。
せ、拙作では次くらいが肝だから・・・・(震え声)